ダンガンロンパQQ   作:じゃん@論破

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第六章『一寸先を照らす灯火』
捜査編1


 「うぷぷぷぷ!そろそろ決着を付けようじゃないの!ボクとオマエラ、どっちの希望と絶望が勝ってるか、比べようってことだよ!」

 

 冷たい学級裁判場に、モノクマの笑い声がこだまする。こいつの言ってることの意味が分からないのは今更だ。だが、今度はそれに輪をかけて分からねえ。

 

 「オマエラには、この合宿場のすべての謎を解いてもらうよ!そして全ての真実を暴くことができたらオマエラの勝ち!全員を希望ヶ峰学園に返してやるよ!ただし当てられなかったら、オマエラ全員すぐにおしおきだからね!」

 「はっ!?ちょ、ちょっと待て!なんだそれ!急に何言ってやがる!なんでテメエの気紛れなんかで命かけなきゃいけねえんだ!」

 「いやいや、今までだってそうだったでしょ?オマエラの誰かが勝手にやった殺人で、オマエラが命をかけて学級裁判に挑む。結果、全勝だったけどね!だから今度はボクがオマエラに挑むんだよ!オマエラがボクに挑むんだよ!うぷぷぷぷぷ!!」

 「なんで今更になってそんなこと言い出すの?」

 「クライマックスは突然に・・・いやいや、ボクもただ従ってるだけさ。希望と絶望の戦いは、常に決められたレールを走るように同じシナリオを辿ってるんだ。人数も減ってきたし、ちょうどいいタイミングだと思うよ!」

 

 よく喋るようになったと思ったが、まだいまいち掴めない。まるでモノクマは、自分以外の誰かの意思でこうしているとでも言うようだ。人数が減っただけの理由で言いだしたわけじゃない、もっと大きな、別の理由があるような感じだ。

 

 「とにかく、今からボクはこの合宿場に、オマエラが最後の学級裁判に挑むための資料をバラ撒いてくるよ!ボクはいつでもフェアだからね!真実のヒントくらいはくれてやるよ!」

 

 そう言ってまた唐突に、モノクマは消えた。理不尽過ぎる真実に打ちのめされてる時間さえ、俺たちには与えられねえ。すぐにまた命懸けの学級裁判に臨むことを強いられる。それも、今度はモノクマの正体、このコロシアイの黒幕を当てろときた。

 裁判場に取り残された俺たちは、まだ整理のつかない頭の中を必死に整えようとしていた。

 

 「どういうことだよ」

 「私が分かるとでもお思いですか?またいつもの気紛れではありませんこと?」

 「気紛れで命までかけなきゃならねえとはな。それも今更だが・・・なんで今になってあいつの正体なんて当てなきゃならねえんだ」

 「これ以上誰かが殺されては学級裁判のルールが成り立たなくなるので先手を打ったのでは?あるいは時間切れですか?」

 「時間切れだと?なんだそりゃ」

 「何度も同じことを言わせないでください。私に分かるわけがないでしょう」

 「テメエが言ったんだろ!」

 「理由などなんでも構わない」

 

 できるのは不毛な議論ばかり。奴がいきなりこんなことをしてきた理由なんか、いくら考えたって分かるわけがねえ。ただの言葉の投げ合いが無意味な熱を孕む前に、六浜が断ち切った。

 

 「向こうがその気ならこちらは受けて立つ。それしかできまい。どのみち逃げることなどかなわないのだろう」

 「強制的な参加は容易に想像可能だ」

 「つまり、いま我々は本当の意味で一つにならなくてはならない。モノクマが我々の共通敵であることを、向こうから示してきたのだ。分かりやすくなったではないか」

 「共通敵・・・ね」

 

 見渡せば、ずいぶんと人が減った。16の席に立つことができているのはたったの5人。あとは遺影だけだ。殺した奴も、殺された奴も、今となっては同じに見える。死んじまえば何もかも終わりだ。

 だが、ここまで数が減った俺たちでさえ、まだ一つになることはできてない。モノクマというデカすぎる敵を相手にするには、俺たちの結束はあまりに脆弱だ。

 

 「すべてをはっきりさせようではないか」

 

 直接誰かに言ってるわけじゃなかったが、その言葉の向く先は分かりきってた。俺たちがまず明らかにしなきゃならねえこと。本人たちにもそれは分かってるはずだ。

 

 「・・・」

 「聞いてんのか。お前らに言ってんだよ」

 

 ずっと俯いたまま黙りこくってるのが気味悪い。いつもが無駄に喧しいだけに、余計にそれが異質に見える。俺がそいつらを見て言うと、曽根崎はため息を吐いて俺と目を合わせ、望月は小首を傾げた。

 

 「思うところあってのことだろうが、お前自身も私たちに隠していることがあるはずだ。証拠としてはあまり信用できないが・・・それでも、笹戸が映像の中でお前たちの名前を出した上で『学園側』と称したことは見逃せん。それに曽根崎、お前は記憶が戻ったことを隠していただろう。それも、“未来機関”という言葉で記憶が戻ったのだったな。なぜ隠す必要があった?お前は一体何者だ?」

 

 ここぞとばかりに、六浜は容赦なく二人を、特に曽根崎を追求する。今まで胡散臭えことや怪しげなことをして不信感を買ってた奴だけに、ここに来てその存在が一気に分からなくなる。曽根崎って奴の背後には一体何が隠れてるってんだ。

 

 「“超高校級の問題児”・・・か」

 

