黒いクリアパーツの色合いが凄く好みです。ああいうパーツ欲しい。
幻想的な光を放って、バトルシステムが起動する。
データを入力したGPベースをセットし、ガンプラをカタパルトにセッティング。走査レーザーが機体をスキャンした直後に、ガンプラ達が魂を吹き込まれてカメラアイを輝かせる。
五十嵐大輔の、最初の機体。まだ、明確な名前を与えられていないそれは、便宜上今はこう名乗っている。
ビルドバーニングガンダム改。
「出撃する」
さすがにこの年で機体名を叫ぶのはちょっと恥ずかしい。そっけなく宣告し、大輔は機体を出撃させた。
カタパルトを抜けて、バトルフィールドに降り立つ。
バトルフィールド……仮想空間。どこまでも続く青一色の空に、大地は六角形のプレートがどこまでも並んだ無機質な空間。みれば、空や空気中に数字のコードが漂っている。いかにも、という感じだ。
そして、対面には、敵の姿。
対戦相手である、ビルドシャイニングガンダム。
「…………」
その姿をみて、今更ながら大輔は対戦を申し込んだ事を後悔しはじめていた。なんていうか、やっぱり完成度が違いすぎる。素組に、素人が箱組した肩アーマーのビルドバーニングに対して、あちらはそれなりに経験のある人間が制作、ミキシングビルド、塗装を行った機体だ。GPベースのデータグラフで比較すれば、きっと倍近い戦力差があるだろう。
「それでも……逃げちゃ生けない戦いはある!」
そう。腕が延びる事の意味を、証明しなければならないのだ。
たとえ戦力差が絶望的でも。
「シャギア・フロスト……この就職難な世の中で同じ事いえんのという気持ちはあるが、あんたのストライククロー裁きは本物だった。どうか力をかしてくれ……!」
脳裏に、シャギーな髪型だからシャギア、という俗説のある色男の風貌を思い浮かべて、大輔はアームレイカーをぐっと押し込んだ。
「速攻をかける!」
手に、アームアームズに付属していたガンライフルを構え、射撃を放つ。最低限の銃口の穿孔しか行っていないが、それでもちゃんとプラフスキー粒子が収束され、ビームが発射された。
ちょっと感動する。
が、そんなもの、作り込んだガンプラの相手ではない。ビルドシャイニングは回避すらせず、手甲でバチン、とビームを払って打ち消した。
「くっ!」
サテライト機動をとりつつ、ビームを連続で浴びせかける。それを、じりじりと摺り足でこちらを捕らえながら、両手でしのぐビルドシャイニング。両手の塗装すらはがせていないあたり、戦力差は圧倒的だ。
が、機体の性能差はともかく、大輔はそこそここの手のゲームの経験ならある。下手の横好きでも、長くやっていれば自分なりの戦法というのも確率できるものだ。
「今!」
数発目のビームがはじかれたその瞬間、一定の方向にばかり続けていたサテライト機動を反対側に切り返す。それによって相手の死角に回り込んだ大輔は、ここを逃しては勝機はないと必殺のギミックを機動させた。
左手に装備したシールドを、右腕のジョイントに接続。それを一気に、折り畳んでいたアームを延長してビルドシャイニングにしかけた。
延ばしたシールドから、炎が吹き出す。本来は背中にまとうエフェクトにすぎないそれは、組み替えによって凶悪な炎の牙と化した。
「バーニングドラゴンハング! 食らえ!」
炎の牙が、左右に大きく開いてビルドシャイニングを捕らえようとする。それに対するビルドシャイニングの動きはやや遅い。
秘策その2だ。この機体に搭載された延長アームは、ガンダムヴァサーゴやアルトロンガンダムのそれと比べると遙かに長い。おそらくそれらの機体と対戦経験はあるだろうが、だからこそそれが足かせになる。
「穫った!」
思わぬ金星の予感に快哉をあげる。だが、大輔はやはり初心者であり、それがここでの敗因となった。
ビルドシャイニングの両手が、真っ赤に燃え上がる。そして、そのまま炎の牙を受け止めた。
いや、燃え上がっているのは両手だけではない。今や、ビルドシャイニングの全身が深紅に、そして黄金に輝いている。
スーパーモード。
「っ!? やばい、腕を引いて離脱しなければっ」
あわてて腕を引き戻そうとする。だが、それよりも早く、一息で炎の牙を粉砕したビルドシャイニングが、全速力で踏み込んでくる。オリジナルのビルドバーニングにはない、脚部の大型スラスターがなせる速度だ。
そのまま一気に、ビルドバーニング改の頭に手をかけ、シャイニングフィンガーが輝きを放った。
