ダンガンロンパQQ   作:じゃん@論破

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前回が1年弱かかっていたので、今回は一気に終わらせました!
(1年前から同時並行で書いてることは口が裂けたら言えない)


第三章「白羽の矢に射貫かれる 中編」

 「こちらは、ダンガンロンパQQ解説編『後のお祭り』、第三章中編である。本編お呼びここまでの解説編を読み飛ばしている者は、これらを優先して読むべきである。読了後、本解説編を読むことを強く支持することを表明する。続いて免責事項だ。当解説編は本編及びダンガンロンパ原作シリーズの核心的内容、いわゆるネタバレを多く含む可能性を有する。仮にこれらについてネタバレなどにより、読者が損害を被ろうとも、我々は一切の責任を負うことはない。了承すること。ここまでの注意書きを全て読み、免責事項にも承諾したという前提で話を進めていく。以下、宜しく頼む」

 

 「ぽかーん」

 

 「ぽかーんとするな。さて、では簡潔な自己紹介だ。私は当解説編にて進行・解説を担当する、“超高校級の天文部”望月藍だ。そして今回私とともに解説を担当するのは、この男だ」

 

 「きょとーん」

 

 「きょとーんとするな。自己紹介だ」

 

 「え?もういいのか?」

 

 「いいのだ」

 

 「いえーい!みんなおまたせー!“チョコキュウリのソーセージ”滝山大王だぜー!」

 

 「“超高校級の野生児”滝山大王だ。今回は私とともに第三章中編の解説をするのだが、打ち合わせはしっかり終わらせてきたのか?」

 

 「うちわ?もうこのごろはあつくねーから、うちわはいらねーぞ」

 

 「本解説編では、第三章の学級裁判から二度目の捜査編までを解説する。ここは特にお前にとっては重要な部分になってくるのだが、その点においては了承しているということで構わないな?」

 

 「えー?ちがうぜもちづき!りょうしょうじゃなくて、さんしょうのかいせつするんだぜ!」

 

 「好ましくないことではあるが、もう既に私はこの解説編がまともに進行するとは思えない。まず会話が成立していないのだから、解説などできようか(いや、ない)」

 

 「まーまー、もちづきは今回がさいしょなんだろ?しんぱいになんのもしょーがねーって。でもダイジョブだあ!おれはもう一回やったからな!石川と!だから今回はおれがリードするんだ!」

 

 「今回の解説を担当するにあたって過去の回をすべて予習したのだが、お前はただ石川彼方の解説に茶々を入れていただけに過ぎなかったと記憶しているが」

 

 「いいからいいから!おにーさんにまっかせっなさーい!どろぶねにのったつもりでな!」

 

 「漕ぎ出す前から沈みそうだ」

 

 「おれ望月とおはなしできるっていうから、アニーにたくさんおかしもらったんだ。はいクッキー」

 

 「そうだろうと思って、私は飲み物を用意してきた。前回も滝山大王は食事をしながら解説をしていたからな。牛乳と紅茶を持ってきた」

 

 「まぜまぜしようぜ!」

 

 「その見てくれで幼児言葉を使うのは、なかなか違和感を覚えるな。いや、私に感と付く言葉は相応しくないな。しかし何か、ミスマッチであると断言できる」

 

 「うめーうめー」

 

 「もう食べ始めているのか。こぼさずに食べるよう注意しろ。机の上には精密機器や進行に必要な情報リストなども載っているのだ」

 

 「だいじょーぶだいじょーぶ」

 

 「しかし、褐色肌にぼさぼさの髪、大食いに運動神経の良さと頭の悪さ…こうして見ると、原作の終里赤音そのままだな。性別と“才能”こそ違うが、ほぼ同じだ」

 

 「え?なんか言ったか?」

 

 「いいや何も。野暮だな」

 

 「ヤゴ?」


 「改めて確認だ。中編では学級裁判の前編の解説から始まる。今回の事件の被害者は“超高校級の棋士”古部来竜馬だ。湖畔で花火大会中。突如発生した煙により全員の視界が奪われた際に殺された。今までの事件と大きく異なるのは、夜中に人知れず実行されるのではなく、衆人環視の元で行われたという点だ」

 

 「もぐもぐ。ぽかーん。もぐもぐ」

 

 「食事の合間にぽかーんとするな。今の説明ではお前にとって過度に難解だったか」

 

 「こぶらいまで聞いてた」

 

 「聞いてもいなかったのか。ただ事件の概要をなぞっただけだ。解説はここから始まる。一旦クッキーを置け」

 

 「やだよー。食いながらだってかいせつできるもんね!」

 

 「一旦クッキーを置け」

 

 「いいだろべつに」

 

 「一旦クッキーを置け」

 

 「いや…いちまいくらい…」

 

 「一旦クッキーを置け」

 

 「分かった分かったよ!おんなじかんじで何回も言うなよ!こえーよ!」

 

 「では始めよう。まず今回の裁判の冒頭では、六浜童琉がある宣言をしている。今回の学級裁判では自分が議長代行を務めると。本来的に学級裁判に義長などという役割は存在し得ないのだが、要するに自分を中心に議論を展開していくという意味合いにはなる」

 

 「なんでそんなことしたんだ?」

 

 「捜査編を読む限りでは、六浜童琉も犯人らしき人物からの襲撃を受けている。故に自らその正体を突き止めようという復讐心からと考えられる」

 

 「うぅ…そ、そうなんか…。た、たしかに六浜がばこんってやられてたおれたときは、かわいそうだなって思ったけど…」

 

 「開始わずか数分で核心に触れてしまったな。順序立てて説明しなければ難解なことだから、今は触れないでおく。とにかく今回の学級裁判は六浜童琉が中心となるのだが、実際にはさきほど六浜童琉が主導権を握るということもなく進んで行く」

 

 「おれこのときちょーこわかった…」

 

 「そうだろう。前二回と異なり、滝山大王は今回の事件に関して当事者の一人なのだから。それに関連して、裏テーマと言うほど大袈裟ではないが、作者が執筆するときに注意していることがあった」

 

 「なんだそりゃ」

 

 「本学級裁判の最後の方で清水翔が指摘することだが、滝山大王はこの学級裁判中、一言も発言をしていない。沈黙を意味する三点リーダーのセリフさえなく、本当に無言を貫いているのだ」

 

