ダンガンロンパQQ   作:じゃん@論破

52 / 82
捜査編2

 大浴場の雰囲気はいつもと同じだ。これから俺たちを待ち受ける学級裁判のことなんかどこ吹く風とばかりに、レトロな佇まいでそこにある。

 

 「モノクマファイルがあるとすれば、このロビーのどこかだろうな」

 「なんでだよ」

 「脱衣所より先に隠してしまえば、ただでさえ人数が少ないのに更に発見される可能性を小さくしてしまう」

 「だったらモノクマには好都合じゃねえか」

 「いいや、奴は学級裁判で私たちと勝負するつもりだ。この捜査時間も、奴が何かを準備するために用意したのだろう。私たちと奴が、それぞれ万全を期してぶつかり合うことを望んでいる。確証はないが・・・少なくともモノクマファイルは誰にでも見つけられるような場所にあるはずだ」

 

 予言じゃなくて、推測か。だがこいつがそこまで根拠を持って言ってんなら、信じていいんだろう。取りあえずこいつの言う通り、ロビーの中を探すことにした。と言っても、商店ブースと卓球台、アーケードゲーム、ロッカーくらいしか探す場所はない。だから、ロッカーの中に隠されてた4巻を見つけるのもあっという間だった。

 そう言えば、はじめてここに来た時にも、このロッカーにファイルがあったな。その時は、俺たち“超高校級の問題児”の抱える問題が書いてあったんだったな。今度は何が書いてあるんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 『“超高校級の問題児たち”』

 以下に、『“超高校級の問題児たち”修正・改善プロジェクト』参加者を列記する。尚、各自が有する問題については極秘事項であり、原則的に当事者・非当事者を問わず秘匿すべし。

 

 氏名:明尾奈美

 性別:女

 才能:超高校級の考古学者

 事由:学園内での危険物所持。主にツルハシや電動ドリル、ノミとカナヅチなどの発掘作業用工具。再三の注意にも耳を貸さず、特別対応が必要と判断。また、希望ヶ峰学園理事会員及び一部教職員に対し、生徒にあるまじき態度を見せるとの報告多数。

 卒業条件:工具不携帯による通常生活の遂行及び、希望ヶ峰学園生としての慎ましく誠実な精神養育の確認を以て『可』とする。

 

 氏名:有栖川薔薇

 性別:女

 才能:超高校級の裁縫師

 事由:「袴田事件」の中心人物である、袴田千恵と親交の深かった生徒であり、事件について過剰に関与しようとしているため、静観すれば危険な生徒。少々ヒステリックな面があるため、接触時には注意されたし。また、飯出条治との接触には十分に注意すべし。

 卒業条件:「袴田事件」への関与を抑止し、飯出条治との対話・和解を以て『可』とする。

 

 氏名:(仮名)アンジェリーナ・フォールデンス

 性別:女

 才能:超高校級のバリスタ

 事由:本名及び基本情報の著しい欠損。ティムール・フォールデンスは養子と主張しているが、保護機関や出身国などの情報の提供を頑なに拒絶。同氏の農園では複数の奴隷の就労が確認されているため、様々な可能性が考えられる。

 卒業条件:当生徒の生徒基本情報文書の作成を以て『可』とする。

 

 氏名:飯出条治

 性別:男

 才能:超高校級の冒険家

 事由:異性に対し偏執的な好意を持つ傾向があり、複数の女生徒から苦情が寄せられている。また、「袴田事件」と関係しているとの報告もあり、有栖川薔薇との接触には十分に注意すべし。

 卒業条件:希望ヶ峰学園生としての誠実かつ清廉な交際を支える精神改革、及び有栖川薔薇との対話・和解を以て『可』とする。

 

 氏名:石川彼方

 性別:女

 才能:超高校級のコレクター

 事由:窃盗、詐欺、売春など、判明しているだけで十数件の前科有り。珍品や自身の蒐集品に強い執着を持ち、特にこれらが関係する事柄において衝動制御障害とみられる言動が報告されている。突発的な傷害行為や暴力行為に十分に注意すべし。

 卒業条件:本人による窃盗品を返却することの承認及び衝動制御障害の完治あるいは緩和を以て『可』とする。

 

 氏名:古部来竜馬

 性別:男

 才能:超高校級の棋士

 事由:極端な自尊心による他者との隔絶。また、他者とのコミュニケーション能力に大いに問題があり、集団生活の基礎となる協調性の著しい欠如を認める。加えて生活態度に問題があり、特に睡眠時間に関しての改善が望まれる。

