激しく回るスロットマシーン。タキシードを着たモノクマの飾りが眼に刺さる光を発し、回るスロットをステッキでぶっ叩く。その衝撃でスロットは回転速度を落とし、ゆっくりと同じ絵柄が一列に並ぶ。それは、石川の顔だった。『GUILTY』の文字が輝いて、大量のメダルがスロットマシーンから流れ出る。
「うっひょーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーぃ!!!だいせいかーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!」
「・・・」
「今回、“超高校級のバリスタ”アンジェリーナ・フォールデンスさんを殺したのは、なんとアニーさんの大の親友であったはずの“超高校級のコレクター”石川彼方さんだったのでしたあ!!」
モノクマの笑い声だけが裁判場に響く。石川は呆然と白い顔で天井を眺めて、他の奴らは俯いたまま唇を噛みしめてた。けど俺は、妙に気分が良かった。“超高校級”の奴が仕掛けたトリックを、謎を、俺がこの手でぶち破った。この俺が、“超高校級の才能”に勝った。有栖川のおしおきを見た後に感じてた爽快感の正体は、これだったんだ。今までうざったく思ってた“才能”に一矢報いたことが、この上なく快感だったんだ。
「石川・・・なぜお前のような奴が殺しなど・・・それも、アニーをだなんて・・・」
「・・・」
「こんなことするなんて・・・絶対何かの間違いだよ・・・。石川さん、言ってたじゃないか!みんなで生きてここから脱出するって!そのためにみんなの写真だって撮ってたのに・・・あれはなんだったの!?ウソだったってこと!?」
「・・・ウソなんかじゃ・・・・・・ない・・・」
「な、なんでアニーをころしたんだよぉ・・・。やくそくしたじゃねえか・・・」
まるでありとあらゆる気力が抜けたように虚ろな石川、殺人を起こさせないと誓ったにもかかわらずこんなことになったことを悔やむ六浜、石川がアニーを殺した事実を受け容れられない笹戸、今にも泣き出しそうになりながら呟く滝山。この裁判場は、絶望だらけだ。
なぜこんなことになった。それは、石川とアニーにしか分からねえ。だが間違いなく、こいつらの持ってる秘密に関係してるはずだ。
「うぷぷぷぷ♫いいねいいね♫オマエラいい絶望してるね!ぼかぁしあわせだなぁ、こんなどろどろでぐちゃぐちゃになったオマエラの絶望顔を存分に楽しめるなんてさ」
「・・・い、石川さん・・・!どうして・・・!」
「よっぽどバラされたくなかったんだろ。秘密ってやつをよ」
悲しみに暮れてんのか、どいつもこいつもどうしてだなんでだしか言わねえ。けど、こいつがアニーを殺した理由なんか決まってる。こいつの持つ秘密がバラされんのを防ぐため、自分のためにアニーを殺したんだ。
「・・・秘密?」
「モノクマに配られた中のどれかは知らねえが、お前は自分の秘密を守るためにアニーを殺した。そうだろ」
「・・・・・・くっ・・・っふふふ・・・秘密?違うわ・・・あはっ、あははははははっ!」
「?」
「な、なにわらってんだよいしかわ・・・?なんだよ、どうしたんだよ!?」
遂に気でも狂ったか。全く感情のこもらない笑い声で、石川は俺の言葉を否定した。相変わらず肌は白くて、その表情は怯えながらも俺を憐れんでる風だった。
「あんたなんかには分かんないわよ・・・・・・“無能”のあんたにあたしの・・・あたしたちの苦しみなんて分かるわけないでしょォッ!!」
「っ!?」
「あたしは“超高校級のコレクター”なの!!だから希望ヶ峰学園にいられるの!!希望ヶ峰学園にいる間は“超高校級のコレクター”らしく振るまわなきゃならないし、“超高校級のコレクター”であり続ける義務があるの!!あんたみたいに簡単に“才能”を捨てた奴なんかに、この気持ちが分かるわけないでしょうがァッ!!!あたしはッ・・・!!うっ・・・ううぅっ・・・!!」
さっきと同じだ。急に笑い出したと思ったら今度は喉が潰れるくらい怒鳴り散らしてくる。かと思ったらぽろぽろ涙を流し始めて、一気に静かになった。なんだこの情緒不安定っぷり。これが徹底的にイカれた人間の姿なのか?
