夢幻転生   作:アルパカ度数38%

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更新期間が空きましたが、また風邪でした。
寒い時期になりますので、みなさまも体に気をつけてください。


その24:自動ドア殺人事件2

 

「探偵団を立ち上げよう」

「……へ?」

 

 突然に、Tは言った。

脈絡というものを軽視し過ぎた言葉に、思わずフェイトは足を止める。

Tの目を見て本気を確かめ、それから一歩引いてTの全身を観察し、いきなり別人に入れ替わっていない事を確かめ、それからもう一度Tの目の本気度を確かめた。

当然のごとく、Tは本気の目であった。

フェイトは今日何度目かになる頭痛をこらえながら、Tに向け困り切った笑顔を向ける。

 

「えっと、どういうことかな?」

「あの店長、自動ドアの誇り高い命が失われたと言うのに、ガムテープで張るように指示するだけだっただろう? 位牌を飾るどころか、手を合わせもしなかった。どころか、まるでぼくらを犯人を見るような目で見てきたじゃあないか」

「えっと、私、何処から突っ込めばいいのかな……」

 

 フェイトには自動ドアにあるという誇りも初耳だったし、自動ドアを弔う為に位牌を作るという風習も初耳であった。

地球に赴く際に事前に調べておいた地球の情報では、そのような風習など無かった筈である。

が、Tがあまりにも真剣な声色で言うので、フェイトは弱々しく冗談めかして言う事しかできなかった。

そんなフェイトに、首を傾げ、T。

 

「形容が足りなかったかい? けれどあまり美辞麗句を付け加えても、かえって嘘っぽくなるんじゃあないかと思うんだけどなぁ」

「……えーと」

 

 混乱し、フェイトは目をグルグルと回しながら、もしかしてTはフェイトの知らない地球の風習を教えてくれているだけなのかもしれないと思う。

が、同時に何時ものTを考えると、今一信用し切る気にもなれず、うむむとフェイトは頭を抱えてうずくまった。

まずは冷静になるべきだし、そうなるには信じられる物を思い浮かべるべきだ。

そう思い、フェイトはなのはとTの名前を思い浮かべる。

なのはとTとの握手が思い浮かび、フェイトは浮ついた心が落ち着いてきたのを感じた。

 

「……よしっ」

 

 呟き立ち上がると、フェイトは次いでTの事を考える。

Tは不思議な少年であった。

変なことばかり言うし変な事ばかり考えているに違いないのだが、不思議とよく的を射た発言をする、フェイトの大切な友達であり、フェイトに友達の価値を教えてくれた恩人でもある。

その関係はどちらが上とも言えぬ不思議な物であったが、少なくとも一般常識に関しては自分の方がマシだと言う意識がフェイトにはあった。

故にフェイトは友として、Tの常識を導かねばならないのだ。

フェイトの胸の奥に、決意の炎が燃え出す。

瞳に意思の醸し出す温度を載せ、フェイトはTの目を真っ直ぐと見つめて。

 

「で、だから僕らは探偵団を立ち上げねばならないんだ」

「だからってなんでっ!?」

 

 早速挫けそうになった。

思わず叫んだフェイトに、しかしTは不思議そうな顔をするばかりで、こちらこそが道理の通らない事をしているのではないかと錯覚してしまいそうだ。

それでも心の中で、自分で自分にエールを送り、どうにか笑う膝で姿勢を維持するフェイト。

が、追撃。

 

「これさ」

 

 Tは、カビたメロンパンを差し出した。

何時持ちだしたのか不明だが、コンビニから持ち出していたらしい。

勿論、意味不明である。

心が折れそうになるのを必死で抑えながら、フェイトは辛うじて声を出した。

 

「つ、つまり?」

「自動ドアを弔わねばならず、ぼくらには冤罪の視線が向けられ、報酬は先払いされてる。それに、何となく動機も掴めたような気がするから、推理のアテもあるしね」

「……動機って?」

 

 フェイトが土俵際の心意気で繰り出した声に、Tは満面の笑みを浮かべる。

純真な、見る者の心が洗われるような笑みであった。

 

