ダンガンロンパQQ   作:じゃん@論破

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第四章「鼠の嘘から出た犠牲 後編」

 

 こちらは、『ダンガンロンパQQ』の解説になります。

 本編を読了していることを前提に執筆しているため、本編についてのネタバレが多分に含まれています。

 まだ本編を読まれていない方はご注意ください。


 「皆様、ご無沙汰しております。今は世の中が大変な時期でございますが、お体を壊してはいらっしゃいませんでしょうか。ご自宅で過ごされる時間が多くなっていると存じますので、皆様のご無聊を少しでも慰める一助にさせていただければ幸いです。こちらは、ダンガンロンパQQ第四章の解説編、後編でございます。たくさんの二次創作小説の中から拙作をお選びいただき、誠にありがとうございます。ご挨拶が遅れました。私は本解説を担当いたします、“超高校級のマジシャン”『Mr.Tricky』こと、鳥木平助でございます。しばしのお付き合いをよろしくお願い致します。そして、私とともに解説編を担当されるのはこちらの方です」

 

 「流れるような説明と華麗なパス、大変結構です。さすがは鳥木君ですね。どこぞの釣りキチとはワケが違います」

 

 「笹戸君は釣りキチと言うよりも、もっと別のものに入れ込んでいらしたような気がしますが」

 

 「そっちは本当にキチなので笑えません」

 

 「それより、自己紹介をお願い致します。話題が次に進むために必要ですので」

 

 「この解説編を読んでいる方は皆、本編を読んでいるのでしょう?喋り方で誰が喋っているか分かりそうなものですから、敢えて自己紹介をする必要もないのでは?」

 

 「一応、形の上だけでも必要ですので。何卒お願い致します」

 

 「ふぅ。仕方ないですね。鳥木君に免じてして差し上げましょう」

 

 「ありがとうございます」

 

 「皆さん、ごきげんよう。“超高校級の歌姫”こと穂谷円加です。こちらで解説編を担当するのは二度目ですね」

 

 「素晴らしい自己紹介でございます。ありがとうございます」

 

 「見え透いたお世辞はやめなさい」

 

 「失礼いたしました。しかしお世辞というわけでは・・・」

 

 「いいですか。今更言うのもなんですが、私と貴方はお互いの仮面の向こう側をお互いに見抜き、そして本質を理解し合った間柄です。どうも曽根崎君などは私たちのことをカブとかキャプとか言って、浅薄な関係だと囃し立てているようですが、そんな簡単な仲ではありません。そうでしょう?」

 

 「ええ。ええ。まさにその通りです。私も穂谷さんのことは尊敬の意をもってお慕いしております」

 

 「ですから、その仮面を早くお脱ぎなさい」

 

 「え゛」

 

 「え、ではありません。貴方が性懲りも無くかけているその仮面を脱いで、素顔で私と接しなさいと言っているのです」

 

 「で、ですがそれは・・・時期が来たら外させていただきますので」

 

 「そんなのズルいじゃありませんか。私は貴方に仮面を剥がされて、何もかも、決して他人に見せるものではないものまでもを見せてしまったというのに・・・」

 

 「その言い方は誤解を生みそうですが!?」

 

 「あら、私は鳥木君となら誤解されても構いませんことよ。むしろ誤解を誤解でなくしてしまった方が良いかも知れませんね」

 

 「あのぅ、穂谷さん。なんだか本編とキャラが違うようにお見受けしますが、どうされたのですか」

 

 「解説編だと本編と若干キャラが変わるのがよくあることなのだそうです。それにここはパラレルでファジーな空間です。何をしても本編には一切影響がありませんし、私たちがあると言えばあるしないと言えばないのです」

 

 「あるないとは何がでしょう・・・?」

 

 「たとえば・・・クイーンサイズベッドなどそこにありますが、そちらで休憩などするとちょうど良いでしょう」

 

 「ッ!?」

 

 「どうしましたか?冷や汗などかいて。具合が悪いのならベッドでお休みになってはいかがでしょう」

 

 「あ、ありのまま今起きたことをお話しします!私たちの話しているブースにクイーンサイズベッドがあったことに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!何を言っているか分からないかと思いますが私も分かりません!」

 

 「何を言っているのか分かりません」

 

 「ベッドに倒れ伏せないでください。そんな目をしてもいけません。まずはきちんと今回の話を解説してください、お願いですから」

 

 「まずは?その後があるのですか?」

 

 「・・・」

 

 「まったく、仕方のない人ですね。分かりました。まずは解説をしましょう。それにしても、こうして向かい合ってお話しているだけでは手持ち無沙汰になってしまいますね。何かこう、手遊びできるものや握れるものがあればいいのですが。握れるものとか」

 

 「(・・・手を握らせようとしている!)お飲み物をご用意いただいておりますので、こちらをいただきながら進めて参りましょう」

 

 「相変わらず意気地がないですね」


 「さて、それでは解説を始めて参りましょう。前回、明尾さんと飯出君が第四章の捜査編までの解説をされているので、私たちは第四章の残りの部分を解説いたします」

 

 「私たちがあの人たちの残りを処理するという形になるのですか?なんだか納得がいきませんが」

 

 「尻ぬぐいというわけではないので、どうかご容赦を。単なる引継です」

 

 「そうですか。ではさっさと終わらせて、私たちはしばしこの密閉空間で密接な関係のまま密集していましょう」

 

 「都にケンカを売らないでください。それから手早く終わらせると言って手早く終わった試しがないので、そちらも悪しからず」

 

 「うぅん・・・鳥木君、あしらい方が上手くなりましたね。以前はすぐに動揺していたのに」

 

 「お陰様で」

 

 「それで、私たちはどこから解説すればいいのですか?」

 

 「前回の明尾さんと飯出君が、四章の捜査編の終わりまでを解説されているので、我々は裁判の直前からおしおき編までですね」

 

 「・・・本当にそこですか?間違いないのですか?」

 

 「ええ、間違いありません」

 

 「・・・なぜ、敢えて、私たちが、その部分を、解説など、しなければならないのですか」

 

 「そういう配置です。悪意を感じるのは確かですが、他の配役も既に決定しているので」

 

 「全く。いくらお祭り時空のパラレルワールドの何でもアリとは言え、物語中の私たちは私たち自身でもあるのです。ここでの展開も立場も理解しておきながらその配役をするとは・・・どういうつもりでしょうか」

 

 「性格が悪いのでございます」

 

 「鳥木君がそこまではっきり仰るとは、やはり貴方もこの配役に納得がいっていないのでは?」

 

 「納得いかないことも受け入れることができるのが人間というものでございます。少なくとも、ここで異議を唱えたところで配役が変わることはございませんので」

 

 「・・・分かりました。鳥木君が受け入れるのであれば、私も譲歩しましょう。その代わり・・・これが終わった後、私はきっと疲れていると思います。なので・・・」

 

 「かしこまりました。慰めさせていただきます」

 

 「・・・」ムスッ


 「さて、それでは裁判の解説から参りましょう。そもそもからしてですね、こちらの裁判、展開が当初の予定と大きく異なっているのですよ」

 

 「そうですか。では次の場面に」

 

 「早いです!穂谷さん!もう少し興味をお持ちください!」

 

 「興味と言われましても、実際には起こらなかった展開のことを聞きたい人がいるのですか?」

 

 「少なくとも私は話したいです!そういうことになっております!」

 

 「お互いとも本意でないことを言わされていることを自覚しながら進める解説にどれほどの意味があるのか甚だ疑問なのですが鳥木君はそちらを疑われないのですか?(一息)」

 

 「手早く終わらせるために!お願いいたします!」

 

 「・・・仕方ないですね。ではその当初の予定とはなんでしょう。解説なさい」

 

 「ありがとうございます。こちらの事件はですね、結局のところ私がクロではあるのですが」

 

 「前提からして胸に刺さります」

 

 「実際の流れは、いつもの学級裁判のように証拠から状況を推理し、怪しき人物を指名し・・・という流れでした。特に変哲のない学級裁判でございます」

 

 「変哲がないだけで他に色々思うところはあるのですが・・・まあ、言わずもがなです」

 

 「ですが本来は、私と穂谷さんにもっと直接的に争うようなお話になっておりました。つまり、裁判の争点がはじめから私と穂谷さんで食い違うような形ですね」

 

 「具体的には?」

 

 「私は私を、穂谷さんは穂谷さんを、それぞれが自身をクロだと主張するというものです」

 

 「学級裁判で自分がクロであることを主張?なんですかそれは。論理性に欠けます」

 

 「そうですね。クロであることの自白は、自ら命を捨てるに等しい行為です。全く以て論理性に欠けます。ですがこのときの私たちは、そうするに足る理由があったのではないですか?」

 

 「・・・」

 

 「学級裁判ではクロとなった者とシロとなった者が同時に生存することはあり得ません。クロの勝利はシロの死を、シロの勝利はクロの死を意味します。すなわち、この時点で私と穂谷さんは、どちらかが死に、どちらかが生き残るという選択を迫られていたに等しいのです。実際には清水君ら他の方々の命も、穂谷さんと同様にかかっていたのですが」

 

 「他の誰かの命など瑣末なことです。私は貴方に・・・生きて欲しかっただけなのに・・・!」

 

 「それは私も同じでございます。そもそも私が明尾さんを手にかけたのは、貴女がクロになってしまわないようにするためです」

 

 「それが勝手だと・・・!その結果があの別れなら・・・私はクロのままでよかった・・・!貴方を喪って生きるくらいなら、死んで貴方の記憶の中に籠もりたかった・・・!」

 

 「それはお互い様というものです。だからこそ、最後の場所である学級裁判において、私は私を、穂谷さんは穂谷さんを、それぞれ糾弾するのです」

 

 「・・・それはつまり、私は貴方がクロであることを知りながら、学級裁判のときまで黙って寝ていたということになりますね?」

 

 「ええ。私と穂谷さんは裁判直前まで共に行動していましたので」

 

 「許せないですね。仮にそうなるとしても、その前に鳥木君がクロとして処刑されることを避けるために最善手を尽くすべきです。クロはひとりでなければいけないルールもありませんでしたし、滝山君の例を考えれば事件から処刑までの間に新たに殺人を犯すことはルール違反とはならないようですし」

 

 「恐ろしいことを考えないでください」

 

 「ですがそうなると、裁判の展開はどうなるのですか?それぞれが自身の有罪と相手の潔白を主張している学級裁判など、意味が分かりません」

 

 「はい。ですので清水君たちの方針としては、どちらかが必ず嘘を吐いているので、その嘘を暴き、嘘吐きの潔白を証明する、というやや複雑なことになります」

 