「あたしは・・・!今までずっと耐えてきたのに・・・!」
「・・・石川。お前、一体何者だ?なぜそこまで肩書きに固執する。それがアニーを殺した理由だとでも言うのか?」
「ううぅ・・・うああああああああああああああああああっ!!!」
「ひいいっ・・・い、石川さん・・・!しっかりしてくださいぃ・・・!!」
すすり泣いてた石川は、大声で泣き喚き始めた。これじゃ話なんてできねえ。別に俺は、こいつがアニーを殺した理由なんてどうでもいい。もうこの事件は終わったんだ。
「ありゃりゃ、壊れちゃったみたいですねえ。じゃあ石川さんに代わって、ボクがお話しましょう!石川さんの秘密と、あの夜何が起きたのかをッ!!」
「なにっ!?」
「おっと、止めたって無駄だよ。たまにはボクだって喋りたいし。何より、オマエラだってこのままじゃ気持ち悪いでしょ〜〜〜!!」
石川の代理としてモノクマが名乗りをあげた。石川の秘密と、事件の夜の出来事を話すと。するとモノクマは、石川の名前が書かれた封筒を取り出し、そこから紙切れを一枚取り出した。あの時多目的ホールで配られたものとそっくりだ。そして後ろのモニターには、モノクマが読み上げたのと同じ言葉が映し出されていく。
「そ、それは!」
「?」
「えーっ、“超高校級のコレクター”石川彼方さんの秘密。『石川さんは薄汚い女!強盗、詐欺、密輸、人身売買!お前はあといくつの罪を犯すつもりだ!』以上!」
「あ・・・あがっ!あぐぁあああああっ!!!」
「な、なにこれ・・・!?これが石川サンの秘密なの・・・!?」
「そのとーーーり!!石川さんの秘密は『罪』!彼女が“超高校級のコレクター”として、“超高校級のコレクター”であるために犯したたくさんの『罪』こそが、彼女の絶対に知られたくない秘密なのでぇす!!」
「馬鹿な・・・!?石川は、肩書きのためにこんなことをしたとでも言うのか!!」
「うぷぷぷ、希望の証とも言える“超高校級”の肩書きのせいで罪を重ねて、挙句に親友まで殺すなんて、サイッコーだよね!希望が生み出した絶望なんて、極上だよね!!」
全てが読み上げられ、石川はまた奇声をあげる。もはやただの嗚咽だ。モノクマは嬉々として、俺たちにその事実を突き付けてくる。石川がアニーを殺した理由、それは、自分の“才能”だった。
確かに俺には理解できねえ。“超高校級”なんて囃し立てられた単なる“才能”のために人を殺すことが理解できるわけねえ。
モノクマはもう一度大きく笑って、事件の夜を語り出した。こいつには全部お見通しってわけだ。
事件のあった夜、最初に声をかけたのはアニーさんの方でした。彼女は気丈に振る舞う石川さんの、心の奥底にある恐怖に気付いていたのでしょう!
「カナタ?元気ないわよ」
「えっ?そ、そんなことないわよ」
「・・・ワタシに隠し事できると思うの?あなた、ちっともコーヒー進んでないじゃない」
「あっ・・・。あ、あはは・・・やっぱアニーには無理か。うん・・・本当のこと言うと、ちょっと怖いな」
「ワタシでよかったら話を聞くわ。だけど、今ここでじゃ話しにくいわよね」
そう言って、アニーさんは晩御飯の後に資料館の個室で、石川さんと会う約束をしました!そこで相談をさせた石川さんに殺されて、自分で自分の墓場を指定したことになるなんて、ミジンコほども思わずに!うっぷぷぷーーーッ!!
そして約束の時間に六番個室に入った二人は、そこでお互いの秘密を打ち明け合うことにしました。愚かにもボクの脅迫から逃れようと、先にバラして恐怖心をなくそうとしたのです!猪口才でずる賢くて卑怯だよね!石川さんはそんな卑怯なことをしたせいで、恐怖心がなくなるどころか余計に怯えてしまいました!
「あ、あ・・・あたし・・・・・・!ううぅっ・・・こんなこと・・・こんなことバラされたら・・・!」
「落ち着いてカナタ。大丈夫よ。よく話してくれたわ」
「あたしは・・・・・・どうしたらいいの・・・?ただ珍しいものが・・・きれいなものが欲しいだけなのに・・・・・・それを手に入れないと、あたしがあたしじゃなくなっちゃう気がして・・・“才能”を失くすのが怖くて・・・!」
「泣かないで、大丈夫よカナタ。そんなことはないわ。何があったって、あなたはあなた。“超高校級のコレクター”、石川彼方じゃない」
「ううっ・・・・・・ひぐっ・・・ううああああっ・・・!」
ぶっちゃけこの辺は見てて飽きてきたよ!石川さんが自分の犯してきた罪と“才能”コンプレックスを告白した辺りはボクの綿の心臓もバックンバックンしたってのに、その後ずっと泣きじゃくる石川さんと慰めるアニーさんの絵面なんだもん!ゴールデンタイムに流しても視聴率2%いかない勢いだよ!
「はぁ・・・はぁ・・・・・・アニー・・・。あなた、どうしてそんなに落ち着いていられるの?アニーの秘密って・・・なんなの・・・?」
「・・・そうね、今度はワタシが話す番ね。ワタシの秘密は・・・」
ティッシュ箱が空になるほど涙を流す石川さんにそう言って、アニーさんはようやく語り始めました。彼女が持つ、『絶対に人には知られたくない事実』をね!こっからがいいとこなんだよ!
「カナタ・・・あなたのその名前は、本当にあなたの名前なのかしら?」
「え?・・・ど、どういうこと・・・・・・?」
「・・・・・・ワタシはね、カナタ、ワタシの本当の名前を知らないの。アンジェリーナ・フォールデンスっていう名前は、生まれ持った名前じゃないの」
「ほ、ほんとうの名前じゃない・・・?どういうこと・・・?アニー・・・あなた何者なの?」
アニーさんの秘密、それは、『彼女の過去』でした!オマエラ、アニーさんの生まれた国がどこか知ってる?アニーさんの実家がどこにあるか知ってる?アニーさんの家族のことって知ってる?知らないよね!だって、それが彼女の秘密なんだからさ!
