魔導転生 ~大魔導士キョウスケ☆マギカ~ 作:新世界のおっさん
なぎさ主軸に移ります。
大魔導士の威光を感じてください。
それでは引き続き魔導転生をお楽しみください。
時間は遡る……上条恭介、暁美ほむらが入院していた病院のの一角に、一人の少女がいた……名は<百江(ももえ)なぎさ>と言い、最近まで普通に過ごしていたはずの女の子だった。
しかし、彼女は小児ガンを患っており、知らぬまま過ごしていて突然倒れ、この病院に運び込まれた。
「……チーズ……」
「駄目よなぎさ、先生に食べちゃいけないって言われたでしょ?治るまで我慢しようね?」
「……はい……なのです」
母親は出来る限り娘の顔を見たかったが、シングルマザーであり、入院費や生活費等を稼ぐために、日に日に来れる日が減っており、なぎさは一人の時間が多かった。
さらにチーズが大好きだったなぎさだったが、担当医から乳製品を止められていたため、口にすることができずにいた。
「(……つまらないなのです……)」
大好きな物は口に出来ず、愛する母に会えず、溜まっていくストレスを解消することも出来ないまま、なぎさはすれていき、笑うことも減っていった。
「(チーズ……食べたいなのです……)」
そう思っても虚しいだけ……分かっていても彼女はそう思わざる得ないほど、チーズを恋しがっていた。
『やぁ、ちょっといいかな?』
その時だ、<悪魔の誘惑>がやって来たのは。
「……貴方何?なのです」
『……これは驚いた、普通なにかしら反応があってしかるべきなのに……君はかなり胆が据わってるらしい』
なぎさの目の前に現れたのは、ご存じ魔法の使者<キュウベえ>。
突然現れた自分に動じなかったなぎさに興味を示した彼(?)は、自己紹介の後に契約の話を持ち掛けた。
「どんな願いも……なのです?」
『そうだよ!君が魔法少女になってくれるなら、どんな願いだって一つだけ叶えてあげる!』
なぎさは理解していた……このまま契約せずにいても、自分は死んでしまうのだろうと……医者の様子から察する事が出来た。
「(死にたくない……チーズも食べたいし、頑張ってるママに何もお返ししてないなのです……だったらいっそ、怪しかろうとこの生き物の誘いに乗るのが一番マシなはずなのです)」
そう思い至ったなぎさはキュウベえに告げる。
「<またチーズが食べられる身体に戻してほしい>……それがなぎさの願いなのです……キュウベえ、契約なのです」
『君の願いはエントロピーを凌駕した……契約は成立だ、受け取ると良い……それがキミの新しい力だ』
「……ッ!」
こうしてなぎさは魔法少女になった。
戦いと言う運命を受け入れてまでも、大好きなチーズを食べたくて、愛する母に迷惑をかけたくなくて、契約をしたのだ?
その先に何があるかは知らずに。
退院したなぎさは、再び元の生活に戻りつつ、戦いに明け暮れた……大好きなチーズを口一杯に頬張るも、その表情は変わらない……簡単に心の傷は癒えたりはしない、無論入院していた時よりはずっとましになってはいたのだが。
『キミの才能は当たりだね、なぎさ……素晴らしい活躍ぶりだよ』
「褒めても何も出ないなのです……それに今回も出なかったのです、グリーフシード」
『それは仕方ないよ、キミが倒したのは成長途中の使い魔……魔女じゃない』
最初の頃は魔女に当たる事もあったが、今は全くもって遭遇していない。
「何で魔女が……いない、なのです?」
『この町には既に魔法少女がいる……それに最近見知らぬ魔法少女がもう一人増えたからね……そのせいじゃないかな?』
「二人もなぎさ以外に……それなら仕方ないなのです」
実際一つの町に二人くらいが一番効率が良く、それ以上となるとあぶれてしまう事は避けられない。
ましてや、なぎさは才能はあれど契約したばかりの新人であり、他の二人がベテランのため出遅れは必然とも言えた。
「……ソウルジェム、濁ってるなのです」
『それは当然だよ、最近グリーフシードで浄化を行ってなかったからね』
「やはり、そうそうに魔女を……ッ!グゥッ!」
と、突然なぎさは両手で口元を抑える……その指の隙間からはおびただしい血が流れでて、咳と吐き気が止まらない。
「(そんなッ!だって身体は元に……元に?)」
その場に倒れ口から流れ出る血を止められず、吐き出し続けるなぎさ……そんな中、自らの願いの穴に気がついてしまった。
「(もし戻したのが患う前だったとしても、それが患う直前だったとしたら?)」
ありったけ血を吐き出しても、今立ち上がれるのはひとえに魔法少女だからに他ならない。
