スカイリム~廃人達の生き様~ 作:荒ぶるメタボ
あの後ホワイトランに戻った俺たちは、実に気が進まないが、旅支度を整えてソリチュードを目指すことになった。実に気が進まないが。
こうなった元凶のマックミラーノと一緒に。
ヴィジョンの口添えもあって、3000ゴールドを支払って指名手配を解除してもらったマックミラーノは上機嫌で市場を回っている。
懸賞金は消えても前科持ちなので、住民の視線は痛いが。
「水銀のインゴット?そんな物はない。ショールの髭にかけて、何も買わないのなら立ち去ってくれ。仕事の邪魔だ」
スカイリム一の鍛冶師、エオルンド・グレイメーンはそう言ってこちらに目もくれず金床に鎚を振り落とす。
参ったな、同じ鍛冶屋のエイドリアンや雑貨屋のベレソアも見てきたけど、どこも水銀のインゴットは売り切れ中だ。
これからのことを考えると何としてもアレは作っておきたかったんだが。
「まぁ、無いモンは仕方ないだろ。それはそうと水銀のインゴットって物理法則無視してるよなぁ」
「済まないが僕も持ち合わせがないな。鉄や鋼のインゴットなら沢山あるんだが……」
申し訳なさそうに頭を下げるマックミラーノ。
俺はあの後何度も男だと言い聞かせたが、こいつはまるで聞く耳を持たない。
今もレディをエスコートするのは紳士のなんちゃらで俺の斜め前を歩いている。こっちまで住民に睨まれてるからマジで勘弁して欲しい。
結局俺達はバルグリーフから貰ったドゥーマー装備を武器屋に売り飛ばして、食料と、クロスボウに使うボルト、食料の保存用に氷の塩鉱石を買って、日が高いうちにホワイトランを発つことにした。
「ソリチュード?3人で20ゴールドだ、金があるんなら乗ってきな。俺の馬車ほど安全な移動手段はないよ」
馬車の上でいい男座りしていた御者はヴィジョンと俺に目を流したあと、マックミラーノを視界に留めると露骨に愛想を崩した。
20か、ドゥーマーの斧が400ゴールドで売れたので全然金に余裕がある。
「ここは私が払いますので、後でそれぞれ6ゴールド渡してください」
「アーカーシャさんが払うなんてとんでもない!ここは僕が払うよ」
言って、懐に手を入れるマックミラーノ。
理由が気に食わないが、そもそもの元凶が支払いを買って出るなら止める理由もない。
金貨20枚の入った袋をマックミラーノから受け取った御者は俺とヴィジョンを見比べたあと、機嫌悪そうに馬車を出した。
俺を馬車に載せたマックミラーノに対し、御者が「爆発しろ」とか抜かしてたが、残念ながら俺たちはそんなリア充な集団じゃないぞ。
なんせ全員中身野郎だからな。
「という事で6ゴールドだ、ヴィジョン」
「いやいやいや、なんでこいつはいいのに俺は払わにゃならんのだ!?」
「当たり前だ、レディに金を払わせるなんてそんなマネできるか」
「なら俺も払わなくていいだろ」
「あいにくとニューハーフは割引対象外でね」
……さらりと痛いこと言ってくれるなこのヘタリアンは。
渋々金貨を取り出したヴィジョンからひったくる様に奪うと、それまでゴミを見るような目だったマックミラーノの表情が一変、気持ち悪いほど親切に話題を振ってきた。
いくら弁解しても都合の良い解釈つけて俺を女の枠に嵌めようとするのはこの2日間痛いほど痛感してるので、もうシカトを通すことにした。
決して旅賃の6ゴールドが惜しいからではない。
慣れない馬車旅でヴィジョンがリバースし、俺もいい加減ケツが痛くなった頃、急に馬車は止まった。草原のど真ん中で。
「手施しをしに来た」
