戦いとは、敗者と勝者を分かつ儀式である。
故に、戦い続けるかぎり、その日はかならずやってくる。
ガンプラバトルが終了し、ステージが元のテーブルへ戻っていく。その上には、屹立する一機のガンプラと、バラバラになって散乱するガンプラがそれぞれ存在していた。
いつもなら、最後まで残っているのは五十嵐のガンプラだった。だが、そうやって”いつも”等と過信するものは、必ずそれをひっくり返される。
敗北者は、コアバーニングガンダム。
彼と五十嵐は、いつものように戦い、そして破れた。
「……」
テーブルの上に散乱したパーツを拾い集める。砕けたアームに、接着部分からはがれてしまった肩アーマー。モナカ構造のビームライフルは、割れて二つになっていた。
初めて、本格的に改造したガンプラ。
初めて、スクラッチしたパーツ。
それらが、バラバラになって散乱している有様は、思いの外応えるものがあった。
「お疲れさま、コアバーニング」
いくつかのパーツは完全に使い物にならない。さすがに全部をスクラッチする訳にもいかないので、棚をあさって該当パーツを回収し、レジへもっていく。
ガンプラバトルでの破損パーツの購入という事で、割引がきいた。思ったよりも出費は少なくすみそうである。
「ありがとうございましたー」
店員の声を背後に、五十嵐は店をでた。
「さて。どうするか」
ガリガリとプラ板をカッターで削りながら、五十嵐は思案する。考えるのは勿論、コアバーニングの強化計画だ。
今回、確かにコアバーニングは敗北した。だが、見たところ操縦者やガンプラの数値的な性能そのものにフォロー不可能なほどの開きがあったとは思えない。どちらかというと、今回の敗北原因は相性の問題だ。
陸戦型であり、三次元機動力に劣るビルドバーニングをベースにしたコアバーニングは、当然その欠点も引き継いでいる。むしろ、ロングアーム等をもっている事で機体バランスが変化しており、宙間戦闘能力は大きく下がっているといってもいい。
そんな状態で、宇宙用機体との三次元機動戦闘に持ち込まれれば、当然こちらが圧倒的に不利だ。今回の敗因はそれである。
「となると、それを強化する必要があるんだが……」
んー、とカッターを置いて考える。問題は、どう強化するかだ。機体そのものにスラスター類を追加する、というのがもっともオーソドックスな強化ではあるが、コアバーニングの場合は違う気がする。元々の素体に、空間戦闘への適正がなさすぎるのだ。
「となると、王道はバックパックの装備かな……。とはいえ、なにを装備したもんだか」
バックパックといっても、ピンからきりまである。特にビルドバーニングガンダムは、近年の統一規格に準じた機体なので、それこそ基本的になんでも装備できるのだ。
例をあげていけば、ビルドブースターやダークマターブースターのような、単体での戦闘力を持ち合わせたもの。パワードアームズパワーダーのような、別ユニットにはならないが拡張性や機能性に富んだもの。アメイジングバインダーのように、バックパックの範疇に収まらない多機能ユニットもある。
まあ、中にはガンダムアシュタロンハーミットクラブのように、バックパックが本体、みたいなのも存在しているが。
だが選ぶなら、やはり機動性に特化したユニットを装備するべきだろう。ビルドバーニングは元々手足そのものが武器……それをフレキシブルアームで振り回すコアバーニングの攻撃力は、極めてたかい。大型ビームサーベルを装備することで、ハンドガンぐらいの適正距離から一薙ぎにしてくるのだから。機動力を強化すれば、その攻撃を当てる機会も増えていくはずだ。
さらに、大型のバックパックならば、本体の機動力の低さぐらい補ってくれるだろう。ガンダム史においても、それそのものはまともな空間機動戦闘力をもたないストライクガンダムがエールストライカーを装備することで突出した機動力を入手した例がある。それにあやかるのは、決して間違いではないはずだ。
方針は決まった。
そして、都合のいいことにその改造方針にぴったしなものが、部屋のすみに積んである。
ライトニングBWSマーク2。
つい最近発売した新製品であり、ユニバーサルスラスターポッドをはじめとした歴代高機動型MSの特徴を詰め込まれた、大型バックパックユニットである。
お値段800円とお高いが、がっつりとギミックを仕込まれたそのユニットは、無限の可能性を秘めている。問題があるといえば、その重量故機体バランスはさらに劣化するかもしれないという事だったが、運用次第でカバーできるだろうと五十嵐は思い直し、ニッパーを手に取った。
そして数日後。
机の上には、あらかた塗装をおえたバックパックの姿があった。基本的には手を加えず、ミッドナイトブルーとニュートラルグレーで本体であるコアバーニングにカラーリングをあわせただけだ。
さらにいえば、パーツの合いを勘違いして、ところどころ塗装が行き渡ってないところがあったりする。さらにいえば、部屋の掃除をおこたっていたせいで気がついたらほこりだかなんだかが塗装面に紛れ込んでしまった。ミッドナイトブルーなのである程度ごまかせるが、じっとみるとかなりみっともない。
さらにいえばトップコートふいてしまったあとで気がついたので、どうしようもない。
やっちまった。
しかし、一応仕上がったのは間違いない。
コアバーニングのバックパックに、拡張パーツをかませてライトニングBWSを背負わせる。
倒れた。
「あ、あれ」
立ち上がらせる。そして倒れる。
それを一通り繰り返して、五十嵐はうなだれた。
「一度組み立ててからバラしたせいで間接強度が落ちてるのか……。どうしようこれ……」
仕方がないので、バックパックを飛行形態にし、コアバーニングもそれっぽい姿勢にして机の上に寝かせることにするのだった。
ちなみに、腕をのばせば重心を調整できてなんとか立たせられる事にきがついたのは数分後の事である。
伸びる腕ってすばらしい。
そしてあとは、GPベースへのデータ入力である。背中にバックパックを装備したので、従来の炎エフェクトを発生させてパワーアップは使えない。
かといって、ふつうに戦っていてはビルドバーニングの持ち味であるプラフスキー粒子の超放出量スキルがもったいない。
幸い、劇中でやっているおかげかビルドバーニングはピンポイントバリアの素養があるので、一定以上の速度がでているときにバリアを形成、クスィーのように空気抵抗……この場合はプラフスキー抵抗? の減衰を行う事にした。
飛行形態は、頭と下半身を反転した状態とする。ここにきて、意味のうすかった脚部増設ブースターが意味をなした。飛行時の、ベクタートノズルがわりに使えそうである。
そんなこんなでGPベースへのデータ入力を終え、ふと五十嵐はおもいついて、機体名にカーソルをあわせた。
「機体名:コアビルドバーニング・アンチェインド」
強化したなら、名前も変えるのがある種の礼儀である。
次回、コアビルドバーニング編最終回かも。
リアルが忙しい上にインフィニティさんの元ネタの人とエンカウントできなくてちょっと困っていますが。