ダンガンロンパQQ   作:じゃん@論破

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第一章「忘れた熱さに身を焦がす 後編」

 

 こちらは、『ダンガンロンパQQ』の解説になります。

 本編を読了していることを前提に執筆しているため、本編についてのネタバレが多分に含まれています。

 まだ本編を読まれていない方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……」

 

 「……」

 

 「……」

 

 「……始まってますよ」

 

 「ふわっ!?はえ、ええっと!?ご、ごめんなさいすいません!あわ、あ、あのぅ……!えっと……!」

 

 「落ち着いて。練習通りにやればいいんですよ。深呼吸して」

 

 「あっ、は、はい。すぅ……ふぅ〜。すぅ……ふぅ〜。し、失礼しましたあ」

 

 「では、仕切り直しましょう。3,2,1,はい」

 

 「はい。創作論破『ダンガンロンパQQ』、解説編『後のお祭り』をご覧の皆々様、こんにちはあ。数ある作品の中から本作を選んで戴きほんまにありがとうございますぅ。うちは第一章『忘れた熱さに身を焦がす 後編』の解説を担当させていただきます、“超高校級の陰陽師”晴柳院命ですぅ。よろしうお願いしますぅ」

 

 「はい、よくできました。いい子いい子」

 

 「あ、あのう。うちの頭を撫でるより、あなたも自己紹介してください」

 

 「撫でてないで名乗り出て、っていうことですね。承りました」

 

 「そんな微妙にかかってるような言い方はしてませんけど……」

 

 「皆様、初めまして。私は今解説編で晴柳院さんとご一緒させていただきます。希望ヶ峰学園1年生、“超高校級の華道家”袴田千恵と申します。宜しくお願い致します」

 

 「うち、びっくりしました。まさか袴田さんと解説することになるなんて。てっきり有栖川さんとやとばかり思うてました」

 

 「あら、私より有栖川さんの方がよかったですか?そうですか……晴柳院さんは有栖川さんの方がお好きでしたか……」

 

 「ちゃ、ちゃいますちゃいます!そういう意味やなくてその、う、うちが一番仲良うさせてもらってるのが有栖川さんやったし、一章って有栖川さんがメインのお話やから、そうなるもんやと思ってたってだけです!袴田さんとでもうちは嬉しいです!」

 

 「袴田さんと()()……」

 

 「はわわ……い、今のはそういう意味とちゃうくてぇ……そのぉ……」

 

 「うふふ、冗談ですよ。そんなに慌てふためかれたらこっちが申し訳なくなりますね。ごめんあそばせ」

 

 「あそばせて……か、からかわんといてください!」

 

 「ぷんすこしている命さんも可愛らしいですよ。私はそんな命さんもすこですよ」

 

 「す、すこ?」

 

 「好きって意味のネットスラングですよ。ふふ、面白い言い方をする方々がいるものですよね」

 

 「取り留めのない会話の飛び方されるとうちがついて行けんくなります……。ネットスラングとかあまり詳しうないんですよぉ」

 

 「本当に、命さんは面白い方ですね」

 

 「あのう、タイミングを逃す前に聞きたいんですけど、いつの間にうちのことを命さんなんて呼ぶようにならはったんですか?」

 

 「命さんがからかわれてた辺りからですよ。イヤですか?」

 

 「イヤっちゅうか、家族かアニーさん以外にあんまり下の名前で呼ばれることがなかったんで、なんだかヘンな感じがするんです」

 

 「有栖川さんはなんて呼んでらしたでしょう?」

 

 「えっと……うぅ」

 

 「どうしました?」

 

 「うう……自分で自分のあだ名を言うのって恥ずかしないですか?」

 

 「恥ずかしくないですよ。有栖川さんになんて呼ばれてたのか教えてください」

 

 「うちに言わそうとしてますよねぇ!?」

 

 「時間がないですから。早く」

 

 「えっと……み、みこっちゃんって呼ばれてました……あわわ、やっぱり恥ずかしいです……」

 

 「では私もみこっちゃんと呼びますね」

 

 「勘弁してくださいよぉ!」

 

 「ではみこっさんですか?」

 

 「それはそれでなんだか気の良い小父様のあだ名みたいで釈然としないです」

 

 「ではやはりみこっちゃんの方がいいですね。そもそも有栖川さんがみこっちゃんと呼んでいるのに私が晴柳院さんや命さんなんて余所余所しく呼ぶのは不公平ではありませんか」

 

 「不公平もなにも、うちと有栖川さんの関係性と、うちと袴田さんの関係性って全然ちゃうものですし……」

 

 「というわけで、今回の解説編は私とみこっちゃんの二人でお送り致しますよ」

 

 「あだ名呼びのまま進行するんですかあ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「では改めて、画面の前の皆さんダンガンワ」

 

 「ダンガンワ?」

 

 「私は『第一章 忘れた熱さに身を焦がす』の解説編後編を担当します、“超高校級の華道家”袴田千恵です。相方はみこっちゃんです」

 

 「自己紹介くらいちゃんとさせてくださいよぉ!」

 

 「突然ですけどみこっちゃん、私も何かあだ名がほしいです」

 

 「ほんまに突然ですね。しかもいきなり本編と全然関係ない話題……」

 

 「有栖川さんはいつも女の子をあだ名で呼ぶクセがありましたよね。みこっちゃんをはじめ、本編でも明尾先輩はなみみんだったり、六浜先輩はドールんだったり、望月さんはヅッキーだったり」

 

 「一応女子全員分は考えてあったんですよねえ。終ぞ呼ぶチャンスが訪れなかった方もいましたけど」

 

 「みこっちゃんはその中で一番連呼されているあだ名なわけです」

 

 「連呼はされてないですよぉ!一番呼ばれてるのは確かですけど連呼とはちゃいますよ!」

 

 「実は私、友情の証の最たる例としてのあだ名にすごく憧れがありまして、いつかあだ名で呼ばれてみたいという想いがあるんですの」

 

 「ちょっとオーバーな気もしますけど、確かに仲良うないとあだ名なんて付けませんもんね。有栖川さんは袴田さんのことなんて呼んではったんですか?」

 

 「千恵、です」

 

 「下の名前そのまんま……有栖川さんらしくないですね」

 

 「入学当時から仲良くさせてもらってたので、その時の名残ですね。さすがに入学直後から誰にでもあだ名を付けるほど馴れ馴れしくする見境のない人ではありませんので」

 

 「下の名前呼び捨ても、十分友情の証な気がしますけど?」

 

 「それこそ私だって家族には下の名前で呼ばれてますよ!千恵、とか千恵さん、とか!でもそれじゃ満足できないんです!ずっとあだ名が羨ましかったんです!変なあだ名つけてもらわないと満足できない体になったんです!」

 

 「変なあだ名って言いよった……。ほな有栖川さんに付けてもうたらええやないですか」

 

 「有栖川さんは特別なので、今のままでいいです。どちらかというと、みこっちゃんに付けてもらいたいです。友情の証に」

 

 「うちですかぁ?えっと……千恵さんですから……“チェーさん”とか?」

 

 「それはちょっと……ナイです」

 

 「ごめんなさい……」

 

 「いいんですよ。ドンマイです」

 

 「なんでやろ。励まされてるのにそれはちゃうやろって思てまう。えっと、ほな苗字ですか?はかまだ……はかまだ……ハカマダー、まだちゃん、かまっち……あっ、はかまだちえ、ですから、ダッチェスとかええんちゃいますか?なんか洋風ですし!」

 

 「やっぱりあだ名はいいです。千恵と呼んでください」

 

 「丸ごと却下された!ごめんなさい!」

 

 「思えば、自分からねだって付けて貰ったあだ名に友情も愛情もありませんでした。私は表面的な物事に囚われて、本質を見失いかけていたんですね。愛のないあだ名でそれに気付かせてくれて、みこっちゃん、さすが“超高校級の陰陽師”です。貴女は私の浅薄な羨望を祓ってくださったのですね」

 

 「悟った感じで語らんといてください。握手を求めんといてください。うちを褒めてるようで貶さんといてください!」

 

 「不器用なみこっちゃんも愛おしいですよ。良い子良い子」

 

 「あの、良い子て言いますけど、うちと千恵さん同い年ですからね」

 

 「でもみこっちゃん、早生まれですよね?なら私の方がお姉さんでしょう」

 

 「小学生の理論やないですか!早生まれですけど!あれ?でも千恵さんのお誕生日って決まってるんですか?」

 

 「いいえ。けど、みこっちゃんのお誕生日が3月24日でしょう?だから4月1日から3月23日の間に生まれていればみこっちゃんよりお姉さんになるわけです。およそ98%の確率で私の方がお姉さんなんですよ。これはもう、お姉さん確定でいいじゃありませんか」