 ため息混じりに曽根崎が言った。この合宿場に来て最初の日に聞いた言葉だ。俺たちは全員、学園から目をつけられてるってことだ。どんな理由かは様々だが、どいつも学園じゃ手に負えねえレベルの問題を抱えてる。

 

 「ずいぶんな言われ方だよね。ボクが問題児扱いされてるってことは、ボクもそろそろまずいのかな」

 「まずい?」

 「いまは貴方についての話なのですよ!別段、興味もありませんが!」

 「なら止めといた方がいい。ボクはキミたちとは違う」

 

 裁判が終わってから妙に口数が少なくなったと思ったら、こいつはそのとき既にこうなることを先読みしてたんだろうか。六浜より先に先を読むなんて洒落にもならねえぞ。まるで何がどうなるか知ってるみてえだ。いつもの馴れ馴れしい態度は消えて、どことなく段違いな雰囲気を醸し出す。

 

 「正確には、ボクたちの抱える問題はキミたちの問題とは違う。なにもかもがね。それを話せって言ってるんでしょ?だけど、それはできない」

 「なぜだ」

 「キミたちは覚悟ができてないからさ。モノクマなんかよりも、もっと大きなものを敵に回す覚悟がさ」

 「話が見えないな。曽根崎弥一郎、端的に言え。お前は一体何者だ?」

 

 自分は回りくどく小難しい言い方しかしねえくせに、人には簡潔な説明をさせるのもどうかと思うがな。だが今はそれでもいい。そろそろはっきりさせなきゃいけねえ。この曽根崎って野郎が一体誰なのか。

 曽根崎は観念したのか、それとも呆れたのか、深呼吸した。

 

 「なら先に教えてよ。キミたちは、何を聞いても絶対に逃げ出さないって約束できるのかい?たとえ・・・希望ヶ峰学園のすべてを敵に回しても逃げ出さない覚悟ができるのかい?」

 「あ?」

 

 意外にも曽根崎の口から出て来たのは、俺がちょっと予想してたことだった。前々から希望ヶ峰学園の不穏な部分には気持ち悪さを感じてたし、ここ最近は特にそれが顕著だ。あの怪しげなファイルや、このコロシアイ生活に希望ヶ峰学園の闇が関わってることはほぼ間違いねえわけだ。

 俺が理解できねえのは、曽根崎が既にその希望ヶ峰学園を敵に回してるっていうような言い方だ。こいつは俺たちと何が違う?こいつの抱える問題ってのは、そんなにデケえもんなのか。

 

 「希望ヶ峰学園のすべてを敵に回すとは・・・どういう意味だ?」

 

 曽根崎の纏う雰囲気が変わる。考えてみればこいつは、飄々として人のことばっかり突っ込むくせに、自分の話はほとんどしない。笹戸と同じだ。俺たちはこいつのことを知ってるつもりで、何も知らない。こいつは明らかに何かを隠してる。そもそも、こいつが抱える問題ってなんなんだ?

 

 「未来機関って・・・知ってるよね」

 「現在の、新希望ヶ峰学園を設立し運営している機関だな。構成員は全員、新旧希望ヶ峰学園の卒業生だと聞く。教師の一部も未来機関のメンバーだという」

 「人類史上最大最悪の絶望的事件において、“超高校級の絶望”の制圧に動いたと聞く。いずれにせよ、“絶望”の敵であり、希望ヶ峰学園にとっては非常に重要な機関であると言える」

 

 未来機関。あのファイルにも名前が出て来た組織だ。今の希望ヶ峰学園に通う奴だったら、その名前を知らないはずがねえ。希望ヶ峰学園とは切っても切れねえ関係の組織だ。だが今の俺たちにとってはそれ以上の意味を持つ。どうやらそれが曽根崎の正体と関係あるみてえだが。

 

 「ボクは未来機関のメンバーだ」

 「はあ?」

 

 反射的に声が出た。だっておかしいだろ。未来機関は、希望ヶ峰学園の卒業生の組織なんだぞ?曽根崎は俺たちと同じ学年で、卒業なんかまだしてねえはずだろ。

 

 「ふざけているのですか!?貴方は希望ヶ峰学園の卒業生ではありません!でなければ“問題児”などと呼ばれたりはしないでしょう!世間に出ればそれは『非常識』または『社会不適合者』となるのです!」

 「うん、だから正確に言えばメンバー候補、無事に卒業すれば組織に入れる内定持ちってところかな?」

 「話が見えんな。どういうことだ?」

 「ボクは、未来機関からの依頼を受けて、学園の動向を生徒の目から探ってる。広報委員って立場上、多少の過剰な捜査も不自然には映らないから都合が良くてね」

 「学園の動向を探る?」

 

 なに言ってんだこいつ、と唾棄することはできなかった。そんな話、ウソだとしたら出来が悪すぎる。そんなウソを吐くくらいなら適当に誤魔化す方がまだマシだし・・・俺の経験上、こいつはウソだけは吐かない。意味深で思わせぶりなことは言うが。

 

 「待てよ。未来機関って、学園を運営してる奴らだろ?なんでそんなことする必要があんだよ」

 「さっき、笹戸クンが映像の中で言ってたよね。希望ヶ峰学園は一枚岩じゃないって」

 「あんなものは彼の妄言に決まっています!信じるに値しませんね!」

 「妄言なんかじゃないさ。新希望ヶ峰学園は、ある問題を巡って内部で二つの派閥に分かれてる。旧希望ヶ峰学園派と、未来機関派の二つに。ボクは未来機関から頼まれて、旧学園派について調べてたんだ」

 