「(キュウベえ……いつの間にか消えやがったなのです……アイツは許さない、でもそれ以上に……)」
口元の血を拭い、空へ手を伸ばすなぎさ……その手は小さく弱々しかった。
「<生きたい>……なのです……」
いつもより空が濁ってみえた。
早朝を駆け、真昼を駆け、深夜を駆けた……それでも魔女が見つからない。
途中魔法少女に出会った気がしたが、気にする余裕もない。
声をかけられた気がしたが、耳を貸す時間もない。
誰かにぶつかったが、気のせいだったかも知れない。
なぎさの思考力は少しずつ低下し、穢れだけが溜まっていく。
最早何のために駆けているのか曖昧になりかけた時、ついに出会った。
「(この巨大な気配……間違いなく魔女なのです!)」
その魔女は鳥籠に囚われたような外観をしていて、大して動かず、使い魔が積極的に襲いかかってきた。
彼女は待ちに待った瞬間に、ハイになりながらも自らの武器であるラッパを吹き鳴らす。
ラッパの先からシャボンが吐き出され、使い魔を爆発しながら蹴散らし、なぎさは魔女の前まで肉薄する。
「(もらったなのです!)」
最後の力を振り絞って放たれた、巨大なシャボンにより大爆発を起こし、魔女は鳥籠ごとバラバラになった。
その下にグリーフシードが落ち、結界は崩壊した。
「やったなのです!これでやっと浄化が……あれ?」
一抹の希望を懐き、グリーフシードをソウルジェムに当てる。
しかし、確かに穢れが僅かに吸われた様な気がしたが、全然濁りが解消されなかったのだ。
「そ、そんな!なんで……なん、グゥッ!ガハァッ!」
遅かった……ギリギリまで濁ったソウルジェムの穢れは、グリーフシードは吸わなくなってしまうのである。
気が抜けたせいで血を吐き出し、壁に背をつけズルズルと堕ちていくなぎさ……彼女にはここまでが限界だった。
「いやだ……なぎさ……死にたくない……死にたくないなのです……ママァ……うわぁぁぁぁ……」
口から血が、瞳からは涙が溢れだし、愛する者の名を呼び泣けど、来るはずもなし……絶望が頂点に達し、希望が潰えようとしたその時、その手を包んだ者がいた。
「えっ?」
「死なせんぞ?君が死にたくないと思う限りはな……」
現れたのは何処かで見覚えのある少年で、彼は暖かみのある声で囁き、銀の羽を掲げ叫んだ。
「<転移>!!」
その瞬間羽は散り、二人は光に包まれる。
薄れゆく意識の中、少年にこう言われた気がした。
「<希望は捨てるな>」
と……。
上条邸にある温室の前に突然光が現れ、中から恭介と彼に抱えられたなぎさが出てきた。
「さて、時は一刻を争うな……急いで対処しなくてはならん」
恭介は放課後、キリカを含めた五人で帰っている途中であった……しかし、消えかけの微かな魔力を感じて他のメンバーとは別れ、路地裏を探索した結果、なぎさを見つけたのだ。
温室に入り、彼女をテーブルに寝かせると、早速準備にかかる。
「先ずはこれだな……全く酷いものだ」
恭介が真っ先に手に取ったのは濁りきる寸前のソウルジェムだった……実は恭介はこれに似た物に見覚えがあったのだ。
「(魂を肉体から抜き出し、別の物に形作り、肉体と言うリミッターを外したことによる純然たる莫大な魔力で、魔法を成そうとした通称<外法>……こちらで見ることになるとはおもわなんだ)」
術式により作り出した秘薬に、ソウルジェムを浸す……すると濁りが止まった。
「(とりあえずの気休めだな、次はこの子の身体のほうだ……やはり、かなり悪性腫瘍に蝕まれている……)」
なぎさの腹の辺りを押すと、凝りを確認できた恭介は、早速術式に取り掛かる。
腫瘍を取り除くイメージでメス、神の加護と魔を払うイメージの銀の十字架、病魔の根元を消すイメージでイレイザー(消しゴム)。
それらを重ね、羊皮紙の術式を発動すると白く光を放つ十字架が出来上がった。
「神よ、この子を救いたまえ……アーメン」
彼女を救いたい想いを込め、術式を発動する。
なぎさが光に包まれたのを確認すると、早々に次の作業に移る。
「さぁて、後は頑固汚れを落とすだけだな……流石に久方ぶりに魔術を乱打しているせいか、疲れる疲れる」
最後に秘薬とソウルジェムが入っているフラスコを一瞥した後、別の薬の生成に入る。
「美しくするイメージでアロエ、神秘的なイメージでスカラベ、活力のイメージでマムシ……乾燥しているこれらを磨り潰し、ろ過した純水と交ぜ、術式で薬に変える……これをまんま飲むのは絶対にやりたくないな……特にスカラベは」