 「マジで!?」

 

 「自分のことだろう。これは、滝山大王が自分が当事者であることを自覚しており、なおかつ緊張や恐怖心で迂闊な発言ができないため、黙ってしまっていることを表している。もし途中でそのことに気付いた読者がいれば、三章という点も相まって、後の展開を予想できた者もいるかも知れないな」

 

 「気付くかなあそんなの…おれも気付かなかったのに」

 

 「おそろしく徹底した無言。清水翔でなければ見逃してしまうな」

 

 「ぎゃくにしみずはよく気付いたなあ」

 

 「こうして滝山大王が一切喋らなかったことが、この裁判の場においては真犯人にとって有利に働いたわけだ。もう少しタイミングがズレていたら、滝山大王の手によって真犯人が暴かれていたかも知れないのだ」

 

 「そうだっけ?おれこのときちょーこわくって、あとのことあんまおぼえてねーや」

 

 「ふむ、通常自分のこうした展開がある話は印象的になると思ったのだが、そうでもないのだろうか。いや、滝山大王の感性を一般化したところで、実際とは異なるだろう」

 

 「ふにゃ?」

 

 「ともかくその話は後にする予定だ。今は裁判の流れを追うことに専念しよう」

 

 「ほんじゃ、むつかしーことはもちづきよろしく!おれはよきところでちゃちゃ入れるから!」

 

 「茶々は入れなくていい。解説をしろ。良きところなど、お前に判断がつくのか?」

 

 「ふっふっふーん!しんぱいすんなよもちづき!じつはなんと、今日はおれともちづきのほかにスペサルゲストがいるんだ!」

 

 「些か登場が遅いような気もするが。そのスペシャルゲストとは誰だ?」

 

 「おれともちづきじゃまともにまとまりそうにないってことで、ろくはまが来てるんだぜ!あっちのへやに!」

 

 「なるほど、六浜童琉によるディレクションか。これは心強い。ところでなぜ直接入って来ずに、ガラス窓で中の様子が伺える隣の部屋に待機しているのだ?」

 

 「しゃべんのはおれともちづきでやれって。カンペだしてくれんだぜカンペ!なんかおもしれーな!」

 

 「早速出しているぞ。なになに『余計な話が長い。私は気にせず本編解説に進め』とのことだ。おっ、またなんかかきはじめたぞ」

 

 「『カンペは読み上げなくていい!』だそうだ。読まなくていいというカンペを読んでしまった。しかし読み上げなければ六浜童琉がどのような指示を私たちに出して、その結果どのように私たちが進行していったかが読者に十分に伝わらない。それでは却って不自然な会話になってしまうのではないか?」

 

 「むつかしーけど、もちづきのゆーとーりだ!」

 

 「また書いた。『では読んでもいいから早く進め』だそうだ。それでは本編解説に進もう」

 

 「ろくはまのやつ。もうげっそりしてんぞ」


 「解説を始めるのは、裁判の導入部分からだ。この時点で人数は10人。16人から比べると大きく減ったように感じるな」

 

 「いやマジでへってんじゃん…。かんじるとかじゃなくて」

 

 「裁判が始まる前の時点で特記すべき事と言えば、六浜童琉が古部来竜馬の死に対して特別な感情を抱いている天と、滝山大王、お前のことだが、瓶の中身を一気飲みしている点だろう」

 

 「おれはあれでだいじょーぶだとおもったのに!うーっ!だまされた!」

 

 「カンペが出た。『ネタバレになる発言は一旦慎め。話の流れに沿って徐々に明らかにしていけ』だそうだ。可能か?滝山大王」

 

 「わかんね!」

 

 「これは不可能という返事に等しいな。というわけで今回は時系列などが交錯することになると予想される。あらかあじめご了承ください」

 

 「『ひらきなおるな』だって」

 

 「仕方がなかろう。そういう回もある。さて、裁判が始まってすぐに、六浜童琉が今回の裁判の進行役を買って出た。学級裁判においては買って出るというよりは名乗りを上げるといった表現の方が正しいか」

 

 「ゆうきあるなーろくはま。すごいなーえらいなー」

 

 「というよりも、六浜童琉自身が言っているように、かなり個人的な理由による申し出のようだ。古部来竜馬に特別な思い入れがあったためであろう。私としては個人的な感情で命を左右する学級裁判の主導権を握られることは、非常に危険だと考えていたのだが」

 

 「じゃあなんで反たいしなかったんだ?」

 

 「議論を円滑に進めるためには、妥協も必要だ。何より、明尾奈美の言う通り、主導権を握るからといって絶対的な発言力を持つわけではない。故にさほど影響はないと判断した」

 

 「ふーん。あっ、なあなあもちづき!ろくはまがまっかっかになってんぞ!」

 

 「手を激しく回しているな。次の話へ行けということだろうか。羞恥心を煽るようなテーマではなかったと思うが」

 

 「しゅーちしーん!しゅーちしーん!おれたーちはー!」

 

 「急に歌い出すな。身体が反射的に防御反応をとるだろう」

 

 「なつかしーうただよな」

 

 「確かに数年ぶりに耳にした。結局あれはコミックソングなのか、あるいは真っ当なポップスなのか。どっちだったのだろう」

 

 「どっちでもいーじゃんか!たのしければ!」

 

 「そういえば設定的に滝山大王は幼少期を樹海で過ごしていたということだが、この歌を知っていると考証的に齟齬が生じるのではないか?」

 

 「いーじゃんかこまけーことは。だって知ってんだもん!しょーがねーよ」

 

 「ふむ。そう考えるとそもそも滝山大王が人間年齢で何歳時点で発見・保護され、希望ヶ峰学園に入学したかによって知識にブレが生じることとなるな。可能性としては、私たちの中で最年長という可能性もなくはないのか?」

 

 「えー?そうなんかな。んっとおれ何才だ?」

 

 「希望ヶ峰学園が現役高校生からのスカウトのみで入学生を決めている以上、入学時点で年齢に差が生まれるのは不可避の必然だ。鳥木平助や古部来竜馬のように中学生時代から“才能”を発揮していた者と、石川彼方や私のように高校生になってから“才能”を評価された者もいるだろう」

 

 「石川とかもちづきがそうだってのははじめて知ったぞ」

 

 「初めて言ったからな。そもそも本編執筆時には存在しなかった設定なのだから、当然だろう」

 