「フェイトちゃんさ」

 

 フェイトは、不意に陽光が強いな、と思った。

現実逃避であった。

 

「自動ドアは硝子製だが、センサ部分は電気が関係している。対し、フェイトちゃんは金髪だ。金髪は、メッキだ。ここまではいいだろう? で、メッキは最初、電池に電気が流れなくなる障害として発見された。つまり、フェイトちゃんを前にしては、自動ドアは心臓麻痺を起こしてしまう」

「あの、私、今まで自動ドアが反応しなかった事って無いんだけど……」

「反応はするさ。でも心臓麻痺になるんだよ。で、止まった心臓と言えば、切り分けて美味しく食べねばならない。硝子は食べられないけど、弔いの意を持つのならば切り分けるのは当然だろう。その前段階として、心臓を切り離さねばならない。つまり、だ。現在の容疑者候補は……」

 

 Tは、くるりとその場で回転。

ゆるめのシャーベットカラーのTシャツが風を孕んで少し浮き上がり、回るバレリーナのスカートのようにめくれ上がった。

薄っすらと割れた腹筋をのぞかせた後、指を天に、片手を腰につけ、口元を左右非対称に持ち上げてTが言った。

 

「あのコンビニの店員さんだ」

「…………」

 

 助けてなのは。

心のなかで、フェイトは思わずそう叫んだ。

それを聞いてくれるはずもなく、続けるT。

 

「現場にはぼくら2人と店員さんと店長しか居なかった。ぼくは自分が自動ドアを殺していないと知っているので排除、フェイトちゃんがそんな事する筈無いので排除、残るは店員さんか店長。店長は自動ドアに弔いの心など持っていなかったから、犯人は店員さんか外部犯の二択。しかし自動ドアに弔いの心を持つのは、店員さんの方が自然だ。故に、犯人は店員さんの可能性が高い」

「はぁ……」

 

 フェイトは、空が綺麗だなぁ、と言う思いに浸りたい衝動に襲われたが、何時までも現実逃避を続けられなかった。

友達の言う言葉に向き合わねばならぬという、性分から来る行動である。

ばかりか、何気に変な論理の上でとは言え、自分のことを信じてくれるTに、なんだかくすぐったい思いすら感じる。

自分が何だか簡単な人間に思えてしまい、恥ずかしがりながらも、フェイトは口を開いた。

 

「それで、私達はなんでデパートに向かっているんだっけ」

 

 そう、フェイト達はデパートに向かっていた。

というのは、Tがコンビニを出るや否や、この辺りで一番高い建物の屋上に行きたいと言い出したのである。

幸いにも近くにデパートがあり、そこが辺りを一望できる高さである事を知っていたフェイトは、Tをそこに案内する途中であった。

ちなみにその知識は、Tと遊びにいけると聞いてフェイトが毎日観光雑誌を読んで集めた知識だった。

役立つのはいいのだが、なんとも釈然とせぬ思いを抱くフェイトであった。

 

「それはね、あの自動ドアの心臓……正円形の硝子が、何処に行ったかを考えてみれば分かる事さ」

「え? 犯人の手じゃあないの?」

「いいや、風に吹かれて飛んでいってしまったのさ」

 

 フェイトは、思わず虚空に視線をやった。

首を傾げるT。

 

「どうしたんだい? 何が見えるの?」

「うぅん、なんでもな……」

「なるほど、正解だ」

 

 言われてフェイトが視線の先に意識のピントを合わせると、そこには気球の絵のポスターが。

え、とフェイトが漏らすよりも早く、Tはにこやかな笑みを浮かべて続けた。

 

「硝子は結構重いからね、風でふわふわ飛んでいく訳にはいかず、気球のように硝子を飛ばす物が必要になるだろう。ぼくの想像では気球よりも沢山の風船の方が近かったんだけれど、まぁその辺は見つけてみての事さ」