 卒業条件:生活態度の是正、協調性の十分な発育を以て『可』とする。

 

 氏名:笹戸優真

 性別:男

 才能:超高校級の釣り人

 事由:学園内の過激派思想集団に所属しているとの情報があり、学園に対して反抗的な思想を抱いている。晴柳院命に強く執着しており、一般的な学生の交際範囲を大きく逸脱している。通常は大人しく柔和な性格であるため、慎重に対処すれば安全と考えられる。

 卒業条件:学園に対する反抗思想の消滅、過激派集団の離脱を以て『可』とする。

 

 氏名:清水翔

 性別:男

 才能:超高校級の努力家

 事由:生活態度に著しい問題あり。授業妨害、指導無視、集団逸脱が多く、円滑なクラス運営に大きく障害となる生徒。また、自らの“才能”を発揮することを放棄しており、これは学園の理念である“才能”を保護し育成することに真っ向から背くものである。“超高校級の絶望”との接触歴ありとの情報有り。本プロジェクトにおいて最優先で是正すべき生徒である。

 卒業条件:絶望因子の排除、通常の学園生活を送ることができるだけの精神構造の是正、“才能”の再保有を以て『可』とする。

 

 氏名:晴柳院命

 性別:女

 才能:超高校級の陰陽師

 事由:晴柳院義虎の孫であり、同氏が過去学園内に創設した思想集団の意思統一の象徴として奉られている。笹戸優真はこの団体のメンバーである。当人は非常に主張が弱い性格であるため、問題児の中で満足に生活できるかという点には疑問が残る。多面的なサポートが必要と考えられる。

 卒業条件:強い意思表示が可能な性格の構築、それに伴う笹戸優真や晴柳院義虎に毅然たる対応を以て『可』とする。

 

 氏名:曽根崎弥一郎

 性別:男

 才能:超高校級の広報委員

 事由:引地佐知郎との密な関係を持っていたとの情報有り。件の生徒と同様に、未来機関からの諜報活動を依頼されたものと推測される。通常の学園生活においては広報委員としての過剰な取材により、複数の生徒から苦情が届いている。

 卒業条件:未来機関との関係を明確にすること、場合によってはその関係を断絶させることを以て『可』とする。

 

 氏名:滝山大王

 性別:男

 才能:超高校級の野生児

 事由:特殊な出生に由来する、著しい社会性の欠如と精神的未熟さがみられる。身体的には高校生の平均を大きく上回るため、トラブルの際には取り扱いに十分に注意すること。

 卒業条件:高校生として最低限の基礎学力の定着、学園生活を送るにあたっての十分な社会性の発育を以て『可』とする。

 

 氏名:鳥木平助

 性別:男

 才能:超高校級のマジシャン

 事由:長期に亘る『Mr.Tricky』としての活動による出席不足かつ欠席理由が不明瞭。学園生活には特記すべき事項はないが、学外での活動が多いため有事の際の行動は不明。また、学園内で無許可の営利活動を行っていたとの情報アリ。

 卒業条件:欠席理由の明確化および欠席必要性の解消、営利活動に関する報告書の作成を以て『可』とする。

 

 氏名:穂谷円加

 性別:女

 才能:超高校級の歌姫

 事由:新52期生であるが、現在は新53期生と同学年である。欠席過多から、進級ができていない状況にある。欠席原因は持病によるものとの連絡が多いが、診断書類の提出はないため事実確認ができていない。また、複数の生徒と学生らしからぬ交際関係があるとの報告多数。詳細は不明である。

 卒業条件:欠席理由の明確化、進級資格認定試験への合格を以て『可』とする。

 

 氏名:望月藍

 性別:女

 才能:超高校級の天文部

 事由:詳細不明。『計画』に関与している可能性ありとの報告が上がっている。複数の生徒や教師から入学時と人格が大きく変化しているとの報告があるため、『計画』に関して非常に深い部分まで進行している可能性がある。場合によっては、特別処置が必要と考えられる。

 卒業条件:経過観察中につき、条件未定。

 

 氏名:屋良井照矢

 性別:男

 才能:超高校級の爆弾魔

 事由:テロリスト『もぐら』として大量破壊・大量殺戮を繰り返している、非常に危険な生徒。再三に亘る学園からの警告にもかかわらず、学園内でテロ行為を敢行している。異常な自己顕示欲を示しているため、扱いには特に注意すべし。