 

 「計算早っ!?いや、そうやとしてもまだ可能性あるやないですか!というか確率論的にお姉さんっていうのもよう分かりません!」

 

 「さすがみんなの妹、みこっちゃんですね。もっとなでなでされていいんですよ」

 

 「うちはもうなでなでされたないです。そこまで言わはるんやったら、約束してくださいよ」

 

 「なんですか?」

 

 「この解説編が終わるまでの間に、作者さんが千恵さんのお誕生日を決めはります。うちらの誕生日を決めたのと同じ方法で。それでもしうちより後の日付になったら、うちが千恵さんをなでなでしますから」

 

 「……みこっちゃんがそれで満足されるなら、私は構いませんよ。みこっちゃんたちのお誕生日はどうやって決められたのですか?」

 

 「はい、えっとまず、千恵さんは誕生花ってご存知ですか?」

 

 「勿論です。日付ごとに設定されたお花ですよね。凡そ季節のお花が割り当てられてますね」

 

 「釈迦に説法でした……。それで、誕生花にもそれぞれ花言葉がありますよね。うちらの場合はまず、それぞれの立ち回りやキャラクターを表す言葉を決めて、それを花言葉に持つ花を探します。その後、その花が誕生花に設定されてる日付を誕生日にするんです」

 

 「なるほど。ちなみにみこっちゃんの誕生花は、3月24日ですとハナビシソウですか。花言葉は『希望』……ああ、なるほど」

 

 「なるほどです」

 

 「では私の場合は何になるんでしょう?その人のイメージではなくて、言葉のイメージからとなりますと」

 

 「それも含めて作者さんの裁量です。うちは最良の結果が出ることを祈ってますけどね!」

 

 「やはり陰陽師ですから、祈って願って思えばその通りの結果になると?」

 

 「それ今回のお話の最後の方でうちが言うことですからあ!先に言わんといてください!」

 

 「うふふ、からかいがいがありますね」

 

 「くぬぅ、誕生日うちより後やったら絶対なでたんねん……!後悔するほど……!」

 

 「呪われそうですね♫」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そろそろ本編の解説でもしましょうか。QQの大和撫コンビですよ」

 

 「これ以上打線したらあかんのでつっこまんときます」

 

 「学級裁判がいよいよ始まりますが、傍目で見ていると楽しそうですね。皆さんで輪になって議論するなんて、面白そうじゃないですか」

 

 「完全に他人事やないですかあ。冗談やないですよ。ほんまに怖かったんですから!」

 

 「命さえかかってなければ、いいレクリエーションになると思いますけれどね。円形に並ぶと全員がお互いの顔を見ることができますし、全員が対等な立場で話し合うというのもなかなかない機会ですし」

 

 「ここ、いきなり最初から屋良井さんがアニーさんを犯人に決めつけてますね。命かかってるゆうのにそんな決めつけ怖なかったんですかね?」

 

 「屋良井さんの場合は、単に目立ちたかっただけだと思いますよ。それに議論をしていく以上、膠着してしまうのが一番まずい展開ですからね。なんでもいいから場を動かしたかったのでしょう」

 

 「そう考えると、屋良井さんってきちんと考えて行動してはるんですかね?何ヲするにも目立つっていうことが第一にありますし、あんまりイメージはないですけど才能的にも頭脳派ですし」

 

 「何も考えてないように見せて実は考えている、彼はそう言った自分の本質を隠匿することにかけては卓越した技術がありますね。おそらく本気でアニーさんが犯人だとは考えていなかったんじゃないですか?」

 

 「その後に古部来さんや六浜さんに反論されてあっさり引き下がってますしねえ。以降の裁判でも屋良井さんは積極的に議論に参加してた感じがします。あんな人ですけど、うちらの味方でいる間は頼もしい人やったんかもしれませんね」

 

 「その分だけ敵に回った時が厄介でしたでしょう?」

 

 「厄介いうか、異常でした。うちらとは本質的に違う生き物みたいな……ほんまに物の怪の類いうてもおかしないくらいです」

 

 「妖怪や物の怪というのは案外そういうものかもしれませんよ。枠組みから外れたものを異質な存在として認識する。理解できない恐ろしいものに取りあえずの説明をする。それは人々が自己を守るための防衛策でもあるのです」

 

 「そういうのは陰陽師のうちが解説することですからあ!って、妖怪とかやなくて、屋良井さんがそれくらい怖かったいうことですよ」

 

 「そしてアニーさんの疑いが晴れた後は、清水さんが滝山さんを怪しむと。アニーさんの手の臭いをかぎ分けるなんて滝山さんにしかできないでしょうし、おかしいなと思う気持ちは分かりますが、怪しいとまでいきますか?」

 

 「う、うちも正直、滝山さんが人を殺そうとか人を陥れようとか、そんな器用な考えができるとは思えませんでした……。清水さんが考え過ぎなんかなって」

 

 「言いたいことは分かりますけど、ほとんど周りの同意を得られていなかいのは、本当に清水さんらしいですね。ご自分の考え方に固執してしまいがちなのですね。ぷーくす」

 

 「ぷーくす!?わろてませんか!?」

 

 「微笑ましいではないですか」

 

 「仲間殺しの裁判に微笑ましい瞬間なんかあるわけないやないですか!笑い方もおかしいですし!」

 

 「それにしてもここの清水さんは本当にコテンパンという他ないですね。六浜さんに反論され、曽根崎さんに諭され、ご自分で矛盾に気付かされ……私だったら恥ずかしさでどうにかなってしまいそうです」

 

 「千恵さんって、案外ブラックユーモアが好きだったりするんですかあ?裁判が微笑ましいとか、清水さんがコテンパンだとか……」

 

 「事実ではないですか」

 

 「コテンパンは事実ですけど微笑ましくは絶対にないですからあ!」

 

 「みこっちゃんもそれなりに言うこと言ってますよ。ご覧なさい。コテンパンにされた清水さんが拗ねてもう議論に参加しないようなことを言っていますよ」

 

 「たった一回でそんなことになるなんて……ほんまに最初の頃の清水さんて、ひどかったんですね。よう最後の方はあんな風になれましたね」

 

 「始まりが低い分、物語を通しての伸び率が一番著しい方ですね。主人公ということを差し引いても最初と最後で別人のようです」

 

 「低い……。だ、だけどなんやかんや言って、裁判にも真面目に参加してはりましたし、逆にうちらのことをよく見てくれてはったんは、清水さんかもわかりませんね。憎まれ口をきいても根は真面目でええ人なんです」

 

 「ツンデレですね」

 

 「そう言うとなんか軽く聞こえてしまいますね」

 

 「行動も発言も軽々しい方ですから、ちょうどいいのではないですか?軽口一つ叩く余裕もなく、理由も根拠もなく人を軽蔑し、挙げ句何事をも軽んじる彼ですよ。それにツンデレというお手軽な属性を付けた方が、呼ぶときも気軽じゃないですか」

 

 「軽いって字がゲシュタルト崩壊してしまいますよ……」

 

 「軽く眩暈がしてきますね」

 

 「もういいですからあ!千恵さんは清水さんに恨みでもあるんですか!?」

 

 「恨みはないですし、接点もありません。ですけど、彼のような人間はあまり見ていて気持ちのいい方ではないでしょう?第一、私の親友の有栖川さんを追い詰めたのは彼じゃないですか」

 

 「ええ……追い詰めたいうか、追い詰めないとうちらの命が危なかったんですよぉ。それは仕方ないっていうか……うちかて有栖川さんが壊れてくんは見たなかったですけど、皆さんの命が懸かってるとなると……あうぅ」

 

 「大切な人1人の命と、その他大勢の命。天秤にかけるにはどちらもあまりに重すぎますね。そんな状況をムリヤリ作り出すから、このコロシアイというのは恐ろしいのですよ」

 

 「今のは完全に千恵さんが導いた思うんですけど……」

 

 「まあその場面は少し先のお話ですけどね。本編は今まだ、返り血の処理の方法についてです。シーツを傘のようにして防ぐという案は原作2の第一章からとっていますが、実際その方法は有効なのでしょうか?」

 

 「どういうことですか?」

 

 「灯りの消えたコテージの床下で、ただでさえ暗い中をシーツを被って手には大きな凶器、そこから狭い床の隙間を縫って致命傷を与えるというのは、実はかなり難易度の高いことなのではないですか?明らかに料理人の身体能力を逸脱していると思いますが」

 

 「ま、まさか原作のトリックにまでそんなことを言い出すなんて思いませんでした……QQの方のトリックやったらまだしも、原作批評はこんなおまけの1コーナーでやるようなことちゃいますてぇ」

 

