ポケモン:バレンタイン・キッス(ミニ連載)   作:Sly Moon

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1話 あさ

『おはようございます!ポケモンめざましテレビの宮下です!本日はバレンタインということで、多くの人がコチラ!マルイニューキンセツ店にいらしています!』

 

「んん……」

視聴予約していた番組。

テレビから流れる声は毎朝聞くそれと同じ、「ポケテレビ」のアナウンサー「宮下 ノボル」のものだった。

 

「ぽひゅうううん!」

 

浅い覚醒を、俺のパートナーがはっきりとしたものにする。いつものように髪の毛をぐしゃぐしゃにいじってきて。

 

「いててて……あぁ、おはようムウマ。」

「むぅ、むぅー!」

 

俺が挨拶すると、元気に笑顔で返してくる。

なにをいったか分からないが、会話は成り立っている。言葉なんて大したものじゃないな、なんてちょっと哲学的に考えてしまうのは俺のくせだ。

 

「むぅ!」

 

そんなことを考えながらぼやっとしていると、ムウマは玄関のほうを指差してーーーもっともこいつには指などなく、ただ布切れのような体の端をとんがらせているだけだがーーー鳴いた。毎朝の日課である散歩にいきたいようだ。でもこいつから誘ってくるなんて珍しい。

 

「ひょっとして、今日がバレンタインだって知ってるのか?」

「むひゅうん!」

 

首を縦に大きく振る。テレビっ子だからな、きっとポケモンめざましテレビで特集かなんかをしていたのだろう。

……あっそういえば。「きょうのヨーテリー」観なきゃ。

胴を起こしてテレビのほうにすこし集中する。ムウマはちょっとむすっとした。

 

『愛する人にこんな美味しいチョコレートを渡したら、いちげきひっさつでメロメロですね!』

『このバレンタイン、好きなあの子と あかいいと で まきつく したら、毎ターンダメージ受けてまうわ!!』

 

今日もまだくだらないことをやっているな、この番組は。

俺の目的は『今日のヨーテリー』だけだ。俺は貧乏で飼えない『タマゴグループ陸上』のポケモンに密かに憧れている。このムウマももう1年近くの仲になるが、やはりふたりぐらしは寂しいものだ。

と、またしても気持ちのいい眠気の中で考え事をしていると……

 

「むーぅ!」

 

しびれを切らして顔に覆いかぶさってきた。

やれやれ、どのみち言葉に出さなくても心を読まれてしまうのかもな。嫉妬深い彼女に謝って顔からどいてもらった。

ベットから起き上がり、上下をパジャマからジャージに着替える。着替えの間、彼女は俺の下着姿を意識して恥ずかしがるわけでもなく、ぼうっとテレビを見ているようだった。人間が服を着ていないヨーテリーを見ても何も感じないのと一緒かな、と思う。

 

自分の着替えが終わって、ムウマにもマフラーをしてやる。ゆうれいポケモンといっても寒いのは寒いらしい。本来、夏に活動するからだろう。人間の首に巻くのと同じ要領で、首元の赤い玉の上から巻いていく。そして仕上げに頭に大きなニット帽を被せてじゅんびばんたんだ。

 

くだらないテレビを消して、今日は小銭だけではなく財布を、そしてスーパーボール1つをウエストポーチに入れた。

まだ日が昇ったばかりか。ジャージだけでは寒いので上からダウンを着てムウマと部屋をでた。

 

 

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