家庭教師ヒットマンREBORN-another 作:金剛石Mk2
イタリア、街角の酒場。煙草の煙をくゆらせ、酒の入ったグラスを傾ける姿があった。一目見れば、およそ一般人は近づこうとは思わない雰囲気を持つ男達だ。
キィ、と入り口のドアが開かれた。
「リボーンか……またオヤジに呼び出されたようだな」
振り返ることなく、慣れた風に男の一人が声をかける。
「人気者はつれーなー。今度はローマか? ベネチアか?」
「
「「!!」」
男の軽口に、投げかけられたリボーンと言うらしい人影は簡潔に答える。途端に男達は息を飲んだ。
「オヤジのヤツ、とうとうハラ決めやがったのか」
音をたて身を乗り出すように男は人影に問いかける。どうやらこの男達の中では、日本は特別な意味合いを持つらしい。
「長い旅になりそうだ」
だが、リボーンは冷静に変わらぬ様子で呟いた。
リボーン、イタリア最大手マフィアグループのボンゴレファミリーのボスであるボンゴレⅨ世が最も信頼する殺し屋。
その姿はくるりとしたモミアゲが特徴的な、スーツに身を包んだ二等身の赤ん坊だった。
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「ヘイ、パス」
「しゃっまかせろ」
ところ変わって、日本。並盛中の体育館でバスケに興じるのは中学一年生達。
パスを受けたのは土屋皆守(つちや ともさね)。あまり運動が得意には見えないがブロックしにかかる敵を俊敏にかわし、そのままシュートを決めた。
試合が終了し、それなり以上に土屋皆守は活躍していた。
「オッス、おつかれー」
そう言って教室に帰る土屋皆守は知らない。
「あいつって、むかつくよな」
「ムダに上手いのがまたな」
そんな風に言われていることを。
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その後は土屋皆守は授業を寝て過ごした。常に、という訳では無い。隣の席に座っているクラスメートと話したりもする。だが、授業をマジメ受けることは無い。
どうせあまり意味は無い。バスケだって学校外でそれこそ昔からやっていたからこその、言ってみれば昔取った杵柄なのだ。
土屋皆守は、そう思っている。それなりなのだから文句は無いと。そんなことを、つまらなそうな顔で思っている。
そうこうしているうちに放課後で、土屋皆守は家路に着く。自宅は二階建てで、あまり大きいとは言えないが少なくとも生活が苦しいといった良く言えば普通、悪く言えば平々凡々没個性的な家だ。
「あら、お帰り」
「ただいま」
我が家の扉を開けたところへかけられた母親の声におざなりに返事をして、いそいそと自室へ向かうために階段へと土屋皆守は足をかけた。
別段、母親が嫌いという訳では無い。無いのだが……。
「とっ君、そういえば今日ね」
「恥ずかしいからその呼び方止めろって言ってるだろッ!」
何度言っても訂正されることのない、思春期である中学一年生の身たる土屋皆守にとって恥ずかしくなる呼び方へとムダだろうと思いながらも文句を言いながら、自室の扉を開いた。
「ちゃおっス、遅かったじゃねーか」
土屋皆守は扉をバタンと、勢いよく音を立てて閉めた。
自分の部屋の中に、スーツを着込んだ二等身の赤ん坊がいた。いや、こっちに話しかけてきたから幼稚園児かもしれない。でもなんでスーツ着込んで俺の部屋にいるんだ?というか帽子にカメレオンがくっついてたぞ、ペットなのか。あんな風にしていいのか?