 ついさっき、映像の中で笹戸が狂気の眼差しで語った希望ヶ峰学園。内部分裂してるなんて、俺の記憶の中じゃそんなこと微塵も感じられなかった。そもそも俺はそんな学園の体質なんかには興味なかったが。

 

 「なぜ学園が二つに分裂する必要がある?希望ヶ峰学園の理念は一つ、未来の希望である“才能”を保護し育み人類文明の進化・発展に寄与すること、だろう」

 「ゴールは同じだよ。でもコースが違う。それだけで人は対立するものさ」

 「コースとはなんだ?」

 「みんな知ってるよね、希望ヶ峰学園は教育機関であると同時に、研究機関でもある。研究対象は、人が持つ“才能”だ。未来ある若き“才能”を側において、間近で研究するために学園制度をつくったんだよね。高校生をモルモットにしてるなんて批判もあったけど、そういう人ほど学園のネームバリューを強く意識してるもんだよ」

 「話を逸らすな。今は、学園内部の旧学園派と未来機関派とはなにかという話だ」

 「それは・・・」

 

 少し考えるように、曽根崎は俺から目を逸らした。その瞬間、俺は違和感を覚えた。思えば、こいつと話してる時に、こいつの方から目を逸らすことはなかった。追い詰められてるのか?この曽根崎が、口で?

 

 「ハイッ!オマエラ!!お待たせしましたあ!!」

 

 クソ間の悪いタイミングでモノクマが戻ってきた。なんでこんな中途半端なところでだ。結局、曽根崎はその正体を曖昧にしたまま裁判場から去ることができるようだ。六浜は納得してねえだろうが、モノクマがこうなった以上は俺たちに与えられた時間は有限だ。

 

 「ま、この話はまた今度にしようか。みんながどうしても知りたいって言うなら、ボクもちゃんと説明するから」

 「ずいぶんと親切だな」

 「ジャーナリストだからね、知る権利は尊重するよ。権利に見合う責任が果たせるなら」

 「ん?なにこの感じ?ボクが準備してる間に、なんかイイ感じに荒んだ空気になってるっぽい?ギスギスドロドロアンタッチャブルな感じ?」

 「準備ってなんの準備だよ」

 「そりゃ決まってるでしょ!最後の学級裁判の準備だよ!この合宿場全体に、モノクマファイル特別号をバラ撒いたよ!それを手掛かりにこの合宿場で何が起きたのか、ボクは一体何者なのか!そのすべてを解くためのヒントをね!」

 

 曽根崎のこと以外にも話を聞かなきゃならねえことはいくつもあるのに、モノクマはそんなこと関係なしに話を進めていく。俺たちはどうすることもできず、指図されるがままだ。そして今回の捜査範囲は、合宿場全体ときた。今までは事件現場とその周辺くらいだったが、相手が同じ高校生じゃなくモノクマになると違うってことか。

 

 「ちなみに制限時間はボクが飽きるまで。うぷぷぷぷ!今すぐ飽きちゃおっかな?明日にしよっかな?それとも100年後?」

 「お前次第でいつでも強制終了することが可能というわけか。悠長にしている時間はないようだ」

 

 先陣を切る望月がエレベーターに乗り込むと、曽根崎も六浜も穂谷もそれに続いた。モノクマはさっさと行けとばかりにエレベーターのレバーに手をかけてる。やっぱり俺たちに選択肢はねえのか。こんなに唐突に、物語は結末に向かって動き出すものなのか。俺はここで生きてるはずなのに、何か大きな力に有無を言わせず従わされてるような。さも自分の意思のように、他人の意思を実行してるような。そんな気分だ。そして俺はいつの間にか、エレベーターに乗り込んでいた。

 

 「はい!それじゃ行ってらっしゃいまし〜〜〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 問答無用で俺たちは送り出された。エレベーターは喧しい音だけをたてて昇っていく。周りは真っ暗な世界。上も下も果てのない虚空。一度だけ、エレベーターとは反対の方向へ過ぎ去っていく釣り合いの重りとすれ違う。あとはただ土の壁だ。そんな無機質な空間も、ある時突然に終わる。眼に刺さる陽光は、一日の半分が過ぎようとしてることを告げていた。そんなに長い時間、俺たちは裁判場にいたらしい。

 

 「さて、それでは私はお部屋に戻って寝ます。起き抜けに不快なものを見たので、今日という日をリセットです」

 「話聞いてねえのかテメエは」

 「制限時間が分からない今では、一分一秒が惜しい。モノクマファイル特別号なるものがどこに、いくつあるのかも分からない。手分けして捜索するのが最も効率的だろう」

 「単独行動は避けたいところだが・・・仕方あるまい」

 

 地上に出てすぐ、俺たちはバラバラに合宿場を探し回ることにした。モノクマが、最後の学級裁判のためにバラ撒いたっつうモノクマファイル特別号。このだだっ広い合宿場のどこにあるのか、何の見当もつかねえ。次の瞬間には捜査時間が終わるかも知れねえってのに、どうすりゃいいんだ。

 

 「ひとつ、お前たちに言っておく」

 

 取りあえず、地道に探すしかねえと覚悟決めようとしたところで、六浜が言った。

 

 「探すのは、ポイ捨て禁止の規則に抵触しない場所だけでいい」

 「は?ポイ捨て?」

 「裁判場でモノクマが言っていただろう。奴自身ですら、自分で決めた規則には従わなければならない。ポイ捨て禁止の規則があるのならば、奴とてそれはできない」

 

