「……アーサー殿は【魔物】っという存在を知っているでござるか?」
「【魔物】?」
アーサーはダルキアンに聞き返す。
「やはり、こちらにきて間も無いアーサー殿は知らなかったでござるな……」
ダルキアンはそう言って魔物について説明し始めた。
「アーサー殿は戦を経験しているでござるから知っているとは思うが、フロニャルドでは加護が働いていて、その加護の中なら死なずにけものだまになるでござる」
「それはビオレさんに説明してもらったよ」
「しかし、例外があるでござる」
ダルキアンは険しい顔をする。
「それが魔物ってこと?」
アーサーがそう聞くとダルキアンが頷く。
「魔物はフロニャ力が弱い場所に生息しているでござる。追剥ぎウサギのような野生動物扱いできるものから国を滅ぼすほど凶暴なものまで幅が広い……魔物の多くは呪いに見舞われた悲運な存在とされるでござる。魔物化は土地神や精霊の病気であり正しい治療をすれば必ず治るらしく、一例として禍太刀が原因の魔物なら抜けば治ることを挙げているでござる」
「なるほど……フロニャ力が弱い所で魔物に襲われたら死ぬ可能性が出てくるってことね。それで禍太刀っていうのは?」
聞いたこともない刀についてダルキアンに尋ねる。
(禍太刀っていうからには相当厄介な代物だろう、魔剣とかそこらの類いだろうな……)
「ああ、禍太刀というのは……
ダルキアンが説明仕掛けた時、割り込むように別の声が遮った。
「それは俺が説明しよう」
声のする方に顔を向ける。
「兄者!!」
「よう、ヒナ」
そこにいたのは和装に身を包んだどことなくダルキアンに似ている男だった。
「兄者! 何故ここに? いつ帰ってきたでござるか!?」
「まあ、まて。とりあえず中に入れてくれないか?」
男はそう言って茶の間に入ってくる。そのままアーサーの目の前に腰を下ろす。
「えーっと、この人は?」
アーサーが男を見て尋ねる。
(佇まいから見て相当の使い手だなー。ダルキアンも兄者と呼んでいたから血縁者だろう)
そんな事を考えながら誰かの反応を待つアーサー。ノワールも知らないらしく同じように待っている。
「その方はイスカ・マキシマ殿でござる」
ユキカゼがそう答える。
「そして不敬ながら拙者の実の兄にござる」
続けてダルキアンが答える。
「ん? でも、名前が違うけど……」
「ブリオッシュ・ダルキアンという名はビスコッティに来たときに姫様から頂いた名で本名は……」
ダルキアンが恥ずかしそうに下を向く。
「本名はヒナ・マキシマというにござる」
頬を赤らめてダルキアンがいう。
「へー、ヒナっていうんだ今度から僕もそう呼ぼうー」
アーサーがニッコリ笑ってダルキアンを見る。
「アーサー殿、それは恥ずかしいからやめて欲しいでござる……」
ダルキアンは中性的で長身という容姿から凛々しいといった雰囲気がある。だからヒナっと呼ばれる事に少なからず抵抗があるのだろう。
「いいじゃんー。ヒナって名前僕は可愛いと思うよ」
アーサーはもうヒナっと呼ぶ事に決めたようだ。
「……もういいでござるよ。好きにするでござる〜」
ヒナは諦めたようにそう言った。
「という訳で、イスカ・マキシマだ。よろしくアルトリウス・ペンドラゴン殿」
イスカはそう言ってアーサーに手を差し出す。アーサーはそれを握ると笑顔で言った。
「こちらこそ、僕の事はアーサーでいいよ。代わりにイスカって呼ばせてもらうね」
「ああ、構わない。よろしく、アーサー。それにノワールもよろしく」
「うん。よろしくイスカさん」
お互いに自己紹介を済ませて話を元に戻す。
「それで? 禍太刀って一体なんなの?」
「そうだな禍太刀……それは魔物の一種で刀や剣の形をしているんだが、発生源はわからないが土地神などに刺さると凶暴な魔物に変えてしまう恐ろしく厄介な代物だ」
「シンクが初めてここに来たときに倒した魔物もこの禍太刀によって魔物に変えられてしまった土地神だったでござる」
ユキカゼがその時の事を思いだしたのか、悲しそうな顔でそういった。
「そういうわけだ、魔物それに禍太刀には充分気をつけてくれ」
イスカは真剣な顔でそう言った。
「わかったよ。その話をするために僕達をわざわざ呼んだ訳ね」
アーサーはそう言ってヒナをみる。
「そうでござる。魔物は危険な存在にござるからな」
「そういえば、ヒナって討魔の剣聖とか言われてたけど関係ある?」
アーサーはふとヒナの2つ名を思い出して尋ねた。
「それは拙者とユキカゼが魔物退治をしている旅の最中、いつの間にかそんな呼び名がついていたにござるよ」
「そういう事ね〜、それにしても魔物が危険な存在っていうのはわかったから魔物の対策もしっかりやっておかないといけないね」
(これから魔物関係で何が起こるかわからない以上迅速に対応できるように何らかの対策を打たないと)
するとノワールが手を挙げた。
「アーサー。その事何だけど、わたし前の一件以降、魔物の対策として国王姉弟から魔物対策機関の立ち上げを打診されてて、その一環としてシンクやエクレール、ユキカゼと合宿したりして、魔物の対策についてはやってるんだ」
ノワールがそう言ってアーサーをみる。
「へー、もう対策はしてるんだ、なら魔物関係はノワールに任せるね。僕もそれなりにやれる事はやるつもりだから」
アーサーは綺麗な笑みをノワールに向ける。
「それでお願い何だけど、ヒナかイスカに魔物退治の技術教わりたいんだけど……駄目かな?」
「いんじゃないか? だが、俺は教える方は苦手なんでね。ヒナに教わるといい」
イスカがヒナをみる。ヒナはイスカを軽く睨んでにこやかな笑みを浮かべるアーサーに目を向ける。
「わかったにござる、拙者の出来る限りの事は教えるでござる」
「ヒナちゃんならそう言ってくれると思ったよ」
「ヒナはまだしも、ちゃん付けはやめるでござる〜!」
皆んなに笑いが起きる。
「拙者も手伝うでござる〜」
ユキカゼがそう言って笑う。
「ありがとう、ユキカゼ。助かるよ」
アーサーはユキカゼの頭を撫でると笑ってそう言った。
こうしてアーサーの風月庵訪問は無事に行われ、魔物に関しての対策を取れる事になったのだった。