ダンガンロンパQQ   作:じゃん@論破

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第三章「白羽の矢に射貫かれる 前編」

 

 「創作論破『ダンガンロンパQQ』、解説編『後のお祭り』をご覧の皆様。当小説をご覧いただき、誠にありがとうございます。私は、本解説編において、僭越ながら解説及び進行を務めさせて頂きます。希望ヶ峰学園3年生、“超高校級のマジシャン”、鳥木平助と申します。どうぞ、宜しくお願い申し上げます。そして、今回私と共に解説・進行を担当していただきます、相方様のご紹介です。どうぞ」

 

 「かってえ…トリッキーかったいよ!堅すぎてアタシの自己紹介が霞むよ!ってあ!やんなきゃか!ども、“超高校級の裁縫師”の有栖川薔薇です。薔薇って書いて『ろーず』って読むからよろしくね」

 

 「はい。結構な紹介でございます、有栖川さん。それでは早速進めて参りましょう。改めて、宜しくお願い申し上げます」

 

 「あのさあ、トリッキー堅いってば。そんなテンションじゃないもんアタシ。トリッキーもせっかく解説するってんならさ、マスク付けなって。そっちの方がかっこいいし」

 

 「そうですか?しかしあれはステージに上がる時のテンションなので、この長丁場では少しずつ出していこうかと思っていたのですが」

 

 「ダイジョーブダイジョーブ♫もしダメんなったらさ、代わりの人呼ぶから。みこっちゃんとかみこっちゃんとかみこっちゃんとか」

 

 「晴柳院さん一択ですね!?さすがに今まで紆余曲折ありながらも二人一組で進行してこられたものを、私たちの番でそんなことにするわけにはいかないので、一旦マスクは下げさせて頂きます。よきところで使うことはしますが」

 

 「ちぇー、つまんないの。ってかさ?アタシとトリッキーって本編でも全っ然絡みないじゃん?そもそもこの3章の時点でアタシは死んでるわけだし、解説どころか何が起こるのかも知らない前提じゃないの?」

 

 「そこはまあ、ご都合主義ということで。この解説編自体がお祭り企画ですので、お好きなようにしていただければと思います」

 

 「ってなわけで!アタシはこのお祭り企画中にもう一つ企画を考えてきたってワケ!聞いて聞いて!」

 

 「もちろん。せっかく私のような者とコンビを組んでいただけたのですから、ご要望は可能な限り叶えていく所存でございます」

 

 「アタシはアンタのことトリッキーって呼んでるでしょ?つまりはあだ名ってわけよ。アタシは基本女子にしかあだ名付けないけど、トリッキーは特別にあだ名で呼んでんの。だから、トリッキーもアタシのことあだ名で呼んでよ」

 

 「なんだか似たような流れを、先程お名前が出て来た方の回で聞いたような…。有栖川さんが構わないのであれば、如何様にもお呼び致しますが」

 

 「自分のあだ名自分で付けろって?そんなのナンセンスじゃん!トリッキーが考えてトリッキーが付けんの!はい!アタシのあだ名なに!」

 

 「急ですね。そうですね…有栖川薔薇…、滝山君はアリスと呼んでらっしゃいましたね」

 

 「あんなのとトリッキーが同じ次元に立つ必要ないよ!」

 

 「有栖川さんは滝山君をどうご覧になっているのですか!?」

 

 「とにかくアリスって呼んでいいのはあいつだけ。っていうかあいつのはあだ名じゃなくて、五文字以上が覚えられないだけだから!」

 

 「強ち否定できませんね…でしたら下のお名前をとって、ローズんさんと言うのは」

 

 「“さん”はいらない!」

 

 「ローズん、でよろしいですか?」

 

 「うーん、まあいいよ。しょうがないか。じゃあアタシはローズん、アンタはトリッキー。それで進めてくからね」

 

 「ということだそうです。えー、みなさま、少々誰が誰か分かりづらい点があるかと思いますが、そちらはご了承ください。それから有栖川さん」

 

 「つーん」

 

 「あっ、ローズんさ、ローズん」

 

 「なあにトリッキー」

 

 「(めんどくさい…)3章の知識はある前提で進めて問題ありませんでしょうか」

 

 「別にいいよ。でないと今後もそういう時にめんどくさいし、アタシもいちいちリアクションすんの疲れるから。展開だけは知ってる体でやるから、細かいことはトリッキーが説明してね」

 

 「かしこまりました。それでは、少々長い時間にはなりますが、皆様、そしてローズん、お付き合いください」

 

 「はいよー、よろよろー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「最初の場面は、古部来がドールんの部屋に現れるところからだね。どうやって入ったんだろ?」

 

 「鍵が開いていたのでしょう。裁判が終わってお疲れでしたから、そうしたことを忘れてしまうこともございますでしょう。起き抜けでの学級裁判でしたことですし」

 

 「それでも、簡単に女子の部屋に入る古部来ってなんなの。デリカシーの欠片もないじゃん」

 

 「それは否定できませんね。まあ古部来君のことですから、たとえ六浜さんがあられもない姿で無防備に寝ていらしても、劣情を催すことはないでしょう。ストイックな彼のことですから、そっと布団でもかけて差し上げてから起こすのではありませんか?」

 

 「あいつってそんな優しいことする?だってアタシ、裁判で負けた直後でこれからおしおきだっつーときに、あいつにボロクソに言われたんだけど。あの時はそれどころじゃなかったから大して何も言わなかったけどさ、今思いだしたら物凄い腹立ってきた!なんなんだあいつ!縫う!」

 

 「お、落ち着いてください!針をしまってください!凶器は持ち込み禁止です!」

 

 「凶器じゃなくて備品だから。ぬいぐるみがなきゃアタシのアイデンティティが危ういのよ」

 

 「そう言えばローズんはいつもぬいぐるみをお持ちでしたね。本日はアリクイのぬいぐるみですか」

 

 「丸くてもふもふしてて可愛いっしょ?これ、舌がちょろちょろ出てくる仕掛け付きなんだよ」

 

 「おお…意外と細かく凝っていらっしゃる。さすが“超高校級の裁縫師”でございますね。素晴らしい」

 

 「ちなみにトリッキーの分も作ってきた。トリッキーのイメージで作ったんだ」

 

 「これは…カラスでございますか?」

 

 「そ!黒くて鳥だから、トリッキーはカラス!ステージに上がるとキラキラしてるから、ラメ入り生地にしてあんだ!」

 

 「これは素晴らしい…私のためにこんなお手間を。こんなに嬉しいことはございません。ありがとうございます」

 

 「ちっちっ、それだけじゃないよ。マスク付けるとトリッキーは変身するでしょ。黒い大人しい鳥木平助から、キラキラした白いマスクのMr.Trickyに。だからこれね。こうしてこうやると…」

 

 「おおお!ひっくり返って白いカラスに!こちらがMr.Trickyの私ですか!」

 

 「すごいっしょ!あとこれ!まどっちにプレゼント。アタシからじゃ受け取ってもらえないから、トリッキーから渡してあげて」

 

 「…コアラですか?」

 

 「水色のコアラ。これがまどっちのイメージね。細長いものに掴まれるように中に骨組み作ってあるから、乱暴にしたら壊れちゃうよ」

 

 「私だけでなく、穂谷さんにまでこんなプレゼントを…。重ね重ねありがとうございます。きっと穂谷さんもお喜びになられます」

 

 「そうだといいね。って、何の話だったっけ?プレゼント渡したら忘れちゃった」

 

 「古部来君が六浜さんのお部屋に現れたところですね。まだ最初の最初です」

 

 「デリカシーがないって話だったね。あいつ、本当に誰とも仲良くしないだけならまだしも、アタシたちのことを悪く言う必要なんかないじゃんね」

 

 「彼は彼なりに思うところがあったのでございます。ただ、六浜さんもそうでいらっしゃいましたが、少々人を思いやるやり方が不器用なのです。ご実家が厳しいお家柄でございますから、ああした形での愛し方しか知らないのでございます」

 

 「ずいぶん庇うけど、あいつは少なくともアタシたちに愛なんか向けてはなかったよ」

 

 「まあ愛とまでは言いませんが、それでも多少なりとも思いやりというものはあったことでしょう。現に、このあとのシーンで皆様の前で謝罪をされています」

 

 「え!?謝ったのあの古部来が!?」

 

 「石川さんの死を受けて、バラバラに行動していてはコロシアイを防ぐことはできないと悟ったのでしょう。そして、六浜さんをはじめ数々の有能な方々が結束すれば、コロシアイを止め、黒幕に勝利することができると考えられたのです。私も全く同意見でしたが…実際にはそう甘い話ではございませんでした」

 

 「まあ、それで止まったらアタシらの犠牲が安くなるしね」

 

 「しかし、古部来君が自らの行きすぎを認めて素直に謝罪し、私たちと協力することを進言してくださったのは大きな一歩でございます。そして流れるように、六浜さんがリーダーとして抜擢されるわけです。ここから、彼女が私たちの中心人物となってくるわけでございますね」