 「でも、みこっちゃんは実際どう思いますか?加えてあの方は、かなり恰幅が宜しいではないですか。動きにくさはひとしおかと」

 

 「……そ、そりゃあ、多少の現実味のなさはお約束というか、ご愛敬というか、フィクションなんやから多めに見たらええと思いますよ。そんなん言いだしたらQQのトリックかて、粗を探そうと思えばいくらでも出てくると思います」

 

 「まあみこっちゃんたら、原作批評どころかなんと上から目線な物言い。おまけにご自分の作品にまで飛び火させるだなんて、尖っていますね」

 

 「千恵さんが言わせたんやないですか!やめてくださいよ!うちが怒られますからあ!」

 

 「画面の前の皆さん、みこっちゃん、いえ、晴柳院さんに悪気はないんです。この子はちょっと舌足らずなだけで,ダンガンロンパシリーズを愛しているんです。私の拙い話術のせいで晴柳院さんのイメージダウンに繋がるのは本意ではございません。どうか晴柳院さんをこれからも一つ、よろしくお願い致します」

 

 「急に真面目な感じで謝意を表明せんといてください!ほんまにうちがやらかしてもうたみたいやないですか!なにが拙い話術ですか!十分言葉巧みにうちを陥れようとしてるやないですか!」

 

 「あらやだみこっちゃん、私が本編で有栖川さんと絡むシーンがほとんどなくて、その代わりにみこっちゃんがどっぷり絡んでるからって嫉妬してるとでもお思いで?私、そんなに心が狭い人間ではありませんことよ」

 

 「うちは何も言うてないのにつらつらと……語るに落ちるってこういうことなんですね」

 

 「もう過ぎたことですからね。いえ、今こうして解説している以上、過ぎたことではありませんか。そうですね。現在進行形でみこっちゃんは有栖川さんと仲良くしてらっしゃるんですよね」

 

 「めちゃめちゃ根に持ってるやないですか!根深くて揺るぎない嫉妬心やないですか!」

 

 「これでも華道家の端くれですから、根は落としますよ。ちなみにうちの流派には、花と茎以外のすべてを削ぐという分派も存在します」

 

 「根も葉もない話ですね」

 

 「花の持つ美しさを極限まで引き出す方法と言っていますが、やはり行きすぎですよね。むしろ私は花じゃなくても植物それぞれの美しさがあると思います。花には花の、樹には樹の、藪には藪の、バケツの底にこびりついた藻にはバケツの底にこびりついた藻の美しさがあると思います」

 

 「自然な感じや思たらむっちゃ強引に裁判の流れに話を合流させよった……。これを合宿場の中から見つけ出す曽根崎さんの目聡さは、なんちゅうか、恐ろしいほど鋭いですねえ……。もしかしたら気付いてないだけで、何か知られてるんちゃうかと今更怖なってきました」

 

 「みこっちゃんが私の知らない有栖川さんの笑顔を知っているように」

 

 「だから対抗意識燃やさんといてください!笑顔は知ってはるでしょう!?」

 

 「私が知っているのは“超高校級の裁縫師”としての有栖川さんと、女子高生としての有栖川さんの顔だけです。お料理してる有栖川さんや寝ている有栖川さん、人を叱る有栖川さんに不安がある有栖川さん……なにより、みこっちゃんと一緒にいるときのペットを可愛がるような顔なんて私は見たことありませんでした!」

 

 「ペット?」

 

 「ここまで有栖川さんの魅力を引き出せるみこっちゃんですから、もっと仲良くなりたいですわ。この次は有栖川さんも一緒に3人でお茶でもしましょう」

 

 「お茶するのはええんですけど、なんだか修羅場になりそうな気がしてなりません」

 

 「ほほほ」

 

 「怖い!愛想笑いを隠そうともしぃひん真顔が怖い!」

 

 「私なんてちっとも怖くありませんでしょう。本編をご覧下さい。古部来さんが何やら難しいことを仰っていますよ。怖いですね」

 

 「学級裁判が行き詰まったときに、状況を打開する議題や疑問を撃ち出してくれるんは、いつも古部来さんや曽根崎さんや六浜さんでした。うちとちごて頭の出来が良いから助けられましたあ」

 

 「お三方ともそのために命を狙われることになりますし、その後にはそのうちお二人にみこっちゃんは追及されてしまいますけれど。皮肉なものですね。昨日の友は明日の敵……」

 

 「QQの章タイトルみたいなもじり方せんといてください。うちは敵やなんて思いませんから。それにああなったんは全部笹戸さんのせいですから」

 

 「あら。みこっちゃんが人の責任を論うなんて珍しい。もしかして怒ってます?」

 

 「怒るいうか……なんやろ。悲しいって気持ちも、恥ずかしいって気持ちもありますけど、笹戸さんのことを憎いとか思ったことはないんです。あの人にも色々あって、うちの知らん所で知らん人との由縁があったんやろなって考えたら、簡単に恨むとか憎むとかできません」

 

 「自分が死ぬ直接の原因を作った人にさえそんなことを言えてしまう貴女の心の方が、私はよっぽど恐ろしいです。彼がどう思っているかなんて知りませんけれど、悪いと思っている人にその言葉は、逆に苦しみにしかなりませんよ」

 

 「ならうちはどうすれば……」

 

 「怒ってあげればいいんです。怒りのままに罵詈雑言を浴びせ、憎しみのままに殴って蹴って、悲しみのままに涙すればいいんです」

 

 「うぅ……」

 

 「というわけで、みこっちゃんには今から怒ってもらいます。お得意の関西弁で相手に脅しをかけてみてください」

 

 「どうしたんですか急に!?今までのシリアスな空気はどこ行ってもうたんですか!?」

 

 「シリアスな空気などいつ出ていましたか?気のせいでは?」

 

 「なかったことにするんですかさっきのやり取り!?っていうかうち、別に関西弁が得意なわけやなくて、こういう喋り方なだけですから!文字やったらそない津俵へんと思いますけど、イントネーションかてちゃんと京言葉に合わせてるんですよ!?」

 

 「そないどころか全く伝わらないですよ。イントネーションは。でも、画面の前でこう思っている方もきっといるはずですよ。「みこっちゃんはいつになったらいかつい関西弁を使うんだろう」って」

 

 「いるわけないやないですかあ!いかつい関西弁なんてうち無理ですってえ!」

 

 「そんな弱気ではドスが利きませんね。みこっちゃんが本気で怒ればいいんですが」

 

 「解説の相方を怒らせようとせんといてください。それに、うちはほんまに怒ったら黙ってまうタイプなんで、仮に怒らされてもご期待にはそえません」

 

 「全国一億五千万人のみこっちゃんファンのためにも、私が解説中に必ず怒らせてみせます」

 

 「ちょっとだけ日本の人口超えてるやないですか!」

 

 「ツッコミには余念がありませんね」

 

 「千恵さんにつっこまされてるんですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「古部来さんの発言のおかげで、かなり議論のテーマが具体的になりましたね。まずは凶器の話からです」

 

 「う、うちは飯出さんのご遺体をまともに見ることもでけへんかったので、モノクマファイルもろくに見られませんでした・・・。凶器なんてさっぱりでした」

 

 「あんな残酷なもの、見なくて正解ですよ。みこっちゃんにはきれいなものだけ見ていてほしいです」

 

 「千恵さんはその現場にいてませんでしたよね?見たかのように言うてますけど」

 

 「あんな凄惨な姿になっているのは見るに堪えません。いくら因縁のあるお方だとしても。いくら有栖川さんが私のためにしてくださったことだとしても」

 

 「千恵さんにとっては複雑な事件や思います。飯出さんのしたこともですし、有栖川さんの気持ちも分かりますし。だけどやっぱり、人を殺めてまうのはいけないことです」

 

 「そうした葛藤と、その末に下した決断。残る後悔。そういったものが綯い交ぜになって、漠然とした脱力感、罪悪感、不安と恐怖になるのですね。そんな先の未来を考えたときに、人は絶望してしまうのです。私にはよく分かります」

 

 「分かるんですか?」

 

 「私も、母親に絶望しましたから。有栖川さんは私の希望になろうとしてくれたのに、自暴自棄になって袖にしてしまったのです。もしかしたら飯出さんも、私の希望になる方かも知れませんでした。ですがその選択はできませんでした」

 

 「い、家柄って、重いですよね。うちもよう分かります。なんでこの家に生まれてもうたんやろって、本気で悩んだりしました。でもうちの人生はうちだけのものやなくて、今まで連綿と続いた家の歴史をせたろうてるんやって思ったら、なんも反抗できんくて・・・」

 

 「お互い辛い想いをしているのですね。これも和服キャラの宿命ですか」

 