 そんなこと言ってたか?相変わらず、こういう細々したところから推理するのは、六浜らしい。それこそが予言者の“才能”なんだろう。

 ポイ捨ては、自然に存在するもの全てに適用されるんだったな。ってことは、探すのは建物の中だけか。それでもかなり骨が折れそうだ。思わずため息が出る。

 

 「あら、もうピアノのお時間ですね。それではみなさん、ごきげんよう」

 

 一人だけ的外れなことを言って、穂谷はさっさと寄宿舎から出て行っちまった。あいつ、モノクマファイルを見つけても誰にも教えねえで捨てそうだな。学園のこと言えねえな、俺らは一枚岩どころか完全にバラバラだ。それでもやるしかねえと、曽根崎も望月も六浜も、次々に寄宿舎から出て行って捜索を始めた。

 

 「さて・・・」

 

 まずはどこから行くかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 合宿場の中を探し回るなんて、いつ以来だったろう。目的ははっきりしていて、捜索すべき場所もはっきりしてる。けども、何か漠然とした不安と曖昧な絶望感のせいで、途方もないことに思えてくる。いや、やめよう。希望だの絶望だの、俺はそんな下らねえことには左右されない。希望なんかとっくに捨てたし、絶望に堕ちるなんて気味悪いことにはならねえ。

 俺は希望に頼ることも絶望に縋ることもしない。

 

 「・・・」

 

 特に考えてることはなかったが、寄宿舎のすぐ目の前にあったから、まずは食堂に入ってみた。並んだ椅子は、もうしばらく使われることがなかったものもある。たった5人の生き残りに対して、椅子は変わらず16人に足りるだけの数がある。寂しいとは思わない。ただ虚しさだけだ。ここにいた誰かが、他の誰かを殺して、殺されて、死んでいく。何もかもが今となっては過去だ。虚しい。

 

 「おーんやぁ?清水クン!なんだか哀愁の漂う雰囲気を醸し出しそうな顔色だね!落ちてるもの食べた?」

 「・・・」

 

 今ここにいるこのぬいぐるみ野郎を踏み潰したら、俺は確実に死ぬ。だがこいつはまた新しいスペアを用意して、それがこいつに変わって働くだけだ。操ってる奴は誰なんだ?なぜこんなことになってる。

 

 「なあ、お前は一体なんなんだ?」

 「はい?なんなんだと聞かれたら答えてあげるが世の情けだけど、教えてあげませーーーん!!それはオマエラがこの捜査時間で見つけるべき答えの一つなんだよ!!ラスボスがいきなり自分の正体明かさねーだろ!!」

 「ラスボスを倒したらゲームクリアってのが常識だ。クリアしたら俺たちは学園に帰る、じゃあお前はどうなるんだ?」

 「・・・うぷ、うぷぷぷぷ!なぁに?心配してくれてるの?大丈夫だよ!たとえボクでも規則は規則!きちんも学級裁判のルールに則って、エクストリームなおしおきを受けちゃいまぁす!!」

 「死ぬってことか」

 「ボクが死んでも代わりはいるもの」

 「スペアモノクマがいても、動かす奴がいねえだろ」

 「痛いところつくなあ。いつもみたいにもっと大声出してキレてかかってこないの?つまんないよ」

 「気になったから聞いただけだ」

 

 正直、なんで気になったのかは分からない。モノクマを裏で操ってる馬鹿がどうなろうが、俺には関係ねえ話だ。死にたいなら死なせてやりゃいい。ただ、なぜこんなゲームめいたことをするのかが分からねえ。こいつの目的は単なる殺戮じゃねえ。絶望を越えた希望ってなんなんだ。

 

 「ふーーーん、つまんねーの!」

 

 つまんねえなら他の奴のところに行きゃあいいのに、俺の前でうじうじしてる。チラチラ顔を見てくるんじゃねえうっとうしい。忘れるところだったが、もともとここにはモノクマファイルを探しに来たんだった。見たところ食堂にはなさそうだが、キッチンにはあるかも知れねえな。

 狭いキッチンのドアを開けると、案の定、というか何のヒネりもなく、まな板の上に例のファイルが乗ってた。表紙と背表紙には『モノクマファイル特別号!!1巻』と書かれてる。

 

 「あっ、見つかっちゃった♡んもう清水クンってばそんなところまで・・・大胆なんだから!」

 

 何が書かれてるか知らねえが、1巻ってことは最初のやつを引いたってことか。ちょっとだけラッキーだったのかもな。俺はそれを手にとって、食堂の椅子に腰掛けて中を読んだ。

 

 「『すべての答えはここにあり!コロシアイ合宿生活の謎!』・・・くだらねえサブタイトルつけやがって」

 

 最後のモノクマファイルの内容は、ずいぶんとアバウトなもんだった。このコロシアイ生活の全貌を明らかにする裁判をするんだから、当然こういう内容ではあるだろうが、それにしたって雑だ。そもそもこの意味の分からねえコロシアイ生活に、謎なんて大それたもんがあんのか。モノクマの悪趣味でしてるだけなんじゃねえのか。

 その謎も、このモノクマファイルを読めば多少は晴れてくのだろうか。少しだけ期待しちまってる俺にも気付かず、俺はファイルの先を読んでいく。

 

 

 