だんだんと逸れていく思考は唐突に中断された。
目の前の扉がドンっと音を立て開かれ、その前に立っていた土屋皆守へとぶち当たったからだ。
「ギャッ!?」
「客に挨拶の一つもないのか」
無論、そんなことが一人でに起こる訳は無い。顔面を強打し顔を押さえて転がり回る土屋皆守にそう言い放ったスーツを着込んだ二等身の赤ん坊……リボーンがその元凶だった。
「あらどうしたのそんなに転げ回って」
今のドタバタを聞きつけて、母親が一階から顔を出した。
「どうしたのじゃねーよ! 部屋に変な赤ん坊が」
「いや、どうも扉を開けたらたまたまいたみたいで。どうもお騒がせしてすみません」
「いやいや、そんなことございませんよ。こちらこそごめんなさい」
「無視かよっ!!」
抗議空しく、土屋皆守の目の前では赤ん坊(?)と母親が頭を下げあっている。そのことがどうしようもなく腹立たしいのだが、とりあえずは謎の侵入者について知ろうと声をかけることにした土屋皆守。
「なあ、その赤ん坊は一体何なんだ?」
「こら、とっ君。失礼な口聞かないの! 今日からお世話になる家庭教師の人に失礼でしょ!!」
「か、家庭教師ぃー!?」
だが、返ってきた言葉はむしろ状況を把握困難にさせるものだった。訳のわからない言葉に混乱する土屋皆守をよそに言葉は続く。
「とっ君てば、体育はともかく他の教科はダメダメでしょ? あっ、別にいい高校とか大学に行けーってワケじゃないのよ? 楽しく生きていってくれればいいって思ってるけど、このままだとあんまり楽しいことは待ってなさそうじゃない? そんなことを考えてた時にこれがきたのよ」
そう言ってポケットから何か折り畳まれた紙切れを取り出すと、土屋皆守に手渡した。
「えぇと、なになに?『お子様を次世代のニューリーダーに育てます。学年・教科は問わず。リボーン』……めっちゃうさんくせぇー!? ていうか、え?こんなうたい文句で来たのが赤ん坊?なのに部屋にあげたのかよ!?」
ここまで言っても首を傾げて納得した様子のない母親に、もはや腹も立たない土屋皆守はリボーンというらしい赤ん坊(?)に向き合った。
「それで、お前はリボーン?で合ってるのか?」
「そうだ、オレは家庭教師のリボーン。お前が土屋皆守か」
「悪いけど、お前みたいな赤ん坊に教わることなんかないよごほっ!?」
目の前のリボーンに半ばにやけながら断りの言葉を口にしていた土屋皆守に先ほどの扉の強襲とは比べものにならない衝撃が走る。
「この部屋だな、そんじゃーはじめっか」
リボーンの蹴りによってこうなったことと、そんなことを感じさせない言葉を理解したまま土屋皆守の意識は薄くなっていった。
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「いたたた、なんなんだ一体」
土屋皆守が気づいたのはすぐだった。側ではリボーンが鼻ちょうちんを作りながら寝息を立てている。
そんな様子を見て、土屋皆守は当然腹を立てる。顔面に扉をぶつけたばかりか蹴りを入れて意識を飛ばした相手がスヤスヤと寝息を立てているのだ。当たり前の反応である。
だが、しかし。
「おい、起きろよ!!いくら赤ん坊だからって許さないぞ!!」
こうしてつかみかかるのはあまり誉められたことではないだろう。最も、それは相手が赤ん坊だからではない。赤ん坊であるにもかかわらず、他の教科はともかく体育はそれなり以上にできる土屋皆守を蹴りの
一つで気絶させるような相手だからである。
リボーンの鼻ちょうちんが弾けた瞬間、首下に手が伸びた。
「ん?」
瞬間、土屋皆守の視界が急回転。ろくに受け身も取れずに投げ飛ばされた。
「いっだーーっ!! なんなんだこのガキっ!!」
「オレにスキはないぞ 本職は殺し屋だからな」
その言葉と共に、枕にしていたカバンを開き中身を取り出す。そして、手慣れた手つきで組み立てれば、そこに現れたのはライフル銃だった。
「オレの本当の仕事は、お前をマフィアのボスにすることだ」
「はあ!? マフィアのボス?」
これがきっかけで、土屋皆守の元に物騒な生活がやってくるのだった。