 「和服キャラでくくらんといてください!また出た軽々しいキャラ付けの括り!その括りやったら古部来さんもまとめられてまいますよ」

 

 「でもあの方も、家のことを背負っているようなことを仰っていたでしょう?詳しくは本編でもあまり話されておりませんでしたが」

 

 「確か、お父様も棋士で、古部来さんが敬服するお人だとか。えっと、お名前が確か……桂馬さん?ちゃうなあ。金将さん?やなくて」

 

 「角行さんですね」

 

 「それでした!」

 

 「み、みこっちゃん……!次作の主人公の子の持ちネタをそのまんまパクるだなんて……!おそろしい子……!」

 

 「あああちゃうちゃうちゃう!い、今のはそういうんやなくてたまたまですから!白目剥かんといてください!ごめんなさい!」

 

 「しかもみこっちゃんよりだいぶ背も低いのに……!」

 

 「背の低さは関係ないでしょ!ほんまに気にしてるんですからね!本気で牛乳に相談したことかてあるんですから!」

 

 「そこまで開けっぴろげに話すことはないと思いますけど……本気で牛乳に相談って、飲むだけでしょう」

 

 「一時期は毎朝毎晩飲んでました。全然相談応えてくれませんでしたけど、牛乳さん」

 

 「……そのようですね」

 

 「全身を見んといてください。ご自分の胸と見比べんといてください」

 

 「飲むだけじゃなくて適度な運動と十分な睡眠が必要なんですよ。健康的な生活してましたか?」

 

 「陰陽師の修行は夜が本番やったんで、まとまった睡眠はあんまり……」

 

 「それですね」

 

 「やっぱり由緒ある家柄なんてイヤやあ!!」

 

 「さ、オチもついたところで本編にいきましょう。本編では飯出さんが殺されたのがどうやら展望台らしいというお話ですね。あれだけ血が散っていれば、そう考えるのは難しくないと思いますが」

 

 「今やから言いますけど、展望台で殺された後に中央通りまで移動した謎って、そないに難しいことやないと思いますね。話をまたいで引っ張ってますけど、読んではる皆さんはすぐに勘付かれはったんちゃいますか」

 

 「人一人を抱えて山道を降りるよりも突き落とした方が簡単ですしね。合宿場の規則上グレーな部分ではありますが。それにしても有栖川さん、いくら怒っていたとはいえあまりにも……」

 

 「ちゃ、ちゃいますよ!あれは事故ですから!有栖川さんは突き落とす気なんてなかったんですよ!刺された飯出さんが暴れまわるから、うっかり足を踏み外して落ちていっただけです!」

 

 「擁護するようでできていませんね。まあ、有栖川さんに非がないと言ったらそれは否定しますけれど」

 

 「ほんまにうちらの立場って微妙ですよね。有栖川さんのしたことは悪いことやと言いつつ、有栖川さんの気持ちも分かるし、何より動機がうちらのためですから」

 

 「裁判からおしおき編の解説に私たちを宛てがうなんて、作者さんはどういう采配をしているんでしょう。書きにくくなるのはご自分ですのに」

 

 「ここでのメタ発言ももはやお決まりですねえ。本編も間が空きましたし、一旦休憩にでもしませんか?」

 

 「みこっちゃんがそれを言い出すとは思いませんでした。でもいいですね、ちょっと休憩して雑談でもしますか」

 

 「それやと今までとあんまり変わらないような気がしますけど……。むしろうちはちょっと喉が渇いてきましたし、口も疲れてきました。お昼寝したいです」

 

 「ずいぶんと気の抜けた提案ですが、大丈夫なんですか?」

 

 「ほんのちょっとだけですよぉ。一旦収録を止めればええやないですか」

 

 「ああ、カメラが回ってる時と回ってない時では態度が全然違うタイプですか。ニコニコしている人ほどカメラが止まると急に無口になったり怖くなったりするあれみたいなことですね」

 

 「ちゃいますよ!?うちはそんなイメージ戦略練ってませんから!」

 

 「というイメージ戦略?」

 

 「ちゃいますて!」

 

 「それではこの後は学級裁判の後編ですよ」

 

 「前編だけでえらい話してもうた……。この後大丈夫やろか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はい、学級裁判後編ですよ。残り半分もがんばっていきましょう。袴田千恵です」

 

 「改めてよろしくお願いいたしますぅ。晴柳院命ですぅ」

 

 「早速ですが、みこっちゃんは逢瀬をするなら昼と夜どちら派ですか?」

 

 「なんですか急にその質問。逢瀬?デートって言うたらええやないですか」

 

 「デートと言うより逢瀬と言う方が私のキャラに合ってますもの、それにそちらの方がなんとなく艶美な響きがあるじゃないですか」

 

 「艶美な響きは絶対に必要なかったと思いますけど。うぅん・・・逢瀬するようなお相手がいてませんから分かりませんけど、お昼の方がええんちゃいますか?夜は危ないですし、どこへ行くにもお昼の方が都合よろしいんちゃいます?」

 

 「ですが、夜景を眺めながら人気の少ない場所で二人きり……静かな場所でお互いの胸の鼓動をだけを確かめ合う、そんなのもステキじゃないですか?」

 

 「あのぅ、何の話ですか?全然本編と関係ないやないですか」

 

 「有栖川さんが飯出さんを展望台に呼び出して、飯出さんが完全にその気になっていたので、この話をする絶好の機会だと思ったのですが」

 

 「この話をする絶好の機会をうかがってはったんですか!?」

 

 「そりゃもう虎視眈々と」

 

 「どこからそんな熱意が湧いてくるんですか……。全然そんな雰囲気とちゃいますし!有栖川さんは飯出さんとデートするつもりで呼び出してませんから!」

 

 「うん?当然ですよ?なぜ有栖川さんが私に一言もなく殿方と逢瀬をなさるんですか?私だってまだ有栖川さんと学園の外にお出かけしたことなどないというのに」

 

 「なに嫉妬してはるんですか!?」

 

 「嫉妬ではありません。じぇらしぃです」

 

 「それ日本語にしたら嫉妬ですから!ですから、有栖川さんはそんなつもりで展望台を選ばはったわけとちゃいますから!」

 

 「しかしまあ、夜中に女子から展望台なんて場所に呼び出されて、期待しない殿方などいませんよね。その辺、有栖川さんもなかなか小悪魔ですね」

 

 「小悪魔どころの悪さやないですけど……。でもそうやって油断させるのも一つの理由やったんかも知れませんね。一番の理由は、この後で清水さんが暴きますけど、有栖川さんには行きにくい場所を犯行現場に選んで自分を捜査線上から外すんが目的でした。ハイヒールで山道は歩きにくいですからね」

 

 「加えて夜中では、まあ不便でしょうね。ですから多目的ホールの上靴を持って行って、それを履いたのですね」

 

 「まさか多目的ホールの靴やバケツまで見つかるなんて思ってなかったんやと思います。そこは、捜査中の曽根崎さんの勘が鋭かったんですね」

 

 「思えばこのコロシアイというシステム、序盤は容疑者が多くなるから自分が指名される確率が低くなる一方で、反抗中や捜査中は自分以外の全員の目を欺かねばいけないという絶妙なバランスが働いているのですね。よくできています」

 

 「学級裁判もよう知らん時ですから、どのくらいまで証拠品の処理やアリバイトリックを仕掛ければいいかも分かりませんから、犯人にとってはかなりの博打になるんですね」

 

 「逆に後半になれば目は欺きやすくなる一方で、犯人指名の確立は大きく上がる。必ずしも生者がクロとは限らない特殊な場合もありますが、それでもかなりの博打ですね」

 

 「せやから、序盤は凝ってるけど蓋を開けてみれば簡潔なトリックが多くて、後半になるほど大掛かりで複雑なトリックになってくんですね事件がどんどん難しくなってくのって、お話作りとして大事なことですけど、生き残り人数の状況や学級裁判の経験値から考えると、自然にそうなってくもんなのかも知れませんね」

 

 「なるほど、勉強になります。さすがみこっちゃん、説得力がありますね」

 

 「何がさすがなんかは触れんといておきます……」

 

 「やはり本編の学級裁判でも、犯人は男か女かという分かりやすい議題になっていますね。後半ほど当事者の行動の謎や具体的な殺害方法という、実践的な内容になってきている気がします。やはりほほえ──」

 

 「微笑ましくはないです絶対に」

 

 「そうですか。おや、みこっちゃん、あなたの名前が出て来ていますよ。学級裁判の中心になっているではないですか」

 

 「はわわ……もうその場面ですかあ……。う、うちが飯出さんに付きまとわれてたっていう件……」

 