「…………」

「それには当たり前だけど、高いところから探すのが一番いい。今も円形硝子が空を漂っているのならすぐに分かるし、犯人がそれを受け取るのならうってつけの場所だからね」

「…………」

「しかしデパートかぁ、海鳴にデパートはあったけど中々近づく機会がなかったから、新鮮だなぁ。特に高度と人口密度が並立しているのがいい。今の年齢だと、中々そういう施設には近寄れないからね。フェイトちゃんは行ったこと……。あれ? フェイトちゃん、なんか目の光が無くなってない? ちょ、どうしたんだい、本気で具合が悪そうなんだけど? おーい、フェイトちゃん……?」

 

 

 

 *

 

 

 

「…………」

 

 瞬き。

照明の眩しさにすぐさま目を閉じ、それからフェイトは頭の裏にごわついたコットンの感触と、生暖かい温度を感じる。

額に手をやりながら、なぜだか痛む頭をさすりつつ、体を起こした。

喧騒。

白を基調とした高級感ある内装に、置いてある様々な賞品による彩り。

それからすぐ側にある顔を見つけ、フェイトはつぶやく。

 

「……T?」

「おはよう、Tだよ」

 

 言いつつTが両手に持った清涼飲料水の缶のうち、片方をフェイトに差し出した。

呆然としながらフェイトはそれを受け取る。

刺すような冷気がフェイトの肌を通して脳裏を刺激し、すぐに現実を思い起こさせた。

思い出したくなかったTの言動と共に、Tに膝枕をされていたのだと言う事実を即刻認識。

フェイトは顔を赤面させ、思わず俯いた。

膝枕なんて子供っぽくって、しかもそれをTにしてもらったのだ。

そう言うのは、なんというか弱みを見せてしまっているようで、恥ずかしいような、情けないような、よく分からない気持ちがフェイトの内心を踊り狂う。

そんなフェイトの内心を知ってか知らずか、ニコニコと続けるT。

 

「現状把握、できた?」

「えっと……。ごめん、お願いできる?」

「うん。フェイトちゃんが熱中症気味でクラっときちゃってから、すぐ近くにデパートがあったからそこまで肩を貸して辿り着いて、店員さんに言って冷房の効いた所で横にさせてたんだ。此処、デパートにあるベンチね?」

 

 熱中症というか、Tの言動で精神的に疲れ果ててしまったのだけれど。

そう言いたくなるのを我慢し、フェイトは兎に角頭を下げた。

原因はTにもあるのだが、介抱してくれたのである、当然のことだ。

 

「ごめんねT、迷惑かけちゃって」

「単品ならありがとう、セットでもありがとう付きの方が、聞く側は嬉しいと思うよ。僕もね」

 

 イオン系の水分補給に適した、フェイトとお揃いの清涼飲料水を口にしつつ、T。

その手の青い缶が照明に反射し、明るい光をフェイトに投げかける。

あ、と思わず口を開くフェイトに、Tは人差し指を天に向け差し出した。

 

「次から、頑張ろう? なのちゃんと出会った時、ありがとうを素直に言えるように」

「……うんっ!」

 

 さりげない所作の中に含まれるTの言葉は、なるほど、なのはの言葉のように心に深く踏み込む力こそ無かったものの、自然に受け入れられる浸透力のような物がある。

流石Tだね、と、なんだか嬉しくなってきてしまい、フェイトは思わず満面の笑みを作った。

Tはそれに何処か獲物を前にした猛禽類のように瞳を鋭くしつつも、すぐに顔を緩め、立ち上がる。

フェイトに手を差し出し、一言。

 

「さて、じゃあ屋上へ行けるかい?」

「屋上?」

 

 首を傾げながらフェイトが言うと、ニッコリと、心あらわれるような清涼な笑顔で、Tは言ってみせる。

 

「もう忘れたのかい、自動ドアの心臓である、円形の硝子板を探すのさ」

 

 フェイトは、脱力した。

が、Tはにこやかにフェイトを連れ、上りのエスカレーターへと誘導する。

 