鋼の鎧を身に纏った3人の悪漢に止められて。
「ちょっとちょっと、何馬車を止めてるんだい!?こういうのは無視するモンじゃあないのか!?」
「か、勘弁してくれよお嬢さん!山賊ならいざ知らず彼らは傭兵だ、こんな商売をしてる身の上、下手に恨みを買えないんだよ……」
ヴィジョンの抗議に対し申し訳なさそうにする御者だが、その目は愉悦に満ちていた。
何故なら傭兵たちの狙いはマックミラーノだからだ。
「マックミラーノだな?ロレウス農園のロレウスが大怒りだ、作物を根こそぎ盗んだこそ泥にお灸を据えてこいってな」
「おいおい、泥棒だなんて人聞きの悪い、そんな物騒な物はしまってくれよ。
ここに1000ゴールドがある、ロレウスに渡してくれないか?お釣りは手間賃として取ってくれて構わないよ」
マックミラーノのやつ、余裕たっぷりに下手に出てるぞ……
まぁ、あんな筋肉隆々の強面三人に説得(威圧)されたら俺でもビビるけど。
差し出された袋を揺らして、オークの悪漢はニタリと顔を歪めた。
「どうせこれもどこかから盗んだ金だろ?よし決めた、お前を殺して盗まれた物を全部取り戻す。
聞けばファルクリースで12000もの懸賞金が掛かってるじゃないか。お前の首を差し出せばさぞ良い値になるだろう、なッ!」
「オーマイガーッ!なんという野蛮で非文明的な!
よしわかった、これもおまけで付けよう、エンチャント付きの指輪だ。中々目にかかれない逸品だぞ…………ああっと!!」
聞く耳持たず、といった風で傭兵たちが次々とマックミラーノに襲いかかる。殺す気じゃなかったら俺も加勢していたところだ。傭兵たちに。
……流石に危ないので、加勢しようとして御者に引き止められた。
「やめた方がいいお嬢ちゃん、あいつらの狙いはあくまでもそこのチャラ男だ。
手を出したらあんたも狙われちまうぞ」
「そうしたいのは山々ですが、一応仲間ですので」
傭兵達の気が済むまでボコらせて、後から蘇生魔法で復活させるという手もあるけど、首を持って行かれて蘇生できるとも限らない。
何より無防備なヘタレを3人掛りでリンチする傭兵達が気に入らないので、実力行使で止めることにした。
御者とヴィジョンの制止の声を背中に、刀を置いて馬車から飛び降りる。
こっちに気づいた傭兵の一人が下卑た顔を近づけてくるが、好都合。
「なんだ嬢ちゃん、こいつの仲間か?だったら……」
『吸血鬼の誘惑』
洗脳魔法を掛け、そいつの仲間の方を顎でしゃくると、それだけで理解した傭兵は味方に牙を剥いた。
「ゴルァ!てめぇらお嬢様の連れになにしてくれとんじゃわりゃ!!」
「うぉぁあぁ!?が、ガイジーてめぇいきなり何しやがる!?」
洗脳された仲間に襲われ、傭兵の二人がどよめく。その隙を逃さず「テレキネシス」でそいつらの武器を奪い、あらぬ方向に投げ捨てた。
「お前の仕業か!くそ、舐めやがって――」
案の定殴りかかってきたノルドのおかげで時間が止まった。
素早く懐に飛び込み肘で脇腹をど突く。俺は素人なので念の為に4発追加しとく。
「ごばぁぁん!!」
「な、何が起きたんだ!?おいしっかりしろ!ぐっ、ガイジー血迷ってる場合か!」
「ええ、血迷ってる場合ですよ。さて、残りはあなただけですけど……どうします?」
「くっ、降参だ!見逃してくれ!」
武器を奪われ、一瞬で仲間を二人も失って流石に部が悪いと判断したのか、一番体格の良いリーダーっぽいレッドガードは膝をついて降伏の意を示す。
それを唖然と見守るマックミラーノの手を引いて馬車に戻る。