 「お気持ちお察しします。彼の求愛は熱烈過ぎて、あてられた身としてはたまったものではありませんから。しかしここの様子を見ますと、みこっちゃんは飯出さんの恋心を知っていたのにそれを否定しているように思えますが」

 

 「否定いうか……単純に怖かったんです。飯出さんが行くところ行くところで声をかけてきはるんで、なんだか見張られてるような気がして……悪気がないのは飯出さんの眼を見て、声を聞けば分かるんですけど、だからこそ狂気染みてる感じがして……」

 

 「分かります。すごく分かりますみこっちゃん!彼はやり過ぎなのです!本当はよく気が回って、まめで優しくて心強い方なのに、行動のせいで全てが裏目に出ているのです!」

 

 「千恵さんは飯出さんのこと、そんな風に思ってはったんですか……?イヤやったんちゃいますか?」

 

 「殿方に迫られるのは悪い気はしませんよ。ですが家のことがあったので、あまりに強く迫られるとどうしていいものか分からなくて……。迷うということは、私も完全に飯出さんを拒絶していたわけではないのだと思います。家のことがなければ、もしかしたらお気持ちを承っていたかも知れません……」

 

 「そ、そうなんですかあ!?」

 

 「きゃっ、恥ずかしい♡」

 

 「いやいやそんなテンションちゃいますし!てっきり千恵さんは飯出さんのこと怖がってノイローゼになって自殺しはったんやと思てました!有栖川さんかてそう言うてましたよ!?」

 

 「それは有栖川さんが勝手に解釈したのでしょう。確かに怖いと思うこともありましたが、それも愛情故と考えると、彼の本心に触れたような気がして、ステキではありませんか」

 

 「はあ……うちにはよう分かりませんけど。じゃあ結局、千恵さんが飯出さんに悩まされてた遠因はお家にあると?」

 

 「そういうことになりますね。結局私はそんな現実から逃げ出しましたけれど、いまになってみれば思い切って飯出さんを頼って逃避行でもしていれば何か変わったのかも知れません……」

 

 「あのぅ、解説編で本編関係ないから言うて、あんまりぶっちゃけ過ぎんといてもらえません?今後の本編の見方がえらい変わってきてまうんで」

 

 「そういう企画ではなかったのですか?本編では語られなかった設定や裏話、キャラクター同士の関係性を描いて、本編を違った角度からも楽しめるように情報を公開するという」

 

 「そんなしっかりした説明、今回初めて聞きましたよ!ただのお祭り企画やと思てました!」

 

 「いま書きながら考えましたからね」

 

 「い、いま喋ってはるんは作者さんなんか千恵さんなんか、どっちや……?」

 

 「ですから、私が自分の気持ちをぶちまけてもそれは企画の趣旨なので許されるのです。むしろ本編ではほとんど出番がないのですから、ここで本音を言わずしてどこで言うのですか。はい、論破☆」

 

 「それはちゃう……く、ないです。もう好きにおしゃべりしてください」

 

 「では好きにしゃべらせてもらいますよ。ご覧ください。本編ではみこっちゃんがぶち切れてます」

 

 「ひゃああっ!!そ、そこは流してくださいよぉ!!」

 

 「「いい加減にしてください!!何を言われても、うちは飯出さんを殺したりなんかしてませんからあ!!!」って、こんなに大きな声出せるんじゃないですか。無意識でしょうけれど、ものすごい犯人っぽい言い回しですし」

 

 「ああううぅ……」

 

 「この後も「違うって言うてるやないですかあああああああああっ!!」と完全にキレてますね。先ほど、怒ったら黙るタイプなんてことを言っておいて、こんなに語気を荒げていらっしゃるではありませんか」

 

 「そ、その時は、学級裁判中でしたし……焦ってもいましたから、別というかなんというか……」

 

 「状況的に確かに容疑がかけられても仕方がないとは言え、さすがに可哀想ですね。ここの責められる流れもそうですし、有栖川さんに飯出さんからの手紙を暴露されるのもそうですし、その後容疑が晴れる根拠となったことも……」

 

 「全部この解説編で千恵さんにいじられた覚えがありますけど……。うちが何したっていうんですか……なんでこんな辱めをうけなあかんのですかあ……」

 

 「みこっちゃんは小さくて可愛いですから、みなさんつい意地悪したくなってしまうんですよ。小学生が好きな子にいたずらしたくなってしまうあれです」

 

 「みなさん高校生ですよね!?もうそんな段階は卒業してはると思うんですけど!?」

 

 「みこっちゃんを見ていると小学生時代が思い起こされるんですよ」

 

 「それ遠回しにうちの身長をいじってますよね!?いい加減にしてくださいよぉ!」

 

 「ついに怒られてしまいました。みなさん、みこっちゃんを怒らせることに成功しましたよ」

 

 「……はっ!しもた!」

 

 「ふふ、ごめんなさい。やっぱりみこっちゃんはからかいやすくて、面白い人ですね」

 

 「うぅ……謝らんといてくださいよ……。謝ったら許してしまうやないですか」

 

 「そんな律儀で寛大なところも可愛いですね」

 

 「知りませんッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さて、みこっちゃんの容疑が晴れた後は、全員で一度議論の流れをおさらいしていますね」

 

 「結論が出たかと思いきや当てが外れて、また全員が容疑者に逆戻りしてしまう絶望感は筆舌に尽くしがたいでしょう」

 

 「うちは疑われててすごく苦しかったですけど……この時の有栖川さんの心境もお聞きしたいですね。うちを庇ってくれたことは嬉しいですけど、それで自分がまだ容疑者になってまうんですから」

 

 「みこっちゃんに濡れ衣を着せて生き残るのだけはイヤだったと言っていましたね。結果的にはご自分が死んでしまうか自分以外が死んでしまうかですから、飯出さんを殺害してしまった時点で、みこっちゃんと有栖川さんが一緒に生きる未来はなくなってしまったのですが」

 

「有栖川さんはうちのことを救ってくれましたけど、うちは有栖川さんを救うことができませんでした……。こうして事件を振り返ってみて、うちのせいで有栖川さんは死んでまうハメになってしまったんかなって思います」

 

 「それは違いますよ。みこっちゃんの非は、飯出さんにイヤだと告げなかったことだけです。それも難しいことだとは思いますが、それ以外のことでみこっちゃんの責任はありません。相手の気持ちを考えられなかった飯出さんも悪いですし、最終的に殺人に手を染める決断をした有栖川さんも悪いです。それに、過去に飯出さんと家名から逃げてしまった私も、この事件の遠因という意味では非があります。ですから、誰か1人が悪いなんてことはないんです。みなさんがそれぞれ悪いところがあって、それが重なってこうなってしまっただけなんです」

 

 「……だからってこんな、うち以外の全員が割を食う形での終わりなんて、納得できませんよぉ……」

 

 「この件を解決するには、当事者全員がいなくなることで、因縁、怨恨、後悔諸々を丸ごとなかったことにするしかなかったんです。それがたまたまコロシアイという形で実行されたに過ぎません」

 

 「そ、そしたらうちはどうしたらよかったんですか……?」

 

 「過去のことは水に流して、同じことを繰り返さない。過去の足りない自分を反省して今日をよりよく生きる。それしかできません」

 

 「今日をより良く生きる……」

 

 「まあ、私たちは全員死んでしまっていますから、過去も今日も明日もないんですけれどね」

 

 「台無しや!!」

 

 「裁判が最終局面に差し掛かっているのです。本編と関係ない話で盛り上がっていないで解説をしていかないと。職務を全うしましょう」

 

 「どちらかと言えば今までの話の中では本編に関係あった方やと思いますけど……そんな強引な打ち切り方ありますか?」

 

 「裁判の最後で重要なテーマに切り替わるときはだいたい、望月さんが先導を切っていますね。あの方は神秘的で人間味が感じられませんが、頭の出来はよろしいようで」

 

 「望月さんも色々過去にありましたからねえ……それは後々お話していきますけれど」

 

 「アニーさんの手に血の臭いがついたのはいつどこでか、ですか。これを機に一気に犯人まで辿り着くわけですが、序盤でアニーさんの手についた血の臭いには触れているのですよね。そこから少しずつ話が変わっていって、みこっちゃん犯人説にまで行きつくとは。まさにニアミスというわけです」

 

 「多少作為的なのはご愛敬ということで」

 

 「みこっちゃんの愛嬌に免じてお許しください、ということですね」

 

 「ちゃいます。うちは自分の可愛さを振りかざすような人やありませんから」

 

 「それって、可愛いことは自覚している人の発言ですよね?」

 

 「この犯人指名のシーンは、文章でタメと衝撃をどう表現するか難しかったそうですよぉ。ここが学級裁判の一番の盛り上がりどころですからねえ」

 

 「はじめて無視されました……」

 