 ーーー

 『新希望ヶ峰学園における“才能”研究の概要』

 希望ヶ峰学園は、人類の希望を保護し育む希望の学府であり、教育施設であると同時に研究施設である。

 学園の創始者である神座出流は、人の持つ“才能”の研究を行っていた。“超高校級”と呼ばれる生徒たちはみな“才能”に溢れ、未来人類の希望であると同時に学園にとっては興味深い研究対象である。この研究の目的は、人の持つ“才能”を完全にコントロールすることである。すなわち、内に眠る“才能”を引き出し覚醒させるだけに留まらず、“才能”を個人から抽出あるいは個人に付与することをも可能にすることである。これは言わば、“才能”の物質化である。あまねく人々は、自らの望む“才能”を得ることができ、また持て余す“才能”を他者へ分け与えることができるようになる。これこそ、新たなる人類の進化の形と言えよう。故に希望ヶ峰学園は未来の希望である“才能”を保護し育む機関であると同時に、希望ヶ峰学園そのものが人類の希望となるのである。

 この研究の最終的な目標は、ありとあらゆる“才能”を有した人間を造り出すことである。神座出流はそれを、“超高校級の希望”と呼んだ。しかし旧希望ヶ峰学園は“超高校級の絶望”との争いの中で、志半ばでその研究を断念せざるを得なかった。

 ーーー

 

 

 

 吐き気がした。こんなに読んでて気分が悪くなる文章は初めてだ。何回“才能”っつってんだよ。それに、“才能”を人から人に移す?内に眠る“才能”を覚醒させる?何を言ってんだ。“才能”なんてもんがやり取りできるようになっちまったら・・・そんな世界、想像すんのも気持ち悪い。俺みてえな無能がますます惨めになるだけだ。

 最後に出て来た、“超高校級の希望”ってのだけはなんとなく分かった。確か旧希望ヶ峰学園は、“超高校級の絶望”ってのにぶっ壊されたんだった。だから“超高校級の希望”は、“絶望”に対する抵抗勢力か何かってとこだろ。どちらにせよ、“超高校級の絶望”にぶっ潰されたようだが。

 

 「うぷぷぷ!!いい感じに胸糞ってツラだね!!そりゃそうか!!“無能”の清水くんには耳が痛い内容だもんね!!」

 「こんなもんが、テメエの正体を暴く手掛かりになるってのか?」

 「さあね。オマエラはボクの正体を追及するけど、その途中で必ず大きな絶望という壁にブチ当たるはずだよ!!その壁を乗り越えるための手助けをしてあげてるんだから、そっから先は自分で考えやがれ!!」

 

 唐突に口が悪くなったモノクマは、そそくさと姿を消した。モノクマファイルはこれだけじゃねえから、他のをさっさと探せってことか。意図が分からねえ。あいつにとってこの後の裁判は、自分の命をかけた裁判になるはずだ。それなのに俺たちの手助けをするなんて・・・。いや、もともと俺たちはあいつの手の平の上にいる。チャンスを与えて弄んでるだけか。

 一冊だけじゃまだ全体像が見えて来ねえ。他のファイルは他の奴らが見つけてると思うが、時間には余裕があるみてえだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 涼しい空気に乗って耳に流れ込む、美しく調和のとれた雑音。この音はバイオリンか。歌声も聞こえてくる。あの女がまともに捜査なんかするはずねえと思ってたがやっぱりか。邪魔されるよりマシだが、このままあいつを放っておいてもいいが、無性にムカついて放っとけなかった。

 二階に上がると、やっぱりバイオリンを弾いてたのは穂谷だった。この曲は聴いたことがある。小学生の時に音楽の時間でやったような気がするが、なんて曲だったかな。少なくとも、こんな聞いてて不安になってくる曲じゃなかった気がする。

 

 「おい穂谷。テメエいい加減にしろよ」

 

 俺の声を合図に、穂谷は演奏を止めた。メチャクチャで意味不明で混沌とした旋律の中にあった秩序は消え去り、大きな不協和音でその曲は終わった。振り乱した髪を直すこともせず、穂谷はじっと俺を睨む。

 

 「モノクマファイルは見つけたのかよ。遊んでる暇なんかねえんだぞ」

 「遊ぶ?私が遊んでいるように見えるとでも?」

 「口答えはいいからさっさと動けよ。テメエ自身のためでもあるだろうが」

 「はっは!!私のためとは笑わせてくれますね!!私の怠慢によって情報不足のまま裁判になり、困るのはどなたですか?貴方がたでしょう!!私はいつこの身滅びても構わないのです!!」

 「放っときゃ動けなくなる身体のくせに、やけくそになってるだけにしか見えねえんだよ」

 

 狂ってるくせに言うことは核心をついてくる。確かに、穂谷が何もせずにモノクマファイルを見逃してもこいつ自身は困らねえ。絶望だなんだと口にして死ぬことを拒んでねえからだ。こいつがサボって困るのは俺たちであって、こいつのことを心配してるわけじゃねえ。だが今はそんな話はどうでもいい。

 

 「そんな汗をかいて動き回るなんてことは私ではなく、鳥木君にでもやらせてください。彼なら貴方がたよりもよっぽど要領よく熟してくれることでしょう」

 「まだそんなこと言ってんのか。鳥木は」

 「彼はまだ生きていますッ!!」

 

 言うより先に否定した。狂った笑顔から一転、具合の悪そうな怒気を含んだ顔色になった。それだけで、穂谷自身が一番鳥木の死を痛感してることを表してる。必死にその死を否定するが、どう足掻いたって現実は変わらねえ。無駄なことだ。

 

 「そうやって否定するお前が一番、現実を思い知ってんだろ」

 「・・・ッ!!無能なリンゴ頭さんが、いつから私に口答えできるほどに偉くなったのですか?」

 「元からお前がそれほど上じゃねえってだけだよ」

 「ふふふ・・・ふふ、あっははははははは!!上じゃない!!確かにそうですね!!むしろ私は底辺でしょう!!底辺にして頂点!!最下層にして最上級!!矛盾する、故に人々の心の琴線を振るわせる!!それが私でしょう?」