 「あー。ここってそーゆーかんじか」

 

 「2回目にしてその感想か。石川彼方はさぞかし苦労したことだろう。さて、学年と年齢の関係についてだが、先述の通り希望ヶ峰学園においては必ずしも年齢の上下が学年の上下と一致しない。故に、私と滝山大王の間にも年齢差が存在する可能性がある」

 

 「もちづきはおれよりもちっこいから年下だな!」

 

 「お前はQQメンバーで最長身だ。学年で言えば私と滝山大王、それから清水翔、有栖川薔薇、晴柳院命、屋良井照矢、加えて特殊事情だが穂谷円加も同じ1年生だ。おそらく私と有栖川薔薇は他のメンバーに比べて年齢が上だと考えられる」

 

 「なんで?」

 

 「清水翔と屋良井照矢の“才能”は中学生時代を中心に発揮されている。故に高校生で改めて評価する必要がなく、すぐに入学通知が届いたと推察される。滝山大王も“才能”の関係から保護後すぐに通知は送られただろうが、正確な年齢は不明だ。晴柳院命は、代々希望ヶ峰学園に入学している家系にあるのならば早い段階から注目されたと考えられる。私や有栖川薔薇の“才能”は高校生時代を中心に発揮されているため、評価されたのが遅い。故に年齢的には上だ」

 

 「ほにゃー?」

 

 「滝山大王には難しかったか。つまり、“才能”やそれが顕著に表れた年齢によって入学時期は変動するということだ」

 

 「アニーはどうなんだろうな?」

 

 「アンジェリーナ・フォールデンスも詳しい年齢は不明だが、経歴を考慮すると早い方ではないだろうか。他にも、古部来竜馬、鳥木平助、穂谷円加、六浜童琉は比較的早期にスカウトされただろう」

 

 「あっちですげー首ふってるぞ。ちがうって」

 

 「いや、『話が逸れるのが早い。修正しろ』だそうだ。どこまで話したか覚えているか?」

 

 「なんかろくはまのはなしだったとおもう」

 

 「裁判開始と同時に六浜童琉が仕切りに名乗りをあげたところか。本当に最初だな。これは驚いた」

 

 「『こっちのセリフだ!』って」

 

 「この三章の裁判は、今までに比して異例だらけだな。明確な進行役がいることだけでなく、生存者で参加を免除された者がいることや、死傷者の数が多いことだ」

 

 「う、うん…そうだな…そねざきな…」

 

 「分かりやすくトーンダウンするな。それだけで十分なネタバレだ。曽根崎弥一郎は発掘場にて頭部を負傷し、モノクマによる施術を受けている。原作の弐大猫丸を彷彿とさせる展開だが、ロボ化は免れたようだ」

 

 「え!?そねざきしんでねーのか!?」

 

 「何も理解していないのかお前は。この後に復活して、後半の学級裁判に参加している。滝山大王は直接その場面に立ち会っていないのか。ならばこの反応は然るべき反応と言えるのだろうか」

 

 「『はなしをすすめろ!』だって」

 

 「そうだな。では先に進もう。まずは例の如く、モノクマファイルを読み合わせて被害者の状態を確認する段階からだ。私は全員に共有されている情報の再確認にさほど意味はないと考えているが、恒例となっている。今回の被害者は“超高校級の棋士”古部来竜馬だ」

 

 「そんだけじゃなくて、あとはそねざきとろくはまと…ううぅ、やっぱり多いよなあ」

 

 「被害者の数が多くなれば単純に考えて加害者の候補、すなわちクロの候補は少なくなる。クロとされる確率が上がるのだから、最低限の条件である1人の殺害に成功した後に被害者を増やすのは、確率論的知見に基づけば非合理的と言える」

 

 「うにゃー?」

 

 「つまり、何らかの理由がなければ複数を殺害しないということだ。その点についてまずは議論している」

 

 「この、2人までしかころしちゃダメなルールって、1のときからもうあったよな」

 

 「原作でも後から追加されたルールだったな。クロが自分以外の全員を殺害してしまえば、コロシアイというシステムが崩壊してしまうからな。原作では予防として追加されていたが、今回に限ってはモノクマからのクロ対策として追加されている。そういう意味では、モノクマがコロシアイに干渉していると言えなくもない」

 

 「2人までって言ってんのに3人おそわれたんだよなー。ふしぎだなー」

 

 「ここでの結論は、曽根崎弥一郎と六浜童琉は死亡しておらず、クロが殺害したのは古部来竜馬ただ一人だ。すなわち規則には抵触していないというものだ。だが実際には、前2名が死亡していたとしても、規則違反にはならないのだがな。むしろクロはそれを狙っていたのだが」

 

 「はわ……」

 

 「つまり、一人で三人殺害するのはルール違反だが、二人で遭わせて三人殺害すれば、ルール違反にはならないということだ」

 

 「ひー、ふー、みー…ホントだ!すげー!あったまいー!」

 

 「少し待て。ここからずっとこの調子か?滝山大王に理解できるようペースを合わせたら、かつてないほどの長丁場になることが予想される。さすがに私でもそれは勘弁してほしい」

 

 「『ポイントだけはなせばいい。がんばってくれもちづき!』だって。たよられてるなーもちづき」

 

 「お前がいるからな。では掻い摘まんでいこう。まずこの被害者の数の議論になったときに、屋良井照矢が声をあげて容疑を清水翔に集中させている。先ほど解説したように、この時点でクロが二人いることがバレてしまえば、今回のクロである屋良井照矢にとっては非常に不利であるから、話題を逸らしたのだ」

 

 「でもそんなことしたらあやしまれねー?」

 

 「そこは屋良井照矢の巧妙な部分だな。清水翔をクロとする根拠に、曽根崎弥一郎と六浜童琉の両方の現場にいたことを挙げている。被害者数が多いという疑問を、清水翔が居合わせたという共通項で説明しているのだ。実際に企図した展開ではないのだから、機転が利くということだろう」

 

 「でもでも、しみずはろくはまのこと助けてたぜ?おんぶしてたぞ、おんぶ」

 

 「ガラスの向こうで六浜童琉が頽れたぞ」

 

 「おんぶされるなんてろくはまのやつ、子どもみてーだな!」

 