 「ということは、鳥木君をクロとして糾弾するためには、私の嘘を暴くために私を追及するのですね。複雑ですね」

 

 「なので実際のストーリーでも、裁判の最終局面では穂谷さんを追及する流れに半ば強引ですが切り替えております。お気持ち程度の名残ですね」

 

 「私たちの心情は一旦おきましょう。いい加減キリがないことを私も理解しましたので」

 

 「ありがとうございます」

 

 「ですが、それぞれが互いの潔白を主張し自分の有罪を主張するのは、他に例がない珍しい形だと思います。裁判の展開は複雑になるのは分かりますが、状況としてはそこまで複雑ではありません。なぜそれをしなかったのでしょうか?」

 

 「はい。もともとやりたかった展開がされていないということは、断念に値する理由が存在するのです。まずですね、裁判で自身の有罪を主張するのなら、自ずと事件当時のアリバイ・・・と申すのでしょうか。逆アリバイとでも言いましょうか。それを供述する場面が生じます」

 

 「ええ、それはそうでしょう」

 

 「そのときに、実際に殺人を犯している私と、一部事件に関わっているとはいえ明尾さんの具体的な死の状況を知らない穂谷さんとで、互いに対抗しうるほど供述の内容に差が生まれないのか?ということです」

 

 「貴方の言い方の方がよっぽど複雑ですね。要するに、なんですか?」

 

 「えー・・・要するに、穂谷さんが私と同じくらい事件のことを詳細に語れるのか?という疑問です」

 

 「そんなに難しいことでしょうか?」

 

 「現場を捜査し、証拠品や明尾さんのご遺体の状況、現場の荒れ具合などを知っていれば可能でしょう。ですが、穂谷さんは事件発生から裁判直前まで医務室にいらっしゃいました。証拠はご自分の目で見たわけではなく、何方かから伝え聞くことしかできません。ですので、全てを知っている私とでは情報に格差があるのです」

 

 「ははあ。そうですか。確かに、私は明尾さんの遺体を見ていません」

 

 「はい。仮に穂谷さんが六浜さんほどの突出した頭脳をお持ちであることが伏線として描かれていれば別ですが。四章時点では賢い方ではありますが、超人的というほどではないという印象でしたので」

 

 「あれはもう頭脳が8つほどなければあり得ないでしょう。そのうち飛行物体を発明して奴隷船解放に尽力しそうな程度には明晰です」

 

 「これを読んでいらっしゃる方の何名に『キャプテン・ブルーベアの13と1/2の人生』が通じると思われたのでしょうか」

 

 「小学校の学級文庫にありませんでしたか?」

 

 「あったかも知れませんが、共通認識とされるほどの市民権は得ていないかと」

 

 「私はなかなか面白いと思いますよ。特に終盤のホラ吹き賭け試合など、回想録のようで」

 

 「ですから、通じませんって」

 

 「そうですか。ええと、何のお話でしたでしょうか。もう終盤ですか?」

 

 「まだ本編の解説も始まっていません。ボツ案のお話です」

 

 「まだですか」

 

 「ですので、私と穂谷さんの間で、事件についての認識の差が大きすぎることが没となった一因です」

 

 「他にもあるのですか?」

 

 「あとはですね。そもそも裁判場で全て自白するのなら、捜査時間中に自白すればいいということになりましょう。少なくとも私の目的は穂谷さんをクロにしないことであって、死体発見時には既に目的が達成されていました。なので、特に黙秘している理由はないのです」

 

 「それがあの、唐突で都合の良い掟の追加ですか」

 

 「はい。事件前に真相を明らかにしてはコロシアイと学級裁判というシステムを否定することになりますので、モノクマとしても禁止する理由があるのです。逆にそれを設定したことによって、私は投票結果が出るまでは自らの言葉で真実を語ることができなくなってしまいました。裁判中でも特に気を付けております」

 

 「全てを私に打ち明けてくれればよろしかったのに・・・。モノクマは誰も貴方の言葉を信じないと言っていましたが、私が貴方の言葉を疑うはずがないじゃありませんか」

 

 「そうでしょうとも。ですが、穂谷さんは今回、事件の当事者であり、容疑者でもあります。私が処刑されたことを加味しても、私が犯行を行った事が証明できない限り、信じていただけるかは確定的ではありません」

 

 「なるほど。私の言葉を信じられないとは、不遜な方々ですね」

 

 「・・・」

 

 「何か仰りなさいな」

 

 「いえ、特に何も」

 

 「そうですか。ボツ案の解説は以上で終わりですか?」

 

 「はい。まず語るべきことは語りました。それでは遅まきながら、本編の方を見て参りましょう。よろしいでしょうか?」

 

 「ええ。どうぞ」


 「さて、かつてない厳粛さで淡々と進行しております、解説編でございます」

 

 「どうしてこんなに空気が張り詰めているのですか?このブースには私と鳥木君しかいないではありませんか。もっとこう・・・和やかというか、甘美な雰囲気になったりはしないのですか?」

 

 「ご自分でそれを言ってしまうので、お互い意識してしまってぎこちなくなってしまうのですよ」

 

 「ぎこちなくなるのはまだしも、こんなに粛々とするとは思いませんでした。討論か何かですかこれは」

 

 「と仰いましても・・・やはり私も健全なる男子ですので、こうしてその、この距離で真向かいになって話すとなると、やはり意識してしまうところがあるというかなんというか・・・」

 

 「大丈夫ですよ。アクリル板がありますから」

 

 「時勢とはいえ、なんというか、世知辛いものですね」

 

 「せっかくのムードが台無しです」

 

 「まあ、実際に我々が三密を作ったり濃厚接触をしたりしても何も言われる筋合いは本来ないわけで・・・」

 

 「ですが、世間が自粛期間中に外出するお話のアニメを放映しただけでクレームを入れてくるような現実と虚構の区別も付かない無駄な正義感をこじらせた顔も頭も低レベルな厚かましくも人間の真似事をしている暇なお猿さんたちが己の程度も弁えずにピーチクパーチクとただ喧しく喚くことしかできずにいらっしゃるので」

 

 「一息で吐ける限りの毒を吐かないでください。お気持ちは分かりますが」

 

 「ですから今現在もこのブースは常に換気しています。最近は暑いのですが、窓から入ってくる風というのはなかなか気持ちが良いものですね」

 

 「そうですね。エアコンの効いた部屋も快適ですが、自然の風はやはりこう、柔らかみがあるというか、心地よいです」

 

 「さて、鳥木君。ここでご相談です」

 

 「どうされましたか急に」

 

 「どうやって話を本筋に戻しましょう」

 

 「それは私も今まさに困っていたところでした。明尾さん方はこういう時には話題を変えてでも強引に戻すのですが、なかなか私たちには難しいですね」

 

 「では今から本題に戻します。はい」

 

 「これはこれでだいぶ強引な形ですね。対応いたします」

 

 「まさに裁判が始まるというところです。鳥木君はクロであり、この裁判を生き延びるつもりがないのですが、掟と私の命を心配するあまり、真相を話せずにいます」

 

 「ですからこの裁判は実質、私が私の犯行が暴かれるように皆様に働きかけ、穂谷さんはそれを妨害するという形になります。本来やろうとしていた形とは少々異なりますが、大まかには似たような流れになります」

 

 「その伏線も、捜査編の時から自ら張っていたのでしょう」

 

 「はい。裁判の終盤で曽根崎君に指摘されますが、彼に脱衣所の鍵を見せられたときに、敢えて“男子更衣室の”と申しました。普通であれば男女で鍵の数字の表記が異なることなど分かるはずがないので、それが決定的な証拠になるのですね」

 

 「直接言うことはできなくても、そのヒントを周囲に伝えることはできると」

 

 「曽根崎君や六浜さん、清水君であれば、きっと私がクロであることを暴いてくれると信じておりました。ですが、今回の裁判ではやはり、私も彼らと1つの勝負をしていたと言えます」

 

 「勝負ですか?何かしていましたでしょうか?」

 

 「今回の事件、私は全ての真相を暴かれまいと動いておりました。私が処刑された後に穂谷さんが皆様から疎外されてしまわないように、明尾さんの名誉を守るために、彼らには事実と異なる真相に帰結してもらいたかったのです」

 

 「それがあの現場偽装工作ですか」

 

 「はい。あくまで今回の事件のクロは私一人。明尾さんも穂谷さんも、狂気に触れた私が勝手に襲撃したという形に収めたかったのです。ですので、その意味では私は間違いなく彼らに敗北しました。結局、全てを明らかにされてしまいました」

 

 「鳥木君の気が触れる理由などありませんからね。それは非現実的です」

 

 「ですが、ここで作者は1つの見地を得たのです」

 

 「見地?」

 

 「クロには、帰結させたい結論を1つ用意させるべし。これです」

 

 「はあ」

 

 「現場偽装やアリバイ工作などをいくら張り巡らせて身を眩ませたところで、あまたの物的証拠や状況証拠、証言などの存在は覆せません。そして学級裁判では、シロの皆様は誰かひとりをクロと断定しなければならないのです。ですから宙ぶらりんのまま投票にいくことは、モノクマの気が変わらない限りあり得ないのです」

 

 「それはもちろんそうですね」

 

 「故に、クロが現実とは異なる真実を用意する必要があるのです。つまるところ、濡れ衣を着せる誰かを決めて、その人がクロとなるような偽装工作を行う方が効率が良いということです」

 

 「なるほど。その哀れな誰かが犯人だという理論が一度出来てしまえば、それを覆すことは容易ではありません。人は自らが導き出したと思っている真実を無防備に信じてしまいがちですから」

 

 「・・・貴女に言わせるべきではなかった・・・!」

 

 「何の話ですか?まだ四章ですよ」

 

 「全てを知っている上での発言ですよねそれは!本当に貴女はお人が悪い!」


 「さて、まだ本編に入っていないのにかなり話し込んでしまいました。進めてよろしいですか?」

 

 「進めましょう。とはいえ、大まかな流れは先ほどご説明した通りですので、もっと細かいところをかいつまんで解説して参ります」

 

 「ではまず。裁判が始まって間もなく、おリンゴさんが失礼極まりなく私に証言を要求してきました」

 

 「おリンゴさん!?清水君のことですか!?」

 

 「私はこの時点で鳥木君がクロになっていることに気付いておらず、明尾さんは私が殺してしまったとばかり思っていました。ですので、ここでの私の証言はウソが含まれています」

 