「ワタシの生まれた国は・・・今はもう存在しない。南の大陸にあった、とってもかわいそうな国」
「消えた?消えたって・・・?」
「侵略よ。それも、たくさんの国からの。ワタシの生まれた国を占有しようと、周りの国々が奪い合った。土地も、家も、食べ物も、人も・・・・・・何もかもね。そこにいた人たちはみんな、その先は二つしかなかった」
「・・・」
「侵略してきた国に奴隷として売られるか。苦しみの未来を捨てて殺されるか。その時はまだ自分の指も数えられない年だったワタシは、他の人たちと一緒に遠い国に売られたらしいわ」
「じ、じゃあアニーの秘密って・・・」
「・・・奴隷だった過去。もしそんなことが知られたら、ワタシは希望ヶ峰学園には・・・いえ、この地球から居場所なんてなくなるわね。あの場所以外には、だけど」
「そんな・・・学園はそのこと知ってんの!?知ってて何もしないの!?」
「知らないんじゃないかしら。だってオーソリティーが希望ヶ峰学園が一番大事するものだもの。元とはいえ奴隷なんかの入学なんて、認めてくれるはずがないわ」
「?」
アニーさんの秘密は絶望的な過去!奴隷として売られて自分の名前さえ分からないなんて、なかなか絶望的な人生じゃない?自分が何者なのか、なんで虐げられるのかなんて考えることすら許されず、ただ他人のためにひたすら自分の体を、命をすり減らす!そんな絶望を味わってるなんて、アニーさんって絶望的な星の下に生まれてきたんだね!
さて、お互いの秘密を告白した石川さんとアニーさん、だけどアニーさんの秘密はそれだけで終わるような軽いものじゃありませんでした。だからボク的には石川さんよりアニーさんの方がもっと動揺するかと思ったんだけど、あんにゃろずっと落ち着いてやがったんだよね。まあ結局、その余裕のせいでこんなことにもなった節はあるけどさ!
「続きになるんだけどね、ワタシは奴隷として遠い国に売られた後、そこの国のお金持ちに買われて、その人のコーヒー農園でずっと働かされてた。朝も昼も夜も・・・ろくに着るものもなくて、みんなタオルを巻いて働いてたわ」
「コーヒー農園・・・?もしかして・・・」
「そう、ワタシのバリスタとしての“才能”は、きっとそこで生まれたんだと思うわ。あの時は見張りの人のムチが怖くて一生懸命だったけれど、コーヒー豆と触れ合う内に少しずつフレーバーやスケール、豆のバラエティの違いが分かるようになってきたの」
うぷぷぷ!故郷を侵略される絶望、理不尽に家族を失う絶望、奴隷という絶望・・・そんな絶望の中で、アニーさんは“才能”という希望を手に入れたのでした!なんということでしょう!
「その時はバリスタなんてもの知ることもなかったけれど、捨てられたコーヒー豆を拾ってきて、自分でブレンドコーヒーを淹れることもあったわ。そうしてたら、そこのオーナーに目を付けられたの」
「オーナー?農園主のこと?」
「そうね。彼は言ったわ、『お前の、いや君の“才能”は素晴らしい!今まで君を奴隷として働かせていた自分は、橋のかかった河の深さを測る愚か者だった!』って。彼はワタシの“才能”をとても気に入って、きれいな服と一日三回の食事をくれて、それに学校にも行かせてくれたわ」
「・・・アニー、あなた、なんでそこまでのことがあって、そんなに平気なの?」
「うん?」
「今だってそうよ。そんな秘密がバラされようとしてるのに、どうして落ち着いていられるの?あたしは・・・今この瞬間だって怖いわ」
互いに秘密を告白した二人、だけどその後の二人は正反対。まだ涙が止まってない上に、怯えて小さくなってる石川さん。いつもと変わらず悠然として、むしろ石川さんを慰めるアニーさん。狭い閲覧用個室の中で向き合う二人が同じ立場にあるとは、とてもじゃないけど考えられなかったね。
「今にだってあたしは・・・何かが欲しくなっちゃうかも知れない。そしたらあたしはそれを自分の物にしないと・・・・・・自分が自分じゃなくなっちゃうような気がして・・・怖くて怖くて・・・!そうやって何度も・・・何度も・・・・・・!」
「・・・カナタ、いい?後悔しても、過去の事実は変わらないわ。ワタシも奴隷だった頃がなくせるものならなくしたい・・・だけど、そうしたらワタシはきっとここにいない。カナタだって、その秘密はイヤなことばかりじゃないでしょ?」
「・・・!怖いことも苦しいことも・・・本当に嫌なことだってたくさんあったよ・・・・・・だけど・・・だ、だけど・・・・・・ううっ・・・」
「なあに?」
「そうやって手に入れた物なのに・・・いっぱい傷ついたはずなのに・・・・・・!集めるのが楽しくて・・・コレクションを見るのが嬉しくて・・・・・・・・・あたし・・・コレクターじゃなくなるのなんて絶対イヤなのぉ・・・・・・!」
「そうでしょ?その気持ちまで消してしまったら、それこそカナタはカナタじゃなくなっちゃうんじゃない?」
「あうぅ・・・」
この時はさすがに、くどいよ!って言っちゃったね。“才能”に縛られ振り回される絶望と絶望から生まれた“才能”の絡み合いは見てて楽しいけど、石川さん泣きすぎだよ!なんなの!?