 「『お前に言われたくないわ呆け者』だそうだ。落ち着け六浜童琉。清水翔におんぶされる程度のこと、何も恥ずかしくなどないだろう。私なんか顔面を鷲掴みにされたぞ」

 

 「どういうじょーきょー?」

 

 「まあそれはいいだろう。さて、この段階ではまだ議論の内容はほぼない。私にとっては無意味な議論にも思えていたからな。屋良井照矢によって逸らされた議論を修正し、一連の事件が二人の人物によるものだと提言した。本編でも述べている通り、殺害方法があまりに異なることが根拠だ」

 

 「んまあ…そうだよなあ。おれにはやらいみてーなひどいことできねーもん」

 

 「屋良井照矢の犯行計画は緻密かつ狡猾であった。しかし共犯者が滝山大王であることと、協力させるにあたっての行動計画を十分に与えられなかったことが敗因の一つだろう。私たちを混乱させることはできたが、閉鎖空間内で共犯者という手法は実に諸刃の剣だ」

 

 「むつかしーけど、つまりどういうことだってばよ?」

 

 「滝山大王がいたからこそこの犯行計画が実行可能であり、滝山大王がいたからこそこの犯行には隙ができたということだ」

 

 「お、おれ?おれのせいなのか?」

 

 「この章は滝山大王を中心として動いていると言っても過言ではない。まさに『白羽の矢に射貫かれる』、というタイトル通りだ」

 

 「あー、それどういういみなのかおれぜんぜんわかんね」

 

 「『白羽の矢が立つ』というのは、多くの中から選ばれるという意味の諺だ。その矢に射貫かれている、すなわち与えられた役割を全うできずに死ぬということだ。矢というのは屋良井照矢の名前ともかかっているしな」

 

 「おー!すげー!よくわかんねーけど!」

 

 「もうお前に何かを説明するのは止めにする。時間の無駄だ」

 

 「ムダはよくねーな!」

 

 「『滝山に構わず先に進めろ』と六浜童琉からの指示だ。もはやお前の味方はここにはいないようだ」

 

 「ひえっ」

 

 「では次の解説に進もう。古部来竜馬の死因についてだ。煙の中で清水翔や晴柳院命が感じた音と光、そして死体の損壊の程度と周辺の荒れ方から、爆殺という結論が出た。そう表現するには些か規模が小さいと思われるが、それ以外に表現のしようがないのだから仕方がないな」

 

 「明おが言ってるチョーサクリンってなんだ?」

 

 「昔の人だ」

 

 「むかしの人かー」

 

 「原作でも爆殺などという大それたやり方はこれまで登場していないし、おそらく他の作品においても稀だろう。そもそも爆弾を使うこと自体が現実離れしすぎている…のだが、原作では爆弾を使用した者はいたな」

 

 「おれこーゆーのしってんぞ!きをてらったんだよな!」

 

 「お前の知識の偏り方が分からない。確かに奇を衒ったと言えばそうなのだが、無意味に衒ったわけではない。今回のクロである屋良井照矢は、“超高校級の爆弾魔”という“才能”の持ち主だ。そこは意味があって爆殺を選んでいる」

 

 「よくおもいつくよなー。っていうか、おもいついてもバクダンなんてどうやってつくればいいかわかんねーし」

 

 「だから作者は爆弾とは何か、お手製爆弾をどう作ればいいかを調べたそうだ。それはもう物騒な検索履歴になったということだ」

 

 「そりゃそーだ。そーろんあるあるだな」

 

 「とはいえ、実際にパーティー用クラッカーをアルミホイルやガラス片を用いて、殺傷可能な爆弾に改造できるかどうかはさすがに確認できていない。そこは多少、創作だからと大目に見てほしいとのことだ」

 

 「石川のやったトリックもそうだけど、なんかホントにできんのかあやしーやつばっかじゃね?」

 

 「それくらいでいいだろう。むしろ実際にできたらできたで問題だと思うがな。イメージが可能である程度納得できればそれでいいのだ。極端に現実離れしていても興醒めだが、あまり現実に近付けすぎるとできることは限られてくる。舞台を自由に設定可能とはいえ、ファンタジーな部分がなければ創作物として退屈なものになるだろう」

 

 「トリックじっさいにできるやつマジで0人せつ!ってやつか!」

 

 「あながち否定もできないな。さて、六浜童琉からまた指示があったので話を進めよう。私たちの中で爆弾や火薬などに精通している者は少ない。明尾奈美と鳥木平助の2名だ。前者は破壊・掘削用。後者は演出用とそれぞれ用途は異なるがな」

 

 「そこらへんにあるもんでばくだんつくるなんて、なんかすげーな」

 

 「あり合わせで自分の得意分野に持ち込むその技量と発想は、屋良井照矢が爆弾魔としていかに場数を踏んでいるかが表れているな。記憶に新しい事件から教科書に記載されるような事件に至るまで、全て一人で熟しているとは考えにくいほどに多様な事件を起こしている」

 

 「なんでそこまでやるんだ?いっぱいこわして、いっぱいころして、やらいは何がしたかったんだろーな」

 

 「屋良井照矢にとって、テロリズムこそが目的であって手段ではない。奴には社会への訴えかけるメッセージもなければ、信念もない。強いて言えば、『もぐら』という得体の知れない恐怖を伝播させるためか」

 

 「んなことしなくたって、おれたちみんなあいつのことしってたのによ」

 

 「たかだか十余名の認知で満足できるものではなかったということだろう。たとえ初めは自己満足で始めたものであっても、一つでもレスポンスがあると顕示欲と承認欲求が芽生え、レスポンスが増えるほどさらなるレスポンスを求めるようになる。いつしか手段と目的が逆転し、自分のために書いているのか、レスポンスをもらうために書いているのかを見失い…そういうものだと聞いている」

 

 「あれか。しばらくメシくってねーとぎゃくにはらすかなくなるけど、いいにおいしたらけっきょくはらへるみたいな」

 

 「うむ。実によく分かりやすい比喩表現だ。的を得ているか否かは不明だが」

 

 『得ていなくては意味がないだろう!』

 

 「さて、凶器の作り方がおおまかに判明したところで、次は殺害方法の話に移る。凶器がクラッカー爆弾であることから殺害方法も明らかだが、問題はそこではない」

 

 「ほむほむ」

 