 「部屋で寝ているところを襲われ、その際に男性の声を聞いたということですね」

 

 「はい。実際に部屋を訪れたのは明尾さんなのでそこは真っ赤な嘘なのですが、ここで犯人は男なのではないかという話になるのですが・・・」

 

 「ここも、タイトルの元ネタである“嘘から出た誠”にかかる部分ですね。穂谷さんが仰った男性の声、というのは全くのデタラメですが、実際にクロは男である私です」

 

 「なのですが、ここで望月さんが私に反論してきます。私を襲撃した犯人と明尾さんを殺害した犯人が真に同一人物と言えるのか、確証がないと」

 

 「望月さんはそういった部分に厳しいですからね。合理的といいますか、論理的といいますか」

 

 「とても面倒な方です。特に疑問を抱いていた方などいなかったというのに、わざわざ新しい話題を作って議論を引き延ばすなど」

 

 「確かに煩雑になってしまいそうな気もしますが、学級裁判においては誰も気付いていなかった視点というのが命を救う場合もありますので、それも大事なことかと」

 

 「ですが、今回の裁判においては非常に重要な意味を持っていました。このお話が公開されたときはまだ原作のV3は未発売だったのですが、新システムの議論スクラムを作者独自に解釈して盛り込んでいます」

 

 「今となっては何をしているのやら、という感じですね。2つの立場に別れて意見をぶつけ合うという骨子は同じなのですが、それはティザームービーを見れば分かる範囲ですので」

 

 「実際の議論スクラムはひとつの意見に対してそれぞれ意見をぶつける、という形でしたが、こちらで行われている議論スクラムは対立する意見をぶつけている中で論破ポイントを撃ち抜く、という形でした。ただのノンストップ議論と大して差はありません」

 

 「やるならやるでちゃんとオリジナリティを出してほしいものですね」

 

 「もしかしたら予言できるかもと意気込んでいたようですが、本質的にノンストップ議論と変わっていないことに気付いていなかったようですね。哀しいものです」

 

 「慣れないことをしようとするから恥をかくことになるのです。これは楔として残しておきましょう」

 

 「それはさておき、議論スクラムの結果、穂谷さんと明尾さんの体に残されたアザが似ていることから、同一の凶器によるものだと断定できました。そこから、同一犯によるものと判断できます」

 

 「ですがそこでも望月さんが噛みついてきます。彼女は一体なんなのでしょう」

 

 「メタ的な話をすれば、望月さんは全員の意見が一致しているときでもお構いなしに異なる意見をぶつけられるということで、作者に重宝されていたようです。真相に辿り着くためには、強引に議論の方向性を切り替えなければならないときもあります」

 

 「そんな役割を負っていたのですか。完全に作者の都合ではないですか」

 

 「物語を作っている中では、なかなかキャラクターが思い通りに動いてくれないこともございます。そのときに、徹底的に感情を排除して合理的・論理的な意見をぶつけることができる望月さんは、非常にありがたい存在でもございます」

 

 「まあ、彼女がそうして横から口を挟んだおかげで、明尾さんの真の死因が分かったわけですが。この時点で私は違和感を覚えていました」

 

 「明らかに冷静さを失っていましたね。ここで、自分がクロではないのではないか、ということに気付いたのですね」

 

 「流れとはいえ、この後私は、私に反論してきた鳥木君と言い合いをしてしまいました・・・申し訳ありません・・・!似非多重人格なんて心にもないことを・・・!ごめんなさい・・・!ごめんなさい・・・!」

 

 「それを謝るのでしたら、もっと他に謝らなくてはならない方が大勢いらっしゃるような」

 

 「はい?なんですか?」

 

 「なんでもありません。少々早いですが、この辺りから穂谷さんが想定していた事件の流れは完全に否定され、その上私が想定していた真実とは異なる真相に到達させる計画も破綻して参ります」

 

 「早いですね。まだ裁判が始まって間もないですよ」

 

 「穂谷さんの方は明尾さんの死体発見現場や死因からすぐに分かることですが、それによって私の偽装工作まで簡単にバレてしまうとは思いませんでした」

 

 「やはり、彼らを全員相手にするのは無理がありましたね。初めからありとあらゆる手を尽くして徹底的に自分の存在を隠し続けた屋良井君でさえ、曽根崎君と六浜さんの二人に追い詰められてしまいました。彼の判断は正しかったということです」

 

 「確かに、お二人のうちどちらかでもいなかったら、結果は分かりませんでした。とはいえ、先ほどのように望月さんによる問題提起がされている限り、清水君もそれを無視して結論を出すようなことはなさらなかったでしょう」

 

 「そうですか?曽根崎君と六浜さんに比べて、そちらの二人は脅威で無いように思いますが」

 

 「主人公ですので」

 

 「身も蓋もないことを仰るのですね」

 

 「清水君が主人公である以上、そのすぐ側にいる望月さんや曽根崎君の方が、物語上私たちよりも優位な立場にあるのです」

 

 「そうでしょうか?でしたらなぜ、最終的に彼らは──」

 

 「今はまだいけません!それは!」

 

 「もう分かり切っていることではないですか。これを読んでいる方は最後までQQを読んでいる前提でしょう」

 

 「それはそうですが」

 

 「さて、明尾さんの死因から殺害現場の話になって、今は清水君の足がどうのこうのというお話になっています」

 

 「明尾さんが殺害されたのが彼女の部屋ではない理由として、捜査時間中に清水君が机を蹴った拍子に骨格標本が崩れたことが挙げられております。ちなみに曽根崎君はこの後蹴られています」

 

 「なぜ敢えて怒らせるようなことを言うのでしょう?被虐趣味があるのでしょうか」

 

 「彼の場合は殴られるどうこうよりも、人をからかうことに楽しみを見出している節がありますね。特に清水君をおちょくって怒らせるのが楽しいようですね」

 

 「子供ですか」

 

 「幼心を忘れないことは大切なことなので」

 

 「幼心といいますか、精神的に未熟といいますか」

 

 「未熟でしょうか。彼も彼で相当なものを抱え込んでいるのですが」

 

 「それとこれとは話が別です。全く、望月さんといい曽根崎君といい、彼らは一体どれほど私たちの邪魔をするというのでしょう。私も鳥木君も、事件の真相を隠蔽しようと必死だというのに」

 

 「本来的に私と穂谷さんの立場は異なるはずなのですが・・・。勘の良い読者の方々なら、この時点で私と穂谷さんが同じ件について同じようにミスリードをさせようとしていることに気付かれたかと思います」

 

 「というか、四章の開始時点からして鳥木君のクロ予想が非常に多かったようですが」

 

 「マジシャンという“才能”故にでしょうか、ミリしらでもクロ予想が大変多かったのです」

 

 「ミリしら?なんですかそれは?」

 

 「御存知ない。1ミリも知らない〇〇、の略でして、あるものについて全く知識のない方が、当てずっぽうでキャラクターや生死予想をする遊びでございます」

 

 「なるほど。そこでも鳥木君はクロ予想が多かったと」

 

 「はい。なぜでしょう。そんなに私の人相は悪いのでしょうか」

 

 「人相が悪いというよりも、先ほど仰ったようにマジシャンという“才能”のせいかと思います。よその創作論破でも、マジシャンという“才能”をお持ちの方はそもそも生存率が低く感じます」

 

 「手先の器用さや脱出マジック、すり替えマジックなどの技術が犯行に応用しやすいイメージがあるからでしょうね。実際はそんなこともないのですが」

 

 「そうなのですか?」

 

 「マジックと言いましても、言ってしまえば入念な下準備と練習による技術のパフォーマンスです。ですので、この状況でどれほどマジックの技法を利用できるかは分かりませんね。それだけの殺意があれば分かりませんが」

 

 「実際にクロになっているではありませんか・・・!私がそのことに気付いた時、どれほど心苦しかったか・・・!貴方にそのことを確認したくても、私が言ってしまえばそれで貴方を追い詰めることになる・・・!どれほど苦しい裁判だったか分かりますか・・・!?」

 

 「こんな急角度からまた責められることになるとは思いませんでした」

 

 「本当に、こうして今お話できることが、私にとってはとても嬉しいことなのです。本編の中でしたら、もう二度と叶わないことですから」

 

 「それで四章のこの場面を解説させられているというのも、なんというか、悲運から逃れられない運命を感じて空恐ろしいですね」

 

 「それは単なる作者の性格の悪さです」


 「明尾さんの部屋が事件現場でないことが明らかになったら、では明尾さんはどこで殺害されたのか、という話になります」

 

 「彼女のお部屋でなければ、当然のように私の部屋、ということになりますね」

 

 「本編は明尾さんが殺害されたのが穂谷さんの部屋ではないか?という疑惑が浮上した段階で、一度切れています。穂谷さんへの疑惑がより深くなる演出ですね」

 

 「全く失礼なことです。途中まで私自身もそう思っていたこととはいえ、なぜ私が清水君なぞに疑われなくてはならないのでしょうか」

 

 「議論の自然な流れがあるので問題はないかと」

 

 「自然ならなんでもありなのですか?」

 

 「自然なら大概のことはありです」

 

 「鳥木君が助け船を出してくれていますが、それでもやはり私への疑いは晴れません。全く、人を疑うことばかりで世知辛さを感じますね」

 

 「四章冒頭でのご自身の行いを振り返ってみてください!?あそこからの流れで疑われない方が異状でしょう!」

 

 「ですが貴方は私を弁護しているではないですか」

 

 「それは、私としては穂谷さんも明尾さんも等しく被害者という結論にしたいので、貴女が疑われる方向にはいかないようにしたかったのです。何より、貴女がクロとされてしまえば私だけが生存してしまいますから」

 

 「それはそうでしょうね」

 

 「他人事!?それより、ここでの穂谷さんの御気持ちはいかがだったのですか?」

 

 「はい?それは当然、目の前の彼らに相応の処罰を与えたいと思っていましたが」

 

 「穂谷さんは王権を持っていらっしゃるのですか?そうではなくて、もともとはご自分の犯行だと思っていたものが否定され、第三者がクロであることが分かった後で自身に容疑が向くという状況についてです」

 

 「複雑ですね。少し前の私でしたら、もしかしたら素直に自白をしていたかも知れません。嘘を吐いて、敢えて自分が処刑されることで鳥木君を生かそうとするために」

 

 「ええ」

 

 「ですが、この時点で私の死が鳥木君の生存と必ずしもイコールではなくなりました。ですから私は、まず鳥木君がシロなのかクロなのか、それを知りたかったのです。ですが念のため容疑を否認するような振る舞いはしました。晴柳院さんの発言が決め手になったのはいただけませんが」