 

 「普通はそういうのって主人公が務めるもんじゃないの?ドールんの方が適任だとは思うけど、ここで清水は何も言ってこなかったんだ」

 

 「彼はそういうタイプではございませんので。飯出君を喪って、第二章からなんとなく六浜さんがリーダーではあったわけですので、一度明確にしておこうという意図も、裏話的にはございます」

 

 「トリッキーさあ、よくアタシの前で飯出の話できるよね」

 

 「し、失礼いたしました…」

 

 「別にしょーがないからいいけど。結局アタシもあいつも死んじゃったから、まだとやかく言ってもしょうがないってのは分かるよ。でもそういう簡単な話じゃないんだよ」

 

 「ですが、何回か前の解説編で、ご学友の袴田さんが晴柳院さんと楽しげに解説編をお送りされていらっしゃいましたが」

 

 「そーなのよ!なんで千恵とみこっちゃんがペアなの!?そこはアタシとどっちかっしょ!?ってか千恵ってアタシ以外と絡みないのになんでよりにもよってみこっちゃんとなの!?アタシの好きな子同士で組まれっとアタシはその他と組まなきゃいけなくなんじゃん!何その采配!」

 

 「あなたも、それをよく私の前で仰いますね…。いえ、お気持ちは分かりますし悪意がないことも存じておりますが。一旦机から足を降ろしてください」

 

 「次のチャンスでは絶対にみこっちゃんと組んでやんだから!千恵はあそこでしか出られないから、もうそこしかチャンスはない!」

 

 「もう既に後半のペアも決まっているようですが…そちらはまだ未公表のままということで」

 

 「みこっちゃんと一緒じゃなかったら、作者を縫う!縫ってグーしか出せない手にしてやる!」

 

 「そんな一昔前の個人サイトの後書きのノリのようなことを仰らないでください。作者様はどのような形でも字面で登場されることはありませんので。出られる時は私共の口を通しますので」

 

 「きたねー!」

 

 「そもそも作者とはそういうものでございますから。英語で権威を意味するAuthorityは、作者を意味するAuthorと語源を同じくします。それほど作者の権限とは絶対的なものなのでございます」

 

 「ずっるいなもう!」

 

 「こればかりは仕方ありませんね。もしご希望通りでないのなら、作者の気が変わることをお祈りいたしましょう」

 

 「日本語のお祈りは社交辞令だってアタシ知ってんよ」

 

 「世知辛いでございますね」

 

 「んで、ドールんがリーダーになった辺りの話だけど、ドールんも大概ニブいよね。アタシらん中でドールんのことを信用してない人なんていないってのにさ。自分で気付いてなかったのかな?女子の中でドールんがメイン張ってたの」

 

 「そんな俗っぽい考え方はされていなかったと思いますが、確かに彼女は女子の中でも発言力がありましたね。もちろん私は、古部来君ほどの方が推薦する方に反対などしませんが」

 

 「トリッキーはねえ、もっと自分の意見を出した方がいいよ。アンタまどっちにも指摘されてたけど、本音で話してないでしょ」

 

 「それは…申し訳ありませんが、痛いところでございますね。ですがこれは私のクセのようなものですから、そう簡単には…」

 

 「その辺の話は四章でちゃんと聞けるのかな。どっちにしてもトリッキーはその性格で損してるけどね」

 

 「損、でございますか?」

 

 「そうだよ。言いたいこと言った方が絶対気楽だって」

 

 「…ご遠慮いたします。この流れだと確実に私の敬語を外そうとなさる。それだけは絶対に遠慮させていただきます」

 

 「ちっ、バレたか」

 

 「それはバレますでしょう」

 

 「で、次はトリッキーの視点だね。なみみんとみこっちゃんと一緒に古倉庫の中を調べてるシーンだね」

 

 「非常に古ぼけた倉庫でございました。やはりこの手の倉庫というものは、ダンガンロンパシリーズに限らずミステリーでは便利なものでございますね。必要そうなものはだいたいここにあることにしてしまえば説明できてしまうのですから」

 

 「そだね。埃被ってる上に一ヵ所は武器庫だから微妙だけど」

 

 「明尾さんにとってはそれ以上に意味のある場所になったようです。ちなみにこちらの倉庫に関して、1つこぼれ話がございます」

 

 「こぼれ話?」

 

 「3つの区画それぞれに取り付けられたナンバーキーでございますが、その番号がいくつだったか、ローズんは覚えていらっしゃいますか?」

 

 「えっと…覚えてるもなにも、アタシもう死んでたから」

 

 「これは大変失礼な質問をしてしまいました。申し訳ございません」

 

 「そんなガチで謝んなくていいから!で、いくつなの?」

 

 「3679でございます。こちらの数字にもきちんと意味があってご用意しております」

 

 「3679?う〜〜ん…わかんない!」

 

 「ナンバーキーの番号が、3つの区画とも同じになっているというのは、防犯の関係上おかしいとは思いませんでしょうか」

 

 「そりゃそうだね。普通こういうのってそれぞれ別に設定するよね」

 

 「すなわちこの倉庫内のセキュリティナンバーは、3679が3つということになります。3679に3をかけるといくつになるか、暗算できますでしょうか」

 

 「3×3679は…えっと、うんと」

 

 「手の計算だけではできないと思いますが…もう暗算でもありませんし」

 

 「もったいつけないで教えてよトリッキー」

 

 「こちら、11037となります。ダンガンロンパQQをご覧の皆様は、おそらく原作ゲームもプレイされていると思います。或いは原作1作目のアニメをご覧になっていると思います。であれば、この数字の意味も十分にご理解いただけるかと」

 

 「ああ、なるほど…ってそんだけ?別にそこまでもったいつけるほどのことでもなくない?」

 

 「多少、肉付けも必要かと思いまして」

 

 「まあこういう小ネタの解説が、この解説編の趣旨だしね。他にはないの?」

 

 「そうですね。この倉庫はその後、色々な使われ方をします。六浜さんが清水君、古部来君、晴柳院さんを集めて黒幕の内通者の可能性、『もぐら』の危険性について話し合う場として使ったり、6章でも活きてきます」

 

 「それらしい伏線も何もなかったのに?」

 

 「以前からも申していますが、ダンガンロンパQQの真相が形作られてきたのは、ちょうどこの辺りからですので。もともとは謎を謎のまま放置して、明確な答えを出さない終わり方を予定していたようです。ですがやはり、何かしらの形で答えを用意しなければならないと焦った作者さんが、キャラクター設定などから黒幕と真相を作っていったようです」

 

 「行き当たりばったりの見切り発車でよく最後まとまったよね」

 

 「まとまったのでしょうか。取り逃した伏線や謎はありませんでしたか?」

 

 「それを見つけるためにも、この解説編書くために自分の創作論破読み直してるんでしょ。誤字脱字ばっかり見つけて。面倒だからそれも放置して」

 

 「あのう、ローズんさん。解説編なので色々なお話をされるのは結構なのですが、あまりにも洗いざらい吐く必要はないのではないでしょうか」

 

 「何言ってんの!アタシはね、本編であんまりにも早く退場したから話し足りないの!だからこういうところでたくさん喋っておかないと、アタシのキャラが分からないままでしょうが!」

 

 「あなたのキャラクターは本編でなくとも色々と強烈にデザインされていると思います。主に晴柳院さん絡みでですが」

 

 「だってみこっちゃん可愛すぎるんだもん。可愛いでしょみこっちゃん」

 

 「そういうところですよ。確かに非常に庇護心をくすぐられる方ではありますが…」

 

 「みこっちゃんだけじゃなくて、アタシはやっぱり千恵とか飯出とかとの因縁もあるしね。もうとっくに過ぎた話になってるし、今となっちゃ当事者はみんな死んじゃってるわけだけど」

 

 「最も円満から遠い解決となってしまいましたね。以前の解説編で袴田さんが仰っていたように、何方に非があるかと問われれば全員に少しずつ非があるとも言えます」

 

 「それは否定しないよ。やっぱり虚しいだけ。ダメだよこんなこと。取り返しの付かないその場しのぎにしかならないよ」

 

 「私もそれは大変痛感しております。と、クロ2人が解説すると話が暗い方へ暗い方へと進んで行ってしまいますね。これではいけません。明るく解説をしましょう」

 

 「トリッキー、さらっと次の章のネタバレもしてるけど?」

 

 「スルーしていただきます!」

 

 「らしくない強引さ!」

 

 「倉庫が解放された結果として最も顕著なことは、明尾さんの発掘欲が遂に抑えきれなくなったことです。モノクマに熱いコールを送って、発掘場を開発までさせてしまいました。結果的にこの発掘場は、パーティ会場に使ったり曽根崎君が危機一髪に陥ったりと三章では中心的な場所になって参ります」

 

 「なみみんのあの熱さはどこから出てくるの…っていうか何がそこまでなみみんを駆り立てるの…」

 