 「クロがクラッカー爆弾を用いたということは、古部来竜馬に接近しなければならない。しかし殺害当時、現場は花火から噴き出た煙幕によって全員が視界を塞がれていた。その中を狙った相手を目掛けて接近し、殺害、そして自分が元いた場所に戻るなど、容易ではない。むしろ不可能だ」

 

 「でもクロはやったんだろ?どうやったんだ?」

 

 「お前がそれを尋ねるのか。しかしこれは実に合理的かつ狡猾と言える手段だ。視覚以外の方法で距離や方向を感知するというのは、生物の中でも極限られた種だけが可能だ。まさか人間にそんなことができるとは思っていないだろう」

 

 「ああ!におったにおった!おれこぶらいのにおいにおったぞ!」

 

 「言ってしまうのか。だがその通りだ。パーティ中に滝山大王が曽根崎弥一郎に飲ませようとしたドリアンジュースを、曽根崎弥一郎が古部来竜馬に渡して飲ませたことで、爆弾の標的が古部来竜馬になったのだ。これはつまり、当初の殺害対象は曽根崎弥一郎だったということになる」

 

 「あーなるなる」

 

 「狡猾なクロのことだ。どこまで計算していたのかは不明だが、結果的に標的としていた者を殺害することに成功したのだ。曽根崎弥一郎はこの後滝山大王に襲撃されるが、九死に一生を得た。真のクロに狙われていてはそんな暇も与えられなかっただろう」

 

 「ぞくっ」

 

 「お前は狙われている方だったな」

 

 「おれ…曽根崎にあんなことしちゃった。あやまったらゆるしてくれっかな?」

 

 「それは私にも分かりかねるが、真のクロに追い詰められていたとはいえ、お前が曽根崎弥一郎に殺意を持ったことは間違いないだろう」

 

 「あうう…」

 

 「しかし私たちの中で素手による殺傷能力が最も高いと思われる滝山大王が、殺意を持ちながら曽根崎弥一郎を殺害し損ねたというのは、やはり少々気になるな。モノクマによる救護があったとしても、頭部を負傷して即死でないとは」

 

 「う〜ん…やっぱりおれ、ちょっとそねざきころすのイヤだなって思ったもんな」

 

 「真のクロもお前のその腕力には期待していたらしいことを言っていたが。野生で生きているときには獲物を殺さなかったのか?」

 

 「ころすっていうか、くうって方がつえーからな。あんまりころしてるってかんじしなかった。でもそうだよな…わるいことだよな…」

 

 「いや、自分が生きるために他者の命を奪うことは、一概に悪とは言い切れない。同族殺しが例外的な処置を受けているだけであって、本来的に生物とは他の命を糧にしなければ生存できない造りになっている」

 

 「むつかしーぞ!」

 

 「難しいだろうな」


 「で、なんでろくはまはおこってんだ?」

 

 「古部来竜馬の殺害が全くの偶然であることを認めようとしないのだ。明確な目的があって殺害されたとしても結果は変わらないのだが、なぜか意地を張っている」

 

 『そこは飛ばしていい。次の話に移れ』

 

 「ぐーぜんだとイヤなのか?」

 

 「古部来竜馬が殺害される必然性がなければ、全く理不尽に殺害されたことになる。必然性があったとして納得するわけでもないだろうに、その点に拘る理由は理解不能だ。結果的にはドリアンジュースのトリックを見破るきっかけになったが」

 

 「おれそーゆーのしってんぞ。けがのこーみょーっていうんだろ」

 

 「怪我かどうかはさておき、言いたいことは分かる」

 

 「アニーにおしえてもらった!」

 

 「修得背景が複雑過ぎる。アンジェリーナ・フォールデンスは誰から教わったのだ」

 

 「さあ?」

 

 「『いちいちわき道にそれるな!』と注意されてしまった。しかし脇道に逸れることがこの解説編の醍醐味なのではないか?本編の解説編と銘打っておきながら、他愛ない会話から話が逸れて他愛ない我々の会話を楽しむものではなかったのか?」

 

 「なんかちがうかんじだった気がするけど…」

 

 「改まって、さあ話せ、と言われても、主題もない状態では話しようがない。主たる課題以外に与えた副次的な課題の方が作業効率がよくなるという実験結果もある」

 

 「わかるー」

 

 「故に私たちは解説を主たる課題とし、内容のない雑談を副次課題として会話をしているわけであり、副次課題が捗る、すなわち話が脇道に逸れることも致し方ないかと」

 

 「『むずかしい言い方で言いわけをするな!』だって」

 

 「承知した。可能な限り簡潔に済ませよう。まだ二度目の捜査編の解説も残っていることだからな」

 

 「うへー!まだ半分終わってねーのか!」

 

 「解説編だからその辺りのペース配分はいい加減でもいいのだ。おまけ程度の扱いなのだからな」

 

 「それじぶんで言っちゃうんだな…」

 

 「さて、六浜童琉の反論により、古部来竜馬は意図的に狙われたと仮定した上で話は進む。実際、古部来竜馬は狙われていた。その証拠として、清水翔は事件前後の人の配置図を提出した」

 

 「これでなにがわかんだ?」

 

 「古部来竜馬は花火をしている最中、集団の端にいた。手近な人物を狙ったのだとすれば、それだけで犯人を絞り込む手掛かりとなる。古部来竜馬から最も近くにいた穂谷円加でさえも、狙うのならば清水翔の方が容易に殺害できたはずだ」

 

 「なるほどなー!」

 

 「加えて言えば、事件当時は煙幕が発生していたことにより、手近な人物でさえも近付くのは容易ではない。やはり一人離れた場所にいた古部来竜馬が殺害されたのを、偶然と結論付けることはできないだろう」

 

 「まあ何も見えなかったけど、それでもニオイでばしょわかんねーか?」

 

 「ネタバレしてしまったな。それこそが、犯人が滝山大王を共犯者に選んだ理由だ。この議論の中で、笹戸優真に疑惑が向いたりもしている。煙の外側からなら煙幕など関係なく接近できるだろうと。それも、古部来竜馬の死体の状態に矛盾するから撤回される」

 

 「したいからいろんなことがわかんだな」

 

 「その後で、視覚に頼らない接近方法の話だ。先に滝山大王が言った、というか告白した通り、この煙の中で犯人は、古部来竜馬の臭いを辿って移動した。より厳密に言えば、古部来竜馬の身体に付着したドリアンジュースの臭いを辿って移動する滝山大王に同行して、古部来竜馬の下へ移動した、となる」