 

 「本当に彼女のことがお嫌いなのですね」

 

 「あら、嫌いだなんてそんな。ただ、私とは相容れない世界の方だなと思っているだけです」

 

 「上品に仰ってますけど、それ全否定ですよね」

 

 「まるで彼女が私に救いの手を差し伸べたかのような展開になっていますが」

 

 「そこまで大袈裟ではないかと思いますが・・・いえ、ここは穂谷さんのプライドのお話ですので、あまり突っ込むのはやめましょう。後が恐ろしいので」

 

 「何か?」

 

 「いえ、何もございません。続きをどうぞ」

 

 「凶器たるハンマーが男子脱衣所で見つかったことから、犯人は男子脱衣所に入れた人物、すなわち男子だという話になりました。この時点で私は、鳥木君がクロなんじゃないかとだんだん恐ろしくなってきていました。ですがいま疑われているのは私。もし鳥木君がシロだとしたら、私が潔白を主張しなくては鳥木君の命も危険に晒すことになりますので、色々考えてわけがわからなくなっていました」

 

 「ご心労お察しいたします。私も自分のことより、穂谷さんの容疑をいかに晴らすかを考えておりました。やはりそうした内心の駆け引きという面でも、この裁判は特異でしたね。シロが明らかにクロと疑わしい人物を擁護しようとし、クロはシロの容疑を晴らそうとするという」

 

 「忌々しいことに、清水君たちは他の裁判と同じようにどんどん真相に近付いて行きます。一部の真相を知っているはずなのに、私と鳥木君だけが置いて行かれているような、不思議な気持ちになってしまっていました。まあ、私は鳥木君と一緒ならどんなことでも・・・」

 

 「強引に惚気ようとしないでください。面と向かってされると恥ずかしいです・・・」

 

 「恥ずかしがることはありません。ここには私と鳥木君しかいませんので。何度も言うようですが」

 

 「やり取り自体は全世界に向けて公開されていますが!?」

 

 「全世界とは仰いますがね、いくら有名タイトルとはいえその二次創作で完結自体が数年前の需要もあるのかないのか分からない解説編のこんな深い話数ですよ?続けて読んでくださっている奇特な方々以外にバレることはないのですから、何を恥じることがありますか?バレ得る方にはもうそういうものだと理解を得ています」

 

 「御存知ないですか?本文の抜粋やタイトルでウェブ検索をするとヒットするのですよ。ですから不特定多数の方にも見られ得るので」

 

 「タイトルや本文の抜粋で検索する時点で読者です。ハイ、論破」

 

 「これは言い返せない・・・!」

 

 「恥ずかしがる鳥木君を見ているのも悪くありませんが、私ばかりがグイグイ押していくのはなんだか不公平です。私も鳥木君に迫られたいのです」

 

 「迫る・・・迫るというのは・・・」

 

 「そうですね。たとえばこんなアクリル板など取り払ってですね」

 

 「おあっ!?ア、アクリル板が消滅した!?」

 

 「こんなに広いテーブルも必要ありません。膝をつき合わせていたいです」

 

 「おおうっ!?わ、()()()()()()()()()()()()()()()()()!?ザ・ハンド!?」

 

 「それに座るのはこんなキャスター付き椅子ではなくて、もっと広くてふかふかなベッドなどがよいでしょう」

 

 「ぬあっ!?穂谷さん!?ちょ、ちょっとお待ちを!空間を支配するのは止めてください!」

 

 「はじめに言ったじゃありませんか。この空間は言った者勝ちなんです。私があると言えばあり、ないと言えばないんです」

 

 「言った者勝ちなのはそうなのですが、濫用しないでください。解説どころではなくなるので誰も手を出さなかったのに」

 

 「どなたも触れなかっただけで、禁止が明文化されていませんもの。取り締まられるはずがありませんわ」

 

 「王権を神授しているのですか?」

 

 「なぜなら私が美しいから!」

 

 「メロメロの実の能力者でもあったのですか?」

 

 「案外鳥木君は漫画に即したおとぼけも拾ってくれるのですね。なんだか意外です」

 

 「穂谷さんがそうした事情に詳しいことも同じくらい意外なのですが」

 

 「パラレルのお祭り時空ですもの。なんでもありです。そもそもこういったサブカルチャー分野のパロディは、原作からしてお家芸なところがあるではありませんか」

 

 「そうですね。三章の屋良井君の退場間際は、パロディの押収でした」

 

 「親の敵かというくらい詰め込まれていましたね。あの時の私には何がなんだか分からなかったですが」

 

 「裁判中の我々の立場くらいワケが分からないですね」

 

 「戻し方がお上手ですね」

 

 「ありがとうございます。脇道に逸れすぎていたので、頑張って戻しました」

 

 「そうした話術といいますか、話題を転換する方法や人の気を逸らす方法も、マジシャンであれば心得ているものなのですね」

 

 「戻した話をまた別の方向に広げようとしないでください。本筋に戻ってください」

 

 「何の話でした?」

 

 「犯人がどうやら男性らしい、というところです。穂谷さんはこの時点で、ハンマーが脱衣所にあるという身に覚えのない事件を知ります。そして、自分以外に犯人がいることが明らかになったわけです」

 

 「そうですね。疑惑が確信に変わりました」

 

 「ですが裁判の中ではまだ穂谷さんは容疑者のまま。清水君の主張により、犯人が男性であるとは限らないということになりました」

 

 「男子脱衣所にあったのでしょう。男性しか入れないはずです」

 

 「実は四章日常編の終盤で、曽根崎君が女子風呂覗きの咎で明尾さんに追いかけられている場面がありました。大浴場は湖の中にあり、外部から風呂場を覗くことはできません。つまり女子風呂を覗いたということは、曽根崎君が女子更衣室内に侵入したことを意味するのです」

 

 「覗きなどと破廉恥なことをよくも・・・私はどのみち大浴場に行かないから知りませんが」

 

 「案の定、六浜さんがパニックになっておられます」

 

 「どれだけ耐性がないのですか。ただの現実逃避でしょう」

 

 「むっつりだそうなので」

 

 「以前から思っていましたが、むっつりスケベというのはそういう下品な話に耐性がないことを意味する言葉ではないでしょう?」

 

 「そうですね。本来は、頭の中で性的なことを考えていながらそれをおくびにも出さず、逆に興味がないかの如く振る舞う方を指します」

 

 「気持ちが悪いですね。性欲など誰しもあるもの。理性で制御し、時と場所と相手を弁えれば悪でもなんでもないというのに」

 

 「(さっきのご自身にそのまま返したい・・・)」

 

 「何か?」

 

 「なんでもございません!それより、穂谷さんがそういうことを仰るのはなんだか、イメージと違うような」

 

 「当たり前です。解説編でもなければ、敢えてそんなことを口にする意味がありません。下手に勘違いされても困りますし」

 

 「まあ、そんな状況でもありませんでしたから。それでえっと、六浜さんはむっつりというよりも、むしろそうした話題に耐性がない、ピュアな方ということでしょうか」

 

 「高校生にもなって、ですか?私だって好ましいとは思いませんが、それなりの知識も興味も人並みにあります。それを否定する方がよっぽど不健全に思いますが」

 

 「否定するのが、むっつりと言われる由縁でしょうか」

 

 「じゃあやっぱりむっつりのむつ浜さんなんですね」

 

 「急に雑にならないでください」

 

 「本筋に関係ない上にどうでもいいことですもの」

 

 「う〜ん・・・同意します」


 「さて、曽根崎改め、ソノゾキ君が明尾さんと晴柳院さんのお風呂を覗いたところからですが」

 

 「お風呂を覗いたというよりも、両脱衣所を行き来する術を知っていることが重要なのです。双方を行き来できれば、証拠品を敢えて自分が入れないはずの脱衣所に隠すこともできます」

 

 「ですので、私がそうしたと、清水君は妄想を吐き続けているのですね」

 

 「妄想というほど無根拠でもありませんが・・・」

 

 「でも真相とは違うじゃないですか」

 

 「裁判のときはある程度の信憑性が保たれていたかと思います。私は違うことが分かっていたので、他の方がどのように感じられていたかは分かりませんが」

 

 「そして、ここまで清水君の推理を聞いて、私はもう頭の中がこんがらがっていました。結局、私は犯人ではないのだと分かりました。では、私と格闘して瀕死だった明尾さんの首を絞めて殺害したのが誰なのか、私には推理できる根拠が何もありませんでした」

 

 「そうですね。当事者のお一人とはいえ、捜査時間は医務室で横になっていただけ。明尾さんの死因や部屋の状況さえも裁判の中で知り、実際には何も直接ご覧になっていないのですから」

 

 「ですが、凶器たるハンマーが男子脱衣所にあったことで、私はひとつ、考えました。もしかしたら、鳥木君が犯人なのではないかと」

 

 「え゛・・・この時点で分かっていたのですか?」

 

 「直感です。さっきも言ったでしょう。私には推理に使える根拠がなかったのです。ですが、疑問に思っていることはありました。なぜ犯人は、私を殺さなかったのか。なぜ、必要以上に犯行に関わったのか」

 

 「と、仰いますと?」

 

 「もし犯人が、私と明尾さんの争いに気付いて漁夫の利を狙ったのであれば、私の部屋の側で明尾さんを殴り殺せば良い話です。彼女の遺体を部屋に移動させて現場を偽装したり、凶器であるハンマーを遠い脱衣所まで隠しに行くリスクを負う必要などないのです」

 

 「なるほど」

 

 「仮に真犯人が何らかの悪意を持ってそのようなことをしたとして、私にその真意までを推し量ることはできません。ですが、もし犯人が、私を庇うためにそうしたのであれば?現に、最も疑わしかった私は途中まで、被害者のひとりとして議論されていました。だとすれば・・・そんなことをするのは、この中にひとりしかいません」

 

 「・・・私、ですね」

 

 「だから、私はここで気付いた・・・いえ、信じました。鳥木君こそが、この事件の真犯人だと。貴方が、私のために私の犯行を奪ったことを」

 

 「申し訳ありません・・・私が直接お伝えできればよかったのですが、モノクマに阻まれてしまい──」

 

 「いいえ。私はむしろすっきりしていましたよ」

 

 「は?」

 

 「あれこれ考えていたんですが、貴方がクロだと気付いたことで、もう私がすべきことはひとつになりましたから、却って分かりやすいです。貴方が死なないようにする、代わりに私たちシロ全員が死ねばいいんです。だから、私は犯行を()()()()()