 「さあな」

 「現実はいつもひとつ!しかし真実はいつもひとつとは限りません!私が貴方がたにとって歌姫だとしても、私にとって私はただ剥奪される者でしかない!!哀れで!惨めで!ちっぽけな存在です!縋った藁すら波に攫われてしまうような、無力な存在なのです!」

 

 何を言ってるのか分からねえ。だが違和感はあった。プライドばっかり高くて、人のことを見下してた女王様が、ずいぶんと謙遜するんだな。

 

 「ああ、貴方ごときには分かりませんでしょう。すべてを奪われ、虚栄しか残らない哀れな存在のことなんて」

 「お前と話してても時間の無駄だってことは分かった。もういい、歌うなり演奏するなり好きにしてろ。もうアテにしねえ」

 

 つい話し込んじまった。本当に無駄な時間だった。ファイルの手掛かりどころか、聞こえてくるのはこいつの暴言ばかり。なんでこんな奴が生き残ってんだ。なんでこんな奴とさえ協力しなきゃいけねえんだ。こいつよりも生き残るべき奴らなんか、もっといただろうに。

 

 「清水君」

 

 背を向けて去ろうとする俺に、穂谷は急に声をかけた。こいつの方から声をかけるなんて、しかもきちんと名前で呼ぶなんて、予想だにしてなかったから驚いた。思わず振り返ると、穂谷はさっきまでと変わらない微笑のまま、鍵盤に視線を落としていた。

 

 「私には彼女のように、形のないものの声を聞くことはできません。ですが、考えることはできます。悪趣味なモノクマが、私たちに何をさせたいか」

 「は?何が言いてえんだ」

 「誰かの殺意を思い起こさせる・・・結束しようとしている貴方がたにとってこれ以上の妨害と絶望はないでしょう?モノクマはそれをやる人ですよ」

 

 誰かの殺意を思い起こさせるってなんだよ。そんなもん、モノクマにされなくたって、この合宿場のあちこちで思い出させられてる。どこに行ったって、そこで誰かが死んでる。うんざりするくらいに事件は起きてんだ。

 

 「・・・」

 

 そういえば、この資料館もそうだ。ここで起きた事件は、俺にとって一番反吐が出る。“才能”なんてもんがあるせいで人が死んだんだ。その現場もよく知ってる。目と鼻の先だ。

 

 「誰かの殺意・・・」

 

 妙に耳に残ったその言葉が、俺を自然とその現場に導いたような気がした。資料館に入って、すぐ右の個室。“才能”に希望を持った奴と、“才能”に絶望させられた奴らが、絶望的な結末を迎えた場所。

 

 「・・・マジか」

 

 別に穂谷の言葉を信じたわけじゃねえが、モノクマがこういう所にファイルを置くことは納得できなくもない。半信半疑で覗いてみただけだ。そのテーブルの上には、キッチンでみたのと同じファイルが寝かせてあった。マジで穂谷の言った通りだ。

 

 

 

 ーーー

 『希望プロジェクト プランD経過報告書』

 XXXX/〇〇/△△ 報告者:晴貫 邑吉  被験者:(真っ黒に塗り潰されてやがる)

  ①前回からの経過

  AH-0625による変化は少しずつ、しかし確かに表れています。課題であったプランへの疑念は軽減あるいは消失したものと思われ、それ以外にも言動・思考に変化が表れ始めています。“才能”の伸長という点においては非常に大きな結果を残しています。定期健診の点数も日が経つに連れて向上し、既に入学時の2倍に及ぶポイントを示しています。

  また、抗絶望性は基準値を大きく上回る値を示しており、旧学園における験体『(ここも真っ黒だ)』や他験体で課題となっている抗絶望性に対する一つの解決策を提示しているものと考えられます。

 

  ②プランの問題点または失敗点

  定期的な投薬による身体への影響が懸念されます。現時点で確認できる身体的異常はありません。一方、AH-0625の効果による精神的変化から、複数の生徒に怪しまれています。以前に報告した、引地佐知郎からのマークが懸念されています。

 

 

  ③その他の報告事項

  引地佐知郎の他に、不穏な動きを見せている生徒がいます。詳細は添付の資料をご確認ください。

 

 ーーー

 

 

 

 いかにも怪しげな名前だ、『希望プロジェクト』。プランDとかAH-0625とか抗絶望性とか妙な言葉が飛び交って、被験者だの定期健診だの験体だのいかにも叩けば埃が出そうだ。それにこの、引地佐知郎って誰だ?つかなんて読むんだ?

 

 「分からねえ・・・情報がなさすぎる。もしこれがあいつの記憶に関係してるんだとしたら・・・・・・いや、それだったらあいつは記憶を戻さねえ方が・・・」

 

 こんがらがってくる。ダメだ。一人で考えこんだって俺の頭じゃろくな結論が出て来ねえ。できねえことをしたってしょうがねえ。今はただ、歩き回って手掛かりを集めることだけだ。次に探すべき場所はどこだろうか。手掛かりは二つ。六浜の言ったことと、穂谷の言ったこと。

 

 「建物の中で、誰かの殺意を思い出させる場所・・・か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「む、清水か。調子はどうだ」

 「・・・むつ浜」

 「むつ浜ではない、六浜だ」

 「二つ見つけた。1巻と2巻を順番にな」

 「そうか。なかなかお前は運が良いようだな。ちょうどここに3巻がある」

 「どこにあったんだ」

 「発掘場だ。あそこもポイ捨てルールの適用外となっている」

 