 「今まで出た情報を整理してるだけですけど、清水さんのここ一番の集中力と思考力はやっぱりすごいですね。主人公補正もあると思いますけど、“超高校級の努力家”ってほんまは相当すごい才能なんとちゃいますか?」

 

 「物語の終盤でも改めて取り沙汰されますね。努力家というのがどのような行動を指しているのか曖昧ですから、逆になんでもできるよう理由付けしやすいのでしょう」

 

 「ああ……有栖川さんが追い詰められてく……。焦って怖い顔になったり乱暴な言葉使いになってってます……見てられません」

 

 「ああいうところも有栖川さんの魅力ですよ。私みたいにマジメで女性らしい仕草ばかりよりも、ああいう現代風な言葉使いの方がいいという方もいらっしゃるでしょう」

 

 「絶対にこの場面で言うことちゃいますし、この解説編を読んでる人は全員千恵さんが真面目な人やとは思ってませんから。イメージと全然ちゃいました」

 

 「私も、みこっちゃんってもっと大人しくてやわらかい方だと思っていました。思ったよりツッコまれましたし、思ったより辛辣な瞬間もありました」

 

 「それはだって千恵さんがふざけはるから……」

 

 「ふざけてなんかいませんよ。私は私のまま、私が私であるためにやりたいことをしているのです。本編ではできなかったのですから、ここでくらいいいでしょう?」

 

 「そ、それを引き合いに出されるとなんとも否定できません……」

 

 「おっと、もう終わりの雰囲気を出している場合ではありませんよ。いよいよ有栖川さんが追い詰められて、最後の弁論をしているところです」

 

 「弁論もなにも、清水さんの推理は正しいですからね……何を言うてもこの局面では意味ないですよ。うちはまだ冷静ではいれませんでしたけど……」

 

 「厨房から包丁を持ちだした経緯の推理においても、みこっちゃんの弁護はほとんど意味をなしていませんでしたね。まあ、ぬいぐるみの中に包丁を忍ばせて持ち出すなんて、分かっていなければ気付くべくもないことです」

 

 「ああうう……」

 

 「みこっちゃん?どうしたのですか頭を抱えて」

 

 「うちがこのとき、有栖川さんのやってることに気付けてたら、こんなことには……」

 

 「ですから、みこっちゃんが責任を感じることはないのですよ。さっき言ったように、気付くべくもないことじゃないですか。有栖川さんだって、みこっちゃんを騙しているという自覚はあったはずです」

 

 「それはそうかも知れませんけど……」

 

 「ですから悔やんでいないで解説をしましょう解説を。このぬいぐるみに淹れて持ち運ぶトリックの元ネタはご存知ですか?」

 

 「も、元ネタ?」

 

 「それは、作者さんのお姉様が小さい頃に持っていた熊のぬいぐるみです。このトリックに使われたものと同じように、背中にポケットがついていてちょっとした小物を入れられるようになっていたのです。さすがに包丁は入りませんが」

 

 「ほんまにあるんですね。そんなぬいぐるみ」

 

 「まあ、スパイ映画などではぬいぐるみの中に怪しい白いお粉を埋め込むなんていうのは常套手段だそうですから、その発想に至ることも難しくはないと思います。それを手作りできる有栖川さんは流石ですが」

 

 「しかも飯出さんを殺した後に、返り血のついた服をぬいぐるみにしてはるんですよね。血の付いた布を針と糸でちくちくするって……もうそれだけで何かの妖怪みたいです……」

 

 「事件後に夜なべをしてそれをしていたと考えると、入念なのか杜撰なのか分からない犯行計画ですね。有栖川さんにしてみれば、ぬいぐるみ造りは日常茶飯事なので、入念に造ったつもりでしょうが、バレてしまっては元も子もないですから」

 

 「それで凶器を隠しても、モノクマにバラされてもうたんですよね……。あれって、モノクマを怒らせてなかったら証拠がなかったっていうことになるんでしょうか?」

 

 「なぜですか?」

 

 「だって、有栖川さんがモノクマに悪口を言って、それに怒ったモノクマが有栖川さんのお部屋のぬいぐるみを切り裂いていく中で、証拠の包丁が出てきたわけですから……」

 

 「まあ描写上はそうなっていますが、作者さんの都合はさておいて、あれはモノクマも意図してやったことだと思いますよ。清水さんの推理で有栖川さんの犯行は全て暴かれてしまいましたから。証拠の有無で裁判を引きずるよりも、その後のおしおきなどでより大きな絶望を与えることを選択したのでしょう」

 

 「そ、それってモノクマが裁判の決定打を与えたって風にも解釈できるんですけど、それって規則違反なんじゃ……」

 

 「コロシアイに対するモノクマの立ち位置は、彼が自称しているだけで規則にはありませんからね……。直接有栖川さんに危害を加えているわけではありませんし、規則違反“ではない”、ということでしょう」

 

 「ふ、複雑やあ……」

 

 「これで学級裁判も終わりになりますが、この最後の清水さんの独白をご覧ください。ボタンが重いと仰っていますね」

 

 「ほんまですよ……自分を含めて人の命を左右するんですから、ただのボタンみたいには押せませんて」

 

 「なぜ彼はそう感じたのでしょうね?だって、有栖川さんが犯人だと糾弾したのは、まぎれもない彼なのですよ?それに彼は性格上、有栖川さんに情けをかけるような人ではないでしょう。迷いでもなく罪悪感でもなく、なぜ彼はボタンを押すことに躊躇いを感じていたのでしょうか?」

 

 「……きょ、恐怖心やないですか?」

 

 「恐怖?」

 

 「もし推理が間違ってたら、投票したら自分が死んでしまうかも知れんっていうこと。あと、ボタンを押すことで間接的に有栖川さんを殺してしまうっていうことに、人の命を奪う重みを感じてはったんちゃいますかね……?」

 

 「彼がそんな道徳的な思考を、この期に及んでしますか?」

 

 「千恵さんの中で清水さんは血も涙もないサイコパスなんですかあ!?」

 

 「いえそういうわけでは。ただ、彼はそういった人への思いやりとかとは無縁そうな人なので」

 

 「あ、思いやりとかやないです。そこは千恵さんの言うてる通り、清水さんはそういう人やないです」

 

 「そ、そんなばっさりと……」

 

 「清水さんが恐れてはったんは、自分の命が脅かされる可能性ですよ。万が一自分が死んでまうことになったらって疑念と、人の命を奪うなんて責任を負いたくないっていう逃げの気持ちです。この時の清水さんは、ほんまにそういう自己中な考え方しかしてなかったと思います」

 

 「私もたいがい彼のことを手厳しく評価していたと思いますが、みこっちゃんもなかなか言いますね」

 

 「長いこと一緒に生活してたら人の気持ちの機微も分かるようになりますよ。振り返ってみたら、やっぱりこの時の清水さんってひどいなって思いました」

 

 「二人してこんなに攻撃して、後で清水さんに怒られませんかね?」

 

 「清水さんは解説編なんか見ませんて」

 

 「なんだか清水さんのことに関してはみこっちゃん、言いたい放題じゃないですか?」

 

 「信頼の裏返しですよぉ」

 

 「裏返さないであげてください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そしておしおき編。これで第一章も終わりですね」

 

 「回想で千恵さんのお母様が出てきてますよ。お若いですねえ」

 

 「家の都合でご成婚が早かったそうですよ。お父様はお母様より7つも年上と伺いました」

 

 「7つですか……うちから見たらちょうど社会人なり立てくらいの方ですね。すごく大人に感じます」

 

 「逆に下を見ると、みこっちゃんが小学3年生をいただく形になりますね」

 

 「いただくって表現やめてください。それになんでうちなんですか、千恵さんかて同い年やから千恵さんでええやないですか」

 

 「みこっちゃんは年上と年下のどちらがお好きですか?」

 

 「このタイミングで本編と関係ない話ですか!?千恵さんのお母さんと学園との裏取引の場面ですよ!?有栖川さんの動機の解説しましょうよ!」

 

 「とは言っても、この解説の間中ずっと言ってるようなものでしたからねえ……。私がいなくなった後、母がこのようなことをしているというのは非常に心苦しいことですね。私は別に、袴田流と希望ヶ峰学園を一蓮托生の運命にするために身を捨てたわけではないのですが」

 

 「けど実際、学園の評判やお家の評判には傷がつきますて。ですから学園派千恵さんの件を口止めして、それが有栖川さんの中の黒い感情を育たせる原因になったと」

 

 「この動機ビデオでそれが爆発したということですね……どこをどう間違ってしまったのか……やはり私が飯出さんと向き合うべきでした」

 

 「……あのう、ちょっといいですか?」

 

 「はい?」

 