 

 「はにゃ…?」

 

 「お前が屋良井照矢に指示されて行ったことだ。曽根崎弥一郎の予想では、古部来竜馬を驚かせる悪戯程度のつもりだったのだろう」

 

 「ああ、あれね」

 

 「自分が行ったことでさえ言葉にすると理解できないのか。もういい。滝山大王はおいていく。ここからは私と六浜童琉で解説を──流石に制止がかかってしまった」

 

 『相方を放棄するな!理解させなくていいから会話だけは続けろ!それからお前の言葉は滝山でなくても分かりづらい!』

 

 「いよいよにしてこのキャスティングに無理があると私は思うのだが」

 

 『他のキャスティングが合わなかったのだ。なんとか耐えてくれ』

 

 「こうして六浜童琉がディレクションしているのなら、今からでも交代というわけにはいかないのか」

 

 『残念ながらそれはできんしこっちと会話するな!滝山!しっかりしろ!』

 

 「グミおいしい」

 

 「こちらも完全放棄のようだ」

 

 『ちゃんとやってくれ頼むから!』

 

 「六浜童琉が頽れた」

 

 「はらへってんのかな」

 

 「そうではない。それより裁判の解説の続きだ。こうなったら私一人でも完遂させねば、電力を消費して閲覧しているお前たちに申し訳が立たない」

 

 『お前と言うな!せめて画面の前のみなさんと言え!』

 

 「パーティ会場で滝山大王が曽根崎弥一郎に渡したジュースは、臭いのきついドリアンジュースだった。飲めば思わず噴き出してしまうほどな。そうすれば、滝山大王が辿れる程度の臭いは付くというわけだ。これらも曽根崎弥一郎の手帳の記述から得られた推理だ」

 

 「おー!あれくさかったなー。ホントはな、そねざきにのますつもりだったんだ。でもあいつがきづいたからな、こぶらいがのんじゃって、そんでこぶらいにすっかってなったんだ」

 

 「いわばあのドリアンジュースが、殺害ターゲットの印だったわけだ。そこまで明確に理解していたわけではないとはいえ、直感で危険だと判断しておきながら古部来竜馬に転嫁した曽根崎弥一郎も如何なものかと思うが」

 

 「ホントはあいつわりーやつなんじゃねーの?」

 

 「お前が言うな」

 

 「あ、おれのはなしになってる…あ、おもいだした…」

 

 「やっと思い出したか。そうだ。お前はここで、嗅覚から古部来竜馬に辿り付ける“才能”の持ち主として、清水翔から犯人指名を受ける。そしてここの地の文でも清水翔によって言及されているが、今回の学級裁判において滝山大王は、一切台詞を与えられていない。三点リーダーのみの台詞でさえもない。完全なる無言を貫いているのだ」

 

 「だって、なんかしゃべったらみんながおれのこと見るとおもって…」

 

 「その通りだ。滝山大王はこのとき、犯罪に加担していたことの後ろめたさと、曽根崎弥一郎を殺害したかもしれないという後悔、恐怖、背徳感などから、口を噤んでしまっていた。真犯人である屋良井照矢にしてみれば、それは嬉しい誤算だったようだ。仮に喋れていたとしても、屋良井照矢によって議論はある程度誘導されていただろうが」

 

 「それもあいつ言ってたな。ああ…おれなんかすげーこわがってる…。ごめんなさいって…すげー言ってる。ごめんなさいごめんなさい…」

 

 「今のお前まで謝ってどうする。この謝罪は、いったい誰に向けてのものなのだろうな。直接手を下していないとはいえ、殺害に加担してしまった古部来竜馬か。自ら手を下し、死亡しないまでも昏睡状態にまで追いやった曽根崎弥一郎か。或いは騙されていたとはいえ裏切ることになった犯人以外の全員か。はたまた大した反論もできず自分の関与を暴かれてしまったことを屋良井照矢に謝っているのか」

 

 「あやまることいっぱーい」

 

 「そこまで能天気になれているのならもう問題ないのだろう。しかしこの時点での滝山大王は相当なパニックに陥っていたようだ。ぜひとも映像化してみたい、と作者は言っている」

 

 「いまもちづきがもちづきじゃないしゅんかんがあった…」

 

 「適度のストレスによってパニックをおこすことはさして珍しいことではないが、滝山大王の場合は明確に謝罪の言葉を述べているのがまた不安を煽っているようだ」

 

 「だってこわかったんだもんよ。とりあえずあやまっとかないと、なんかすげーいやなかんじがしたんだもん」

 

 「その嫌な感じというのは、おそらく謝罪だけで済むものではなかっただろうがな。さて、一通り滝山大王が発狂したところで──」

 

 『発狂をさらっと流すな!邪神の呼び声でも聞こえているのかお前は!』

 

 「モノクマが投票に入ろうとしているな。確かにここまでの流れを踏まえると、滝山大王が犯人(クロ)であるという説も納得してしまえる。少なくとも屋良井照矢が最多得票者になることはないだろう」

 

 「あぶないとこだったんだな。もうちょっとでやらいのかちになるとこだった」

 

 「それを止めたのは、滝山大王だ。この口調からして、おそらく吹っ切れたのだろう。犯人を指名しようとしている」

 

 「なんか、やらいもこわかったけど、そのままみんなが死んじゃうのもやだなっておもったんだ。だから、おれバカだからみんなにうまくわからせるのとかできねーけど、ほんとのことはいわなきゃって」

 

 「それがお前なりの、せめてもの償いだったのだろう」

 

 「そうなのかな」

 

 「それが分かるのはその時のお前だけだ。まあ、どういう気持ちであったにせよ、その償いすらできないままに、お前は退場してしまうのだがな」

 

 「ぎゃああああッ!!おれがゲロはいた!!」

 

 「本編中の明尾奈美と全く同じリアクションだな。突然苦しみだした滝山大王は、血の混じった嘔吐を繰り返した。さすがにあれは私も見ていて不快になった。明らかに異常事態であるし、このタイミングで滝山大王がそうなっていることに、何かしらの作為を感じずにはいられなかった」

 

 「きもちわるくて…あたまぐわんぐわして…いたくって…くるしくって…ううぅ…」

 