 

 「・・・」

 

 「私がクロとして投票されることで、鳥木君は確実に生き延びられる。どうせ私の体は奇病に冒されています。この命を、貴方のために捧げられるなら、惜しくもなんともありません」

 

 「ですが、それでは私が穂谷さんの代わりに明尾さんを殺害した意味がなくなってしまいます。私は自分が生き残るために明尾さんを手にかけたのではなく、貴女に生きてほしいから──」

 

 「ですから、お互い様なんですよ。鳥木君。私は貴方に生きて欲しかった。貴方も私に生きて欲しかった。学級裁判のシステムにおいては、両立することなんてできないんです」

 

 「私はなるべく、そのことに穂谷さんが気付く前に裁判を終わらせたかったのです。そのことに気付かれては、穂谷さんはきっとそうされると思っていたから」

 

 「はい。そういった流れを経て、冒頭で鳥木君が仰っていた、互いが互いを処刑させようとする流れに移っていくのですね」

 

 「え、そんな急に解説調にトーン変わるんですか?ついさっきまでのシリアスな空気は?」

 

 「解説調って、これは解説編でしょう。なんですかシリアスって」

 

 「ハ、ハメられた・・・!!つられてシリアスな雰囲気で応対してしまった・・・!!恥ずかしい・・・!!」

 

 「ちょっと素出てませんこと?」

 

 「い、いえ・・・これしきのことで『Mr.Tricky』の仮面は剥がれませ──」

 

 「『そんなことをするのは、この中にひとりしかいません。』『・・・私、ですね』。うふふ・・・ずいぶんと芝居がかった喋り方をなさるのですから、面白くてからかってしまいました」

 

 「あああああっ!!そこ特に恥ずかしい!!やめてください!!」

 

 「こんなに取り乱す鳥木君も珍しいですね。普段なら受け流しそうなものなのに」

 

 「・・・他の方であればまだしも・・・貴女に知られるのがとてつもなく恥ずかしいのです・・・!!素を知られているからなおさら・・・!!」

 

 「なんだか可愛らしくなってきました。素に戻ってお話していただけるなら、これ以上蒸し返すことはしないでしょう」

 

 「素って・・・ここからですか!?」

 

 「ほら、仮面をお捨てなさいな。貴方が常日頃から付けている、“『Mr.Tricky』の仮面を被る『鳥木平助』”という仮面を」

 

 「いや、それは・・・!」

 

 「うふふ。この解説編が終わるまでに必ず剥がせさせてみせますので。よろしくて?」

 

 「(全くよろしくない!!!)」

 

 「さて、私が罪を認めて処刑されようとするのを止めたのは、他でもない鳥木君です。それはもちろん、鳥木君にとってはその結末が受け入れがたいものだからです」

 

 「は、はあ・・・。そうですね。ここの私と穂谷さんの反論ショーダウンや、その後のノンストップ議論は、まさにボツ案になってしまった裁判の流れの一部でございます。だいたいのボツ案は、何らかの形でこうして供養されています」

 

 「往生際が悪いですね。ボツ案のくせに」

 

 「ボツ案全体に毒を吐かないでください」

 

 「そしてこの後、私への容疑はいとも簡単に破棄されてしまいます。なんとも惨めな結末です」

 

 「まあ、メタ的なことを言ってしまえば、前編の終盤で疑われている方が真犯人では、盛り上がりに欠けますから」

 

 「本当にメタですね。分かりますが」

 

 「穂谷さんの容疑を晴らす論ですが、私が凶器を男子脱衣所に隠したことが、却って私の容疑を深めていました。ですが、脱衣所を行き来する具体的な方法を知るはずがなかった穂谷さんにはそれが不可能である、ということも同時に言えてしまうのです」

 

 「一時は自分で認めたとはいえ、こんな穴だらけの推理を得意気に披露する清水君の不徳の致すところですね。無実の罪でも着せるならきちんと理論を組み立てなくてはなりません」

 

 「いえ、そもそも無実の罪を着せてはいけません」

 

 「そして・・・なんとも腹立たしいことですが」

 

 「両脱衣所を行き来する方法について穂谷さんに伺いましたが、知る由も無い穂谷さんに答えられるはずがない。埒が明かなくなったところで、曽根崎君がカマをかけるのですね」

 

 「あんなことを言われたら認めてしまうでしょう!卑怯です!」

 

 「いやまあ、曽根崎君のやり方もあまり褒められたものではありませんが、学級裁判で真実を暴く上で目的が倫理に勝る面も否定し難いかと・・・」

 

 「これのせいで、私が犯人であるという説は全く否定されてしまいました。なぜ私がクロとして名乗り出ているかの理由までは分かっていませんが、いずれにせよ、私の発言に力がなくなったことは事実。ここから先、私が何を言っても無意味になってしまいました」

 

 「本来であればあり得ない事態ですから・・・」

 

 「私は、悔しいです。明尾さんに襲われたばかりに、鳥木君の手を汚させてしまい、庇うことすらできず、ただそこにいるだけとなってしまったことが。せめて私が、鳥木君でない他の誰かに罪をなすりつけられていれば・・・!」

 

 「恐ろしいことを仰っていますが、それこそ倫理に悖る行いですよ」

 

 「その後、改めて犯人捜しが始まりますが、やはり脱衣所の行き来の件を知っていた曽根崎君が疑われています。自業自得ですね」

 

 「この程度のこと、彼なら予想できていたでしょうが、あれほど慌てるのは演技なのでしょうか」

 

 「演技の可能性もありますね。脱衣所を行き来する方法を知っていたら犯人であると疑われる、それを晴らすのは容易ではない、ということを真犯人に暗示しているようにも思えます」

 

 「考えすぎ・・・とも言い切れないですね」

 

 「そして曽根崎君が脱衣所の件を知っていたのと同様、明尾さんも曽根崎君から聞かされていたことで、全員の中に疑いが生まれています」

 

 「更に晴柳院さんの疑問が加わりますね。なぜ明尾さんは、穂谷さんの部屋で負傷したのか、です。あんな夜中に、特に用事もなく穂谷さんの部屋にいる理由がありませんから」

 

 「思えば、私が完全にクロとして破綻してから、鳥木君の計画も本格的に破綻し始めましたね。両脱衣所を行き来する方法があり、それを知っている人がいる。たったそれだけのことで、私がクロとなることも、明尾さんが完全な被害者となることも、論理的に不可能になってしまうのですから」

 

 「咄嗟の犯行とはいえ、そこまで想定できなかったのは私のミスです。もう少し上手いやり方があれば、せめて明尾さんだけは名誉を害されることなく終われたでしょう・・・」

 

 「名誉を害すると言いますけれど、彼女が私を襲ったのは事実ですよ?単なる事実の周知について名誉毀損は成立しません」

 

 「そうなのですか?では言葉が違いましたね。いずれにせよ、明尾さんも穂谷さんもただの被害者である。全ては私自身の意思による凶行であると結論付けさせるのは、やはり無理がありましたか」

 

 「本来なら明尾さんを殺害した時点で目的を達成しているのに、そんなことまでやろうとすること自体が傲慢なのです。私もあまり人のことは言えませんが・・・事実は事実でしかないんです」

 

 「そうですね。真実をねじ曲げた上で敗北しようなど、人の身に余る行いだったと、今更ながらに思います」

 

 「そもそも凶器であるハンマーが明尾さんのものと同定されてしまえば、明尾さんが完全にただの被害者であるなど考えにくいことです。いくら焦っていたとはいえ、それに気付かない時点で、かなり穴の多い偽装工作でしたね」

 

 「私自身がクロとされる分には構わなかったので、その辺の線引きが上手くいかなかったということですね。やはり、場当たりで上手くいくものではありませんでした」

 

 「終盤になってきて曽根崎君がやたらと推理を進めているのが目に付きますね。これは前章からの流れですが、1,2章で犯人を追い詰めるのは清水君がしていましたね」

 

 「主人公ですので、さすがにそこは。あと、序盤でまだ犯行がそこまで複雑でなかったことも清水君に解決することができた理由の1つでもあります」

 

 「細かいところで格差を付けるのですね」

 

 「後半になってからは、三章で六浜さん、四章で曽根崎君、五章で望月さんが犯人を追い詰める役を担っています。いずれも頭脳が冴え渡る方々です」

 

 「皆さん、見事に最終局面までは生き残っていますね」

 

 「まで“は”・・・」

 

 「意味深にしてみました」

 

 「意味深ですが、既に読まれた方からは、そのシーンの穂谷さんへのヘイトが物凄いのですが」

 

 「そのあたりの解説は六章を担当される方にお任せしましょう。ここで話すと鳥木君との時間を邪魔されることになりますので」

 

 「ええ、まあ、そうですか・・・」


 「いよいよ曽根崎君によって、推理が大詰めを迎えてきました。そして終盤の犯人指名で、鳥木君が指名されてしまいます・・・私にとっては既に分かり切っていたことですが、信じたくないことが現実になってしまったような・・・そんな無念さを感じていました」

 

 「ですが、これは私が差し向けたことでもあります。曽根崎君たちの素晴らしい推理によって真相に辿り着くことはできましたが、私は元から逃げ切るつもりはありませんでした」

 

 「曽根崎君が得意気に証拠を突きつけていますが、これも鳥木君が自分がクロと指名されるように仕組んだことなのですよね?」

 

 「ええ。そうです。清水君たちが医務室にやってきたとき、彼らは私が穂谷さんの部屋に隠した脱衣所の鍵をきちんと見つけてきてくれました。ですから私は、敢えて“男子脱衣所の鍵”と言ったのです」

 

 「耳聡い曽根崎君がそれを聞き逃すはずがありませんものね。その場で指摘せず、こんな裁判も終盤になってからそれを言うなど、性格の悪い彼らしいことです」

 

 「同じ証拠でも、出しどころ次第で強力なものになったり微弱なものになったりしますから。そういった見せ方も裁判を描く上でのテクニックの1つですよ」

 

 「急に作者目線で話すのですね」

 

 「これも解説編の仕様でございます」

 

 「そうですね。実際の推理小説などでも、『いつから疑っていた?』『初めからです』のようなやり取りがありますものね。疑わしいと思った時点で指摘なさいな、というお話です」

 

 「リアリティも大切ですが、ある程度の嘘があって初めて物語というのは成立するものでございます」

 

 「あら、そんなことを言っている間に、クライマックス推理に突入しました。いつまで経ってもスチルが描かれないことでお馴染みですね」

 