空いた口が塞がらない御者だが、俺と目が合うと慌てて馬車を出した。
「さっきは助けてくれて本当にありがとう!僕の為にあんな怖そうな相手に立ち向かうなんて君はなんて勇敢な女性なんだ!」
「……もう一々突っ込むのも面倒臭いです。勝手に勘違いしててください」
「つーか雇いの悪漢送り込まれるとかどんだけ?少しは俺を見習ったらどうよ。
懸賞金3000のお前が支払いだけで済んだのもひとえに俺の人徳のおかげだぜ?」
人徳の部分を強調するヴィジョン。否定はしないけど自分で言うなよ……
何か言い返そうとマックミラーノが口を開きかけた途端、またしても馬車が止まった。
「手施しをしに来た」
「ちょwwwお前またかよwww」
「ウッドエルフのヴィジョン!吟遊詩人のミカエルがお怒りだ、男を舐めてるとどうなるか思い知らせてやる!」
どうやら今度はお前目当てらしいぞ、ヴィジョン。
抜刀した傭兵が一斉に斬りかかってくる。それをギリギリで躱したヴィジョンは身を屈めると、一瞬で透明になった。
……“隠密”のスキル、影の戦士か。
「ぐぁぇ?!」
押しつぶしたような悲鳴をあげて傭兵の一人が倒れる。
そいつの鳩尾に拳をめり込ませていたヴィジョンは再び身を屈めて姿を消し、パニックになった残りの二人も一瞬で伸した。
「す、すごいなお嬢さん……あんたアサシンだったのか!」
御者に憧憬の眼差しを向けられ、胸を張るヴィジョン。
サングインの瞳で姿が見えてたが、スクワットしながら敵に迫る変態だぞそいつ。
「で、人徳がなんだって?」
「……ミカエルの野郎、帰ったらブッコロす」
どす黒いオーラを放つヴィジョンに気圧されて、無言で進む馬車。
しばらくしてまた止まった。
「手施しをしに来た」
「だそうですよ、ヴィジョンさん」
「なぜに俺!?さっきのはたまたまで普通どう考えてもこいつだろ!」
「お前がアーカーシャだな?ファルクリースの衛兵隊長が迷子の子エルフを引導してくれってな」
うわ、今度は俺ですか。というかまだ諦めてないとか粘着質にも程があるだろう衛兵達。
目の前で止まった傭兵の両手剣を蹴り飛ばしながら、毒づく。
一瞬で懐に潜り込まれ、動揺する傭兵の顎を刀の柄でド突き、そのまま後ろの弓兵に躍りかかる。
力と体格差で一撃とは行かないものの、相手の攻撃は全然当たらないので、余裕を持って一人ずつ泣くまで殴っていく。
「参りましたーーッ!!」
一目散に逃げていく傭兵達。
御者は今度は何も言わず無言で馬車を出した。
「さて、これで三人共雇いの悪漢を送り込まれた訳だが」
ゲンドウポーズを取りながら仕切るヴィジョン。
その隣で羊皮紙を広げたマックミラーノが膝を抱えてガタガタ震えている。
馬車は止まっている。馬もろとも御者が死んだから。
「普通こうですよね、昼間堂々真正面から突っ込んでくる方がおかしいんですよ」
俺の目の前には地面に突っ伏して尻尾を揺らす、黒い全身タイツのアルゴニアン。
暗殺者ギルド、闇の一党が派遣してきた暗殺者達だ。毒矢で御者と馬を仕留め、透明化の魔法を掛けたまま襲ってきたこいつは麻痺の毒であっという間にヴィジョンとマックミラーノを無力化させた。
そのままターゲットを始末すればよかっただろうに、何をトチ狂ったのか俺を狙ってきたので、逆に返り討ちにした。
手加減なしで、心臓を刀の一刺しで。
……初めて人を殺した感触に動悸が止まらない。
でも近くにもっと取り乱した人がいるお陰か、俺は冷静でいられた。
「ひ、他人事だと思って気楽に冗談かまさないでくれよ!