「さて、何故デパートを目指しているのかは言ったっけ。なら次は、ぼくが探偵団を立ち上げねばならない理由の方だね?」

 

 人目をはばかってか、それとも他の理由があってか、Tは声量を控えめに、フェイト以外には意味のある言葉の羅列として取られない程度にして告げた。

色々な意味で色々な事を諦めつつあるフェイトは、それにただただ頷く。

それに気を良くしてか、T。

 

「地球の探偵といえばシャーロック・ホームズなんだけど、彼には推理力の他にいくつか得難い能力があった。武力と、ワトスンだ」

「えっと、ワトスンっていうのは確か相棒みたいな人で、ホームズの推理に驚く役の人だっけ?」

「そんな感じ。小説の形態としてはワトスンは凡人の視点として活躍したけれども、それはあくまでメタ的な視線による物であって、ホームズを現実の人と考えてみると違う。探偵は他の人よりも多くの事柄に気づいてしまうが故に、孤独さを免れない。それ故に、独りで探偵をしていては心をすり減らしてしまう。だから彼にとって心地よい仲間が必要だったんだよ。ぼくの場合、武力と友人が一緒になってくれたのが、フェイトちゃんになるわけだ」

「…………」

 

 フェイトは、自身の頬に二重の意味で赤味が差すのを感じた。

なのはに負けた自分の武力を、それでも信じてもらえるというのはとても嬉しい事だし、何よりはっきりと友人といってもらえると、それだけで照れくさくなってしまう。

だのにTは、フェイトの羞恥などどこ吹く風で友人と公言してみせるのだ。

ちょっと、ずるいな。

そう思ってしまうフェイトであったが、Tが自由奔放なのはいつもの事である事だし、仕方ないと受け止める他にあるまい。

仕方ないなぁ、とフェイトは笑みを漏らした。

 

 Tは他にも様々な演説を漏らしながら、屋上へとエスカレーターに乗って登っていく。

Tによると、屋上には犯人が居る可能性が、警戒が必要なぐらいにはあるらしい。

何故なら円形の硝子板を受け取るのに最も都合の良い場所は、やはりデパートの屋上のように高いビルの上だからだ。

人目は多いが一々オフィスビルのセキュリティを破る必要がなく、何よりTが妥当と考える風船による硝子板の飛行であれば、デパートのアトラクションだと誤魔化す事も可能だからとの事。

フェイトは話半分、いや話十分の一ぐらいだと思うようにして聞き流しながら、話の途切れ際にTに問うた。

 

「そういえば、Tはあの時コンビニの自動ドアを割ったのは、結局何だったと思うの?」

「そりゃ魔法さ」

 

 あまりに当然のようにTが言う物で、物は試しにと聞いてみたフェイトは、思わず目を見開いてしまう。

何故、と問うよりも早く、Tの声。

 

「あ、屋上についたみたいだよ」

 

 言いつつTがスタスタと最上階の広いテラスに出ようと自動ドアに向かうので、フェイトは慌ててそれに付いて行かねばならない。

駆動音を薄っすらと響かせ動く自動ドアに、フェイトは先のTの話から、この自動ドアも私を見て心臓麻痺を起こしているのかな? などと思いつつも、Tの後を追う。

 

 屋上には、Tとフェイトを除き、5人の人間が居た。

母子の2人にパン屋の屋台のような物を開いている店員、その屋台の椅子に腰掛けた青年、ベンチに座って虚空を見つめる中年の男。

誰が怪しいのか、と反射的に思ってしまってから、フェイトはこつんと自分の額を叩いた。

自分は大分Tに毒されてしまっているらしい。

Tの語るような事などあるわけがないのに、と思うものの、それからすぐにフェイトは不安に囚われた。

でも、友達の言う事を信じないっていうのはどうなんだろう、と。

勿論Tの戯言に耳を貸すなど阿呆か狂人かよっぽどの世話焼きしか居ないだろうが、フェイトはTの友達なのである、よっぽどの世話焼きとしてTの言葉を、せめて根拠無く否定しない程度には信じてやらねばならないのではないか。