 「そんな馴染み方は存じませんでしたが、さすがにここまで描く技量はありません。QQ自体、挿絵は全くと言っていいほどありませんでしたが、次回作においても犯人指名以外の部分は同様ですね」

 

 「もっと絵が上手な作者の元で描かれていれば、私たちの生き生きした様子もたくさん絵になっていたのでしょうね」

 

 「ご覧いただいた方に描いていただいているのですから、十分ではありませんか」

 

 「はい、十分です」

 

 「(え、営業スマイルだこれ・・・!)」

 

 「さて、クライマックス推理が終わりました」

 

 「(飛ばした!!)」

 

 「さすがにいよいよ結論が出そうになったということで、私も口調が崩れています。鳥木君、あまり見ないでください・・・恥ずかしいです・・・」

 

 「急にどうしたんですか。ところで、私もここで気になったことがあるのですが聞いてもよろしいでしょうか」

 

 「ええ、どうぞ」

 

 「ここでの穂谷さんは敬語が外れてしまっていますが、これが穂谷さんの素でしょうか」

 

 「さすがにここまで汚い言葉遣いはしませんが、敬語は意識しているものですよ。でもどうでしょう。なんだかもう、敬語でないとなんとなく収まりが悪いような気がしてしまって、クセになっています」

 

 「分かります。とても」

 

 「もっとも、メタ的なことを言えば」

 

 「またですか」

 

 「文字では声色や発音による区別ができないので、敬語というのはキャラクターを同定する手段として非常に便利です。敬語で喋っているだけで、誰が話しているかおおよその検討がつきますから」

 

 「そうですね。QQにおいて敬語を常用しているのは、穂谷さん、晴柳院さん、私の3人だけですし、晴柳院さんは京言葉を使われるので更に区別が可能です。私と穂谷さんでは敬語の種類も異なるので、分かりやすい方かと思います」

 

 「敬語の種類が違うのですか?」

 

 「はい。私は謙譲語や尊敬語をよく使いますので、常体とはかなりかけ離れたものになっています。一方、穂谷さんの敬語は敬意を示すというより、上品さや心の距離感を示す形式的な敬語ですので、丁寧語を多用されます」

 

 「なるほど。一口に敬語と言っても、区別ができるのですね」

 

 「晴柳院さんの敬語は、謙譲の意味や礼儀的な意味を持つので、私たちのちょうど中間あたりの敬語ですね」

 

 「日本語は複雑です。敬語というのに敬意を示す以外の用法もあるのですね」

 

 「どちらかと言えば他人との距離感を表す敬語の方が一般的かと思います。真に敬意を抱いて敬語を使う相手となると、正直な話限られますので」

 

 「そうですね。私はそういうタイプです」

 

 「ご自分で仰いますか」

 

 「これでも、学園では『女王様』と呼ばれていましたから」

 

 「そんな設定ありましたが、実際そんなあだ名で呼ばれているご気分はいかがでした?」

 

 「恥ずかしかったです。何のプレイかと」

 

 「ですよね」

 

 「私はそういった方々に特別厳しくあたっていたつもりはないのですが、いつの間にか噂になってしまっていまして、親衛隊のようなものもできていました」

 

 「ご自身の意思に関わらず、周りが勝手に持ち上げてしまっていたのですね。しかも穂谷さん自身はそれを疎ましく思っていらっしゃる」

 

 「ええ。突き放そうとすればするほど強固になっていくので始末が悪いです」

 

 「・・・それって、晴柳院さんと似たような境遇ではありませんか?」

 

 「?」

 

 「規模は全く異なりますが、彼女もまた、晴柳院家や『希望の徒』などの団体によってご自身の意思とは無関係に持ち上げられて、それに迷惑していらっしゃいましたから」

 

 「・・・彼女は、相応の利益を得ていたでしょう。少なくとも生活に苦を感じてはいませんでしょう」

 

 「かもしれませんね。ですが、彼女に対する束縛も、比例して大きくなるとは思いませんか?彼女にとって家の名前や身分は、自分が生きていく上で切り離せないものです。ご自分で選択しようのない事柄です。周囲からの眼も、単なる好意や敬意ではありません。もはや神聖視に近いです」

 

 「何が言いたいのですか?彼女がそうだからといって、私に何の関係があるのですか?」

 

 「もう少し後のお話になってしまいますが、結局、穂谷さんと晴柳院さんは仲を戻さずに別れてしまいました。私はそれが気懸かりで・・・穂谷さんのお気持ちもお察ししますが、晴柳院さんは決して身分に胡座をかいている方ではないのです。ですから、仲直りをしていただきたいなと思っていまして」

 

 「おかしなことを言いますね。仲違いなどしていませんよ。彼女と私では生きる世界が違うのです。元から交わることのない世界が触れ合えば齟齬が生じます。ですから距離を置いているだけです」

 

 「四章において、穂谷さんの周りの人間関係は大きく変化しました。ですが、その一因は穂谷さん、貴女の高圧的な態度です」

 

 「・・・」

 

 「本編も終わり、解説編で再びこうしてお話しできるようになったのですから、これまでの関係性を水に流して、よい関係を築いていくのも良いのではありませんか?」

 

 「・・・まあ、冷静になって彼女と私のやり取りを見ていて、私も思うところがなかったわけではありません。極限状態では判断が鈍ることもありましょう。お互い余裕がなければ対話が上手く行かないこともあります」

 

 「はい」

 

 「どうせパラレルなら時間も空間もあってないようなものです。お話しすることくらい、する気になるかも知れませんね」

 

 「お願いします」

 

 「ですが、今はダメです。今は解説編で、私と鳥木君の二人きりの時間です。こちらが優先です」

 

 「ええ。今でなくても構いません。まだ晴柳院さんは二度目の解説を待っていらっしゃいます。いずれ時が来れば、穂谷さんはきっとご自分のお言葉に責任を持たれると信じています」

 

 「全く。貴方は私の保護者ですか」

 

 「遠からず近からずのような・・・お世話はしております」

 

 「あら、そうでしたね。今後も末永くお願いしますね」

 

 「あ、安易に末永くなどという言葉を仰らないでください!心臓が冷えます!」

 

 「なぜですか」


 「さて、ここからはおしおき編です。もうここまで来てしまいましたか。なんだか名残惜しいですね」

 

 「私は特に。鳥木君と二人になれるのなら何でも構いませんので。解説が終わった後もこの便利な空間は利用させてもらいます」

 

 「強制排除されますので悪しからず」

 

 「そんな権利が誰にあるというのですか!」

 

 「作者です」

 

 「作者にどんな力があるというのですか!烏滸がましい!」

 

 「とんでもないことを仰り始めました。そろそろ締め時かもしれません。解説しましょう」

 

 「抗ってみますよ、私は」

 

 「犯人指名後、すぐに私の回想が始まります。本当ならこれは明かすつもりはなかったのですが、もはや全て暴かれてしまいました。下手な嘘を吐いても意味がないので、白状するより他にありませんでした」

 

 「全ての始まりは、明尾さんが私を襲うことを決めたことでしょう。彼女が何を根拠に私を裏切り者と思ったかどうかに関わらず、暴力に訴えることを決めた時点で彼女に罪があります」

 

 「頑なですね・・・それが今回の事件の遠因でもあるのですよ。彼女たちと入浴することを断るだけならまだしも、晴柳院さんへの態度は、ある種の僻みでしょう」

 

 「・・・まあ、こんなところでまで意地を張っていても仕方がないので率直に言いますが、そういう部分もあったことは否めないかも知れません」

 

 「全然率直ではありません!ですが、お認めになったことは大きな一歩です」

 

 「彼女は私と違って裕福な家に生まれています。幼い頃から健康で文化的かつ十分に満たされた生活を送ってこられました。そこに1つの難もなかったとは言いませんが、私が経験したような類の苦難を彼女は知らないでしょう。そんな彼女が、肩書き上とはいえ、私と並んでいることに納得がいかなかったのです」

 

 「私たちや晴柳院さんは本編でもある程度触れられていましたが、あまり個々人の“才能”が認められるに至った背景を詳しく描写していませんでしたからね。そういった部分の掘り下げは考えていなかったのでしょうか?」

 

 「一応、設定集的なところには軽く触れてありますよ。深く考えていないのはそのようですが」

 

 「むしろこの二次創作の場合は一番に考えなくてはいけないものなのではないでしょうか?キャラクターの根幹を成す部分ではありませんか」

 

 「そういう粗さが、一作目らしくていいのではないでしょうか?」

 

 「良いかどうかは分かりませんが・・・どうせならしっかり考えておいてほしかったですね。そうしたところでキャラクターに深みが出ますから」

 

 「とはいえ、私たちや晴柳院さんの設定は少々過剰な気もしますが」

 

 「そうでしょうか?」

 

 「鳥木君は、テレビに引っ張りだこで大稼ぎしている高校生マジシャン。私は世界的に活躍する歌姫。晴柳院さんは日本最大級の宗教団体の一人娘。そこまでしなくて良かったでしょうに」

 

 「穂谷さんからそういった指摘があるのは珍しいですね」

 

 「少し気になったので。“才能”次第ではありますが、世界に通用するレベルの高校生が日本に限ってそんなに何人もいてたまりますか。希望ヶ峰学園は留学生制度などで外国からも生徒を集められるのでしょう。であれば、もっと多国籍な学校になっていてもおかしくないでしょうに」

 

 「確かに、私はテレビで引っ張りだこというほどまで必要ではありませんね。時代に即して言えば、ネットで有名だとか最年少プロマジシャン程度で十分でしたでしょう。歌姫という“才能”でしたら、世界レベルにならざるを得ない気もしますが」

 

 「あまり大袈裟に風呂敷を広げすぎると、本編中でのその設定の回収が大変になりますから。私もそうです。歌や楽器が得意なことはともかく、語学力や社交界のマナーなど、そういった部分をもっと見せることができたら、と作者が反省しています」

 

 「その辺りの塩梅は、二作目を書いた後に得た知見だそうです。二作目はキャラクターの掘り下げをテーマの1つにしていたそうですが、それでも終わった後にそう感じるということは、さほど手応えを感じていなかったのですね」

 

 「なかなか上手くいかないものですね」

 

 「穂谷さん」

 

 「どうしましたか鳥木君」

 

 「先程から私たちの口を借りて作者が自問自答をしているような気がします。戻って来てください」

 

 「とうとう、話の軌道修正をオブラートに包むこともしなくなりましたね。では本筋に戻しましょうか」

 

 「情緒もへったくれもなくて申し訳ありません。終わりが近付いていて気が逸っているのです」

 