 卒業条件:テロ行為の全面的な中止、大幅な精神改革を以て『可』とする。

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 書かれてたのは、六浜以外全員の抱える問題だった。既に死んでいった奴らはもちろん、まだ生きてる俺たちのことも書かれてた。曽根崎は未来機関のスパイだってことだ。穂谷は性格の問題と出席率の低さなんて、案外普通の高校生みてえな問題だった。ひとつ気になるのは、残る望月の問題だ。

 

 「なんのつもりだか・・・わざわざこんなところに置いとくか」

 「以前に見つけたものよりも詳細だな。私以外全員の問題が書いてある。清水、お前は最優先で是正すべき生徒だそうだ」

 「そんなこと今はどうでもいいだろ」

 「まったくだ。今この時点では、お前よりも望月の方がよほど問題児だ」

 

 詳しいことはまったく分からねえが、どう考えても望月のところに書いてあることは俺なんかの問題よりヤベえことだ。他の全員に設定されてる卒業条件が、望月だけはない。それになによりここの記述・・・『入学時と人格が大きく変化している』。

 多目的ホールで見せられた、あの映像がフラッシュバックした。真夜中、星空を見上げながら夢見がちに語る女。ロマンティックな神話にうっとりして、星々の煌めきにいちいちはしゃいで、無計画に、ただ楽しそうにしてる望月の映像。見た目は全く同じなのに、言動はかすりもしない。もしかしたら、あれが入学した時の望月なのか?

 だとしたら、この合宿場にいる望月はなんなんだ。完全にただの女子高校生だったあいつが、なんであんな機械みたいな奴になったんだ。あいつに何が起きた。

 

 「おい、清水?」

 「んっ・・・な、なんだ」

 「ずいぶんと思考に没頭していたようだが、考えていても知識は増えんぞ。私はもう暗記したから、このファイルはお前が持っているといい」

 「ああ・・・分かった」

 「・・・望月と何かあったのだな。何も言うな。奴が敢えて内密にしたのなら、お前にはそれを守秘する義務がある」

 

 自分でも気付かないうちに、かなり考え込んでたみてえだ。脳みそが熱い。頭がぐわんぐわんして思考が整理できねえ。それもこれも、望月が俺にあんな映像を見せたせいだ。おまけに、六浜には全部お見通しか。わけがわからねえ。曽根崎のことも、望月のことも、ますます分からなくなってくる。

 考えてみりゃ、曽根崎も望月もしょっちゅう俺に絡んできたクセに、俺には自分たちのことを何も話さなかった。いや、違うか。あいつらは俺を知ろうとしてたのに、俺はあいつらを知ろうとしなかった。あいつらだけじゃねえ。他の奴らのことも、俺は何一つ知ろうとしなかった。

 なんでだ。興味がなかったからか?あいつらだって俺みてえな“無能”に興味がなんかあるはずねえ。じゃあなんでだ。俺はなんで知ろうとしなかった。俺は・・・。

 

 「不思議なもんだな」

 「なにがだ?」

 「俺は、お前らみてえな“超高校級”は反吐が出るほど嫌いなんだ。“才能”も憎たらしいし、希望ヶ峰学園もクソだと思ってる」

 「ああ。学園でも有名だったな。覚えていないだろうが、我々生徒会も手を焼いたものだ」

 

 いまさらになって分かった。なんで俺は何も知ろうとしなかったのか。なんで俺はいつまで経っても“才能”から逃げられねえのか。

 

 「くだらねえし笑えねえ・・・・・・結局俺も、“超高校級”なんて肩書きに囚われてんじゃねえか」

 「・・・」

 

 俺の背後で、六浜がため息を吐いた。たぶん、呆れてんだろう。それか、安心してんのかもな。

 “超高校級”なんて、ただの呼び方に過ぎねえ。“才能”なんて、ただの肩書きだ。あいつらはそんなもの関係なしに、俺に直接触れようとしてきた。拒んだのはいつも俺だ。卑屈さを盾にして、“無能”の壁を築いて、とっくになくなってたはずの小せえプライドに固執してただけだ。

 俺はあいつらとは違う、勝てなくて当然だ。そうやって自分から降参して、恥をかかないように逃げてた。みっともねえ。くだらねえ。しょうもねえ。汚え。小せえ。ダセえ。うぜえ。