 「第一章のタイトルって、『忘れた熱さに身を焦がす』ですよね。これ、飯出さんが千恵さんにしてしまったことをうちにもして、それで有栖川さんの怒りを買うてまうっていう」

 

 「ええ。前回、明尾さんとフォールデンスさんが解説なさっていました」

 

 「けどこれ、千恵さんが飯出さんから逃げてしまったことを、今回うちがまたしてしまったことも、事件が起きる原因になったってことを考えると、うちと千恵さんのこととも考えられませんか?」

 

 「はい?…………本当ですね。忘れたのも身を焦がしたのも飯出さんなのでメインは飯出さんですが、私とみこっちゃんも同じ過ちをしてしまったことを暗示していたのでしょうか。すごい……さすがはみこっちゃん、見事な深読みです」

 

 「ああいえいえウソですウソです!やっぱり今のなしです!そんな大それたこと言うつおりやなかったんですちょっと思い付いたから言うただけです!そんな持ち上げんといてください!やっぱりムリヤリすぎますし!」

 

 「ムリヤリでもいいんじゃないですか?色んな解釈をできるのが作品というものですよ。このタイトルを考えた時点で、作者さんはそんな意味を含めてはいませんし」

 

 「へ?なんで千恵さんがそんなこと分かるんですか?」

 

 「ちょっと前にも言いましたけど、これ書いてるの作者さんですから」

 

 「また喋ってるのが千恵さんなんか作者さんなんか分からんくなった!」

 

 「ですから、書いた人が後から自分の文章を見ても、違う意味を見出すことだってあるということです。況してや違う人が見れば異なる解釈をする方が自然ということですよ」

 

 「そういうものですかね……」

 

 「そういうものですよ」

 

 「あっ、あっ、も、もうこのシーンや!うちと有栖川さんが泣きながら……!」

 

 「事件と動機の振り返り、キャラクターの掘り下げが終わってしまえば、おしおき編でやることはあと一つですからね。さすがにこのシーンを茶化すのは躊躇われます」

 

 「茶化そうとせんといてください!」

 

 「茶化せませんが、暗くなってもいけません。可能な限り解説をしましょう」

 

 「お、おしおきを解説するんですかあ……?」

 

 「やりましょう。画面の前で期待してくれている全国1億6千万のみこっちゃんファンのために!」

 

 「だからそんなにいてませんてば!さっきより増えてますし!」

 

 「おしおきといえば、原作を始め論破シリーズでは醍醐味と言っていいほど重要な要素ですね。ここの描写が上手にできるかも、作品の質を決める基準の一つです」

 

 「あ、もう完全にメタの視点から解説してはんねや。まあその方が気は楽ですけど」

 

 「特に第一章のおしおきは、ほとんどの作品で最初のおしおきとなるため、気合いが入りますね。原作の《千本ノック》は、衝撃性や演出などまさにおしおきのお手本です」

 

 「原作で最初のおしおきは《宇宙旅行》やったと思いますけど……」

 

 「有栖川さんのおしおきは《可愛い可愛い♡薔薇乙女》ですね。これを書いているとき、作者さんの脳内ではあのおしおきBGMとムービーがヘビーローテーションされていたそうですよ。スピーディかつ濃密に描写するために、より原作に近いヴィジュアルイメージを考え続けたそうで」

 

 「こんなところで凝りはるんやからほんまに……」

 

 「薔薇乙女という名前は、ローゼンメイデンという作品から拝借したネーミングだと聞いています。有栖川さんの名前ともかかっていますね」

 

 「名前とかかってる言うか、有栖川さんの名前の由来辞退、ローゼンメイデンからとったんとちゃいますか?」

 

 「いいえ、それは違います」

 

 「違うんですか!?」

 

 「今まで作者さんはカッコつけて、有栖川さんの名前はローゼンメイデンからとったと公言していましたが、実際には違います。真実をお伝えする解説編では、きちんとした解説をしていこうと思います」

 

 「思わぬところでそんな暴露に立ち会うてもうた……カッコつけるのもよう分かりませんし」

 

 「有栖川さんのキャラクターはもともと、“超高校級のファッションデザイナー”という造形から始まりました。そこから、ギャル風な見た目と少女趣味という要素を思い付き、長らくファッションデザイナーとして、有栖川という苗字だけ決めて創られていきました」

 

 「その有栖川って苗字はどこから来たんですか?」

 

 「少女趣味という点と、デザイナーは裏方ですから、正体の分からないミステリアスな雰囲気を併せ持つ名前が、作者の中ではアリスという名前だったのです。ですからそれを苗字にして有栖川と」

 

 「へえ……不思議の国のアリスかと思いましたけど、ちゃうんですね」

 

 「そして少女趣味はぬいぐるみ好きへとクラスチェンジし、服を縫うだけではなくぬいぐるみを作ることも才能に組み込まれました。そこで単なるファッションデザイナーではなく、裁縫を軸にした才能にしようとなったわけです。ここで、“超高校級の裁縫師”の誕生です」

 

 「よそではあんまり見ない肩書きですよねえ」

 

 「忘れもしません。山手線新宿駅外回りのホーム、2両目2番目のドアの待機位置でのことでした」

 

 「忘れなさすぎでしょう!そんなところまで覚えてるってどれだけ衝撃的やったんですか!」

 

 「裁縫師という肩書きを発明だと思っていたらしいですよ。おめでたいですね」

 

 「おめでたいですねえ……」

 

 「そして下の名前は、いわゆるキラキラネームにしようと思って、薔薇と書いてローズと読ませると。ギャル風の見た目に合わせたつもりですが、名付けたのは有栖川さんの親御さんですからね。こうしてキャラが完成するまで、数ヶ月を要したと」

 

 「そこまで細かいことは考えよらんのとちゃいますか。それよか、思ったより有栖川さんのキャラクターってすんなり生まれたんですね。もっと紆余曲折あったんかと」

 

 「紆余曲折あったのは、曽根崎さんや六浜さん、あとは明尾さんと望月さんでしょうね。面倒なので解説しませんが」

 

 「それはまた、その人らがお話の中心になるときに……」

 

 「ではついでに、飯出さんのキャラクターの経歴を、みこっちゃんからどうぞ」

 

 「う、うちですか!?なんで急に!?」

 

 「だってもう飯出さんの出番ないじゃないですか。今言わなくてどうするんですか」

 

 「それは千恵さんも一緒やないですか……」

 

 「私は、寂しがり屋設定の有栖川さんの学園の友だちということでぼんやりとイメージされていたクラスメイトが実体を得た存在です。才能も性格もバックグラウンドも小一時間で作られたインスタント大和撫子ですよ」

 

 「ご自分で雑な解説せんといてくださいよ!インスタント大和撫子ってなんですか!」

 

 「ですから手作り大和撫子のみこっちゃんも、解説をしてください」

 

 「インスタントの対義語って手作りなんですか!?」

 

 「ほら、早く解説を終わらせて次の話に勧めないといつまで経っても有栖川さんのおしおきが終わったことになりませんよ」

 

 「ああううぅ……え、えと、でも飯出さんって経歴話すほど時間かけて作られてませんよね?男子キャラがあと二人って時に、主人公の清水さんと対比して熱くて仲間想いなキャラクターを作ろうとして、あんな感じになったんです。冒険家っていうのもリーダーシップがありそうだからっていうのと、アクティブな才能が欲しいっていうことで。因みに最後に作ったもう一人は笹戸さんです」

 

 「あんまり深く掘り下げられそうにありませんね」

 

 「だから言うたやないですか!あ、せやせや。名前の由来は、冒険家ってことでインディー・ジョーンズのもじりです。インディー・ジョーンズ、飯出条治、インディー・ジョーンズ、飯出条治。似てますね」

 

 「インディー・ジョーンズは考古学者なので、むしろ明尾さんが飯出さんですね」

 

 「ちょっと何言ってるかよう分からないです」

 

 「さ、なんてことを言っている間に、おしおきが終わりましたよ。ぬいぐるみに改造された有栖川さんがみなさんの前に運ばれて終了です」

 

 「ひゃあああっ!?」

 

 「これはいくらR指定のゲームでも表現はできないでしょうね。文字作品ならではの限界への挑戦です」

 

 「こんな晒し者みたいにすることないのに……せめてもっと優しいやり方はなかったんですかあ?」

 

 「他の案もあったそうですよ。聞きたいですか?」

 

 「……いえ、いいです」

 

 「包丁を隠して持ち運んだトリックに因んで、たくさんのぬいぐるみにお腹を掻っ捌かれて包丁を大量に突き刺されるというおしおきです。あとはぬいぐるみに弄ばれて四肢がぐちゃぐちゃに折れて捻れて外れて……」

 

 「聞きたないって言いましたようち!?」

 