「辛い時は後ろを振り返りたくなるものよ。だけど、後ろにもっと辛いことがあったら余計に悲しくなるわ。そういう時は、前を向くしかないの。今よりきっとステキな未来があるって、信じるしかないの。いい?」
「ぐすっ・・・・・・うん・・・」
「いい子ね。あなたはきっと、この絶望的な今を切り抜けられる。ワタシは知ってるわ。カナタはもっと強くて、ステキな子だって」
「・・・アニーの方がよっぽど強いわ。どうしてそんなに前向きなの・・・?分かってたって・・・なかなかできないわよ・・・」
ホント、なんでアニーさんが絶望に染まらなかったのか不思議でしょうがないよ。っていうか希望ヶ峰学園に入らなくても絶望してないのおかしいけどさ!
「簡単なことよ。ワタシには、約束した夢があるの。ワタシの大切な人・・・オーナーとのね」
「えっ・・・!?ア、アニーの大切な人?それって・・・その指輪の贈り主よね?え?オーナー?」
「そうよ。ワタシの“才能”を認めて、育ててくれた人、フォールデンスさん。これはね、ワタシが希望ヶ峰学園に入学するために日本に行く時にくれたの。ワタシが世界一のバリスタになって、自分のコーヒーショップを開くっていう夢が叶うようにって。ワタシのふるさとで採れた宝石を贈ってくれたの」
「ふるさと・・・?」
ケーッ!自分を奴隷としてこき使ってたオーナーでさえ、“才能”を見つけてくれた恩人だとか言う始末!ホントどこまでお人好しなんだっつー話だよね!その辺の感情とか一切ないんじゃないの!?
だけど・・・うぷぷ♫この話はこれじゃまだ終わらないんだよね。むしろこっからが本番!この時すでに石川さんは、もう後戻りできないところまで来てたんだよ。そして最後の一歩を、彼女は自分から踏み出してしまったのでした!
「アニー、あなたの生まれた国って・・・」
「今はもうない、昔の国。その名前は・・・」
「っ!!」
ねえねえどんな気持ち?聞かなきゃまだ留まれたかも知れないのに、知っちゃったからこそ戻れなくなってどんな気持ち?見るからに戦慄が走ったって顔の石川さんは、どんな気持ちだったの?まあ何にしても一緒か!
その気持ちは石川さんが何度も味わって、恐れて、その度に渇望した気持ち。そしてそれは今までにないくらい石川さんに強く突きつけられたんだよ!
「・・・・・・そんな・・・!」
「・・・?カナタ?どうしたの、具合でも悪い?」
「どうしよう、アニー・・・!!あたし・・・・・・そ、その指輪が欲しい・・・!!」
「えっ?」
「あなたの指輪・・・その宝石、欲しく・・・なっちゃった・・・・・・!」
プププーーーッ!!まるで子供だね!人の物が欲しくなっていてもたってもいられなくなるだなんてさ!しかも今までの話を聞いた上で欲しくてたまらないだなんて、わがままを通り越してスーパージコチューだよ!電気ビリビリネズミかよっての!
ただ欲しいだけなのに顔を青くして震えて、だけど視線はしっかり指輪を捉えてるんだよ。アニーさんの意思なんてカンケーなく、とにかく指輪、つうか宝石が欲しいだけなんだね!親友(笑)の大事なものなのにさ!
「お、落ち着いてカナタ。ダメよ。その気持ちはあなたの大切な気持ちだけど、それに負けちゃダメ。コントロールして、今はおさえて」
「欲しい・・・欲しいよアニー・・・!コレクションにしたい・・・!磨いて飾ってあたしの物に・・・お願い・・・!お願い!!」
「聞いてカナタ!欲しくても耐えるの!これ一つ手に入れなくても、カナタはカナタのまま!誰もあなたを責めたりしないわ!だから落ち着いて!」
「はあ・・・はあ・・・!アニー・・・・・・お願いだから・・・!これで・・・最後にするから・・・!」
発作を起こしてあっさり土下座する石川さんと、慌てて石川さんを宥めるアニーさん。こんな土下座に価値なんかあるわけないよね!土下座は偉い人がやるから意味があるのに、こんな薄汚れた女がやるんじゃ、友達と喧嘩して先生に無理矢理握手させられた小学生の『ごめんね』より意味ないよ!
「・・・ごめんなさい」
「っ!」
「いくらカナタのお願いでも、これはあげられないわ。これはワタシとオーナーの約束の指輪・・・ワタシにとっては何にも替えがたいものなの」
「・・・・・・命にも?」
這いつくばったまま言った石川さんの言葉は、たぶん聞こえてなかったね。聞こえてたらまた違った結末だったかも知れないのに、アニーさんのツキもここで尽きたみたいだね!