 「明尾さんの熱血さは、作品全体のバランスを取る意味で重要なものなのですよ」

 

 「バランス?」

 

 「ご存知のように、ダンガンロンパQQの主人公である清水君は、非常にローテンションで1人がお好きでいらっしゃいます」

 

 「感じ悪いぼっちね」

 

 「ですので、全体の雰囲気が暗くなりすぎてしまわないように、飯出君や明尾さんのように、明るくて場の雰囲気を変えられるような方が必要だったのです。曽根崎君もその役割を担っていらっしゃいますね」

 

 「だったら初めからみんなと打ち解けられるような性格の主人公にすりゃよかったのに」

 

 「そうすると、“才能”を捨てたという設定と少々噛み合わなくなってしまいますので」

 

 「とことんまでめんどくさいねあいつ。アタシあんまりあいつと絡んだことないからよく知らないけど、あいつマジなんなの?なんで曽根崎とかヅッキーとか、果てはみこっちゃんまで、あいつと仲良くなってんの?ウザくね?」

 

 「露骨に清水君を嫌っておられますね…確かに本編では捜査時と裁判時以外にお二人が会話しているところはあまり見られませんでした。特にそういう設定はありませんよね?」

 

 「ないけど、いざあいつと二人でってなっても何話せばいいか分かんないし。どうせあいつはアタシのことも“超高校級”ってだけでウザがってんでしょ。じゃあおあいこで丁度良いじゃん」

 

 「完全なる拒絶を感じます。絶対の隔壁でございます」

 

 「一人くらいこういうのがいてもいいと思うんだアタシ。リアルで」

 

 「リアリティがあるに越したことはありませんが、小説でまで嫌なリアルを感じたくありませんね」

 

 「う〜ん……あれ、ごめん、もともと何の話してたっけ?」

 

 「解説はおそらく、倉庫と発掘場が解放されたあたりだったと記憶しております。笹戸君が明尾さんと滝山君に連れられて、発掘場に足を踏み入れております」

 

 「この辺りの件ってなんなの?笹戸の独白、すっごい意味深じゃない?」

 

 「ご自分が釣り人であることに疑念を抱かれているような風ですね。伏線としては遠くて分かりにくいかも知れませんが、5章に向けての伏線になっております。釣り人としてよりも、彼は希望の徒としての活動に力を注いでいらしたわけですから」

 

 「こんなん分かんないって!やっぱこの時点で笹戸はまだまだ猫被ってんだね」

 

 「当時の記憶もございませんから、仕方ない部分もございましょう。それにこの日常編でのメインの話題は、テロリスト『もぐら』の方でございます」

 

 「そっちね。まあ今回の事件でそこ触れないまんまではいらんないよね。一応プロローグから伏線張ってhあるけど、ここらで詳しい情報もないとね」

 

 「六浜さんが信頼できる方々を集めた会では黒幕の候補として、曽根崎君が独自に調査を進めていた特ダネとしても登場しております。いかに彼が大きな影響力を持っていたかを物語っております」

 

 「この『もぐら』の話をしているメンバーの中に、当の『もぐら』がいるわけでしょ?どういう気持ちで聞いてたんだか」

 

 「彼の性質から考えて、大層気分がよろしかったのではなかったでしょうか。自分のことを多くの方々が話しているというのは、まさに彼が思い描いていた様です」

 

 「歪んでんね…アタシも千恵と飯出のことで歪んではいたし、かなかなも自分の“才能”のことでかなり歪んでたけど、『もぐら』は特にだわ。歪みすぎて、元の形から違ったんじゃないかって思えるほど」

 

 「それもこれも、彼なりのアピールだったわけです。私たちがそれに気付いたときには、もう取り返しの付かないところまで来ていたのです。起こるべくして起きた事件ということです」

 

 「んで、その後のトリッキーとまどっちとヅッキーのやり取りでも、四章への伏線張ってんでしょ。日常編の中でもこの回、むちゃくちゃ不穏じゃない?詰めすぎじゃね?」

 

 「伏線を張っておくなら早いうちからでないと、唐突感が出てしまいますからね。三章のこの辺りが、先々の伏線を張りつつ物語を進められるポイントなのですよ」

 

 「そんでその次が動機編。三章の動機は外の世界の情報ってね。一章のときも同じような感じだけど、大切な人なのか漠然と外の世界なのかって違いね。っていうかこの情報、三章のクロ狙い撃ちしてない?」

 

 「動機とは得てしてそうなってしまうものでございます。作り手側の所感を申してしまいますと、クロとする人物が決まっているので、その人にヒットする動機でなければ意味がなくなってしまいますから。なるべく『誰にでもヒットするけれどクロとなる方に最もクリティカルヒットする』動機になるようにしておりますので」

 

 「アタシのときもまあ、そんな感じだったかな。他の人のは知らないけど、アタシなんかあんなの知ってたら動かずにいられないもん」

 

 「人の心を揺さぶる方法を熟知しているモノクマだからこそ、できることでございますね。そしてそれだけでなく今回はもう一つ、揺さぶりがございます」

 

 「アタシたちの知らない内に、三年の時間が経ってるってヤツね。三年って言ったら、QQ世界の希望ヶ峰学園でも生徒が丸々入れ替わる時間よね」

 

 「どなたかがおっしゃっていましたが、三年経てば肉体的にも変化があって然るべきだと思うのです。たとえば、晴柳院さんの背がもう少し伸びていたりなどです」

 

 「は?みこっちゃんはあのみこっちゃんのままだからいいんだけど?」

 

 「地雷に触れてしまいました!失礼!」

 

 「そんでそのみこっちゃんのことだけど、この動機をみんなで見た後、笹戸のヤツがなんかキショいこと言いながら近付いてんの!こんなのアタシが生きてたら飛んでって絶対その場で口縫い付けてやんのに!」

 

 「地雷どころか突撃兵ではないですか!」

 

 「地味にこの辺で笹戸とみこっちゃんがいい感じになってて、なみみんが良い所で邪魔入ったみたいな感じになってんの、ものすごい不快。あんなヤツに大事なみこっちゃん取られてたまっか!」

 

 「ローズんさんは晴柳院さんの保護者なのですか?」

 

 「保護者であり親友であり背後霊でありたい!」

 

 「最後のはシャレになっておりませんね」

 

 「でもさあ、実際みこっちゃんがお嫁さんにいくのってしんどくない?晴柳院家の一人娘って、ものすごい過保護に育てられててそうだし、お爺さんとかお父さんとかクッソ厳しそう」

 

 「名家のお嬢様でございますからね…確か代々“超高校級の陰陽師”でしたね。お相手は少なくとも“超高校級”でなければ認めてはいただけないのではないでしょうか」

 

 「はいはいはい!立候補!アタシ“超高校級”!」

 

 「女性ですよね!?ローズんさんはそっちの気はありますが、マイノリティではありませんよね!?」

 

 「んまあそうだけど、でもせっかく“超高校級”なんだったら夢見たいじゃん?」

 

 「ちょっと何を仰っているか分かりたくありません」

 

 「どっちにしたって笹戸なんかじゃ認められるわけないよねー。あんなへなちょこじゃ」

 

 「笹戸君と晴柳院さんの因縁は、彼の性格以前の問題が横たわっていると思いますが」

 

 「まあそんな所の話はどうでもいいんだけど、その次の話もかなりどうでもいいと思うんだけど、これ何の話なの?」

 

 「フレンチトーストでございますか?こちらは何の変哲もない我々の日常でございます」

 

 「伏線もなにもないの!?ホントにただ男子がバカやってるだけ!?」

 

 「伏線らしい伏線といえば…伏線というより保険の類になりますが、こちらでクロが大量のモノクマメダルを手に入れていますので、事件で何か小道具が必要になったときに説明できるようになっているという」

 

 「なにその保険!?事件とか裁判の詳細考えてないまま書いてんのモロバレじゃん!?」

 

 「その辺りは実際、非常に難しい話なのです。事件の全容を考えてから裁判の流れを考えるのか、裁判の流れを考えてから事件の全容を考えるのか、いずれにせよその伏線を日常編に仕込まなければいけません。その関係上、執筆が遅くなってしまうことは避けられないのです」

 

 「ん?」

 

 「より精密かつ完成度の高い物語を仕上げようとするあまり遅筆になってしまうことは、大変心苦しくはございますが、半端なものを皆様にお届けするわけにはいかず、苦渋の選択の結果であることをご理解いただきたく」

 

 「途中からトリッキーのセリフじゃなくなってない?っていうかQQはもう連載終わってるから!あ、でも今のこれは連載中に入るのか…」

 

 「だからと言って更新がないことを理由に期待を高めていただいても、ご期待に応えられるかは保証いたしかねますので」

 

 「ものすごい自分勝手で身勝手なこと言ってるよアンタ!っていうか作者コラ!自分のキャラに言い訳さすな!タレント事務所の社長か!」

 