一瞬の後に、素組の頭部はその圧力と熱に耐えきれず爆発し、直後機体全体が炎を吹いて爆発する。
その炎の中で、ビルドシャイニングが勝ち鬨をあげるように片手を掲げていた。
帰り道。
自転車で、とぼとぼと車道横を走る。
鞄の中には、バラバラになったビルドバーニング改の姿。
作りの甘さがかえって命拾いしたというべきか、機体は圧力に耐えかねて分解したものの破損には至っていなかった。頭部パーツも、割れたヘルメット部分を接着剤でくっつければどうにかなると思われる。
ある意味、不幸中の幸いではあった。
それはそれとして、負けは負けだが。
「負けたのは俺だ……延びる腕が負けたわけじゃないやい……」
ぐちぐちと情けなく呟く。
「ドラゴンハングじゃだめだ……。捕縛するって事は、相手と一定の距離を維持するって事だ。今回みたいにアーム砕かれたら逃げるのが間に合わない。もっと有意義なアームの使い方を考えなければ」
なおも考察は続く。
「それにやはり片手だけだとバランスが悪い。両手延びるようにしちまおう。塗装も全身に行おう。武装はどうする……?」
ブツブツと呟くも、幸い、自転車にのっているのでとがめる相手はいない。もし徒歩だったら、通りすがりの幼児に「ママー、あの人なにか呟いてるよー?」とか言われていただろう。
「バックパックも重要だ。ガンダムブレイカー2じゃないんだし、乗せられるなら乗せないと。こう、大推力でかつ武装を搭載したの。ああ、畜生。店で何か買ってくればよかったな」
そして始まる、大改造。
だったが。
「げげげーーー! サーフェイサーが風でちってむらむらになってる……え、どうすればいいんだこれ。薄いから問題ないか……?」
風の無い日まで待ちました。室内で塗装する時は家族との関係に注意だ!
「ふ、筆塗りしたけどなんか異様に色のノリが悪いぞ……何故だ……?」
後日、店員にサーフェイサーの上からヤスリをかけるという事を教えてもらう。600番でいいぞ!
「ぎゃああ、アンテナのフラグ削ったら削りすぎたぁああ……」
おとなしくプラ板から削り直すか、パテでどうにかしよう!
「……ビームサーベル、どうしよう……? 大型じゃないとだめなんだが」
こればっかりはどうしようもないね!
そんな、ガンプラあるあるハプニングを抱えつつ、その機体は形になった。
アゴとつま先以外のレッド部分をミッドナイトブルー、白をツヤ消しホワイト、ブルーをニュートラルグレーで再塗装。
両肩に、大型アーマーとフレキシブル・アームを搭載。手の甲のストレイクレーザークローはいろいろ考えた上で見送った。
メイン武装として、MGサイズのビームサーベルを流用しているドーベン・ウルフのビームサーベルを装備。
完成度としては、七割前後。
まだ、ビームサーベルのマウンター兼アームのジョイント部分隠しを兼ねる追加装甲が完成していないし、つま先にいたってはどうしても分解できなくてそのままだが、一応。
自分だけの愛機らしい形になってきたビルドバーニングの姿があった。
「さて。形になってきたし、そろそろ名前をあげないとな」
うーん、としばしアゴに手をやって考え込む。
とはいえ、基本的にビルドバーニングなのは変わっていないし、下半身とかそのまんまである。あまり凝った名前を付けるのはなんかだめな気がした。
「そうだなあ。基本的にはバーニングガンダム、な訳だし。後継機はトライバーニングガンダムなんだから……。ふむ。AC的に……コアバーニングガンダムってのは、うん。悪くないね!」
コア、つまり中核。これからの大輔のガンプラビルドにおいて、全ての始まりであり全ての中心。すなわり、CORE。
「あとは、天気のよい日にトップコート吹けばいいんだけど……あれ。あれって汲み上げた状態で吹いていいもんだったっけ……。最低限バラせばいい話か。間接どうしよう? いや、最近はABSレスだし割れたりしないだろうから、大ざっぱに手足胴体頭みたいにわければいいのか……?」
うんうん、と考え込み始める大輔。
そんな主を、ビルドバーニングガンダム改改め、コアバーニングガンダムが、そろそろ工作板の上のプラスチックの削りかす片づけてくれないかな、とでもいいたげに見上げていた。
ちなみに。
ランナーから切り離す事すら忘れていたふくらはぎのスラスターさんが存在を思い出してもらえたのは、ゴミを始末している最中の事だったという。
流石に最低限ミキンシングビルドして下半身ぐらい買えないと、オリ機っぽい名前はなのれないと思うのです。