術式に魔力を込めるとフラスコの中身が濁った茶から鮮やかな赤に変わる。
それを満足気に眺め、先ほどのソウルジェムが入っているフラスコを持つ……そして出来たての薬を、その中に注ぎ込む。
二つの薬が反応を起こし、ボコボコと音をたてながら、どんどんその量が減っていくのが目に見えて分かる。
そして薬が無くなった頃には、全くの濁りがない、強い輝きを持つソウルジェムが姿を現した……その色合いは薄紫であった。
「……終わったか……良い仕事をした」
そのソウルジェムをポケットに入れ、なぎさを再び抱き抱える。
「流石にいつまでもテーブルはキツかろう……私達のベッドに運んでやるか、なぁ恭介」
恐らく聞き、見ているであろう<上条恭介>に語りかけ、彼はそのまま寝室へと向かう。
なぎさは安らかな表情で眠っていた。
「……ん……あ、れ?」
既に外は闇に沈んでいる時間帯、なぎさはようやく目を覚ます。
今まで一睡もせず、ひたすらにグリーフシードを求めて駆け回っていたので、グッスリ眠ってしまっていたらしい。
まだ寝ぼけ頭でフラフラと身体を起こすと、そこでやっと見知らぬ場所で自分が眠っていたと気がついた。
「ここは……どこなのです……?」
眠りに落ちる前の記憶が曖昧だったなぎさは、不安気な表情になり辺りをキョロキョロと見回す。
その時、扉をノックする音が聞こえた。
「失礼す……あ、目を覚ましたみたいだね……良かったよ」
「あ……」
扉が開かれ現れたのは、もちろんここの家主である上条恭介に他ならないのだが、なぎさはそれを知らない……だが曖昧な記憶が、彼の顔を見た時鮮明になってきた。
「貴方は……なぎさを死なさないって言ってた人なのです?」
「ふふ……そこまで意識がハッキリしてきたなら、もう大丈夫そうだね……そうだよ、僕が死にかけの君を拾った者だよ」
「やっぱりなのです……」
なぎさの記憶は正しかった、それを理解した途端に記憶は更に鮮明さを増していく。
「なぎさは本当に死ぬ一歩手前だったはずなのです……なのに何で……」
「それはもちろん僕が君を治したからさ」
「あ、貴方が……なぎさを治したなのです?」
ソウルジェムがギリギリまで濁りきり、穢れを浄化できなくて完全に打つ手がなく、ガンの進行によりずたぼろだった身体も修復出来ないままだった自分を完全に治した……そう彼は言っていた……それがなぎさには信じられなかった。
「信用できないかい?じゃあ君の手元の宝石を見ると良い……一寸の曇りもないはずだよ」
「えっ……ッ!ほ、本当……なのです」
無意識に握っていて気づかなかったソウルジェムを、改めて見ると彼の言う通りであった……さらに、あれだけあった吐き気も傷みも無くなっていた……完治していたのだ。
しかし、ここまでの事を普通の人間がこなせるわけがない……なぎさは恭介に向かい口を開こうとしたが、彼が先に話し始めた。
「先に自己紹介をするよ、僕は上条恭介……<魔術師>だ」
「<魔術師>……?」
なぎさにとっては聞いたことの無い単語であった。
無論魔法少女を始めて大して経っていなかったので、知らなかったが存在はしていた可能性はあった……だが何処か自分達<魔法少女>とは違う……なぎさはそう感じていた。
「君の名前は?」
「……なぎさ、百江なぎさなのです」
「そっか、良い名前だ……」
彼女からすると恩があったり、正体が分からないのもあるが、どうも彼には逆らえる気がしなかった。
常時主導権を握られている感覚は、まるでキュウベえと話しているかのようだった。
「何が目的なのです?<魔術師>とやらは、なぎさをどう利用するつもりなのです?」
「……なるほど、やっぱり君は何者かに利用されていたんだね……大丈夫、警戒しなくて良いよ……僕は君が死にたくないと泣いていたから助けたんだ、他意はないよ」
「……そう言って丸め込もうとしそうなのです」
精神的にも肉体的にも追い詰められ、更には裏切られて死にかけた彼女は、完全に疑心暗鬼だった……訳でもなかった。
それは決して彼女が素直に彼を信じている訳ではなく、なぎさが意識を失う直前に恭介が言った言葉が、彼女に僅かな希望を残させたからだ。
『希望は捨てるな』
「参ったな……どうすれば信じてもらえるのか……」
「……冗談なのです」
本気で困った表情をしている恭介を見て、なぎさはふいっとそむけポツリと言った。
「全く信じてないわけではないなのです……ただ万が一があったから、試しただけなのです」
「……僕を試した?」