 「作者様は現在進行形でそちらで悩んでおられます。ほとんどの創作論破作者の方は悩んでいらっしゃるのではないでしょうか」

 

 「目の前の事件もそうだけど、物語自体のラストに向けてもちょっとずつ伏線張ったり思わせぶりな感じさせてかなきゃいけないもんね。ホントこういうのこんがらがってきそう」

 

 「QQに関しては真相自体が途中まで曖昧なままでしたから、その伏線もろくに張られていなかったり伏線と思わせておいてなんでもないものも混じってございます。とてもややこしいですね」

 

 「でもこの、古部来とドールんの会話は歴とした伏線でしょ?記憶の操作技術ってなんか難しいこと言ってるけど」

 

 「創作論破において記憶の操作技術というものは付きものですね。簡単に言っていますが、とんでもないハイテクノロジーでございます。未来ですね」

 

 「実際に未来なんだけどね。記憶をいじれるってマジで悪用されたらとんでもないレベルで危険でしょ。忘れさせられるだけならまだしも、やってもないことやったと思わされたり、突拍子もないこと信じさせられたりすんじゃん」

 

 「原作でもまさにそのようなことがありましたね。今回の黒幕は記憶を奪うに止めていたようですが。しかし記憶を奪われていたとして、こうした傍証があればまだしも、ノーヒントでは気付くことなどできないでしょう。なにせ根拠となる記憶そのものがないのですから」

 

 「覚えがないことを追及されるのってホント腹立つよね。覚えてないんだからどうしようもないっつってんのに思い出せとか正確に言えとかさ」

 

 「何があったのですかローズんさんに」

 

 「かと言って記憶にございませんって言えば免れると思われちゃ困るよね。記憶なんて曖昧なもんなのに、それを根拠にしようとすることがそもそも間違ってるっていうか」

 

 「日本人は問題そのものの解決よりも、その責任の所在がどこにあるのかを明確にしたがる性質がありますから、記憶にあるないは非常に重要なことなのでございます」

 

 「それに、アタシたちみたいな過去の人は誰かに覚えててもらわないと、本当にそこで終わっちゃうっていうか…なんか、覚えられてることが大事な感じしない?」

 

 「人はいつ死ぬか…人に忘れられた時、ですか。とても深い言葉です。今になってその深みに気付くとは、なんとも皮肉なお話でございます」

 

 「まったく!いい人生だった!」

 

 「お酌はいけませんよ!?我々未成年です!」

 

 「っていうかこの章のクロも、その忘れられる忘れられないっていうことが一番ネックだったわけでしょ。人に忘れられることが許せなくて、自分を思い出させるために外に出ようって決意したっていう」

 

 「そうですね。ローズんさんの前で申し上げるのも憚られるのですが、一章と二章のクロのお二人がどちらかと言うと目の前の殺人に意識が向いていたのに対し、三章のクロはその更に先、卒業後の行動を見据えていました。その分、計画性や巧妙さがより仕上がっているわけですね」

 

 「QQのトリックの中でも結構上位に入る複雑さじゃね?トップは六章、異論は許す」

 

 「異論ではございませんが、五章もなかなかでございますよ。順番で言えば、6→5→3→1→4→2といったところでしょうか」

 

 「アタシの意外と高かった。最初のだしびりっけつかと思った」

 

 「あと二つに比べて事前の計画性がございますので…」

 

 「そういえばここ二人ともクロだったわ。どうする?こっからクロトーーークでもする?」

 

 「そこまで間延びすると、あと4名ほど連れて来なければいけない気がして参りますね。何の括りか尋ねられたくなります」

 

 「各作品から3クロ集めたり、1クロ集めたりしたら辛そうだね」

 

 「互いの傷を舐め合うわけでもなく、お互いが古傷を抉るのを眺め合うという、実に凄惨かつマニアックな世界となりそうです。傍から見ている分には楽しそうですが」

 

 「んで、傍から見てるだけじゃ面白くなさそうな感じの古部来とドールんの将棋だけど、これ『もぐら』の話しながら将棋指してるわけでしょ。この二人ずっと将棋指してんね」

 

 「六浜さんが古部来君に付き合っている構図になっておりますので、仕方ないかと。本編内で古部来君は無敗ですね。おまけ小説でもアニーさんにチェスで勝利していました」

 

 「トリッキーもやってたね。見事に負けてたけど、どういう感じだったの?アタシ将棋は全然分かんないから、分かるように説明してよ」

 

 「なんと申しますか…将棋にも囲碁にもチェスにも、定石というものがございます。ですが彼の打ち筋は私の知っている定石のいずれにも当てはまらないのに、気付けば詰まされているのです。一見こちらが有利に進めているのかと思ったら、奇襲や誘導により敗北が唐突にやってくるのです」

 

 「わかんね」

 

 「申し訳ございません」

 

 「てかどうでもいい」

 

 「仰ると思いました。では次のシーンに参りましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「トリッキーのフレンチトースト食べすぎて清水と屋良井がダウンしてるところだね」

 

 「こちらでは屋良井君がまたしても、望月さん黒幕と内通している説を持ち出していらっしゃいます」

 

 「ヅッキーが黒幕と関係あるわけないじゃん!あんな可愛い娘が!」

 

 「彼女を可愛いと仰るのはローズんさんだけだと思います」

 

 「トリッキーは思わないわけ?あのぬいぐるみみたいなほんわか感」

 

 「申し訳ありませんが理解致しかねます」

 

 「なんで屋良井はここまでヅッキーに固執するわけ?」

 

 「二章で、彼はモノクマと望月さんが会話するところを目撃されています。これは資料館の個室の毛布を持ち出すことが可能か尋ねているだけですが、互いに疑心暗鬼に陥っている状況ですとそれも疑う十分な根拠になりますね。結論から言ってしまえば、当たらずしも遠からずといったところです」

 

 「うん、まあそうだよね。無関係とは言えないよね。清水はなんかフォローしてるっぽいけど、なんで?」

 

 「フォローというよりは、単純にそう思っていないだけではありませんか?望月さんでなくとも、清水君がそう思っていれば同じことを仰るかと」

 

 「そうかなー。あの二人なんかいい感じっぽいし、なんかイチオシCPだし」

 

 「はっきり言ってしまうのですか、それを」

 

 「言ったって主人公とヒロインだし。でも清水ってドールんのこと気になってるっぽい感じもちょっとあるっしょ?なに無能のくせにハーレム気取ってんだか」

 

 「どれだけ清水君のこと嫌っているのですか。いや間違ったことは仰っていませんが」

 

 「やっぱトリッキーもそう思ってんだ。あいつマジむかつくよね」

 

 「同意いたしかねます」

 

 「否定はしないの?」

 

 「ノーコメントでお願いいたします」

 

 「ふーん、まあいいや。次の話ではアンタがパーティ主催してるよね。これみんなを夜時間まで見張るためって言ってるけど、だったらパーティじゃなくても良かったんじゃない?」

 

 「そこはやはりエンターテイナーとしての私の性でしょうか。何もないまま徒に時間を過ごすというのも味気ないものでございます。ですからせめて、パーティをと」

 

 「結局それを利用されちゃってるからね…。犯人の方が何枚も上手ってことだ」

 

 「全くその通りでございます。パーティのイベントを話し合っているところで、さり気なく花火大会を企画されてしまっています。この時点から犯人の計画は動き出していたのです。むしろ敵に塩を送るような形になってしまったと激しく後悔しております」

 

 「まあ仕方ないよ。トリッキーがパーティ主催しなくてもどうにかして花火大会的なことはしたと思うし」

 

 「しかしその後に描かれているように、皆様が個々にパーティの準備をしてくださっていたことは、とても嬉しく思っています。飯出君やアニーさんのような皆様をまとめてくださる方々が続け様に亡くなってしまい、まとまりに不安があったのですが」

 

 「古部来とか穂谷とかアホ毛とか、和を乱すヤツもいたしね」

 

 「ついに名前すら呼ばなくなってしまいましたか」

 

 「そのアホ毛も、曽根崎と笹戸と一緒になんだかんだで準備してるしね。ホント最初のプロローグのとこから比べたら、ちょっとはマシになったのかな」

 

 「物語を通して彼も成長していってますので。曽根崎君の強引な誘いがあったとはいえ、手伝っているということこそが大きな一歩です。それにこの三章、真ん中の章ということもあって清水君の行動や考え方に変化が表れ始めている章にもなっています。事件が起きてからが特に顕著ですね」

 

 「そうなの?」

 

 「彼にとって身近な曽根崎君や、リーダーとして頼りにしている六浜さんが標的にされたことにより、自分自身が直接クロと立ち向かうという意識が芽生えてきたのではないでしょうか。いずれにせよ、ここが彼にとって一つのターニングポイントになっております」

 

 「ターンもなにもずっと曲がりくねって捻くれてるけどね」

 

 「この場面で笹戸君が仰っているように、“超高校級”の肩書きを持っている方々はみな努力家と言えます。“超高校級”の“才能”を持つにあたって不可欠である努力を評価された清水君は、確かに特別な存在と言えます」