 「と言っても解説編ですから仕方ないではありませんか。私だって言いたくないですけど、作者さんに言わされてるんですよ」

 

 「もう作者さんが自分の口で解説したらええやないですかあ!うちらを間に挟まんといてください!」

 

 「それだと面白味に欠けますから」

 

 「残酷やあ……」

 

 「いずれにしても、凄惨な内容になることは避けられませんよ。おしおきというのは、一章の場合は特に、生き残った方々に絶望を与えるために行われるものですから。学級裁判で敗北した者の結末、モノクマの絶対的権限を見せつける機会です」

 

 「確かに……うちは見てられませんでしたし、絶望もしましたけど……」

 

 「遺された方々は何も言えずに固まっているようですね。しかしここで皆様、清水さんの最後の言葉をご覧ください」

 

 「また清水さんや……今度はなんですか?」

 

 「この凄惨なおしおきを前にして、圧倒的な絶望を前にして、彼は清々しい達成感を覚えています」

 

 「ほんまや……す、清々しい……達成感……?なんでこの状況でそんなことを……?」

 

 「みこっちゃんは清水さんの心理状態に詳しいでしょう。この心理状態も分かるのではないですか?」

 

 「うちはカウンセラーかなんかですか……。でもえっと、そうですね。ボタンが重く感じたのと対比して、恐怖感や重圧から解放されたことの清々しさですかねえ。あとは……あ、あんまり考えたくないんですけど」

 

 「なんですか?」

 

 「清水さんって自己評価低いやないですか。“超高校級”の“才能”に自分は敵わないって思い込んではるんですよ。せやけど、学級裁判っていう場でご自分が有栖川さんを指名して、それが正解で、ある意味勝利したっていう経験になったやないですか。だから……ずっと持ってたコンプレックスに打ち勝ったっていう、成功体験からくる快感なんやないかなって……思います」

 

 「……さ、さすがに清水さんはひと味違いますね。仲間を糾弾して快感を感じているのですか」

 

 「ひ、ひかんといてくださあい!」

 

 「いえ、みこっちゃんにではなく清水さんに引いています。原作でもそうでしたし、他の創作論破の多くの主人公さんたちは、いえ主人公でなくてもほとんどの登場人物さんたちは、自分の手で仲間の1人を処刑台に送ってしまったことを後悔したり、絶望の中で混乱したりするものだと思います。その中で、まさか気持ちよくなっているなんて……拗らせもここまで来ると狂気的というか何というか」

 

 「だから考えたくないって言うたやないですかあ……というか、これってQQの元のシナリオを考えたら自ずとそういう結論になるんですよお」

 

 「QQに元のシナリオなんてあったのですか?草案から結末は変わっていないじゃないですか」

 

 「そうなんですけど、清水さんの立ち位置が全然違いまして……元のシナリオだと、清水さんは今回と次の裁判で、“超高校級”に勝利することに酔いしれて、裁判に勝つことを目的にし始めるんですよぉ。せやから、おしおきされる誰かを見て恍惚するような感じに……」

 

 「うわあ……(ドン引き)」

 

 「ほんで質の悪いことに、裁判に勝つには裁判を起こさんとあかん、裁判を起こすには誰かが誰かを殺さなあかん。っていうことで、それとなく殺人を教唆するようになるんです。それこそ、第二の黒幕みたいに」

 

 「それはもう、主人公ではありませんね。やばいです。やばすぎます」

 

 「最後の裁判で答えを誤っておしおきされるのは一緒なんですけど、そっちのシナリオだと今までの罰の意味合いが強いですね。処刑されるときの肩書きも努力家やなくて、“超高校級の負け犬”として処刑される予定でした」

 

 「裁判に勝ち続けて優越に浸っていた彼が負け犬として処刑されるのは、確かに最大の屈辱と言えるでしょうね。そうですか……QQにもそんな可能性が」

 

 「というか二章までほんまにそのつもりやったらしです。でも三章で同じくらいヤバい人が出てきて、これはもう超えられないっていうことと、四章以降の展開を考えたときに動かしづらいって気付いて、止めたそうです」

 

 いやあ……うん、いやあ……どっちがよかったのか分かりませんけど、どっちにしろろくな結末になっていないところを見ると、なんだか清水さんまで可哀想になってきます。ひきますけど」

 

 「引きますよねえ」

 

 「でも、その清水さんの考え方とか、有栖川さんのキャラクターの成り立ちとか、一つのお話を作るだけで色々な可能性と取捨選択があったのですね。たとえ短くても、素人作品だとしても、簡単に作れるものではないということですね」

 

 「はい、振り返ってみて、作る人の大変さが分かったような気がします」

 

 「ふう、なんとかきれいにまとまりそうです」

 

 「後味がものすごく悪いような気がします……。でも、なんとか解説編やりきりましたあ。はじめはどうなることかと思いました」

 

 「そうですね。無事に終えられてほっとしています。有栖川さんはまだ解説編を経験されていないのですよね?気を付けるように助言しておいた方がいいでしょう」

 

 「ほんまですね。次回の解説編を担当されるお二人は……あぅ、えっと……」

 

 「どのお二人なのですか?」

 

 「……うちらよりもっと心配な組合わせになってます。まともな会話どころか、喧嘩になってしまいそうです」

 

 「喧嘩って、解説どころではなくなるではないですか」

 

 「この組合わせは因縁深すぎますって!大丈夫なんですか!?」

 

 「まあ私たちには関係ありませんから、心配するだけ無駄というものでしょう。最後の挨拶をして、おやつでも食べにいきましょう」

 

 「そんなお気楽な……ああああっ!!ま、待ってください!!」

 

 「どうしたんですか。急にそんな大きな声を出して」

 

 「誕生日!!忘れるところや!!千恵さんの誕生日まだ聞いてませんでした!!」

 

 「へ?ああ……そういえば」

 

 「うちの方がお姉さんやって決まったら、今までのこと謝ってもらいますからね!覚悟しといてください!」

 

 「そんなに息を巻いて……ものすごい低確率なんですよ?」

 

 「確率は確率です!それに0やないです!」

 

 「みこっちゃんは絶対に賭け事には向いていませんね」

 

 「で、誕生日!どうなんですか!」

 

 「えっと、まずは言葉から決めるんですよね?私の言葉はなんですか?」

 

 「ここに封筒があります!ここに全部書いてあります!」

 

 「いつの間にそんなものを……開けてみてくださいよ」

 

 「い、いきますよ……!まず千恵さんの言葉は『母の愛』……だ、そうです」

 

 「ストレートに皮肉ってきますね。まあ、他の方の言葉を見ていてもそんな感じでしたが」

 

 「次にこれを花言葉に持つ花です。えっと、言うまでもないと思いますけど、カーネーションです。特に赤色のものがこの花言葉なんだそうです」

 

 「ええ。花弁の色によって花言葉が変わることはよくあります。薔薇など分かりやすい例ですね。赤は愛情、青は奇跡です。ところでカーネーションは、最盛期が3月からですから、みこっちゃんと近いかも知れないですね」

 

 「キタキタキタァッ!!!」

 

 「口調変わってますよ」

 

 「で、カーネーションを誕生花にしている日付の中から、千恵さんの誕生日を選ぶと!」

 

 「11月20日です」

 

 「……ん?」

 

 「11月20日です。早生まれですらありませんでしたね」

 

 「なんでやねん!!11月20日って秋ど真ん中やないかい!!最盛期3月とちゃうんかい!!」

 

 「出ました!こてこての関西弁!」

 

 「なんでその日なんですかあ!っていうか3月24日より遅い日は候補にあったんですかあ!?」

 

 「いいえ。他の日付ですと1月や5月です。11月になったのは、単にQQメンバーで11月生まれがいなかったので散らそうということで」

 

 「言葉が決まった時点で詰んでたんや!!もういややあ!!」

 

 「というわけで私の方がみこっちゃんよりお姉さんなので、思いっきりなでなでしていいんですね。近うよってください」

 

 「もう好きにすればええやないですか!」

 

 「はい♫好きにします♫では有栖川さんに失礼して、このままみこっちゃんを撫で回しながらお別れとしましょう」

 

 「ううぅ……」

 

 「それでは画面の前の皆様、第一章はこれにておしまいです。次回は第二章の前編です。お楽しみにしててくださいね。今回のお相手は、なぜか素足の和服美人、袴田千恵と」

 

 「口上それでええんですか……」

 

 「いいんですよ、みこっちゃんもホラ」

 

 「えっと……あなたの心にみこみこみー、晴柳院命でしたあ」

 

 「……なんですか、それ」

 

 「い、いきなりふるからですよぉ!やり直させてくださぁい!!」

 

 「いえ、このままGOします」

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