こっちは命を狙われてるのに!……まずいぞ、今回はアーカーシャさんがいるから何とか助かったけど、こんなのが続いたら僕は……!」
暗殺者の持っていた手配書に名指しで書かれたマックミラーノが取り乱してくれたお陰で。
「大丈夫ですよ、マックミラーノさんにはペリナルがついてるじゃないですか。
……それにもし死んでも、私Modで復活魔法を習得しているので、多分大丈夫です」
「復活魔法……?」
意味がわからない、という風なマックミラーノにわかるように、リザレクションの魔法を装備して、馬と御者を復活させる。
「う……一体何が起きてるんだ?」
「ちょっと闇の一党に襲撃されまして。危ないので戦いが終わるまで気絶させて貰いました」
復活魔法のことはあまり知られたくないので、適当にボカす。と、御者の顔が見る見る青ざめていった。
「や、闇の一党だって!?お嬢ちゃん達そんなおっかない連中に目を付けられてるのか!
……わ、悪いがここで降りてくれ。金は返す、だからこれ以上俺を巻き込むのはやめてくれ!」
「おいおい、そりゃあないだろ!復活させて貰っておいて危ないからって自分だけ逃げるのか!?」
「復活……?」
「ヴィジョン!……どうぞ行ってください。こんな騒ぎに巻き込んでしまい申し訳ありませんでした」
復活というキーワードを聞いて、自分の服に空いた血塗れの穴を見て御者が目を見開く。
折角伏せていたのに、余計なことを……
俺の謝罪を聞いて御者は目を瞬かせ、ハッと我に返ったように馬を駆って逃げ出した。
「こんな荒野にレディを置き去りにしていくなんて、男の風上にも置けないやつだ……」
「まぁ、行っちまったモンはしょうがないわな。そろそろ日が暮れるから、野宿の準備をした方がいいぜ?」
恨めしそうに馬車を睨みつけるマックミラーノを他所に、割り切ったヴィジョンは荷物の中からキャンピングセットを取り出す。
本当はマックミラーノのポットの中が一番安全だが、エルフ大嫌いペリナルさんが中を陣取ってるので、下手に入ったら瞬殺されかねない。
時間掌握Modで物理攻撃は見切れるが、魔法攻撃に対しては作用しないので、またあの白いビームを出されたら躱しきれる自信がない。
「じゃあ僕は食材を取ってくるよ。ポットの中から」
「ああ頼むわ。そんで飯食い終わったら中に入ってろ、お前を狙って賞金稼ぎや荒くれや闇の一党がわらわら寄るからな。
下手に外に出てると俺たちまで巻き添え嫌いかねん」
突き放すような態度のヴィジョンにマックミラーノは何か言いかけたが、俺を見て押し黙った。
俺としてもヴィジョンに賛成だけど、幾らなんでも言い方キツすぎないか?
……命を狙われているとわかれば普通の反応か。
時空掌握のせいでイマイチ危機感を覚えられないけど、考えてみれば俺は今、いつ死んでもおかしくない異世界にいるんだよな……
「なんだよ、ボサッとつっ立って……立ったまま寝てるとか器用なオチじゃないだろうな?」
「いいえ、ちょっと黄昏てただけです」
帰れないと断言されたけどサングインのことだ、からかってるだけかも知れない。
今深く考えてもどうにかなる事じゃないし、メリディアの依頼を完遂して機嫌が良くなったところを尋ねるとして。マックミラーノ入のポットをテントの奥に押入れ、俺は眠りに就いた。
“アーカーシャ”
“種族:スノウエルフ”
“レベル:25”
“体力:250 スタミナ:100 マジカ:180”
“攻撃力:300 守備力:200”
”効果:このクリーチャーが攻撃対象になった時、場に存在する他の全てのクリーチャーの攻撃力と守備力を0にし、相手のフェイズを終了する。その後自分から数えて3ターンの間相手のフェイズを飛ばす”
細かく描写すると5000字に収まらないので、色々端折って書いてみました。どうでしょうか?
二人称は感情描写が入って色々字数食うんですよね……
それはそうとお気に入り100突破!感謝の極みです