「ダイニングに行きましょう。コーヒーを飲めば落ち着くわ」
「・・・ごめん。・・・ごめんなさい、アニー。そんなの無理よね」
部屋を出ようとするアニーさんに、石川さんはそう言いました。扉を向いて石川さんに背を向けたまま、アニーさんは悲しげに言葉を返します。
「・・・そうね。・・・とても残念だけど」
「そう・・・・・・・・・
・・・・・・あたしも残念だわ」
次の瞬間、アニーさんの首に細くて堅い感触が走ったのです。
「うーっぷぷぷぷぷぷ!!これが事件の直前に起きたこと!!そして石川さんがアニーさんを殺した動機だよ!!」
「ううっ・・・ああああああああああああああああああああっ!!!」
モノクマの笑い声、石川の叫び。それ以外は静寂だけだ。モノクマの口から語られた事件の全容は、俺が・・・たぶん俺たちの想像を超えてた。
思ってたよりずっと、残酷で、痛ましくて、悲しくて、そして救いようがなかった。結局、石川がアニーを殺した動機は、宝石欲しさ、単なる物欲のためだった。
「うぷぷぷぷ!!これってチョー絶望的だよね!!希望の象徴のはずの“才能”に溺れて人を殺すなんて、サイッコーに絶望的で大笑いだよね!!」
「たかが“才能”ごときでそこまで・・・」
「たかが“才能”ごとき・・・!?あんたに何が分かるのよッ!!」
「っ!」
「あたしは“超高校級のコレクター”!!それ以上でもそれ以下でもない!!だから希望ヶ峰に入れたの!!この肩書きがある以上、あたしはコレクターとして生きなきゃいけない!!中途半端な蒐集なんか認められないし少しでも欲しいと思ったら絶対に手に入れなきゃいけないのよッ!!」
「だからって犯罪までしたのかよ・・・。そこまでしなくても」
「そんな妥協は許さない!!妥協したらあたしは・・・“超高校級"じゃなくなっちゃう・・・!」
何が分かるって?何も分からねえよ。こいつの“才能”に対するコンプレックスも、“超高校級”の肩書きの重さも、そのために人を殺す気持ちなんか・・・分かるわけねえだろうが。
けど俺以外の奴らはみんな、古部来や望月でさえ、浮かねえ顔をして俯いてた。これが“才能”を持つ奴らの正体ってわけだ。どれだけ外見を取り繕っても、結局はテメエの“才能”ありき。そのためだったら人も殺しかねねえ。
「ホント、なにが希望の象徴だよって感じ。“超高校級”なんて持て囃すから、思春期のオマエラは調子に乗って、プライドばっかりデカくなってさ。そのせいでこんなことになるんだから、虚しいったらないよね」
「ふざけるなッ!!全てお前のせいじゃないかッ!!」
「っ!」
「石川を追い込んだのはお前だ!!お前が我々を『秘密』なんぞで強請ったからこんなことになったのだ!!お前があんなことをしなければ誰も死ぬことになどならなかった!!お前のせいだ!!」
「おー怖い怖い。優等生のむつ浜さんってば、ボクに手をあげたらどうなるか忘れたわけじゃないよね?」
「ぐっ・・・!!ぐうううううううっ!!!貴様ぁ・・・!!」
「っていうかさ、その『秘密』だって、オマエラの勘違いだって風には考えなかったの?」
「はっ?」
「えっ・・・な、なにそれ?勘違いって・・・意味が分かんないんだけど・・・」
呆れた風に言うモノクマに、六浜は我慢の限界とばかりに突っ込んで行った。顔を真っ赤にして玉座に詰め寄り、肘掛けを強く握って怒鳴り散らす。だがモノクマはわざとらしく怖がる真似だけして、片足で小躍りして六浜を侮辱する。
そして思い出したようにモノクマが言った台詞は、そこにいた俺たちを混乱させるのに十分、意味深でわけがわからなかった。
「そのままの意味だよ?あれ、もしかして気付かなかった?ボクがオマエラに、敢えて『誰かの秘密』を握らせた意味が!」
「なんだと・・・!?」
「・・・誰一人として、封筒に書かれた『自分の秘密』が何かを把握していない状況か」
「うぷぷぷ!そうだよ!」
「ッ!まさか貴様・・・!」
なんだ?モノクマは何を言ってんだ?誰かの秘密を握らせた理由なんて、疑心暗鬼を増幅させる以外の意味があんのか?
望月が冷静にそう言うと、六浜は何かを察したのか、驚きと怒りの混ざった表情でモノクマに顔を寄せた。それを嘲笑うモノクマが、淡々と事実を告げる。
「ボクは、封筒に入ってた秘密がオマエラのものだなんて、一言も言ってないよ!」
「・・・・・・え?」
「あれは、オマエラ以外のどっかの誰かさんの秘密。誰でも知られたくない秘密の一つや二つ持ってるからねえ。他人の秘密を見せられたオマエラが、オマエラ自身の最悪の秘密を知られたと勝手に思い込んでただけだよ!まったくもう、想像力ばっかり逞しくなっちゃって、そんなんだから現実が見えずに痛い目をみることになるんだよ!」
それってつまり、俺たちが見たのは俺たちの誰のものでもない秘密だったってことか?勝手にあれがここにいる誰かのだと思い込んで、勝手に自分の秘密を知られたと思い込んで、勝手に追い込まれてたってことなのか?