 

 「単に珍しいだけじゃないの。努力家ってよく分かんない“才能”だし」

 

 「その辺りも、六章で明らかになります。主人公やその他主要人物にまつわる謎は、最終章までのとっておきになるのが常でございます」

 

 「あいつがそんな扱い受けるのなんか納得いかないなあ」

 

 「清水君はご本人の態度はさておき、作品内の扱いは非常によろしいですから。やはり我々とは一線を画した特別ポジションに就いておられます」

 

 「あーもー!納得いかねー!」

 

 「しかし“才能”を手に入れるための努力…ろーずんさんもございますでしょうか。私も辛い下積み時代がございました。弟と妹と母親を食べさせるために学校をサボったこともありました」

 

 「なんでそんな重いのを先に話すの。アタシが話しづらいじゃん!」

 

 「し、失礼しました…」

 

 「アタシの場合は努力っつーか、好きでぬいぐるみ作ってたらそれがそのまま“才能”ってことになったみたいな?まあ中学高校の友達とかに頼まれて色々作ったり縫ったりしたことはあるけど」

 

 「好きなことを“才能”として評価されるというのは素晴らしいことですね。私にはこれくらいしか取り柄がございませんので、選択肢などありませんが」

 

 「美味しいご飯作れるじゃん!」

 

 「それも本職の方には劣りますので。さすがに“超高校級”とまではいかないかと。高校生で料理をする方はたくさんおりますから、その中での“超高校級”となるとやはり抜きんでているのではないでしょうか」

 

 「これも結構評価が曖昧なとこあるよね。アタシみたいに裁縫専門でやってる高校生なんてそんなにいないだろうから、ちょっとした実績があれば“超高校級”だけど、トリッキーみたいなマジシャンなんて高校生でも多いでしょ?それだと“超高校級”って日本で何番目とかそんなレベルになってくるじゃん」

 

 「そこは希望ヶ峰学園の方で何かしらの評価基準があるのでございましょう。一応、『各分野において超一流であること』という原則がありますので、ローズんさんも超一流と認められたということでございます」

 

 「トリッキーもね」

 

 「恐縮です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「次は?なみみんと滝山と屋良井の準備シーンだね。それぞれチームに別れて準備するって、これドールんの案?」

 

 「左様で御座います。やはり手分けした方が早いですし、全員で協力してこそのパーティだと思いましたので」

 

 「発掘場を片付けて、荷物を倉庫まで持ってきたところまではいいんだけど、この倉庫のシーンでいくつか伏線張ってあるんだよね。だからこの3人のチームなんだって」

 

 「ええ。まず滝山君がダイヤル錠を回せないことがここで明らかになります。回せないというか、仕組みが理解できないため扱えないということですね。これは流石に私も衝撃的でした」

 

 「ダイヤル錠も使えないって…マジでこいつ野生児っていうレベル超えてない?」

 

 「どうなのでしょう。実際に私たちは野生児だったことなどありませんし、野生に生きていれば鍵をかけるという概念すら不要になるのですし、一目で理解できなくともムリはないことかと」

 

 「いやそれにしたってさ…」

 

 「しかしこのことが、結果として私たちの命を救うことに繋がるわけです。曽根崎君がこの情報をどこから仕入れたのかは分かりませんが、これは後々結構大事な事実になって来ます」

 

 「曽根崎っていうのが気に入らないね。なみみんが先導して潔白証明してやればよかったのに」

 

 「明尾さんはあの倉庫に入るとメロメロになってしまわれますので」

 

 「それも大概おかしいからね。一応言っとくけども」

 

 「それから、屋良井君と滝山君がパーティグッズではしゃいでいるシーンもございますが、ここもよくよく考えると大きな伏線なのです」

 

 「いや、これはここでは気付かないっしょ。こんなのあちこちに仕込んであんの」

 

 「もちろんでございます。ですから我々がこうして説明するハメに──あ、いえ、決して嫌ではないのですが」

 

 「ちょこっと本音が出たね。いいよ別に、アタシだってみこっちゃんと一緒にできないんじゃ大して楽しくないから」

 

 「全く歯に衣着せないのですね…。せっかくですから最後までやり遂げようとは思いますが」

 

 「トリッキーは真面目だねー。そういうところが女子から人気なんだよ」

 

 「人気だったのですか、私は。てっきり古部来君のような逞しい方や滝山君のような愛嬌のある方が人気なのかと」

 

 「メタいこと言うけど、人気投票だと古部来が圧勝だったけどね」

 

 「言わんこっちゃない」

 

 「あいつのどこがいいんだかね。まあドールんはあいつが気に入ったみたいだけど」

 

 「それはご本人に伺っても決して首を縦に振られないことでしょうね」

 

 「見ててもどかしいんだよあの二人!アタシだったらみこっちゃんに抱きついたりちゅっちゅしたりとか当たり前にするけど!?」

 

 「それは女性同士ですから…。それに六浜さんはそういうことをされる性格ではありませんので、やはり抵抗があるのでしょう。古部来君のイメージとも違いますから」

 

 「でもさ、あの女は男の三歩後ろをついて来いみたいな感じも、ドールんには似合わなくね?なんていうか、歩幅は違うのに並んで歩いてるみたいな」

 

 「分かります。古部来君の大きなゆったりした歩幅に、六浜さんがせかせかついて行っているような。そんな関係性を感じます」

 

 「そういうトリッキーはまどっちとどうなのよ」

 

 「ほあ!?いきなり私にフるのですか!?」

 

 「いきなりも何も、QQでこの手の話のときはアンタたちが筆頭でしょ!羨ましいんだからこのこの!」

 

 「いたた…あのぅ、ローズんさんは今日は少しテンションがおかしいように思いますが。どうなさったのですか」

 

 「酔ってんのよ」

 

 「冗談でもおやめください!そういう規制が一段と厳しくなっているのですから!」

 

 「そんなに怒られると思わなかった」

 

 「万が一にでもその手の糾弾には巻き込まれたくございませんので。僭越ながら、私は仕事柄そういったいい加減な批判や無責任な中傷を受けたのは一度や二度ではございません」

 

 「トリッキーが?アンタだってテレビとかでも人が良いって言われてなかったっけ?」

 

 「私のそうしたスカした態度が気に入らなかったり、そもそも若くしてお仕事をいただけている状況に嫉妬なさる方もいらっしゃいますので」

 

 「理不尽だねー。そういう人間にはなりたくない。ってあれ?何の話だったっけ?」

 

 「滝山君がダイヤル錠を使えないというお話でした。彼は野生児なので、それも“才能”の一部であるかと」

 

 「で、その後の手伝いはせずに屋良井と滝山は逃げ出したワケか」

 

 「パーティーの準備に全く乗り気でないのが私としては悲しいのですが…いえ、少なくともこの時点で屋良井君にはパーティーを利用する意図しかなかったのですが」

 

 「その後は料理の準備の場面だよね。ここでも滝山の評価が害獣か何かみたいになってるけど、さすがにあいつでも案山子で追っ払えるのかな?」

 

 「追っ払われてはいけないと思います。人として」

 

 「っていうか料理の会話に自然に古部来が入り込んでるんだけど、あいつも地味に料理できるんだよね」

 

 「サンマの塩焼き定食もご自分でご用意なさっていましたし、六浜さんのお料理にも口を出されていましたね。将棋ばかりしているわけではないのですね」

 

 「そういう地味な設定って、こういう風に細かい部分に出てるだけまだマシだと思うんだ。アタシが防水加工したぬいぐるみ抱きながらお風呂入ってるっていう設定、今これ読んでる誰か一人でも覚えてんのかな」

 

 「そう言えばそうでございましたね…私にはそう言った設定はあまりなかったかと思いますが、ある方にはありますね。清水君の犬好き設定も」

 

 「コロシアイの中で犬好きなんて設定あってどうすんのよ。だいたいあいつに犬とか似合わねー。雨の日にダンボールから子犬拾って風邪ひけ」

 

 「どれだけ嫌いなのですか清水君のことが」

 

 「生理的に」

 

 「これはダメですね、挽回の目すらもぎ取られています」

 

 「今からアタシがあいつを嫌いじゃなくなるとか天地がひっくり返ってもあり得ないから」

 

 「クロ指名された方の叫びということにしておきましょう。でなければ彼があまりに理不尽に可哀想です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「まどっちが医務室がいるシーンなんて、最初の探索以来じゃない?結構まどっちと関係が深い場所ってことなのかな?」

 

 「ええ。非常に重要な場所です。この辺りから穂谷さんの病弱さが伏線に仕込まれております」

 

 「まどっちの詳しい病名とか症状とかって本編で言われてたっけ?」

 

 「脊髄が硬くなっていくという病気でしたが、そういったものが実在するのか、治療法などについては分かりません。そこまで調べなくとも書けさえすれば問題ありませんから」

 

