藍はなぜ橙を創ったのか。
そんなシリアスなお話。
シリアスが嫌いな方もお帰りください。
「藍様。橙は式神だと聞きました。なぜ橙は生まれたのですか?」
唐突に私の式神である橙はそう言った。
人間ならば神が貴方に命を授けなさったのですよなどと言えるが、
式神は違う。なぜなら私が創ったからである。
「私がお手伝いしてくれる人がほしいなぁと思って、橙を創ったんだよ」
「じゃあ、橙にも式が創れるのですか?」
「それは…」
”なぜ橙は生まれたのですか?橙にも式が創れるのですか?”
その質問達は私の昔のかすれた記憶のビジョンを呼び覚まし、その苦痛に私は倒れた。
…私はなぜ橙を創ったんだ・・・?そもそも式には何か核となる”何か”がいるはず。
その何かをつかもうとした途端、私は眩しい光と聞きなれた声に包まれた。
「もう…藍ったら、急に倒れて。式が解けちゃったのかしら?」
目を覚ますと、布団の上で私はあおむけで寝ていた。
「いえ、そうではないようです。紫様。」
実は私も式神であり、紫様にお仕えする身である。
「橙のことかしら?」
「そのようです。今朝、なぜ橙を創ったのかという質問をされまして」
紫様はため息をついた。
「藍。式神を創るには何か核がいることは貴方も知っているはず。
橙の核は貴方にとってとても重要なものだったわ。
そしてそれはあなたと橙に異常をきたしているのよ」
私と橙に…?
「それは核が橙に影響していると?」
私は一番恐れていることを質問した。
「ええ、そうよ。あなたは早急に決断しなければならないわ。あの時のように」
紫様は私の額に指をあて、私の過去を暴き補填した。失われた過去を。
遠い昔、動物好きだった私は一匹の猫を溺愛していた。
黒い体毛に太陽の光が綺麗に反射するので、橙と名付けた。
だがそんな楽しい日々は続かなかった。
私は式、妖の類だ。橙はその妖気に耐えられず、どんどん衰弱していった。
さまざまなことをした。薬を飲ませたり、心身を清める泉にもいった。
だが、延命することにしかならず、より橙を苦しませることとなった。
私は私を憎んだ。自暴自棄になり、ただ茫然と打ち込まれた式に従う中身のない式神となった。
そんな時紫様は、こう言った。
「あなたは今ここで立ち止まるの?限界は今かしら?
私の友達にも限界なんてないって常識を覆そうとした人がいたわ。
最初は私も無理だと思ってたわ。だけどどんな困難にもくじけず、戦い続けた彼女は、
最後の最後に限界を超えたわ。だからあなたにもできるんじゃない?」
私は必死で橙を助ける方法を探した。だが妖気を抜く方法などなかった。式にする以外は。
しかし式にするには問題があった。式の核である。
橙の核となるもの、つまり思いのこもったものはなかったのだ。
でも、橙は助けたい。だから私は私の記憶を使った。橙の核に。
流れる川のような記憶は途絶え、私は現実にふり戻された。
「橙は今記憶の混濁を起こし、妖気が式に侵食してるわ。これ以上は無理よ。」
「核である記憶にも妖気があったというのですか!?」
障子越しに橙の声のうめき声が聞こえる。
「誰もやったことのないからイレギュラーは存在するのよ。
橙を殺しなさい。それとも新たな最適解をもう一度作りなさい」
橙を殺す。その言葉は鋭く私に突き刺さった。
私は必死で考えた。橙のいる庭までの数メートル、あらん限りの記憶をたどった。
「藍…様。橙は…」
橙は助けを乞うように私にすがる。その声が昔の記憶と重なり、焦りが増す。
殺す、殺す、と私の中で同じ言葉がりんしょうする。
「ごめんね。橙。式が壊れちゃったみたい。ちょっと横になってね。」
橙は素直にあおむけに寝て、目を閉じる。
…ごめんね。橙。
「少しは主を頼ったらどうなの?」
後ろから、紫様が私を蹴飛ばす。
「ですが橙は…」
「全く。変なところは従者ぶって。
私が橙の記憶をとりだすわ。あとは任せる」
「わかりました」
その言葉は私に0.1%の決断をさせるのに十分だった。
紫様の手が橙の体に触れ、そこから淡いオレンジの光が漏れだす。
橙の記憶は丸く小さな雛のようだった。
「今までありがとう。信じてるよ」
「…私は?」
「あなたは橙。私の式よ」
「なぜ橙は生まれたのですか?」
その言葉は繰り返される。
ちょっとぐだぐだしちゃったかもですね
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