「け、けどあれは・・・!?飯出クンの秘密は・・・!?」
「飯出くん?もうとっくの昔に死んじゃった人の話なんかして何になるの?ってゆうか、確かに飯出くんの秘密は読んだけど、他のもオマエラのだなんて言ってないし」
「だだ、だ!だましたなあああああああああああああああっ!!!」
「じ、じゃああそこに書かれてたのは、わしらに全く無関係のことじゃったのか!!?」
「うぷぷぷぷ!思い込みって怖いよね!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!!」
やられた。素直にそう思った。飯出の封筒から飯出の秘密が書かれた紙が出てきた時点で・・・いや、マジで書いてあったのかさえ怪しい・・・モノクマは二重に俺たちを騙してた。封筒に書かれた名前と中の秘密の持ち主が違うということ、そしてその持ち主が俺たちじゃないこと。それに気付かず俺たちは、知られてもない秘密を知られたと思って、互いを疑ってた。こんな馬鹿なことねえ。
あんなアホ面のぬいぐるみに騙されたってだけでクソ腹立つのに、大笑いするそいつが余計にムカつく。今すぐあいつをぶっ殺してやりたい。そんな想いを邪魔するように、悲痛な声が飛んできた。
「な、なによそれ・・・!?秘密が・・・・・・あ、あたしたちのじゃないって・・・!?それじゃああたしとアニーがしたことは!?お互いの秘密を打ち明けたのはなんだったの!?アニーはあたしが悩んでたから・・・!」
「なにって、一時の気の迷いでついついやっちゃったんでしょ?テスト前に部屋の掃除して気を紛らわすアレみたいなもんじゃない?」
「そんな・・・!?」
「い・・・いいッ!いい加減にしろおおおおおおおおおおおあおッ!!!」
「待てッ!!」
びっ、と残響が耳に飛び込んだ。堪忍袋の尾が切れた六浜がモノクマに掴みかかろうとしたのを、強く鋭い声が止めた。声の主は、玉座にゆっくり歩いて行く。からんころんと軽い下駄の音が、なぜか威風を感じさせる。
「およ?」
「貴様が冷静さを失ってどうする。奴は嘘を言っていない、騙される方が悪い」
「古部来・・・!」
「お、おいおい!騙される方がってマジで言ってんのか!?」
「よく分かってるね古部来くん!ボクがインチキ言ってたらボクも悪いけど、誠実さは墨汁付きのボクは本当のことしか」
「!」
「えっ!?うわーーーっ!!」
「ッ!!?」
六浜とモノクマの間に割って入ったのは、いつもの顰めっ面をしてる古部来だ。だけどいつもより、表情が険しい気がする。
怒りと悔しさで冷静さをなくした六浜に厳しい言葉を放った。騙される方が悪いなんて、本気とは思えねえ。だがその発言に笑いながら喋るモノクマを遮るように、古部来は激しく玉座を蹴った。衝撃でモノクマが地面に落ちる。
「なっ・・・!?古部来!!何を・・・!!」
「造りものの卑しい獣風情が調子に乗るなよ・・・!」
「ひえええええええっ!?ここここ、ここ、こっ!古部来さん何してはるんですかああああああああっ!!?」
馬鹿な、俺はその言葉すら出てこなかった。古部来は玉座を蹴ってモノクマを転がり落とし、仰向けに倒れたモノクマのすぐ横の床を踏みつけた。その角度からどう見えたのか分からねえが、横から見てる俺でさえ、その表情がヤベエもんだと分かる。
殺意と怒りと威圧感の塊、まさに鬼の形相だ。
「貴様の人心を惑わす力は認めてやる。だが俺たちの“才能”を侮辱し、『秘密』で強請ったやり方が気に食わん」
「はわわわぁ・・・!こ、こんなの!許さないぞぉ!ボクは施設長なんだぞぅ!こんなの施設長であるボクへの暴力だ!規則違反だ!」
「『施設長ことモノクマへの暴力を禁止する』。俺は椅子と床に足をついたに過ぎん。いつ暴力を振るった」
「はっ!こ、この若ハゲがぁ・・・!!」
一言一言が重い。ドスを利かせたとか、そんなレベルじゃねえ。関係ないとこで見てる俺でさえ、その声色に背筋が凍った。マジギレした古部来はこうなんのか。そんな中でもモノクマを黙らせるなんて、ヤバすぎる。
「うぐぬぬぬっ!へんっ!」
「うわあっ!」
「このお!だったらいいよ!『施設長ことモノクマを脅すことを禁止する』って付け足しとくから!覚えてろよ!」
「・・・」
悔しげに歯を食いしばるモノクマは、小生意気な掛け声でその場から跳びあがり、また玉座に座った。そして新しい規則を言うと、電子生徒手帳がピロリン、と鳴った。もう同じ手は通用しないってわけだ。
「あーあ、せっかくいい気分だったのに台無しだよ!もう変な感じになっちゃったから、ちゃっちゃと終わらせてかーえろ!」
「っ!」
「お、終わらせるだと!ふざけるな!まだ話は・・・」
「ダメダメ!そうやって引き延ばしてもいずれ時はやってくるんだよ。これ以上はボクの身が危ないからね!」