 「こんなに面倒臭そうな鳥木君も珍しいですね」


 「えー、本編は私の回想の途中でございます。穂谷さんに返り討ちにされた明尾さんが、私と遭遇するシーンです。この時点で明尾さんは、ご自身の命が幾許もないことを感じ取っていました」

 

 「私が言うのもなんですが、もう間もなくの命と分かっていながら犯人の告げたり悔しさを口にするあたり、彼女の精神力は相当なものだったようですね」

 

 「行動も結果も誤っているものでしたが、元はと言えば『裏切り者』を排除するために行動を起こしたのですから、正義感もありますからね」

 

 「そしてお待ちかねです。明尾さんが全てを鳥木君に告げ、鳥木君が私のクロの権利を奪おうと決意するシーンです」

 

 「決意と申しますか・・・この時点では何も考えられませんでした。とにかく、穂谷さんの命を救わなくてはならないと、そればかりです」

 

 「半ば放心状態だったのですね。だからここで一瞬、素が出ているのですね」

 

 「・・・はい、ここは素です」

 

 「一人称が僕になっていて、敬語もありませんから。口調が外れるほど素になっていても、その行動目的には私がいるのですね。きゃっ」

 

 「きゃっ、ではありません。そんなシーンではありません」

 

 「この時の鳥木君は殺意のために明尾さんを殺害しているというよりは、私を助けるために殺意を操っているような気がしますね。素で殺意に飲まれていないのが逆に怖いです。淡々と明尾さんに殺害の旨を伝えるところなど特に」

 

 「このときは自分が自分でないような気がしていました。もはや私にとって素の自分は自分でないのかも知れません」

 

 「そんなことはありませんよ。鳥木君はどうなっても鳥木君です。仮面を外して素のお顔を見せてください。私は、どんな貴方でも受け入れます。貴女がこんな私でも受け入れてくれたのですから」

 

 「・・・どうしてその優しさを、他の方に分け与えて差し上げないのか、不思議でなりません」

 

 「私にとって、鳥木君はそれくらい大切な人ということです」

 

 「臆面もなくそんなこと仰らないでください」

 

 「照れるなら仮面を外してください。素の鳥木君が見たいです私は」

 

 「うぅ・・・」

 

 「流れでいけるかと思いましたのに。案外ガードが固いですね」

 

 「この仮面も年季が入っていますから」

 

 「この会が終わるまでに必ず外させてみせます。覚悟の準備をしておいてください」

 

 「覚悟の準備?」

 

 「気付いたら鳥木君が明尾さんを殺害して、モノクマと会話しているシーンです。このときのモノクマは妙にテンションが高いですが、どうしたのでしょうか」

 

 「作者がモノクマのキャラクターに悩んでいる時期でしたので。本家のモノクマに似せようとしているのですが、いまいち手応えを感じていないのです」

 

 「別に黒幕の設定上、上手くできていればそれでよし、できていなくても一応理屈は通るようになっているのですから、いいではありませんか」

 

 「どうせなら本家に似せて、ということです」

 

 「そして自白しようとする鳥木君を止めるモノクマ。クロが殺害直後に自白するなんて前代未聞です」

 

 「なぜ私は、裁判が終わるまでの間に自白をしなかったのか、の答えがこのシーンでございます。裁判の終盤で私が特に反論をせず、議論の行くがままに任せていることに疑問を抱いていた読者の方もいらっしゃったでしょうから」

 

 「裁判の進行を妨害する行為を禁止するとは、まだずいぶんと抽象的な掟を定めたものです」

 

 「自白を禁ずる、としただけでは、クロが自白しようとしていることを逆説的に悟られてしまいますからね。三章の曽根崎君のような交渉材料として用いられることも懸念して、このような文章にしたものと思われます」

 

 「鳥木君が処刑されてしまえば、事件の真相は闇の中。明尾さんを殺害した時点で次に鳥木君は、クロとして処刑されなくてはいけなくなってしまったと」

 

 「ここで一番鳥木君に食らいついたのが清水君なのは、少々意外でした。彼は今回も無関心でいると思っていましたから」

 

 「二章までの清水君でしたら、真相が明らかになった後のクロに興味を持たれなかったでしょうが、三章で屋良井君の生き様と死に様を目の当たりにして、考え方が変わったようです。人の死に対して、真面目になっています」

 

 「屋良井君が清水君の成長に大きく関わっていたのですか。それも意外ですね」

 

 「屋良井君が意図した形ではありませんが、そういった部分で屋良井君は清水君の中で生き続けているとも言えますね。因果なものです」

 

 「そして・・・私はものすごく胸が痛いです。このシーンで、こんなことを貴方に言わせたくなかった」

 

 「申し訳ありません」

 

 「貴方の周りの人間が、『鳥木平助』という人間の存在を忘れ、『Mr.Tricky』だけを求めたとしても、その仮面の奥にある『鳥木平助』こそ、私が必要とした方なのです」

 

 「ですが、そんなものですよ。彼らにとって私はエンターテインメントを提供する装置でしかなかったのです。彼らにそういうつもりがなかったことも理解しています。そのことを非難するつもりもありません。仕方がないことなのです」

 

 「こんなことは間違っています。鳥木君はひとりの人間です。エンターテインメントを提供する装置などではありません。テレビの中ならまだしも、それ以外の場所でも『Mr.Tricky』を求める愚衆のせいで、鳥木君の仮面が厚くなっていってしまったのです。罪深いことです」

 

 「誰も悪くなどないのですよ。人は夢を見るもの、私は夢を見せる者です。しかし、こうした仮面の奥の素顔を見抜けるのは、同じような境遇にいた穂谷さんだけだった、ということです」

 

 「それはお互い様ですよ。鳥木君だって、私の仮面を見抜いたじゃありませんか」

 

 「ですが、望月さんのように疾患まで見抜いたわけではありません。それは穂谷さんがお話してくださったから知ったのです」

 

 「あれは望月さんの観察眼がおかしいのです。彼女は人間に興味がないと思っていましたが、そんな彼女にバレるくらいあからさまでしたでしょうか」

 

 「見る方が見れば・・・おそらく六浜さんもそのことには気付いてらしたでしょう。ですが、六浜さんのことですから、きっと黙っていてくださったんだと思います」

 

 「そして、それらを前提として、鳥木君からの愛の告白・・・」

 

 「うおおっ・・・!!」

 

 「どうされましたか?なぜ顔を伏せているのですか?」

 

 「改めて冷静にこの時の自分を見ると、言いようのない恥ずかしさが・・・!!流れがあったとはいえ、衆人環視の中でこんなことを口にするとは・・・!!」

 

 「私もこのときはそれどころではありませんでしたが、いま冷静に見ているととても嬉しいですよ。鳥木君はなかなか言ってくれませんから」

 

 「恥ずかしいじゃないですか・・・」

 

 「きゅんとさせないでください」

 

 「そんなつもりありません!やめてください!」

 

 「私のことを庇って全ての罪を背負って処刑される・・・。歪んでいるとは思いますが、これも偉大な愛の形のひとつです。悲しい気持ちばかりですが、嬉しい気持ちもあります」

 

 「その矛盾した感情が、穂谷さんの心の中で衝突して何か弾けてしまったのですね」

 

 「ええ。五章以降のアレは、半分演技、半分本気です。いくら貴方の気持ちを理解しても、貴方を喪う悲しさから逃げようとしていただけです」

 

 「・・・私が明尾さんを殺害したことで、誰も救われた方などいないのですね。ですが、後悔はしていません。これは必要な犠牲でした。貴女が生き延びるためには」

 

 「そんなことを言われたら・・・本編でも同様ですが・・・そんな顔で私に生きて欲しいなんて言われてしまったら、私はもう何がなんでも生きるしかないじゃないですか・・・!」

 

 「え゛・・・もしかして、このときの言葉が後の・・・」

 

 「うふふふふふふ」

 

 「(こっわ)」

 

 「そして遂に、鳥木君が皆さんの前で仮面を脱ぎます。私があれほど苦心しても剥がすことのできなかった仮面を、最後の最後に貴方は外します」

 

 「・・・最後はせめて、『鳥木平助』として去りたかった、それだけです。今まで仮面を付けたまま過ごしていた失礼を、せめて皆様に謝罪してからと、そう感じました」

 

 「結局、本編の中で貴方が仮面を外して話したのは、明尾さんを殺害する直前と処刑の直前だけ。こんな形で貴方の本当の顔を見ることになるだなんて、思いませんでした」

 

 「申し訳ありません」

 

 「違うでしょう」

 

 「へ」

 

 「仮面を付けたままの謝罪など失礼ですよ。申し訳ありません、は『鳥木平助』さんの言葉ではないでしょう」

 

 「ぐぬぬ」

 

 「そんな顔してもダメです」

 

 「・・・ご、ごめんなさい・・・ほた」

 

 「円加」

 

 「・・・・・・ごめんなさい。円加さん」

 

 「よくできました♬」レコーダーポチー

 

 「はっ!?なんですかそれは!?」

 

 「なかなか二人きりのときも仮面を外してくれないんですもの。おまけに下の名前で呼んでくれる機会なんてそうそうありませんわ。これはちゃんと録音しておいて、毎日寝る前に聞くんです」

 

 「毎夜私に謝罪させないでください!安眠効果はありません!というかいつの間にレコーダーを!?」

 

 「そろそろ処刑のシーンが来るな、と思っていたところからです」

 

 「思ったより早い!さっきまでの雰囲気はなんだったのですか!?嬉しいのか悲しいのか分からないんじゃなかったんですか!?策謀渦巻いているではありませんか!」

 

 「忘れたのですか?私は、『卒業生』ですよ」

 

 「忘れていたつもりではありませんでしたが忘れていました・・・不覚」

 

 「おほほ。さ、今回の目的はもう果たしました。後は流しましょう」

 

 「この後は私の処刑シーンです!!ある種見せ場なので流さないでいただきたい!!」

 

 「と仰いますがね、誰が好き好んで愛する方の処刑シーンをじっくり解説したいと思うのですか。特殊性癖の中でも白い目で見られがちな部類でしょうに」

 

 「仰りたいことは分かりますが、あくまでパラレル。こちらは本編とは関係ない平和な世界線ということなので、何卒」

 

 「ええ・・・鳥木君はそんなにご自分の処刑シーンで語りたいことがあるのですか?変態ですか?」

 

 「語りたいことと申しますか・・・反省点はいくつか」

 

 「貴方が何を反省することがありますの?」

 