 

 「ムカついてくるな。いつの間に俺は負け犬になってたんだ」

 「・・・負け犬は負けていることに気付いていない。既にお前は負け犬などではない」

 

 安易な慰めなんて、六浜らしくもねえ。いや、六浜でさえどうしたらいいか分からねえくらい、俺は取り返しの付かねえところまで歪んでたってことか。こうやって後ろしか見ねえところが負け犬なんだって、分かってる。

 

 「ここには、お前を肯定こそすれ否定する者などいない。歓迎こそすれ拒絶する者もいない。やりたいようにやり、したいようにすればいい」

 「・・・」

 

 ファイルを閉じて六浜に渡した。後は全部任せた。学級裁判前に、やることができた。今から何をしたって手遅れかも知れねえ。今更取り返したって意味なんかねえかも知れねえ。今すべきことはもっと他のことかも知れねえ。

 知ったことか。すべきことを捨てて、勝手なことしたっていいだろうが。俺は“超高校級の問題児”だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 軽い扉はキィと音を立てて開く。立ち込める匂いは、まだ焦げ臭い。だが奥にある栽培室は、まるで時間を戻したように元通りの姿で佇んでた。中には毒性植物のケースが夥しく、つい数時間前にここで笹戸が焼け死んだことなんて、夢だったのかと疑うほどだ。

 そこでひとり、モノクマファイルを持って思案に暮れる曽根崎は、俺に気付いて目線を上げた。

 

 「やあ、清水クン。どうしたの?肩で息して。捜査は順調かい?」

 「・・・まだ、話が終わってねえだろ」

 「話?何の話?」

 「お前の話だよ。お前が誰で、なんで学園にいて、何をどうしようとしてんのか。お前の全部を教えろ!」

 

 我ながら下手くそだな。でも仕方ねえ、俺はそういう奴なんだ。改まって自己紹介なんてこと柄じゃねえ。だからか、曽根崎は面食らった面でファイルを閉じた。

 

 「全部っていうのは・・・何もかもってことだよね。裁判場でも言ったはずだよ。ボクの話を聞くことは、希望ヶ峰学園の全てを敵に回すことだって」

 「俺が学園の敵じゃねえって言いてえのか?」

 「レベルが違うってことさ。下手をすれば・・・キミという存在は消えて無くなる」

 「死ぬなんて今さらじゃねえか」

 「違う。消えて無くなるんだ」

 

 この合宿場で何度となく人の生き死にを見てきたんだ。その度に、死って言葉は鉛みてえに重くのしかかって、空っぽのバケツみてえに軽薄に響くようになってきた。

 それでも、曽根崎の言葉には底知れない重さを感じた。そこで確信した。こいつは、学園の闇に通じてる。それも、俺が思ってる以上に深く、暗い部分まで。

 

 「マジでなんなんだ・・・お前」

 「ボクのことを知りたいんだね。嬉しいな。清水クンが人に興味を持つなんて、思ってもみなかったよ」

 「なッ・・・!?別にそういうわけじゃねえよ・・・!!あんなハンパに話終わったから、気になっただけだ」

 「そう。なら、一つだけ答えてよ」

 

 影を帯びた表情から一気にカラッと明るくなる。かと思ったら、また真剣な顔になる。作った表情だってことくらい分かる。それでも、その表情にいちいち振り回される自分が情けねえ。

 

 「清水クン、キミはボクと一緒に死ねるかい?」

 

 身体が縛られたような感覚だ。こいつの抱える闇が、信念が、言葉にできないような妙なもんが、全て俺を捕らえたような。ハンパな覚悟で逃さねえ絶対的な何かが襲ってきたような気がする。

 

 「・・・な、なんだそりゃ」

 「言葉通りの意味だよ。ボクが死ぬ時、キミも一緒に死んでくれる?簡単なことさ、答えれば話してあげる」

 「死ぬのはごめんだな。けど話は聞かせてもらうぞ」

 

 そのまんま正直に答えた。適当こいて後からマジにされても困る。ただ、こいつの話を聞けなくなるのも困る。でなきゃ曽根崎が何者なのか分からねえままだ。ひとまず答えられねえもんは答えられねえままで。

 