 「ブラックジャックにそんな話なかったっけ?」

 

 「不確実な話なのですが、確かあったと思います。しかし現実にはあんな神懸かり的な腕を持つお医者様というのはいらっしゃいません。現実は非情でございます」

 

 「ま、そうだよね…。で、ここでなみみんがまどっちが身体弱いっていうのをちょっと勘付くんだよね」

 

 「身体が弱いと言うよりも、我々他の生徒と少し違うことを感じ取られています。要するに、黒幕だと疑う火種になっているわけですね」

 

 「屋良井がヅッキー疑ったときもそうだけど、ホント些細なことでそんな判断、よくするよね」

 

 「ローズんが言えたことではないと思いますが…いえ、なんでもございません」

 

 「いや聞こえてる聞こえてる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「場面は飛びまして、パーティ直前の清水君の様子からです。会場に向かう前に、寄宿舎の近くで滝山君と会っております」

 

 「これも伏線なんだよね。ガッツリと」

 

 「ええ。まず滝山君が頬張っているのは、ばくだんおにぎりです。要はかやくご飯のおにぎりなのですが…ばくだんです」

 

 「クロはこのおにぎりに毒を仕込んだんだよね。だからもうこの時点で既に滝山は死ぬの確定してたっていう」

 

 「非情でございますね…」

 

 「非情だね」

 

 「そしてその後、パーティを始める際に屋良井君と滝山君がクラッカーを鳴らして晴柳院さんを驚かせております。これも、凶器のことを考えれば伏線と言えますね」

 

 「みこっちゃんの鼓膜が破けたらどうするんだ!」

 

 「さすがにクラッカーの音で破けることはないかと。よっぽど近くで鳴らさなければですね」

 

 「あいつのクラッカーの場合、近くで鳴らされたら鼓膜どころか全身破けるわ」

 

 「ええ…いや、まあ…応答致しかねます」

 

 「ブラックジョーク間に受けられるほど気まずいことはないよ」

 

 「申し訳ございません。では気を取り直して、甘いシーンでもいかがでしょう。望月さんと清水君が会場の隅のベンチに腰掛けてお話しております。QQを代表するカップルです」

 

 「本人たちは否定するだろうし理解できないだろうけどね!っていうかQQを代表するカップルはあいつらじゃねーから!あんたらだから!」

 

 「この話止めさせていただいても?」

 

 「トリッキーが始めた話だろ!急に恥ずかしがるな!」

 

 「いやあの、そんな風に自分にフられると思っていなかったので…恥ずかしさも一入と申しますか」

 

 「あーくそなにこいつ。てえてえな」

 

 「は?“てえてえ”とは…」

 

 「いいんだよそんなことは!ヅッキーがなんか不穏なこと言ってる次のシーンで、あんたとまどっちがコラボステージしてんだろ!お似合いだよちくしょー!」

 

 「はあ…ありがとうございます」

 

 「てかこの時点からお互い意識してたとかそんなん?」

 

 「いやまあ…以前図書館の件があったかと思いますが、その時点で穂谷さんは私の仮面を見抜いていらっしゃいましたし、私も穂谷さんが他の方とは違うということはなんとなく察しておりましたので…そこからと言えばそこからでしょうか」

 

 「てなわけで画面の前のアンタらは、そういう目線でまたあの図書館のシーンを読み返してみてね。てえてえから」

 

 「てえてえでしょうか」

 

 「んじゃこのシーンについての豆知識」

 

 「マイペース極まりないですね。なんでしょうか」

 

 「ここでトリッキーが見破られてるマジックだけど、これ作者が考えたヤツなんでしょ?」

 

 「考えたというか見つけたというかそう思い込んでいるだけというか…一度試して上手くいったので自慢したかったのでしょう。こういったところでないと披露する場もございませんので」

 

 「でもこれさ、タネがただ山札の一番下に落として切ったフリをするって、雑じゃね?雑ってか、それだけ?って感じなんだけど」

 

 「マジックというのは得てしてそういうものでございます。些細な仕掛けに脚色と装飾を施して、大袈裟に、ダイナミックに魅せる。それがエンターテイナーとしてのマジシャンの仕事でございます。ですので、種明かしをしてしまえば途端にそれは白々しいだけになってしまうのです」

 

 「だからタネがバレるのイヤがるんだ」

 

 「手前味噌な物言いですが、バレない自信もございますので」

 

 「さすが“超高校級”…でもここでドールんと古部来と曽根崎が見破ってるよね」

 

 「それは…見破っていただかないと種明かしができないので。種明かしができないと作者としてはこのシーンを書いた意味がないので」

 

 「すげえ自己満足じゃん…この件…」

 

 「もともとQQを書き始めたのが自己満足ですから。最終的にはたくさんの方にお読みいただけましたので、大変満足です」

 

 「まあね。でもこのシーンでもっと大事なのは次の、古部来がドリアンジュース噴き出すところでしょ」

 

 「はい。こここそが、三章の被害者たちの運命を分けた瞬間でございました。おそらくこの現場を目撃したクロは、この時点で計画の狂いに気付いたことでしょう。それでも強行したのは、古部来君がターゲットの一部だったからです」

 

 「でもそれも失敗だったよね。もし滝山が渡したジュースを曽根崎がそのまま飲んでたら、ダイイングメッセージは残らなかったわけだし」

 

 「それはそれで後半のストーリーに大きく影響してきますが…それにしても、曽根崎君も曽根崎君であんまりですね。滝山君の素振りに怪しさを感じていながら、それを古部来君に丸々押しつけた形になりますので。古部来君の殺害で言えば、彼にも責任の一端があって然るべきかと」

 

 「そりゃそうだよね。ジュース自体に毒が入ってたかも知れないんだから、捨てときゃいいのに」

 

 「単なるイタズラだったとしたらもったいないとでも感じたのでしょうか」

 

 「あの曽根崎に限って、そんな勘が鈍いわけがない。裏があるはずだわこんなん」

 

 「まあ…そうですよね…。今となっては確かめる術もありませんが」

 

 「だからあいつは信用ならないんだよ。見抜いた上でやってたら屋良井よりよっぽど質悪いけど…」

 

 「ご本人に確認してみます?」

 

 「どうせウソ吐くでしょ。てかもうそんなことどうでもいい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さて、場所を発掘場から湖畔に移しまして、いよいよ花火大会が始まります」

 

 「またトリッキーがマジックしてる!これどうやったの!?」

 

 「このタネは秘密でございます。こうしたさり気ないマジックにこそ皆様が沸き立つものでございます」

 

 「タネが秘密ってことは、作者がタネ考えつかなかったってことだね」

 

 「ご明察でございます。やりようはいくらでもあるとは思いますが、条件が限られますので」

 

 「そんでもってさっきのパーティのときからもそうだけど、ここでちょっと清水とヅッキーの距離縮まってるよね。二人きりで話したりしてるし、ねずみ花火からヅッキー逃がしてあげたり」

 

 「少しずつお二人の距離が近付いていくのは、見ていて微笑ましいものでございますね」

 

 「ぐぎぎ…ここに加われなかったのが悔しい…!」

 

 「すっかり忘れておりました。ローズんはもうこのときいらっしゃいませんでしたね」

 

 「アタシだって線香花火を見つめながらみこっちゃんと一緒にまったりしたかった!これが落ちたら夏も終わるね、的なこと言いたかった!」

 

 「ゆっくり線香花火をしている方はいらっしゃいませんでしたが」

 

 「花火と言えば夏だし、夏と言えば線香花火だし!」

 

 「お気持ちは分かります。風情があって良いです」

 

 「まだちょっと夏には早いけど、やりたくなってきたなあ。みんな集めてまた花火大会やろっか!」

 

 「古部来君と滝山君のトラウマを著しく刺激しそうですが」

 

 「この期に及んで気にしない!」

 

 「完全に他人事だと思って随分と無責任なことを仰いますね」

 

 「トリッキーなんか辛辣じゃない?」

 

 「さすがに彼らの傷を抉るようなことは見逃せないかと…いえ、私も言い過ぎました」

 

 「そうやってすぐ自分の非を認めるからアタシらが責められなくなるんだよ!アンタそういうとこズルいよ!」

 

 「ズルい、のでしょうか」

 

 「ズルいよ!あのね、ちょっとくらいワガママ言ったり非を認めなかったりした方がちょうどいいの。トリッキーだって完璧じゃないんだから、アタシらも言いたいことあるの。それを言う前に自分で言って謝られたら、こっちからは何も言えないじゃん!それはズルいよ!」

 

 「はあ…申し訳ありません」

 

 「そういうとこだぞッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「と、お話している間に、煙がもくもくと」

 

 「ぎゃーっ!事件発生じゃん!呑気に話してる場合じゃなかった!」

 

 「直接描写されていることではございませんが、このとき既に滝山君と屋良井君は古部来君に向かって動き出しておりました」

 

 「直前まで手持ち花火でふざけてたのに、こんな一瞬に行動起こすとか…冷静に考えたらあいつマジでヤバいヤツじゃん」

 