「そうなのです、貴方が……上条恭介が信用に足る人間かを試したなのです……先ほどの様子は、本気でなぎさが信じてない状況に困ってる感じだったなのです」
実のところこれでも確信はなぎさは持っていない、問題はこの後の受け答えで、彼がどう答えるかにかかっていた。
「そうかな?もしかしたら、安心したところを狙うための演技かもしれないよ?」
「……だったら、なぎさが意識を失う前に言った言葉は嘘なのです?」
「ッ!そんなわけないだろ……君に生きてほしいから、君が絶望に負けそうだったから……本気で言ったよ」
「(……ああ……この人……お人好しだ……完全に本物なのです)」
質問に対する最初の動揺でなぎさは気づいた、彼は見ず知らずの自分の為に、色々手を尽くしてくれる様な人が良い人間なのだと……困った人間には手をさしのべる暖かな人格者なのだと。
「……ありがとうなのです」
「え?」
「なぎさを助けてくれて、ありがとうなのですっ」
この時、なぎさは心から笑った。
それから、なぎさは恭介から彼自身の身の上の話を聞いた。
内心驚きの連続だったが、魔法少女や魔女、キュウベえのような存在を知っている彼女にとっては、彼の話は特段信じられないわけではなかった。
逆になぎさから恭介に事情を説明した時は、彼はとても真剣な顔をしながら聞いており、時に怒りを滲ませてもいた。
「キュウベえ……科学技術と理論のみで、魔法少女のシステムを作り出したのは認めるが……やり方が汚いな、許せん」
「なぎさもアイツは許さないなのです」
「……しかし、何かと苦労も多そうだね……困ったことがあったら相談しに来なよ、力を貸すよ」
「……ありがとなのです」
恭介はこの世界に存在する魔法についての情報を得れ、なぎさは困った時のヘルプをしてもらえる……二人はギブアンドテイクな関係で結ばれた……無論恭介はこうなる事を見越していた。
「(久方ぶりに働いて正解だった……まあ、最初は彼女を救うことに必死だったが……)」
恭介は過去、なぎさと同じくらいの時……産まれたばかりの妹を同じ病気で亡くしていた。
それ故柄にもなく内心はなかなり焦っていたのだ。
「(治せる様になった今、この娘にであったのは何の因果やら……)」
「……兄さま」
「…………えっ」
「そう呼んじゃだめなのです?」
なぎさからすれば何となくの提案だったのかもしれないが、まるで心を読まれたかのような錯覚に、恭介は陥った。
「……君がそう呼びたいなら……逆に僕はなぎさと呼んで構わないかい?」
「もちろんなのです、兄さま」
「ありがとう、なぎさ」
基本的に静かに話すなぎさは、感情の起伏に乏しかったが、たまに本来の顔を覗かせてくれる……兄さまと呼ぶときはまさにそれだった。
「(本当に妹が出来たかのような気持ちだな……いや、もうろく爺が何をいっていると言う話だがな)」
恭介は心で自嘲しながら、立ち上がり扉の方まで歩いていく。
「シングルマザーなんだっけ……なぎさはこの後どうする?」
「……ママは昨日から三日くらい戻れそうにないって連絡来てたなのです」
「お母さんも大変だね……分かった……ご飯食べて、お風呂入ったら一緒に寝ようか?家も両親不在だから」
「……そうしたいなのです……家だと一人で寂しいから……なのです」
今まで甘えられなかった……その反動で、なぎさは恭介に家族としてのぬくもりを求めた。
そして恭介はそんな彼女の心情を察しつつ、彼女の手を取った。
彼女はやっと……真の意味で願いが叶ったのだ。
「……さっ、行こう……なぎさの大好きなもの、沢山用意してあげる」
「はい……なのですっ、兄さま!」
その日の上条邸の食卓は、チーズのオンパレードだったらしい。
一方でもう一人のイレギュラー<暁美ほむら>は、明日に向けてシミュレーションをしていた。
「……統計通りなら、いつもの様に行けば問題ないはず……」
何度も同じことを繰り返している彼女だったが、やはり準備は念入りにしているらしい。
「ただ、あの時会った魔法少女が気になったわね……万が一の為に、心の準備はしておきましょう」
だが、まさか彼女も……自分の知らない所で、色々起こっているとは思いもよらなかったようである。
なぎさ救済。
彼女の設定は、一部で語られている小児ガン説をベースに、公式で明らかにされた設定を肉付けすることで形作られています。
そして、妹になりました(ここ重要)
恭介となぎさは、並ぶと兄妹と言われても違和感が無いなぁと思ってこうなりました……なぎこれかわいい。
さて、いよいよアニメ本編の時間軸に来ました……さぁ、ショータイムだ(これは魔法使いか伝説の傭兵)