 「そっか。それじゃあ死なないように頑張んないとだね」

 「ん?」

 「いいよ。話してあげる。未来機関と、希望ヶ峰学園と・・・“超高校級の希望”のこと」

 「は?お、おい待て。今のでいいのか?お前とは死なねえっつったんだぞ」

 「いいよ。言ったでしょ?“答えれば”話してあげるって。まあ答えによってやることは変わるけど・・・どっちにしろキミには話さなきゃなって思ってたから」

 

 なんだそりゃ。なんかおちょくられたような気がする。じゃあなんの意味がある質問だったんだ。

 

 「取りあえずさ、このファイル読む?」

 「あ?」

 

 ここに来たのはファイルのためじゃねえんだが、さっきまで曽根崎が読んで考えてたファイルだし、なんか関係あんのかな。

 

 「『希望プロジェクト』・・・『プランS』?」

 

 確かさっきも、似たような何かを読んだ気がする。『希望プロジェクト』ってなんなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 『希望プロジェクト プランS経過報告書』

 XXXX/〇〇/▽▽ 報告者:魔達 居龍  被験者:ーーー

  ①前回からの経過

  非常に順調です。前回に引き続き、学園生との接触及び観察を継続しています。定期健診においては、新たに"超高校級のパティシエ"、"超高校級の師範"の"才能"が発現し、いずれも認定規定値まで達しています。発現した"才能"、及びその練度についての資料は、所定フォルダ内のデータを更新しております。ご査収ください。

 

  ②プランの問題点または失敗点

  プランの進行に伴い被験者の性格、言動、精神状態に変化が表れています。健診項目を追加してデータを収集したところ、少しずつ摩耗しているように見られます。成果が表れている一方で、危険な状態に移行しつつあることに留意すべきと言えます。

 

 

 『希望プロジェクト プランS経過報告書』

 XXXX/▢▢/◎◎ 報告者:魔達 居龍  被験者:ーーー

  ①前回からの経過

  新たに"超高校級の理髪師"、"超高校級のスイーパー"、"超高校級の彫り師"の"才能"が発現し、既にオリジナルに近いレベルにまで達しています。以前より発現する"才能"の数が増え、修得の早さが加速しています。被験者の負担を軽減すべく、学園生との接触を減らし観察のみに移行しています。彼自身が持つ“才能”が成長しているものと考えられます。また本人が、より高効率かつ確実な“才能”の修得について考えていると話しています。具体的なことは不明です。

 

  ②プランの問題点または失敗点

  前回報告した、精神状態の摩耗が進行しています。この状態が継続して一定の水準にまで下降した場合、プランの進行について再考を要する可能性があります。

 

 

 『希望プロジェクト プランS経過報告書』

 XXXX/☆☆/@@ 報告書:魔達 居龍  被験者:ーーー

  ①前回からの経過

  前回から5つの“才能”が発現しています。これほどの進度で“才能”を修得することは、他に例がありません。被験者の負担を考慮し、学園生との接触を中断し観察に費やす時間を減らしたにもかかわらず、この数字は明らかに異常です。プランの休止と再考を進言します。

 

  ②プランの問題点または失敗点

  各精神値が危険域に接近しています。既に被験者はかなりの段階まで進んでいますが、このままでは危険です。

 

 

 『希望プロジェクト統括部長へ』

  私は、彼がこれ以上“才能”を修得し続けることに反対します。プランの中断と彼の治療を独断で決定しました。すでに彼は学園外へ連れ出し、適切な処置を受けさせています。『希望プロジェクト プランS』は失敗です。“超高校級の希望”は他の方法で創ってください。申し訳ありません。

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後の一枚だけは、他のとは違った。どうにもただならねえ雰囲気だけは伝わる。希望プロジェクトって一体なんなんだ。“超高校級の希望”って・・・前にもどっかで見た気がするが、なんか関係あんのか?

 

 「どう?」

 「いや、どうって言われても・・・意味分かんねえってしか」

 「だよね。順番に話そうか」

 

 色んな情報が入り乱れすぎてる。何がなんだか分からねえ。情報が入り乱れてごった煮みてえになった俺の頭の中を、少しずつ整理していくように話し始めた。

 

 「裁判場でも言ったけど改めて言うね。ボクは未来機関から依頼を受けて、希望ヶ峰学園であることの調査をしてる。学園を運営してる未来機関がなぜわざわざスパイを送るのか・・・それは、希望ヶ峰学園の理事会や教師陣が二つの派閥に分裂しているからだ。未来機関と旧学園派は、ある人物を巡って立場が対立してる。ボクが調査してるのも、そのことについてだ」