 「実際に行動に起こしてしまった私たちが申しましても、説得力に欠けるかと」

 

 「痛いところ突かれた…そりゃそうだけどさ。アタシらと屋良井とじゃ殺意のデカさが違うっていうか」

 

 「計算高いことは確かですね。ですが冷静に手を下しているからこそ、彼の覚悟が窺えるというものです。生半可な精神状態では、おしおきの恐怖で足が竦みますので」

 

 「アタシは最初だったからおしおきとか知らなかったんだけど、そう言うトリッキーだっておしおき怖くなかったの?」

 

 「私はそれどころではなかったので。あのときは無我夢中でした」

 

 「うーん、自分がクロになった瞬間のことを振り返るのってなかなかエグいよねこれ…アタシも自分で自分のしたことにヒいたもん」

 

 「それでもやはり譲れないものというのはあるものでございます。ローズんには友情、私には愛情、屋良井君には自己存在の定義…それを理解しようというのも難しいお話です」

 

 「っていうかおもっくそクロのネタバレしてるけど。いいの?」

 

 「解説編なのでその辺りはもう関係ないのでは」

 

 「ま、いっか。んで、こっからまた捜査が始まるわけね」

 

 「はい。ここからはかいつまんで参ります」

 

 「え、なんで?どうしたの急に」

 

 「いえ、紙幅の関係で」

 

 「紙幅なんてないでしょこれ!?」

 

 「ローズんさんは、たとえば今の時点で我々の発言全てを文字に起こした場合、どれくらいの文字数に達していると思われますか?」

 

 「何そのわざとらしい仮定!?知らねーよ!」

 

 「2万字を超えております。一般的な会話として多いのか少ないのか判断しかねるところではありますが、こちらをお読みいただいている方々にとっては少々冗長かと」

 

 「急に第四の壁ぶち破って事情持ち込むの止めて貰える?頭がついていけねーわ」

 

 「ですのでここからは、解説編らしくテーマを絞って解説して参ります」

 

 「いきなり面倒臭くなったわけじゃないのね?」

 

 「誓ってそのようなことはございません」

 

 「目を見て言え」

 

 「ふっはっは!女性の目を見つめるなどと無礼なことはいたしませんよ!さて、鳥木君はさきほど急にお腹を壊して出て行かれたので、ここからはこのMr.Trickyがローズんさんと共にお送りいたしましょう!」

 

 「バレバレだから」

 

 「テーマは大きく分けて3つ!!捜査編中の曽根崎君の動向、六浜さんと清水君、そして滝山君でございます!」

 

 「うん、まあ事件の中心人物って感じだね」

 

 「まずは曽根崎君の動向について探って参りましょうか。彼は今まで清水君と共に行動し、捜査の際に彼をあちこち連れ回すのがお決まりとなっていました」

 

 「お決まりって言うかそーゆーイメージはあったね。でも今回はそうじゃなくて、別々に捜査しようって言ってるね」

 

 「古部来君の死体周辺の捜査は一緒にしましたが、嫌な予感がすると仰って別行動となりました。そしてこの後に起きることを考えるに、おそらく曽根崎君はこの時点で、裁判までの間に自分が何らかの形で襲われることを想定していたのではないでしょうか?」

 

 「え、なにそれ。この状況で襲われるって、それもはや殺しじゃん。なんでこんな落ち着いてんのあいつ」

 

 「曽根崎君はパーティの際に滝山君からドリアンジュースを受け取り、そこでも同様に嫌な予感がして古部来君にそれを押しつけています。そして古部来君が殺害された。この一連の流れを知っているからこそ、曽根崎君は、本来のターゲットが自分であったと考えたわけです」

 

 「じゃあ清水と別行動にしたのと、わざわざ発掘場に戻ったのって?」

 

 「再び滝山君に襲撃されることを考え、周りに人のいない場所へ誘い出したのでしょう。当然危険は伴います。曽根崎君もそれは覚悟の上だったのでしょう。ですが、曽根崎君は既にその先まで推理していました」

 

 「その先?」

 

 「滝山君が、真犯人とも呼べる誰かに操られているという事実です」

 

 「…マジで?あいつすごくね?なにそれ。どうやってそこまで分かるんだよ」

 

 「後半の裁判の時点で明らかになるのですが、曽根崎君はそこで滝山君を多少怪しんでいたようです。ですが、滝山君に全ての犯行をこなすことができるとまでは考えておりません。故に、他の人間の介入は容易に予想できたことでしょう」

 

 「てかさ、滝山が怪しいってこと分かってて、自分を殺そうとしてるって推理してて、敢えて単独行動するって何の意味があるわけ?」

 

 「それは彼のみぞ知ることでございますね。ですが、清水君や望月さんと共に行動して彼らを危険な目に遭わせるよりも、敢えて襲われてなんとか生き延び、情報を多く得て裁判に臨んだ方が、勝てる可能性があると踏んだのでしょう」

 

 「どんだけギャンブラーだ!人間のクズもびっくりだわ!シャレにならないレベルで死にかけてるし!」

 

 「滝山君の殺意がどれほどかを見誤ったのでしょうか。さすがの曽根崎君でも、全てを見透かすことはできないでしょう。そうであれば殺人が起きる前に止めることもできたでしょうから」

 

 「でも滝山のヤツ、はっきり殺すって言ってるよ。まあ正気じゃなかったとはいえ、かなりヤバかったでしょ」

 

 「正気でないからこそヤバかったのでしょうね。滝山君自身も余裕がなかったことですから。とはいえ、最終的に彼は誰も殺すことはなかったので、それが救いと言えば救いでしょうか」

 

 「それが救いって言える感性おかしいからね。一応言っとくけども」

 

 「そして発掘場で発見された後、笹戸君による応急処置の甲斐もあってなんとか意識を取り戻します。ここで大事な手帳を清水君に託すのは、彼は自分が倒れている間に裁判の結果が出ると考えていたのでしょうか」

 

 「それか、滝山がクロにされるのを見越して、そこで結論出しちゃわないようにしてたのかね」

 

 「いずれにしても彼の卓越した推理能力と先読みの力は素晴らしい者がありますね。私もそれで一度命を救われているわけですので」

 

 「癪だけど認めざるを得ないよね。ホント癪だけど。あいつのあの態度さえなけりゃ…」

 

 「ちなみにこの襲撃の前後で、曽根崎君の周囲への態度は微妙に変化しております。具体的には、倫理観の箍が少々外れているのですが」

 

 「滝山が死んだこととか、良かったって言ってたしね。なんで?」

 

 「打ち所が悪かったのでしょう。メタ的な理由を申しますと、死にかけるほどの怪我を負って脳になんの損傷もないはずはない、ということで、演出の一部です」

 

 「だからさ、そういうのって自分から言うのは野暮なんじゃないの?」

 

 「完結から1年以上経ってますし、解説編ですのでそこはお目こぼしください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さて、お次は六浜さんと清水君についてです。滝山君による連続襲撃事件の2件目は、図書館前で六浜さんが襲撃された件です。このとき六浜さんは曽根崎君ほどの大怪我にはなりませんでしたが、意識が朦朧とするほど負傷されています」

 

 「滝山のヤツ、殺意がないって言われてるけど、むしろ殺意無くてこれだけのことできるってヤバくね?」

 

 「野生児ですから、身体能力は我々の想像を超えます。“超高校級”の“才能”とはそういうものです」

 

 「図書館の屋根から脳天めがけて瓶を投げつけるだけでこの重傷…直接殴られた曽根崎は、ホントよく生きてたなって感じだね」

 

 「打ち所が良かったのでしょう」

 

 「さっきと言ってること違う!!」

 

 「図書館前から医務室まで、倒れた六浜さんを運ぶシーンですが、ここで珍しく清水君が人のために動いています。誰かを負ぶるなど、これまでの清水君の性格からして考えにくいものでしたが」

 

 「さすがに目の前で死なれたら後味悪いからじゃね?」

 

 「それも1つの理由かと思います。ただ、今の清水君にこのときのことをお伺いしても、本当のことは答えていただけないでしょう」

 

 「素直に言うわけないからね。ドールんにとってはこの時のことってのは、消したい記憶なんじゃないかな」

 

 「命を救われているわけですから忘れるわけにはいきませんが、異性におんぶされるというのは恥ずかしすぎるので消したい記憶なのでしょうね。彼女の場合は、前者を優先しそうです。都合良く細かいことを忘れるなどと器用なことはできなさそうです」

 

 「ドールん、クソ真面目だからね」

 

 「ちなみに以前の解説編でも触れていましたが、清水君が六浜さんを密かに想われている疑惑に関してですが」

 

 「エグいタイミングでその話蒸し返すねアンタ。そういうの気ぃ遣って流すもんかと」

 

 「一応天からの指示ですので」

 

 「いつから天啓を仰いでたんだよ!この話題ダメだって!ドールんにとっても清水にとっても地雷だって!」

 