首を捻って悩むフェイトを尻目に、Tは屋上の中心に立ち尽くす。

 

 開放されている屋上は、然程広くは無かった。

子供が乗っている小銭で遊べる遊具の他には、自動販売機とベンチとパン屋と緑で彩られた観葉植物による小さな庭しか無い。

それでも遮る物のない広い空は魅力的で、フェイトが空を見つめると、吸い込まれるような青空が視界にいっぱいになる。

本当に引力があるかのような空で、じっと見つめていたら地に足がつかなくなってしまいそうだ。

なんだか不安な感覚に、フェイトはすぐに視線を屋上へ戻すと、Tは難しい顔をしながら腕組みし、くるくると時計回りに辺りを見回していた。

まさか何時までもこれを続けるつもりじゃあ、とフェイトが顔をひくつかせた、その瞬間である。

 

「あっ!?」

 

 と、Tが叫ぶと同時に空を指さした。

遅れて、フェイトはふわりと屋上に大きな影が差したのに気づき、視線を空へ上げる。

あんぐりと、フェイトは淑女にあるまじき大口を開けてしまった。

何故なら。

 

「あれは……気球!?」

 

 思わず叫ぶフェイトであったが、その物体は厳密に気球というにはフォルムが少し違っていた。

白い布が似たような形を取っているのは確かだが、籠は存在せず、代わりに白い布は風呂敷のように一箇所で結ばれているように見える。

フェイトが思わず望遠魔法を使って見ると、なんとその部分は円形の何かを何重かに巻きつけてあった。

 

「まさか、本当に硝子板なの……?」

「あぁ、自動ドアの心臓さ」

 

 フェイトが今度は自身の正気を疑ってふらりと倒れそうになった、その瞬間である。

白い布が、急激に大きくなり始めた。

まるで空気を送り込まれるゴム風船のように大きくなり、みるみると布は大きさを増していく。

ぽかんとフェイトがそれを見つめていると、Tが叫んだ。

 

「まずい、パンになるぞ!」

「…………へ?」

 

 フェイトが疑問詞を挟み込むが早いか、白い布はすぐに浮力を失いはじめた。

慌ててフェイトが望遠魔法を駆使して見るに、確かに布だったそれは、いつの間にか白いパンになっていたのだ。

混乱しつつも、フェイトは即座にその質量を脳内で計算。

速攻発動した魔法で迎撃はできるものの、気づけば白い布から白いパンに変わるそれを攻撃するなど、今度は何が起こるのか怖くて何もできない。

代わりに、フェイトは咄嗟にTを避難させようと抱きつく。

このままTと共に逃げれば2人は無事で済むが、一般人であろう残り5人はどうなるか分からない。

それでもフェイトが何かできる訳でも無いのだ、この場は逃げるべきであった。

しかし、フェイトの視界の端に、遊具に乗ったまま呆然としている子供が見える。

そしてその子供を庇おうとした母親が。

動揺に揺れるフェイトであったが、その頭を優しくぽん、と撫でて、Tは笑顔で言ってみせた。

 

「大丈夫、対応策はあるさ」

 

 言って、Tは素早くポケットに手を突っ込むとパックを破き、カビたメロンパンを巨大な白いパンに向かって投げつける。

するとどういうことだろうか、カビはメロンパンから白いパンに向かってすぐさま増殖し、白いパンは一瞬でボロボロになったかと思うと、バラバラのカスになっていった。

風に吹かれ消えてゆく白いパンくずに、フェイトはぽかんと口を開けながら佇む他ない。

あまりの事態に力を無くしたフェイトの拘束をやんわりと解き、Tは数歩歩いて手を空中へ差し伸べたかと思うと、パシッと何物かとキャッチした。

 

「よし、ゲット、と」

 

 言いつつTが掲げる円形の硝子板。

そこには自動ドアの心臓部分と言える、チップを埋め込んだ動作部分が含まれており。

あまりにも訳の分からない事態に、フェイトは唖然と立ち尽くす他無いのであった。 

 

 

 

 

 


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