 「色々ボツ案があったのでございます。迷いに迷った挙げ句、最終的には原作の千本ノックと似たような形になってしまいましたが、本当はもっとマジシャン感を前面に押し出した形にする予定だったのです」

 

 「それは鳥木君ではなくて作者の反省では・・・」

 

 「今は語れる口が私たちしかおりませんので」

 

 「私はいま誰と会話しているのでしょう」

 

 「元々は脱出マジックの変形でですね」

 

 「あー、よくあるヤツですね。余所の創作論破でマジシャン系の“才能”の方が処刑されるときに一番よくある例のパターンですね」

 

 「うんざりしないでください!確かに多い感は否めませんが!」

 

 「どうせあれでしょう?箱の中に入って剣で滅多刺しにされて、フタを開けたら血だらけの剣だけ残っていて誰もいなくて、瞬間移動もしているという。瞬間移動先で磔などにされていると雰囲気が出ますね」

 

 「全部言われた!?なんですかそのセンス!?」

 

 「だいたいこんなものでしょう。あるいは脱出マジックに失敗して溺れてしまうか猛獣に食べられてしまうか・・・いずれにせよ大差ありません」

 

 「ここまであっさり言いたかったことを言い当てられてしまうと、まるで私がマジックに引っかかったような気さえしてきます」

 

 「で、そのやりたかったおしおきはなぜ没になったのですか」

 

 「文章で表現しづらいからです」

 

 「やっぱりその問題でしたか。努力をなさい努力を」

 

 「おしおきというのはやはりテンポだと思うのです。冗長な文章によるおしおきも演出としてはありだと思いますが、一般的には短くスパッと記述してしまった方が、処刑の呆気なさや無機質さが表現できると思うのです」

 

 「自分の処刑シーンを肴に何を言っているのでしょうかこの人は」

 

 「ですから、ボツ案の方はやはり要素が多く長くなってしまいそうだということ。あとはマジシャンと聞いてすぐに思い付きそうな内容だったので」

 

 「後者の理由の方が大きくないですか?」

 

 「ですから、本編のようになりました。こちらもそんなに上手くできたわけではありませんが」

 

 「磔にされてトランプで肉を削がれるというものですね。中学生のおしおきですか」

 

 「急に辛辣!!?」

 

 「実際、トランプのように薄い紙でケガをすることはありますから、取り扱いには十分注意していただきたいですね」

 

 「言葉の力の落差で風邪を引きそうです」

 

 「剣刺しマジックや瞬間移動マジックが在り来たりだからと言って、トランプでの処刑というのもあまり派手さに欠けますね。仰っていたように、千本ノックと似ていますし」

 

 「体を削がれる痛みというのは豪速球をぶつけられるのとはまた異なりますが、やはり延々続けられるというのは想像を絶する痛みです」

 

 「最後にナイフで心臓を突き刺していますしね。そこはマジックというよりステージパフォーマンスなのでは?サーカスか何かでしょう」

 

 「それを意識してはおります。あとは、シルクハットから噴き出したトランプから狙った一枚だけを貫くマジックも」

 

 「ああ。あれですか。伝わらないですね」

 

 「伝わっていないと思います」

 

 「鳥木君もああいったマジックはされるのですか?私に見せてくれたのはテーブルマジックでしたから、大きなステージでやるには地味に思えましたが」

 

 「テーブル用とステージ用でそれぞれ準備をしております。ステージでやる場合であれば、やはり目当ての一枚を貫いたり、トランプを飛ばして大きく動きを付けることが多いですね」

 

 「マジシャンの方はやはり、トランプゲームでもイカサマし放題なのでしょうか」

 

 「いえ、ああいったゲームはイカサマができないようにきちんとルール作りがされているので。ですが、ディーラーになればできないこともないと思います。意図してシーソーゲームを演出するなどは、何も難しいことはありません」

 

 「十分すごいと思いますね。二作目の彼女とイカサマありのゲームに興じていただきたいです」

 

 「やめてください。そういうことを仰いますと、また新しく書かなければいけないことが増えて作者の負担が増えます」

 

 「増やせばいいのです。潰れるくらいに増やして入院させてやりましょう」

 

 「もうしてますから!作者への悪意が強い!」

 

 「私たちをあんな目に遭わせておいて、良い印象を持たれていると思う方が間違いなのです」

 

 「そうですね。私も好ましくは思っていません。黒幕も同様ですが」

 

 「黒幕の話はもう少し後になってしまいます。少なくとも私たちはあんな人の話題に花を咲かせるつもりはありません。穢らわしい」

 

 「あ、私の処刑が終わっています」

 

 「なんとかやり過ごしましたね。正視していたらどうなっていたか分かりません」

 

 「そんなギリギリの状態だったのですか。正気を保てたようで何よりです」

 

 「それで、処刑の後にまたひとくだりあるのですね」

 

 「もう佳境ですので、処刑後のやり取りも重要でございますよ。ここでは、四章の事件の遠因ともなった『裏切り者』の正体が明かされます」

 

 「明かされると言っても、読者目線では次話までお預けでしょう」

 

 「はい。ですので解説編でも、『裏切り者』の正体は次回への引継ということで」

 

 「今更そこを忠実にする意味があるのですか?既にこれより前の解説編で散々言及していたような気がしますが」

 

 「これもポーズです。せめてそこだけはしっかりしておかないと」

 

 「モノクマもよく分からないことを言っていますね。希望のために絶望してほしいと。つまり、今回のモノクマの目的は絶望ではなく、希望にあるということですね」

 

 「はい。黒幕の正体を御存知の読者様方ならばその意味がお分かりいただけるかと思いますが、QQの黒幕にとって絶望は手段であって目的ではありません。ですからモノクマが最終的に求めるものも、希望でございます」

 

 「ここで敢えてそのことに言及するということは、『希望の徒』に関するミスリードも少しあるのでしょうか?」

 

 「そうですね。謎の集団というのはダンガンロンパシリーズでは黒幕関係と勘ぐられる運命です。『希望の徒』もなかなかこじれている集団ではありますが、黒幕となるほどの力はありません」

 

 「その辺りも、次回以降の解説に回して差し上げましょう。私たちが解説するのはここまでです。ようやく終わりです」

 

 「長い時間、お疲れ様でございました。お茶をどうぞ。お茶菓子もございます」

 

 「やはり言えばなんでも出て来るこの空間は便利ですね。今はふかふかのソファとレモンが一切れ浮いた紅茶がほしいです」

 

 「言いながら出現させている・・・なんらかの能力者のようにも見えます。完全にこの言ったもん勝ち空間に馴染んでいますね」

 

 「言えば出て来る空間には慣れていますので」

 

 「慣れているものの次元が我々とは違います。さすがです」


 「さて、鳥木君。もう私たちが担当する全ての解説が終わったようですね」

 

 「はい。QQ四章の学級裁判編からおしおき編までの解説は以上で終了でございます。穂谷さんも長い時間解説お疲れ様でしたが、ここまでお読みいただいた画面の前の皆様もお疲れ様でございました。長い時間お付き合いいただきありがとうございました」

 

 「まさか途中でしおりを挟んで時間をおいてから読んだ、というようなことはありませんよね?一気読みですよね?この私と鳥木君が解説しているのですから」

 

 「どういう圧のかけ方ですか」

 

 「さて、やることもやったので、この後は私と鳥木君の甘い一時をお送りします」

 

 「お送りしないでください!なぜ公開の下でいちゃつきたがるのですか!」

 

 「別にそういう癖はないのですが」

 

 「これ以上続けると本当に皆様にお見せできない事態になってしまいそうなので、早い内に畳んでしまいましょう」

 

 「後は私たちだけのお楽しみですの」

 

 「含みのある言い方をしないでください」

 

 「それではお別れの挨拶です。ここまでの一気読み、ご苦労様でした。次回はあのコンビが登場しますわ」

 

 「あのコンビ・・・と言いますか、よく分からない組み合わせではありますが」

 

 「毎回思うのですが、次の解説コンビを知っている体のときと知らない体のときがあるのはなんなのでしょう」

 

 「演出の都合です。もう残りの解説回数も少なくなってきております。あと4組ですので、まだ二度目の解説をしていないメンバーを考えれば組み合わせも自ずと分かるかと」

 

 「えっと・・・あら?あと4組なのに7人しかいませんが?」

 

 「はい。もちろんそちらの組み合わせも考えております。もう少し先になるかと思いますので、お待ちいただければと思います」

 

 「謎の組み合わせだと会話のテーマに困るのですよね。私たちのように本編でしっかり関係性ができあがっているような関係であれば、会話も弾むというものですのに」

 

 「ですが、穂谷さんは前回笹戸君と上手くやれていたと思いますが」

 

 「彼の根っからの下僕根性のおかげで私ものびのびできました」

 

 「嫌な羽の伸ばし方です」

 

 「そういう鳥木君も、有栖川さんとよろしくやっていたそうではありませんか。本編ではほとんど絡みなどなかったでしょうに」

 

 「あだ名を付けられたり敬語を外させられたり大変でした・・・」

 

 「敬語を?私には終始敬語を使っていたのに、有栖川さんにはそんな簡単に敬語を外してフランクに話していたのですか?」

 

 「あっ」

 

 「へー、そうですか。鳥木君は私より有栖川さんと仲がよろしいのですね。そうですか。本編でも解説編でもこうしてご一緒していたというのに、全部私の一方通行の気持ちだったということですか。残念です」

 

 「そういうわけではなく!有栖川さんの圧に負けてしまったと言いますか・・・決して穂谷さんと区別しているわけでは!」

 

 「区別はしてください。彼女より私を大切にしてください。そして敬語を外してください。外しなさい」

 

 「もう終わりだと思って手段を選ばなくなってきました」

 

 「もう終わりなのですから、敬語も今くらいは外していいでしょう。私も外すカラ」

 

 「慣れてなさが語尾に滲み出ています」

 

 「外しテヨ」

 

 「穂谷さんが外すなら・・・で、では、皆さん、ここまで読んでくれて本当にありがとうゴッ、ありがとう」

 

 「このままお別れヨ。またの機会に会うわネ」

 

 「ステレオタイプの中国人みたいになってる・・・えっと、ここまでのお相手は。“Mr.Tricky”こと鳥木平助と」

 

 「“笑顔が素敵な世界の歌姫”穂谷円加」

 

 「の二人でお送りしました。それではさようなら」

 

 「最後に敬語に戻りましたね?私の勝ちです」

 

 「もうそれでいいです」




QQ解説編です。四章後編の解説はこの二人を置いて他に誰がしましょうか。
本編と全然キャラが違いますが、ひとつ楽しんでください。
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