「ちょ、ちょちょ・・・ちょっと待って!待って待って!待って!!」
古部来がモノクマの機嫌を損ねたのか、普通にモノクマが飽きたのか、どちらにせよ、もうタイムリミットだ。どこからともなくモノクマはまた、ピコピコハンマーを取り出した。石川はそれを真っ青な顔をして止める。
「あ、あたしはアニーを殺す気なんてなかったの!!じ、事故なの!!」
「事故?私の聞く限り、そんな言葉で済ませられるような真相ではありませんでしたが?」
「そそ、そうじゃなくて・・・!!本当はあたしは人殺しなんてするつもりはなくて・・・・・・あたしは・・・!!」
「もうよしなよ、石川サン。これ以上は辛いだけだよ・・・もうこれ以上、“超高校級のコレクター”のキミが堕ちていくのは見たくないよ・・・」
「うぷぷぷぷ!ほんじゃま、いってみましょーか!今回は、“超高校級のコレクター”石川彼方さんのために、スペシャルな!おしおきを!用意しました!」
「待って・・・イヤ!!お願いやめて!!あたしは・・・あたしはまだ・・・!!」
石川の叫びをモノクマは完全に無視して進める。せり上がってきたボタンが何のボタンかは、もう既に全員が知っている。石川はそれを見て小さく悲鳴をあげて、より一層顔を青くして叫ぶ。
「それでは、張り切っていきましょう!」
「や、やめて!!やめてやめてやめて!!イヤだ!!死にたくない!!あたしはまだ死にたくない!!お願いだから!!やめて!!」
涙と冷や汗でぐちゃぐちゃになった顔で、血の気の引いた肌色が玉座の前の床に這いつくばる。その姿に一瞥もくれずに高笑いするモノクマに、石川は必死に命乞いをする。
情けねえ、みっともねえ、この上なく哀れで見苦しい。これが“超高校級”と呼ばれた奴の末路なのか。だが一番残酷なのは、こんな姿を晒したところで全く揺るがないこいつの悪意だ。振り上げたピコピコハンマーが寸分違わず標的のど真ん中を捉えた。
「おしおきターーーーーーーーーーーーーーーーーーイムッ!!」
ぴこっ、と鳴った音は、これから起きる出来事に反して軽い。その音は俺たちにとって、絶望以外のなにものでもなかった。その拍子に壁から飛び出してきた鎖に五体を掴まれた石川の体が、抵抗することすらできないまま軽々と引きずられていく。
「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!」
耳を劈く高い悲鳴が、ねっとりと鼓膜に貼り付いたような気がした。石川の遺した残響を断ち切るように壁が封鎖されたが、それだけじゃ消えない気持ち悪さが裁判場にはっきり残った。そして消えていった石川の姿は、ドデカいモニターに映された。
【GAME OVER】
イシカワさんがクロにきまりました。
おしおきをかいしします。
モニターに映し出されたのは、恐怖と絶望に染まった表情の石川彼方。連れて行かれたのは、汚れた薄暗い小劇場。小さな椅子に縛り付けられた石川の目の前に聳えるスクリーンはノイズが混ざりながら少しずつ鮮明になり、その横ではタキシードを着たモノクマが吊り上がった口元から牙を覗かせている。スクリーンに映し出された仄かな影は、やがてはっきりと読める文字になっていた。
《転落人生コレクション》
モノクマが手元のリモコンのボタンを押すと、ぱっとスクリーンの画面が切り替わる。映し出されたものは、石川にとって忘れるはずもない物、今でもはっきりと覚えている。それは、石川が初めてコレクションとして手に入れた、おまけ付きお菓子のシールだ。
次の場面に切り替わる。きれいに整理して並べられた世界各国の硬貨が、硝子のプレートの向こう側で光沢を放つ。そしてまた場面が変わる。希望ヶ峰学園から届いた入学通知の前で、石川が晴れやかな笑顔を見せている。
「・・・?」
「うぷぷぷぷ♫」
初めて希望ヶ峰学園の土を踏んだローファー。学園でできた友達と交換したヘアゴム。映し出されるものはどれも、“超高校級のコレクター”石川彼方が歩んできた人生を表す品々だ。それを見る現在の石川の表情は固く、意味不明の現状に怯えている。
モノクマが不敵に笑うと、場面は再び切り替わる。そこに映る品に石川の目が見開かれた。忘れもしない。石川が初めて、犯罪に手を染めて手に入れた、ある文豪の使っていたという万年筆だ。そしてまた変わる。次に映し出されたのは、偽物のアイドルのサインを使って友達を騙しているところだ。更に切り替わり、次に映ったのは石川が金を得るために自分自身を傷付けているところ。いずれもさっきとは打って変わって、石川にとっては思い出したくもない醜悪な過去。
「イ・・・イヤ・・・・・・ッ!やめて!見たくない!!こんなの見たくない!!やめてッ!!!」