 資料館を出てすぐ六浜と鉢合わせた。手に持った黒いファイルには、確かに3巻と書かれていた。建物内だけ探せばいいっつったクセに、ちゃっかり発掘場も探してんのか。つうかよくそんなことまで覚えてたな。

 

 「資料館にあったあの黒いファイルと同様の内容だろう。厚みや装丁からして、あれらよりも更に詳細が書かれていたようだ。タイトルは『コロシアイ』だな。読むか?」

 「・・・当然だろ」

 「ならば少々覚悟が要るな。見るに堪えないぞ」

 

 そう言えば、六浜は気丈に振る舞ってはいるが、顔色が悪い。あいつはあの時これを読んじゃいなかったな。俺だってたった1ページだけで吐き気がした。モノクマファイルとして用意された以上は、目を通す必要くらいはあるだろうが・・・正直、触れたくもねえ。

 

 

 

 

 

 ーーー

 『コロシアイ』

 ・コロシアイ学園生活

 人類史上最大最悪の絶望的事件による世界の崩壊から“才能”あふれる希望ヶ峰学園生を守るため、当時の希望ヶ峰学園学園長、霧切仁氏は生徒の了承の下で、彼らを希望ヶ峰学園に幽閉した。彼らは外部からの影響を受けず、また外部への影響を与えることもなく、学園の中で人類の希望を保持し続けるという計画であった。

 しかし、学園内に残った生徒の中に身を潜めていた江ノ島盾子と戦刃むくろにより、希望のシェルターは絶望のコロシアイ場へと姿を変えた。江ノ島盾子は共に幽閉されたクラスメイト全員の記憶を奪い、外へ出ようとする彼らの感情を煽りコロシアイを強いたのである。結果として江ノ島盾子は自害し、超高校級の絶望の根源は絶たれたが、彼女を含め10名の死者を出す大惨事となった。

 次のページより、コロシアイ学園生活内に死亡した生徒の詳細を記述する。

 

 【舞園さやか】 死因:腹部を刺されたことによる失血

 “超高校級のアイドル”。桑田怜恩の殺害を計画するも反撃に遭い、桑田怜恩によって殺害される。中学時代の同級生でありクラスメイトの苗木誠に濡れ衣を着せようとするが、自身が死亡したことによりトリックが未遂に終わり、失敗する。

 

 【戦刃むくろ】 死因:全身を槍で貫かれたことによる出血性ショック死

 “超高校級の軍人”。“超高校級の絶望”メンバーであり、江ノ島盾子の姉。江ノ島盾子による処刑のデモンストレーションにより死亡。江ノ島盾子になりすましてクラスメイトに接触し、死亡することによって江ノ島盾子が全ての黒幕であるという事実を隠匿するために参加していた模様。頭部が一部焼失している。

 

 【桑田怜恩】 死因:全身の粉砕骨折と打撲

 “超高校級の野球選手”。舞園さやかを殺害したため、処刑される。

 

 【不二咲千尋】 死因:頭部殴打による心機能の停止

 “超高校級のプログラマー”。大和田紋土によって殺害される。自身の死を予測し、事前に人格をプログラミングにより再現し、アルターエゴを作成する。江ノ島盾子は後にこれを利用し、コロシアイ修学旅行を引き起こす。

 

 【大和田紋土】 死因:内臓破裂と全身四散

 “超高校級の暴走族”。不二咲千尋を殺害したため、処刑される。壮絶な処刑が行われたため死体が原形を留めていない。

 

 【石丸清多夏】 死因:脳挫傷

 “超高校級の風紀委員”。山田一二三によって殺害される。

 

 【山田一二三】 死因:脳挫傷

 “超高校級の同人作家”。安広多恵子に石丸清多夏の殺害を教唆され、実行後に安広多恵子によって殺害される。

 

 【安広多恵子】 死因:轢死

 “超高校級のギャンブラー”。山田一二三を殺害したため、処刑される。

 

 【大神さくら】 死因:毒物の摂取

 “超高校級の格闘家”。自ら毒物を摂取し、死亡。死亡直前に葉隠康比呂・腐川冬子・朝日奈葵と会い前2名から頭部に殴打を受けるが、死に至るものではなかった。

 

 【江ノ島盾子】 死因:多様な傷痕があり、また死体の損傷が激しいため検証不可。

 “超高校級の絶望”。自分自身を処刑にかけ、死亡。通常の肉体ではあり得ないような傷痕が複数みられ、死亡当時の状況の詳細は解明途中である。記憶操作の研究を幇助した松田夜助を殺害したことが確認されている。また、験体『(ここも読めねえ)』に自らの絶望性を一部移植したとの研究結果がある。

 

 

 ・コロシアイ修学旅行

 未来機関が作製した『希望更正プログラム』によって、江ノ島盾子の手で絶望に堕とされた旧希望ヶ峰学園77期生を“超高校級の絶望”から更正させようという計画が執り行われた。この計画を主導したのは、先のコロシアイ学園生活を生き延びた者のうち、苗木誠・霧切響子・十神白夜の3名である。

 仮想空間内で共同生活を送ることで汚染された精神を矯正する目的で行われたものであったが、このプログラムが執り行われる直前、77期生の一人である日向創がプログラムにバグを混入させた。このバグこそが、不二咲千尋が発明したアルターエゴを改造した、江ノ島盾子のアルターエゴである。これにより、『希望更正プログラム』は江ノ島盾子に乗っ取られ、77期生は電脳空間内でコロシアイをすることになる。

 次のページより、コロシアイ修学旅行内に死亡した生徒の詳細を記述する。

 

