ポケモン:バレンタイン・キッス(ミニ連載)   作:Sly Moon

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最終回 すなお +エピローグ

マルイのなかに入ったムウマ。テレビで観た、あの一番たくさん人が並んでいるところへ向かう。どんかんなご主人のおこづかいから少しだけ抜き出してきたこのお金で、美味しい アレ を買おう。と思っている。

列の最後に並ぶ。ムウマの他にも並んでいるポケモンはいて、ルージュラやムンナ、サーナイトなど様々である。どのポケモンも思い思いの相手にプレゼントをしようと考えているのだ。

ムウマは商品をみた。高級そうな箱に入っている、綺麗に整形されたチョコレートはどれも美味しそうだった。いくらのなら買えるかな?ムウマは自分の体に隠したはずのお金を探す…………が、ない。

「むう!」

心当たりといえば、家を出るときにご主人の頭にかぶさったことだ……でもだとしたらお金は家の中。ご主人に買ってもらう?……それではサプライズにならない。それに、遅くなれば売り切れてしまうだろう。しまった!今日こそ思いを伝えようとしたのに。

 

 

ムウマ、どこだ?あまり目立ちたくない……この格好では。だから大声は出さないがマルイの中をぐるぐる回ってむやみに探した。しかし、地下食品売り場にきてぴんときた。内緒で俺のチョコレートを買おうとしているのかもしれない、と。だとしたら見つけてはダメだな。なるべく人混みを避けて店外に出た。ムウマが出てくるのを待とう。

 

 

どんなに悔やんでも、お金が無いなら買うことはできない……。仕方がないので、ムウマは一度店を出ることにした。急に飛び出したことを怒られるかもしれないけれど、とにかく今はご主人にお金を貰わなくてはならない。できればこっそり渡したかったなぁ。

エスカレーターのところから上にのぼって、店の入り口のドアをすりぬける。ご主人は真横にいた。

 

 

「ムウマ!どこいってたんだ?」

見つかったのはいいが、まだいなくなってから少ししか経っていない。興奮して焦っただけなのだろうか。息が荒い。

「む、むーう、むうま!むう。」

何を言っているのだろう?少し申し訳なさそうにしているが……急にどこかへ行ったのを謝っているのだろうか。

「気にしないでよ、別に平気だよ」

「むう……むうま!むぅー」

違うらしい。ウエストポーチの中に入って、サイフを取り出した。お金がほしいのか。そういえばチョコレートだってただではないからな。サイフを開けて中身を取り出そうとすると……無い。札が無い。しまった、中身を確認しないまま来てしまった……。

「ごめんな、お金入ってないんだ。」

「むぅ!!!」

 

 

ここでムウマは気付いた。今朝お金をこっそり抜いたのはそのサイフからだと。だから入っていないのだ。謝りたくても謝れず、怒りたくても怒れない……気分が一気に落ち込んでしまった。

その気持ちはトレーナーにも伝わった。がっくりと力なく垂れたニット帽は、今のムウマの気持ちをはっきりと表している。

(もー、こうなったら……!)

 

 

「そんなに買いたいものがあったのか……、ごめんな。散歩が終わったら学校に行くから、その帰りに買おうよ。」

「むぅ……むうん。」

まだ悲しそう。しぶしぶ納得したような感じだ。

 

それから、俺の言った通り一先ず引き返すことになった。

さっきよりも周りが明るい。学校が始まるまではまだまだ余裕がある。ゆっくり話をしている時間も。

「むう!」

「ん、どうした?」

「むうむう!」

太陽を見ていたら、今度はムウマから俺にぎゅっとくっついてきた。久しぶりだな、こんなふうに寄り添って歩くのは。

「もうすぐ出会って1年になるな。」

「むぅ」

「ここにきてひとりぼっちだった俺のこと、こんなふうに暖めてくれたこと……覚えてるよ」

「む、むう」

少し照れてるな。

……会話がすこし途切れて、ムウマが俺の前に移動した。

2人は向き合う形になった。

「ん?」

「むぅうまっ!むぅー、むうま!」

ばーか!どんかんなくせに!

そう言ったのがわかる。なぜだろう?彼女が伝えようとすることが、容易に理解できる。

「むぅ、むうむうむう!」

こんな話するなんて。わかってて言ってるでしょ!

そこまで聞くと、急に、暗くなって……そして温もりを感じた。

柔らかい感触が唇に伝わる。全く不意の出来事で、時の流れが止まったようだった。いや、止まっている。頬をやするような冬の寒風もその急ぎ足を止め、先ほどまで聞こえていた鳥ポケモンたちの鳴き声もしなくなった。

しかし、彼女と俺の鼓動だけは加速していくようだ。たったふたり、この静寂に取り残されて……。

状況を頭で理解して、ようやく俺は彼女を抱きしめることができた。強く。そして、優しく。

"どれくらいの間だっただろうか"

2人は抱きしめあって、はじめてお互いの気持ちを理解することができたのだ。

ぜんぶわかってたはずなのに。

ムウマは恥ずかしそうに笑った。俺も笑った。

やっと気付けたね。

やっと素直になれたな。

彼女の顔は、ずっと明るく照らされて、その夜のとばりのような頬が紅く色付いているのがわかった。

俺たちの恋は始まったばかりだ。




ようやく素直になれました。
1年間、彼らにはどのようなことがあったのでしょうか。
おそらく、はじめは恋人のように、毎日がドキドキの連続だったのでしょう。
でも時が経つとそんな関係が深くなり、今度は逆に友達のように接するようになった。
そうなれば初対面のような情熱は消えてしまうのです。
みなさんにもそんな関係の人はいませんか?
素直になって、自分の気持ちを伝えてみてください。

<エピローグ>

俺ももう自立して、ようやく自分で働いて飯を食えるようになった。
この時期になるといつも思い出すなぁ。
結局、本命チョコレートを一度ももらわないままこの歳になってしまったよ。まぁ毎年 アレ があるからいいんだけど。

パリーン!!

おっと大丈夫!?皿が割れたんじゃ……またすりぬけちゃったのか、じゃあ怪我はないね?
……ん、痛いのか?じゃあちょっと見せてごらん
んっ!
懐かしいこの感覚……また向こうからキスをされてしまった。トリックルームによって歪んだ空間。彼女はまだこうしないとこのわざが出せないらしい。
キスは一瞬で終わったようだった。ほんの数秒だったが、久しぶりに愛を確かめ合った。バレンタインにはこうして恋心を忘れないようにするのが2人の決まりだ。
ん、でもおかしい。まだ今日はバレンタインではないはずだ。
……日付を確認すると、なんとさっきから1週間も時が進んでバレンタインになってしまっている!
どうやらさっきのトリックルームでは、俺と彼女以外を加速させたらしい。俺たちはずっとキスをしていたということか……。

って、関心してる場合じゃない!明日までに終わらせる資料があるんだった!!
何か言いたげな彼女をのこして、俺は書斎に飛び込むのだった……。



一応エピローグではムウマのままか、ムウマージになったかははっきりさせていませんので、好きなほうで妄想してください。
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