スクリーン上で目まぐるしく変わっていく場面と品物。そこに映るものは全て石川の人生の汚点。悲痛な声で叫んでも映像は止まらずどんどんスクリーンを切り替えていく。冷たい手錠、割れたレコード、血まみれのハンカチ、そしてコードが捻れたヘッドフォン。その映像が心に深く突き刺さり、石川は苦しげに目を瞑った。
次の瞬間、スクリーンがめきめきと音を立てて奥に倒れ始め、小さな暗い劇場の前に雄大な自然が現れる。目の前には湖が広がり、石川の座る椅子に巻き付く鎖は湖の中に繋がっている。
「ひっ・・・いぎっ!!?」
鎖が猛烈な力で石川の体を椅子ごと引きずる。抵抗する間もなく、石川は飛沫とともに湖に消えた。
「・・・・・・っ!!」
泥と藻で濁った水の中で開いた石川の眼に、不気味な塊の姿が飛び込んで来る。それは、さっきまでスクリーンに映し出されていた品々の塊だ。その塊は石川の体に巻き付いた鎖を引いて、ずぶずぶと黒い深みに沈んでいく。藻掻くことも、悲鳴をあげることもできないまま、石川は冷たい暗黒に消えていく。
誰もいなくなった劇場で、映写機の止まる音が全ての上映の終わりを告げた。モノクマが映写機から取り外したテープのタイトルは『最期』。それが、“超高校級のコレクター”石川彼方の人生をかけたコレクションの、最後の一品となるのだった。
「うぷぷぷぷぷぷぷ!!ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!あんなのが希望だなんてちゃんちゃら可笑しくてヘソでお風呂が沸かせちゃうよね!!」
「い、いしかわさん・・・!!いしかわさんがああぁっ・・・!!」
「惨すぎる・・・なぜ彼女がここまでされなければならないのですか・・・!!」
「そうだ・・・全てお前のせいではないか!お前が訳もなく我々を監禁して!!動機などと言って焚きつけて殺人を起こさせ!!我々自身に犯人を探させ!!一体どういうつもりだ!!いい加減にしろ!!」
「あーあーもう、そんなの聞き飽きたよ。こちとらもう、興奮した思春期のがきんちょの相手なんかうんざりなの。それにボクは動機を与えたけど、実際にアニーさんを殺しちゃった石川さんが悪いんでしょ?どんな理由があっても、罪は罪なの」
モノクマは腹を抱えて高笑いする。石川は・・・石川も死んだ。コレクションという自分の“才能”を、過去の罪という絶望に侵されながら。あいつにとって最悪な死に方なことは、誰の目にも明らかだ。
鳥木や六浜はモノクマの仕打ちを非難するが、俺は正直石川には同情できない。あいつがアニーを殺したのは、完全な自分勝手な理由。指輪ごときのためにアニーを殺して、その上開き直って“才能”のためとか言い出す始末だ。俺が最も嫌いな人種、“才能”を鼻にかけて調子乗った奴らの典型だった。
「ま、でもよかったんじゃないの?希望ヶ峰学園にとっても、特に厄介な問題児が一度にいなくなったんだからさ」
「ふざけるなッ!!!なにが問題児だ!!!お前がこんなことをしなければ誰一人死ぬ必要はなかった!!!お前のせいだ!!!希望ヶ峰学園にいればこんなことには」
「なんでそんなことが言えるのかなぁ?」
「はっ?」
喚き散らす六浜の怒号が、冷たいモノクマの一言で止まった。張り合うほどの大声でもなかったのに、なぜかその声は響く怒鳴りの隙間をすり抜けて俺たちの耳に入り込んできた。
「希望ヶ峰学園にいたままだったら、本当に誰も死なずに済んだのかなぁ?」
「なにを言って・・・あ、当たり前だ!!」
「うぷぷぷぷ♫まあそう思ってればいいよ。だけどオマエラはきっと最後には考えを改めることになるよ!『ああ、希望ヶ峰学園はなんてひどいとこだったんだ!』って思うだろうさ!」
「馬鹿な・・・」
「そんじゃま、ボクはもう帰るからね。めんどくさいから一回しかエレベーターは動かさないよ!乗り遅れないように!」
指もない小さな手を一振りして、モノクマは玉座の裏に消えた。第二の殺人、石川の死、そしてモノクマの捨て台詞。どれも俺にとってはどうでもいい話だ。事件は全て石川の自分勝手、モノクマの言葉が本当だとしても、俺はハナから学園に戻る気なんてねえ。死ななきゃいい。俺はエレベーターに向かった。
一度しか動かさないとモノクマが言ったせいか、その後すぐにほとんどの奴がエレベーターに乗り込んだ。がらがらという鎖の音が、来た時よりも重く感じた。
『コロシアイ合宿生活』
生き残り人数:残り12人
清水翔 六浜童琉 晴柳院命 明尾奈美
望月藍 【石川彼方】 曽根崎弥一郎 笹戸優真
【有栖川薔薇】 穂谷円加 【飯出条治】 古部来竜馬
屋良井照矢 鳥木平助 滝山大王 【アンジェリーナ】
第二章終了です。おしおきもっと短くすればよかったかな。っていうかおしおきの後にもう少し色々書きたかったんですけど、第三章に回そうと思います。