家庭教師ヒットマンREBORN-another 作:金剛石Mk2
土屋皆守の眼前には、あからさまな危険物が差し出されていた。それを持つのは、昨日遭遇した殺し屋ビアンキだった。
「私がここにいる理由なんて単純よ、愛のためよ」
「仕事のためだぞ」
「……リボーンは私がいないとだめなのよ」
「家庭教師を一部ビアンキにたのもーと思ってな」
いっそ清々しいほどの食い違いぶりに、土屋は一瞬文句を口にするのを忘れてしまっていた。
「……イヤイヤイヤ!?何言ってんだリボーン!?こいつ完全におれの事殺そうとしてる奴だぞ!?」
最も、鼻に刺さるような刺激臭ですぐに我に返って大きな声でツッコミを入れたが。
「フフフ、そんな事にこだわっているなんてずいぶん器が小さいのね」
「いやそういう問題じゃ……」
「今開発しているポイズンクッキングⅡの殺傷力は2倍!苦しむ間もなくイケルわよ?」
「問題以前の話だこれーー!?」
もはや殺意を隠す気すら感じられないビアンキの言動に、すでに土屋の喉のコンディションはレッドゾーンを振り切ってしまいそうだ。そして、さすが殺し屋とでも言うべきか、そんな風にして出された叫びを耳にしてもビアンキは気にも留めていないようだった。
「私が受け持つのは家庭科と美術よ。今日は家庭科実習をするから、先に台所に行って準備してくるわね」
「何サラッと人の家の台所使ってんの!?ていうか、これ置いてくなよ持って帰ってくれ頼むから!!」
土屋の絶叫むなしく、ビアンキは部屋を出ていった。ムカデやカエル、その他素人である土屋が見ても毒物であると分かる料理を置いて。
「このままじゃ死ぬ!!得体の知れないもの食わされて死ぬ!!リボーン何とかしてくれよ!!」
これまでまるで対岸の火事でも見物していたかのようにツルツルと素麺をすすっていたリボーンに、必死に抗議をする土屋だがリボーンの反応は薄い。
「いや何とか言ってくれよ頼むから!!」
それでも必死に訴えかけようとした時に、呼び鈴の音が響いた。
「ボスー、挨拶にあがりましたよー」
続いて聞こえてきたのは矢島隼人の声だった。
――――こ、こんな時に……そういえば来るって言ってたな。めんどくさい。
「お、おーう。今行く」
内心愚痴をはきながら、土屋は対応のために玄関へと向かった。そこにはスイカを手にした矢島の姿があった。
「あっ、ども。このスイカめちゃくちゃ甘いらしいんで、どうか家族とご一緒にどうぞ」
「あ、おう。悪いな、ただ今ちょっといろいろ立て込んでてな。また今度にしてくれないか?」
そして土屋はどうにか面倒事を増やさないように、矢島を帰らせようとした。
「トラブルっすか。なんならおれが片付けるっすよ」
「いや、何言って……」
急に目つきの険しくなった矢島の言葉に、内心もっとめんどくさくなったと思った土屋だったがふと思いついた。どうせなら何もする気の無いリボーンより、矢島に任せたほうがいいんじゃないかと。
「いや~、そうなんだよ!実はさ……」
言葉を続けようとした矢先に、矢島の手からスイカが零れ落ちた。落下したスイカは、派手な音と共に汁を撒き散らしながら割れる。
「ぎゃあ!?スイカが、ていうか靴が!!おい、どうしたん…だ?」
その事に文句を言おうとした土屋だったが、矢島の顔が青くなっているのに気がつき言葉を詰まらせた。
「ね、姉さん……!?」
「あら、隼人」
「へ?」
その視線の先にはビアンキの姿があった。矢島の口から出た言葉が良く理解できずに思わず固まってしまった土屋の耳に不可思議な音が聞こえた。
――――ぐぎゅるるるるる。
「は、はぐぅ……」
「ちょっ、おいどうした!?」
その発生源――矢島は苦悶の声を上げながら、崩れ落ちた。その様子に土屋は慌てて声をかける。
「ボ、ボス……失礼しますッ!!」
「うわっ!?おい矢島!?」
そのまま勢い良く矢島は外へと飛び出して言った。
「いっつもあーなるのよね。変な子」
「……ていうか、姉さん?姉さんて、ええ?」
それをため息混じりに見送るビアンキと、先ほどの言葉をようやく理解しだした土屋の姿が玄関にあった。
「おいうそだろ!?ビアンキと矢島って姉弟なのかよ!!」
「そーだぞ。腹違いだけどな」
「あぁ、なるほど」
そうしてきちんと理解した瞬間、土屋は叫んでいた。あまりにも顔の造詣がかけ離れている両者の関係に。そしてリボーンの一言で納得していた。