 「この滝山大王が裁判中に死亡するシーンは、作中でも屈指の作者が楽しみにしていたシーンだそうだ。挿絵を付けてもいいくらいだと」

 

 「おれそんなにきにいられてたんだなー、えへへ」

 

 『辛いな』

 

 「いよいよ六浜童琉が自然に会話に入ってくるようになった。そしてこの、滝山大王の最期の台詞からも、色々と想像できてしまうな」

 

 「するってえと?」

 

 「『おれ…死にたくねえよお…!』という台詞からは、状況から考えても自分の死を悟っていると考えられる。その直後に、自分の吐いた血反吐の中に倒れていくのだ。まさに凄惨な現場だったな。死の恐怖に怯えた者が今際の際に発した台詞として、これほど悲痛なものもそうないだろう」

 

 「いやー、こんときはしんどかった」

 

 「そんな程度で済ませてしまうのか…」

 

 「だってもうむかしのことだしよ。しんどかったけどおわっちまえばなんでもねーな」

 

 「喉元を過ぎれば熱さを忘れるとはこのことか。いや、それは飯出条治のことを表すタイトルになっていたから使用は適切ではないのか?」

 

 「またもちづきがむつかしーこと言いだした。早いとこつぎいこーぜつぎ!」

 

 「次と言っても、裁判の第一話は滝山大王が死亡するシーンで終了だ。この後は二度目の裁判に向けての捜査編に移る」

 

 「へーそう」

 

 「ただでさえ被害者が複数出た事件である上に、裁判中に最も疑わしいと思われていた滝山大王が何者かによって殺害されたのだ。これほど困窮する展開もそうそうあるまい。む、『自画自賛するな!』と?今のは私の言葉であって、作者の言葉ではない、断じて」

 

 『なぜ作者の肩を持つ!?』

 

 「さっきももちづきが言ってたけど、このシーンってさくしゃのおきにいりのシーンなんだよな。うれしーな♬おきにいられた♬」

 

 「純粋さは時に痛々しいものだと知った」


 「さて、ここからは二度目の捜査編について解説をしていく。この捜査編と一度目の捜査編の最も大きな違い…と言うよりも大きな出来事は、裁判場から私たちが合宿場に戻って来たときの描写だ。滝山大王に襲撃され、昏倒状態にあった曽根崎弥一郎が私たちを出迎えていた」

 

 「なんかかっけーな」

 

 「曽根崎弥一郎はこうした演出が好きなようだ。捜査時間も限られている中で、敢えて思わせぶりな態度を取るのは時間の無駄と言わざるを得ないのだが」

 

 「き、きびしー…」

 

 「そして当然のごとく二度目の捜査を始めた我々だが、曽根崎弥一郎は清水翔と共に捜査をしている。預けた手帳を回収する目的もあったのだろうが、曽根崎弥一郎にとって清水翔は信用に値する数少ないメンバーだ。屋良井照矢の本性でもある『もぐら』についての調査報告を共有したのも、裁判前の時点では清水翔のみだ。私も知らされていなかった」

 

 「……しっと?」

 

 「していない」

 

 「ふーん」

 

 「その後の捜査では、発掘場・資料館・湖畔・一度目の学級裁判場を捜査することになる。曽根崎弥一郎が襲撃された現場では明尾奈美が凶器の瓶を、資料館では滝山大王が六浜童琉を襲撃した際に残した足跡を、湖畔では滝山大王のモノクマファイルを、裁判場では滝山大王が裁判長前に飲んでいたただの水道水を発見することになる」

 

 「ぐう」

 

 「今の説明の間に入眠したというのか。機械に頼りがちなダメ小学生男子のような速さだ。おい起きろ」

 

 「むにぃ」

 

 「起きろ起きろ。ぐにぐにっと」

 

 「あうっ。いてー!なんだよもちづき!」

 

 「私がよく清水翔にやられる頬つねり技を試してみた。引っ張られると痛いだろう」

 

 「シャーッ!!」

 

 「威嚇されるようになってしまった。説明をしたら勝手に寝る、起こしたら威嚇する、どうすればいいのだ」

 

 「石川はもっとじょーずにおれのことあつかってたぞ!」

 

 「扱われる必要があることを自覚しているのならもう少し大人しくしていろ」

 

 『じゃれるなお前ら!』

 

 「怒られてしまった。滝山大王の所為だぞ」

 

 「ごめんなさい」

 

 「素直に謝ったのなら許そう」

 

 『話を先に進めろ!』

 

 「また怒られてしまった。捜査のおおまかな流れは説明してしまったのだがな。今回の話の特記事項といえば、やたらと曽根崎弥一郎が清水翔から暴力を受けているというところだ。復帰早々で清水翔が容赦ないように見えるが、実は曽根崎弥一郎の方に問題があるのだ」

 

 「するってーと?」

 

 「前述されてもいるが、滝山大王に襲撃されてモノクマから治療を受けた後から、曽根崎弥一郎の言動から若干倫理観が欠如してきているのだ。これが滝山大王の攻撃によるものなのか、モノクマが治療の際に何かしたのかは不明だが、それによって以前より漂わせていた胡散臭さや非常識さが際立つ結果となった」

 

 「おれのせいなのかも…」

 

 「これに関しては全く想像でしか話ができない。故に反省するだけ無駄だ」

 

 「さっきろくはまにおこられたの…」

 

 「それはお前のせいだ。反省しろ」

 

 「はんせい\(_ _)」

 

 「しばらくそうしていろ。じっとしていてもらう方が助かる」


 「なんのはなしだっけ?」

 

 「二度目の捜査編についてだ。捜査場所は先程述べた箇所で、発見した物も同時に述べている。おや? 解説することなどもうないのではないか?」

 

 「おーわり!」

 

 「そんな雑に終わらせるわけにいかないだろう。そうだな…この捜査編における、三章の真犯人である屋良井照矢の動きについて多少解説を加えるとしよう」

 

 「ほほーう」

 

 「屋良井照矢は一度目の捜査編で古部来竜馬の死体の見張りを、私と共に務めていた。これは、殺害後間もなく捜査が始まるということで、死体周辺に証拠が多く残るためそれを隠滅しようと企んだものによる。それ自体は私が見張ることで封じたが」

 

 「よっ!もちづきお手がら!」

 