 「そこまでは聞いた。派閥が分かれてるのが、誰かが原因ってのは今知ったけどな」

 「そうだね」

 

 学園内で分裂が起きてるなんて笹戸の妄言かと思ってたが、曽根崎はそれを肯定する。その上で、曽根崎が自分の秘密を明かそうとしてる。まるで笹戸があの発言をしたときから、全てが繋がっているような、何となく気持ち悪い感じになった。

 

 「二つの派閥の中心、渦中の存在となっている生徒。それが、“超高校級の希望”カムクライズルだ」

 「カムクライズル?“超高校級の希望”ってのは・・・」

 「ありとあらゆる“才能”を持った、究極の人類。希望ヶ峰学園が旧学園時代から研究してきた、最強の希望だ」

 

 “超高校級の希望”ってのは、確か食堂で見つけたファイルに、そんなようなことが書いてあった。すべての“才能”を持ってる人間だとか・・・学園がそのせいで対立してるってどういうことだ?そんな“才能”の塊なんて、学園が喉から手が出るほど欲しいはずだろ。

 それにカムクライズルって、希望ヶ峰学園の創始者の名前じゃなかったか?

 

 「マジでそんな奴がいたのか?」

 「いるわけないよ。本来なら、あらゆる“才能”を持つ人間なんてあり得ない。だから学園は創ったんだ。そんな人間を」

 「創った?」

 「旧学園時代の話だけどね。とある、なんの“才能”も持たない空っぽの凡人が、希望ヶ峰学園に入学した。まあボクらみたいな本科生じゃなくて、予備学科生としてだけど。彼は“超高校級”の肩書きや“才能”というステータスに憧れを抱いてた。そこで、希望ヶ峰学園は彼に“才能”を与えることにした。人間の根幹である、脳を改造して」

 「改造って・・・んなバカな。漫画やゲームじゃねえんだぞ。脳みそいじって“才能”を与えるなんてことできんのか」

 「できるさ。もちろん“才能”っていうモノがあるわけじゃない。経験、知識、技術、センス、そして合理的な思考・・・それらを脳に移植すれば、総合的に“才能”を獲得することができる。それを何十回、何百回と繰り返すのさ」

 「・・・」

 

 信じられねえな。希望ヶ峰学園が、生徒を使ってそんな手術をしてたなんて。ファイルに書いてあった『“才能”の物質化』が、旧学園時代になんの“才能”もねえ生徒を使って形になってたのか。何百回と脳をいじられて、そいつはまともなままでいられんのか?

 

 「まとも、とは言えないね。その生徒は多くの“才能”を手に入れた。だけど“才能”を入れるために、脳の容量を空けたんだ。記憶や感情、いわゆる人間らしさを全て取り除いた。どこまでも“才能”と合理的思考に忠実な人間の完成だ」

 「“才能”と・・・合理的思考・・・」

 「すべては希望のため。彼らは本気で、それが人類のためになると考えてたんだ。だけど皮肉なことに、“超高校級の希望”であるカムクライズルは、江ノ島盾子のせいで“超高校級の絶望”になった。それが、どれほどの脅威か分かるかい?」

 

 “超高校級の希望”が、“超高校級の絶望”に?学園が研究し続けて、ひとりの人間をぶっ壊してまで創った“超高校級の希望”が、あんな陰気な集団に堕ちたってのか?

 

 「あらゆる“才能”を持つ希望ならば、希望ヶ峰学園にとっては研究の集大成、未来への光だ。でもあらゆる“才能”を持った絶望は、危険であり脅威でしかない。その証拠に、『人類史上最大最悪の絶望的事件』や『希望ヶ峰学園史上最悪の事件』『コロシアイ修学旅行』。これらの事件に、当時のカムクライズルは首謀者の一人として関わっている」

 「・・・」

 

 思わず生唾を呑み込んだ。あらゆる“才能”っつっても漠然としてるが、そこにはマジシャンとか陰陽師みたいなもんばっかりじゃなく、爆弾魔とかのヤベえ“才能”も含まれてたはずだ。そんな奴が絶望思考を持ってると思うと・・・確かに、ぞっとする。

 

 「人類の叡智は必ず人類の脅威になる。そして二つの立場が対立する。その叡智を完全に支配下に置こうと躍起になる人たちと、その脅威を完全に封じ込めようと必死になる人たちだ」