 「裏設定ですので、ここで申さなければどこにも出てきませんので。清水君はここで六浜さんをおんぶして医務室に運んだことをきっかけに、少しだけ六浜さんを意識し出したそうですよ」

 

 「うわ…ちょっとリアル。てかアタシ知らね。蹴られるならアンタ蹴られろよ」

 

 「ご勘弁いただきたい」

 

 「あの野郎、ヅッキーに研究されてみこっちゃんに頼りにされてまどっちに詰られて、そのくせドールんに浮気するとか、なんだあいつ。ハーレム気取りか」

 

 「ハーレムからは程遠い状況かと思いますが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はい、ラストは滝山君の状況に関してです。事件発生直後から、彼は捜査編でほぼ姿を現しておりません」

 

 「普段から捜査編のときはあんま役に立ってなかったから、こんなもんだって思ってたけどね。注意深く見てると、ホントにほとんど出てないじゃん」

 

 「この後の裁判でも目立った活躍はありません。一応当事者の一人である彼は、事件発生後から身の振り方が分からなくなってしまっていたのですね。仕方ないとは思いますが」

 

 「変なことして目立つくらいなら何もしないでおくってわけ?まあそうなるよね」

 

 「経験談でございますか?」

 

 「トリッキーってそういうこと言う人だっけ?」

 

 「直接描写されていませんが、この捜査時間中に滝山君は真犯人と何度か密会を重ねております。まず自分が事件に巻き込まれていることを自覚させられ、協力せざるを得ないと突きつけられます」

 

 「真犯人のヤツも捜査してたのに、どうやって?」

 

 「周辺の林などを利用したのではないでしょうか。また、皆様捜査に動いているので、現場から離れれば人目を避けることも容易かと。何より滝山君の機動力と、真犯人の天性の目立たなさを利用すれば、目を盗んでの密会も可能でしょう」

 

 「そう言われるとできそうな気がしてきた。具体的な説明は全くしてないのに。不思議」

 

 「全てを細かく描写すると絶対に矛盾が出てきてしまいますので。ある意味でミステリーとは、もっとも現実離れした現実と言えましょう。リアリティは重要ですがリアルである必要はないのです」

 

 「それどっかで聞いた!人の台詞パクるな!」

 

 「その密会の最中で滝山君は、曽根崎君と六浜さんを襲撃する覚悟を決めさせられてしまったのでしょう。短い時間でほぼ選択肢がなかったとはいえ、彼をそこまで追い込む真犯人のなんと狡猾なことでしょうか」

 

 「で、その後で発掘場の曽根崎襲撃と図書館のドールん襲撃に繋がるわけね」

 

 「さて、ここでローズんさんを初めとする皆様にご質問です。彼はあくまで自分が生き延びるために曽根崎君と六浜さんを襲撃しましたが、果たして滝山君の行動はエゴでしたのでしょうか。彼の行動が基づいている精神は、クロと呼べるものでしょうか」

 

 「急にどうした」

 

 「共犯関係とはいえ、彼に罪を問うのはいかがなものかと思いまして。事実、彼は人を殺すことを最後まで躊躇っていました。その証拠に、曽根崎君と六浜さんでは怪我の重さに大きな差があります」

 

 「曽根崎が裁判を欠席するほどの重傷で、ドールんが応急処置で済むくらいの軽傷だね。う〜ん…微妙」

 

 「微妙でございますか」

 

 「だって曽根崎の回想で、滝山のヤツ完全に『ころす』って言ってるもん。気が動転してたってのもあるけど、殺意はあったわけっしょ?」

 

 「切羽詰まった状況ですので、殺意は認められますが、我々のそれとはまた異なるかと」

 

 「自虐に見せかけてアタシもディスってきた!いやアタシだってそれどころじゃなかったんだって!」

 

 「私も冷静な判断ができる状態ではありませんでした。むしろ冷静に犯行に及ぶ方が恐ろしいですが、案外半々くらいなのです」

 

 「この場合、滝山がテンパってて、真犯人の方は冷静だったってわけね。冷静どころか計算ずくだから。で、滝山の気持ちがどうだって?」

 

 「曽根崎君を襲撃した場面では明確に殺意が認められるものの、その前後の状況と彼の精神年齢を加味すると、パニックになって暴走してしまったととれます。その後の六浜さんの襲撃では、曽根崎君との直接的な接触は避け、高所からの自由落下に任せる投擲という、非常に殺意の薄い方法を執っています」

 

 「む…そう言われるとそんな気がしてきた。確かに、ドールんの場合は子供のイタズラでもありそうなレベルだもんね。シャレになってないけど」

 

 「おそらく曽根崎君を襲撃して大事になったことで、彼の中である種冷静に考える隙ができたのでしょう。生き延びるためには六浜さんを殺害しなければならない。しかし人を殺害するのは躊躇われる。彼なりの折衷案ということでしょう」

 

 「死ぬ覚悟決めろなんてのも、あいつくらい子供っぽいヤツにはとても言えないしね…」

 

 「彼は死に際に必死に謝罪の言葉を述べていましたが、そこには手を出してしまった曽根崎君や六浜さんへの謝意があったのでしょう。彼のことですから、少なからず真犯人への謝意も含まれていたと思いますが」

 

 「はあ?なんであいつが真犯人に謝んなきゃいけないのよ」

 

 「共犯者としての責務を果たせずに、剰え告発しようとしていましたから。彼にしてみれば、途中でその役目を放棄するようなことに申し訳なさを感じていたのでしょう」

 

 「律儀なのかバカなのか…っていうか胸が痛む」

 

 「ええ。徹底的に利用され、隠れ蓑兼スケープゴートにまでされ、最後には罪をなすりつけられたまま殺害されてしまうのです。それでも彼は、真犯人に感じていた友愛の情を捨てるという選択肢を考えもしませんでした」

 

 「ピュアっていうか、そこまでいくと狂気的な友情信者だね。精神年齢低いからまだぼかされてるけど、あいつが普通の感性持っててその感じだったら、エグいにもほどがあるわ」

 

 「そこまで考えた上で、真犯人は滝山君を共犯者に選んだのでしょう。特異な身体能力に加え、人を信じやすい性格や殺害のしやすさも、冷酷ではありますが共犯者選びには重要ですので」

 

 「う〜ん…やっぱ三章ってどこの論破作品でもドギツいね。殺し方とか動機だけじゃなくて、犯行の細かい部分まで分析するとそういうのが見えてくるっていうか」

 

 「これから拝読する作品にも、これから作品を執筆するという時にも参考になることでございますね。物語の中盤ということで、核心に迫っていくターニングポイントでもございますから」

 

 「異質だよねあいつ。アタシやかなかなは、まだ悪意があって悪いことしたって気持ちがあるのに、あいつは100%自分のためな上に開き直ってるもんね」

 

 「この場で何を申しても許される発言にはならなさそうなので、コメントは差し控えさせていただきます」

 

 「あ、ずる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「これで三章の日常編から捜査編まではだいたい振り返れたし、アタシらの出番もひとまず終わり?」

 

 「ええ。モノクマのアナウンスが流れたこのタイミングで、私たちの担当部分は終了になります。これ以降は次回の方々に引継でございます」

 

 「次回の方々っつっても、今回でアタシらのほとんどは喋ったんだし、あと一人だけ喋ってない人が出るのは確定なんだよね」

 

 「左様でございます。その相方がどなたかは、皆様ご自由にご想像なさってください」

 

 「大丈夫なのかなあの二人で…まともにやれるイメージが湧かない」

 

 「正直なところ、私も不安でございます。そもそも会話が成立するのかすら…いえ、ですがもはや決まったこと。既に作者様は下書きを進められているというお話でございます。今から変えるというのはさすがに酷かと」

 

 「ただでさえアタシたちの解説編の執筆に数ヶ月かかってるくせにね」

 

 「ラストスパートだからと言ってメッタメタになるのもいかがなものかと思いますが」

 

 「てへぺろ!いーじゃん、アタシもともとこういうテキトーなキャラだし!」

 

 「そうでしたでしょうか…」

 

 「んじゃあアタシたちの出番はここまでだね!最後の挨拶、アタシからやるからトリッキーが最後キレイにシメてね!」

 

 「承知いたしました。お任せくださいませ」

 

 「そんじゃーいってみよー!三章日常編解説!ここまで読んでくれてみんなありがと!お送りしたのは、みこっちゃんをすこ!れよ!有栖川薔薇と!」

 

 「Mr.Trickyこと、鳥木平助がお送りいたしました」

 

 「…あれ?トリッキーってそれ別にキャッチコピーじゃなくない?」

 

 「違いました?」

 

 「まあいいけど…じゃ、バイバイ!」

 

 「皆様、お先に失礼致します」

 

 「やめろ!!」




前回から11ヶ月ぶりの更新です。
一年経つ前に更新できてよかったよかった。
次回からはシェイプアップして読みやすくしようと思います。
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