 【(読めねえ)】 死因:脳機能の停止

 “超高校級の詐欺師”。花村輝々によって殺害される。プログラム内では、腹部を刺されたことで死亡処理が行われている。常に自分以外の他者の姿を模倣しており、プログラム内では十神白夜の姿に変装していた。

 

 【花村輝々】 死因:脳機能の停止

 “超高校級の料理人”。(読めねえ)を殺害したため、処刑される。プログラム内では、急激に高熱に晒されたことで死亡処理が行われている。

 

 【小泉真昼】 死因:脳機能の停止

 “超高校級の写真家”。辺古山ペコによって殺害される。プログラム内では、頭部を殴打されたことで死亡処理が行われている。プログラム内で、九頭龍菜摘の事件に関与している証拠が発見される。

 

 【辺古山ペコ】 死因:脳機能の停止

 “超高校級の剣道家”。小泉真昼を殺害したため、処刑される。プログラム内では、全身を刀で刺されたことで死亡処理が行われている。プログラム内で、九頭龍菜摘の事件に関与しているとの証拠が発見される。

 

 【澪田唯吹】 死因:脳機能の停止

 “超高校級の軽音部”。罪木蜜柑によって殺害される。プログラム内では、気道が長時間圧迫されたことで死亡処理が行われている。プログラム内で、九頭龍菜摘の事件に関与している証拠が発見される。死亡直前、バグに感染していたことが確認されている。

 

 【西園寺日寄子】 死因:脳機能の停止

 “超高校級の日本舞踊家”。罪木蜜柑によって殺害される。プログラム内では、頸動脈を損傷し大量に出血をしたことで死亡処理が行われている。プログラム内で、九頭龍菜摘の事件に関与している証拠が発見される。

 

 【罪木蜜柑】 死因:脳機能の停止

 “超高校級の保健委員”。澪田唯吹・西園寺日寄子を殺害したため、処刑される。プログラム内では、致死量の薬物投与をしたことで死亡処理が行われている。プログラム内で、九頭龍菜摘の事件に関与している証拠が発見される。

 

 【弐大猫丸】 死因:脳機能の停止

 “超高校級のマネージャー”。田中眼蛇夢によって殺害される。プログラム内では、全身殴打で生命維持機能が停止したことで死亡処理が行われている。田中眼蛇夢による殺害以外に、強い衝撃と熱刺激を受けて死亡処理が行われるも中断された形跡がある。

 

 【田中眼蛇夢】 死因:脳機能の停止

 “超高校級の飼育委員”。弐大猫丸を殺害したため、処刑される。プログラム内では、激しい衝撃を受けたことで死亡処理が行われている。

 

 【狛枝凪斗】 死因:脳機能の停止

 “超高校級の幸運”。更正補助プログラム「七海千秋」によって殺害される。プログラム内では、毒性物質を吸引したことで死亡処理が行われている。七海千秋が自身を殺害するように誘導した。

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 読まなきゃよかった。できるだけ写真が目に入らねえようにしてたつもりだが、どうしても目に飛び込んでくる。鮮血が飛び散ったバスルームも、もともと人間だったのかすら分からねえ肉の塊も、あらゆるものが吐き気を伴う事実を突きつけてくる。今まで俺が目にしてきた『死』と同じか、それ以上の絶望がそこにあった。

 

 「大したものだ。すべて読み切るとはな」

 「冗談じゃねえな。二度とゴメンだ」

 「そうもいかない。私はこのファイルから、モノクマの正体の片鱗が掴めた。他にも何か分かるかも知れない」

 「・・・そんな簡単に分かるのかよ?」

 

 今更、こいつの飛躍した理論には特別驚かねえ。こんな趣味の悪い写真集からどうやってモノクマの正体の手掛かりを掴むっつうんだ。江ノ島盾子って女か、“超高校級の絶望”と関係してるってのは間違いなさそうだが、それ以上何かあったか?

 

 「勘違いをしてしまう前に言っておくが、モノクマは江ノ島盾子ではない。また、“超高校級の絶望”とも言えないな」

 「・・・」

 

 やっぱり分からねえ。

 

 「今すぐに理解する必要はない。一秒を惜しんで情報をかき集めるべきだ。整理など後からいくらでもできる」

 「これ以上増えたら頭パンクしそうだ」

 「お前も2冊ファイルを持っているな。貸してくれないか?」

 「好きにしろ」

 

 そう言って六浜は俺の持ってたファイルを一冊取って中に目を通す。俺はさっさと次の目星をつけてる大浴場に向かう。その後ろを六浜はついて来て、なんかぶつぶつ言ってる。

 

 「大浴場か。おそらく脱衣所より先は探しても無意味だろうな」

 「・・・」

 

 ファイルを読みながら、俺の向かう先を勝手に言い当てて、探し方まで指図して、ぶつぶつ独り言も言いながら、砂利の道を危なげなく歩いてやがる。こいつの頭はどうなってやがんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『コロシアイ合宿生活』

生き残り人数:残り5人

 

  清水翔   六浜童琉  【晴柳院命】   【明尾奈美】

 

  望月藍  【石川彼方】 曽根崎弥一郎   【笹戸優真】

 

【有栖川薔薇】 穂谷円加  【飯出条治】 【古部来竜馬】

 

【屋良井照矢】【鳥木平助】 【滝山大王】【アンジェリーナ】




六章がはじまって、広げまくった風呂敷と伏線を回収しまくらないといけないので、ヒィヒィ言ってます。
ゆっくりたっぷりのんびりいきましょう
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