 「それが、旧学園派と未来機関派か」

 「うん。旧時代の研究を引き継いで、『絶望しない“超高校級の希望”カムクライズル』を創ろうとしている旧学園派。カムクライズル研究はおろか、その存在した痕跡すら抹消しようとしている未来機関派。どっちもどっちさ。盲目で、神経質なんだ」

 「・・・で、お前は未来機関派か。そのカムクライズルって奴について調べて、チクるのがお前の仕事ってわけか」

 「そういうこと。でも、もうそれもおしまいだ。ボクは旧学園派に目を付けられた。だから“超高校級の問題児”としてここにいる。ここを無事に出られたとしても、ボクは間違いなく元の学園生活には戻れない」

 

 さらっと言ってるが、それはつまり、希望ヶ峰学園が曽根崎を消すってことだろ。大浴場で見たファイルからしても、こいつは旧学園派にスパイだって勘付かれてる。だとしたら、なんでこいつはここを出ようとしてる?このままモノクマに飼い殺されるか、学園に戻って学園に殺されるか、その二択だ。

 

 「不思議そうだね」

 「当たり前だ。どっちにしたってお前の周りは敵ばっかじゃねえか。学園から逃げても、モノクマから逃げても、結局は同じ未来だ。俺が言うのもなんだが・・・なんで絶望しねえ?」

 「・・・人はさ、希望と絶望だけじゃないんだ。みんな忘れがちだけどね」

 

 清々しいほどの笑顔で、曽根崎はあっけらかんと答えた。未来機関のスパイになって、旧学園派から目ェ付けられて、こんなところでコロシアイさせられて・・・挙げ句の果てにはどっちにしろ消される未来だ。そんなふざけた運命、なんでこいつは受け入れられんだ。

 

 「カムクライズルに関わった時から、こうなることは決まってたんだ。ボクの先輩もそうだった」

 「?」

 

 遠くを見る目で、曽根崎はそんなことを言う。

 

 「ボクはジャーナリストだ。隠されたことがあるなら明らかにしたい。みんなに真実を伝えたい。希望ヶ峰学園の存亡に関わるネタなんて、命を懸ける価値があると思わないかい?」

 

 さあな、と俺は言いそうになって、言葉を飲んだ。そんな大事に俺を巻き込んだのか、とも思ったが言わなかった。それを言っちまったら、また俺はこいつを逃しちまう。

 

 「話が逸れたね。とにかく、そういうことさ。このまま学園にカムクライズル研究を進めさせてたら、きっとまた人類は絶望する。それを止める手立てを探すのが、ボクの仕事だ」

 「人類とか絶望とか・・・もううんざりだ。何を隠してるかと思ったら、お前もそんな奴だったんだな」

 「他人事みたいだね」

 「他人事だったらどんだけよかったか。今の話聞いた以上は、俺ももう当事者なんだろ」

 「う〜ん」

 

 スケールのデカ過ぎる話に、もううんざりしてきた。それに巻き込まれたってことにも、なんとなく耐性がついてんのかも知れねえ。命懸けってのも今更過ぎて、いまいち緊張感にかける。それもこれも、実感が湧かねえからだ。

 

 「それで、当事者になっちゃった清水クンはこれからどうするの?まだ捜査時間は終わりそうにないけど」

 「ファイルが他にもないか探すっきゃねえだろ。今はこれしか手掛かりがねえ」

 「だったら、ちょっと付き合ってくれない?確かめたい場所があるんだ」

 

 そう言うと曽根崎は、立ち上がってさっさと栽培室から出て行こうとする。俺がついてくることが当然とばかりに、見向きもしやがらねえ。合宿場はあらかた探したし、六浜やそれ以外の奴らも別に動いてる。わざわざ俺が行かなくても、ファイルがありゃ見つけるだろ。

 モノクマの気が変わらねえうちに、曽根崎について行ってみるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『コロシアイ合宿生活』

生き残り人数:残り5人

 

  清水翔   六浜童琉  【晴柳院命】   【明尾奈美】

 

  望月藍  【石川彼方】 曽根崎弥一郎   【笹戸優真】

 

【有栖川薔薇】 穂谷円加  【飯出条治】 【古部来竜馬】

 

【屋良井照矢】【鳥木平助】 【滝山大王】【アンジェリーナ】




うまく書き進められませんねえ。時間と計画性をください。切に
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。