 「二度目の捜査編では医務室を捜査していた。今回の事件において医務室は直接使用されておらず、従って証拠もない。ならば狡猾で周到な真犯人である屋良井照矢がなぜこの場所にいたのか、疑問を感じないか?」

 

 「ちっとも。ハラいたかったんじゃねーの?」

 

 「…」

 

 『頑張れ望月。あと少しで解放される』

 

 「ここで屋良井がチェックしていたのは、滝山大王を殺害した毒だ」

 

 「え?おれ?」

 

 「元々屋良井照矢は、滝山大王が死亡する前に裁判を終了させて勝利する予定だった。しかし裁判の終了を待たずに滝山大王は死亡してしまい、もう一度学級裁判をする必要が出てきた。そこで、毒殺であることが明確であるのを逆手にとり、捜査に貢献していることをアピールすると同時に実際と異なる毒による殺人だというシナリオを構築しようとしているのだ」

 

 「む?むむ?なんでそんなことすんだ?」

 

 「滝山大王が摂取した遅効性かつ無味無臭の毒とは異なる、即効性のある毒や揮発性の高い毒などを使ったと結論付けられれば、自ずと裁判場で席の近い人物が疑われるようになる。つまり屋良井照矢にとって有利な状況となるわけだ」

 

 「あーね」

 

「さらに、万が一他の毒による死亡であった場合、クロの権利を奪われた可能性もある。その万が一において自らが正しい人物をクロとできなければ、全てが水の泡だ。その可能性を潰すと同時に自身から疑いの目を逸らすための工作の準備をしていたのだ」

 

 「んでも、そんなことしねーで、おれをころしたしょうことかかくせばよかったのに」

 

 「現場が裁判場であり証拠品も少ない。全員が同時に捜査を始めたため、怪しい行動をすれば目立ってしまう。周囲に溶け込みつつ裁判の勝率を上げるには、これくらいしかできんのだ。古部来竜馬の方の捜査をして墓穴を掘るようなこともないしな」

 

 「やらいもちゃんとかんがえてんだなー。えらい」

 

 「お前は本当に話の趣旨を理解しているのか?屋良井照矢はお前を殺害したのだぞ?」

 

 「いやそーなんだけど、やっぱおわってみたら大したことなかったやって。もういてーのもくるしいのもわすれたし」

 

 「私もあまり否定できないから流すが」

 

 「それにおれ、やらいにころされてよかったよ。あのままだったらきっとやらいがモノクマにころされるのみて、おれだけ生きのこったのがイヤになる。おれもやらいもこぶらいのこところしたんだから、ちゃんとバチあたらないとこわくなる」

 

 「殊の外、応報の概念を有していたか。それで滝山大王自身が納得し、ある種の償いを感じているのなら、それはそれで成立しているのだろう。古部来竜馬や曽根崎弥一郎が如何なる判断を下すかにも依るが」

 

 「うぅ…ゆるしてくれるかな…」

 

 「さあ。だが前回までの解説編の中では、然程そのことを気に懸けていたり、心的外傷を負っている様子は見られなかった。せっかく六浜童琉がいるのだし、呼んで確認してみるか?」

 

 「こえーよ!なんだよコンパスかよ!」

 

 「サイコパスのことだろうか」

 

 「それだった!」

 

 「うむ。それはスニフ・L・マクドナルドと研前こなたのやり取りだ。我々がパクっていいとは思えないのだが」

 

 「いーのいーの。あいつらおれらのこうはいだろ?」

 

 「誤解を招く言い方をするな。ダンガンロンパQQとダンガンロンパカレイドの間には物語や世界観になんの共通性もない。後輩と呼ぶと、時系列が生じるだろう」

 

 「そうだとなんかこまんのか?」

 

 「…特に困ることはないな。成立し得る」

 

 『負けるな望月!』

 

 「喝を入れられた。とにかくダメなものはダメだ」

 

 「でもでも、スニフがしみずのことよぶときなんていうんだよ?」

 

 「カケルパイセンさん、だな。パイセンとは先輩の倒語であるから…やはり先輩後輩の関係なのか?」

 

 『滝山に説得されるな望月!それはただのクロスオーバーであって意味はない!』

 

 「だそうだ。ちなみにこのパイセンという呼び方は、曽根崎弥一郎が吹き込んだという設定になっている」

 

 「ちょーどーでもいー」

 

 「全くだ。なぜ本編ではなくそんなことの解説をしているのだ私は」

 

 「よるおそいからじゃね?」

 

 「これが所謂、深夜テンションというものか」

 

 「ぜんぜんテンション上がってねーけど」


 「さて、大方解説も終了し、我々の担当範囲はここまでだ。ようやくこの地獄の空間から抜け出せるのだな」

 

 「しっけーな!じごくとは!」

 

 「三章は他の章に比べて長いため、3部に分けて解説をしている。次回は三章後編だ。解説を担当するのはあの二人だ」

 

 「どのふたりだ?」

 

 「滝山大王は解説編は二度目だな。つまり、私たちは解説編をそれぞれ2回ずつ担当する。従って次回の担当は、これまで解説をしてきたうちの、滝山大王以外の誰か二人だ」

 

 「じゃあおれもう出てこないの!?」

 

 「そうだな。石川彼方との回と私との回で2回だ。もっとも、お前との解説編はもう誰もやりたがらないだろう。実験的に私とお前でコンビを組まされたが、六浜童琉の援助がなければ成立していたかも怪しい」

 

 「それほどでもねーって」

 

 「褒めていない」

 

 「んじゃあそろそろシメる?」

 

 「お前が決めるな。ここは私が仕切る」

 

 「いーよ」

 

 「うむ。では今回の解説編はここで終わりとしよう。なかなかに見苦しい展開が続いたが、ここまで読んでくれた画面の前のお前たち──」

 

 『お前と呼ぶなと言っただろうが!』

 

 「画面の前の皆様方には大いに感謝を。ドウモアリガトウ」

 

 『なぜカタコトだ!』

 

 「オチを付けた」

 

 「おちたかなー今ので…?」

 

 「ではここでお別れだ。滝山大王からいつもの挨拶をしろ」

 

 「バイバイ!ちょこもろきゅーのそーせーじー!滝山大王と!」

 

 「超高校級の天文部、望月藍がお送りした。それでは次回を楽しみにしているといい」

 

監修:六浜童琉

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