スカイリム~廃人達の生き様~ 作:荒ぶるメタボ
「かつての英雄赤のラグナル~♪ロリクステッドから馬を駆ってやってきた~♪」
目を覚ますと、そこは知らない天井だった。
薄い木の壁越しに、吟遊詩人が物騒な歌詞を朗らかに歌う。
ツインベッドの向かい側には、布団代わりの熊の毛布から突き出たエキゾチックな足が一対。
宿屋を立て替えてもらう手前、贅沢は言えず相部屋になったまではいいが、見た目はともかく中身は野郎同士なので、こうして顔を違えて寝ることになった。
と、褐色の足がピクンと動いた。
「起きました?」
「ああ、起きたよ。起きたとも。
せっかくのイイ夢が永遠に体とオサラバした赤ら顔っつーオチに終わってな!」
乱れた銀髪をわしゃわしゃと掻き毟りながら、苛立たしげに吐き捨てる女アサシン、ヴィジョン。
俺と同じ、知らずに「Travel to the Skyrim」をインスコしてこっちの世界に飛ばされた口だ。
ちなみに中の人はおそらく男。
「……お前ひょっとしたらホモじゃないだろうな?」
「なんですか、藪から棒に?」
「俺が言うのもなんだが、寝起きの褐色美人が目の前にいるのに顔色一つ変えないなんてありえないだろ!」
「いえ、俺からすれば全然BBAなんで、さっさと服着てください、目の毒です」
「お前……戻ったら真っ先に通報してやる」
昨日あの後二人で色々語らったが、好みの武器から装備のスタイル、性癖まで完全に平行線だった。
命の恩人なのに、気が合わないのは本当に残念だ。
脊髄反射で口を出た言葉に、ヴィジョンは不機嫌そうに顔を顰め、寝間着のチュニックを脱ぎ捨て、白いアサシン装束に着替える。
MODが公開された初期に導入したヴィジョンは、こちらの世界で彼此1ヶ月生活している。
見ての通り暗殺者スタイルの彼、彼女は山賊の賞金首を暗殺してはその日の金を稼いでいた。
賞金首とはいえ殺人だ。
普通なら憚るようなことも、生き残るためならと平然とやってのけるのは、こちらの世界に順応した証だろう。
が、その内俺も嬉々として山賊の野営地に飛び込んでいく殺人マシーンになってしまうのかと思うと、一刻も早く元の世界に戻らねばと思わずにはいられない。
朝食を取るヴィジョンが吟遊詩人のミカエルにナンパされている間に、衛兵の詰所から装備を取り返した俺は、着替えの為一端下水道に降りた。
中身男とは言え今は幼女だ。詰所の中で着替えようものなら露出罪でまた監獄行きになっていただろう。
慣れない着物に四苦八苦してなんとか装備できた頃、ふと見覚えのない鉄格子が目に止まった。
この下水道は本来脱獄用の通路で、牢獄から詰所を繋げるだけの閉鎖構造だったはず。
奥に何があるか気になるが、そこはスカイリム。どうせスキーヴァー(大型ネズミ)やドラウグル(ゾンビ)が跋扈しているのだろう。
人の命が簡単に消えるこの世界で、まともに戦う術すらない俺には過ぎた好奇心だ。
すきま風に混じって水音のするその抜け道にうしろ髪引かれつつ、俺は宿に戻った。
「罰金の40ゴールドよ、これで文句ないだろうね?」
「え?あ、まぁ……」
金貨の入った袋で衛兵を叩きながら、乱れた裾を直すヴィジョン。その足元には腹を抑え蹲るミカエル。
「ヴィジョン氏、ヴィジョン氏、今北産業」
「野郎に用はねぇ。」
「把握」
しつこすぎるミカエルのナンパに堪忍袋の緒を切っちゃったか……南無。
それより顔が変形するぐらい殴ってるのに40金貨で無かったことにして貰えるとは。マネーイズパワー、ここに極まれり。
「装備は返してもらえたようだけど、朝食はどうする気だい?」
「トマト一個恵んで頂けたら助かります」
人前では瀟洒なお姉様言葉のヴィジョンに見習って、俺も普段アーカーシャに宛ててるキャラで通す。……まぁ、対人で敬語しか喋れない俺的には対して変わらないが。
ちなみにトマト一個というのは遠慮ではなく、吸血鬼としての需要。
吸血鬼は血を吸わないといけない。だがアーカーシャたんにむさ苦しいオッサンやBBAの血を吸わせるのは論外、幼女の血を吸うなんて以ての外。
そこで考え付いたのが、「ドーンガード」という拡張パックに登場した吸血鬼御用達の薬「血の薬」の効果をCK(改造ツール)でトマトに付与することだった。
ゲームではなく現実の世界となった今、改造が反映されるかどうか心配だが、そのためのテストだ。
もしトマトが通用するなら、もしかしたら他の四つのチートMODも反映されているかも知れない。
「別にいいけど、トマト?そんなものでいいのかい?」
「いいから」
「……勝手にしな、サーディアさん!」
「はい、ただいま!」
運ばれてきたトマトを両手で握り、ゆっくりと噛む。
そもそも血を吸った時どんな感じなのか分からないのに、確かめようがあるのだろうか?
そんな俺の心配は杞憂で終わった。
口に含んだトマトから暖かいぬくもりが身体中に広がる。
目の前の全てが鮮やかに映って、やばい薬を決めた時のような最高にハイな気分になったのだ。
「もう一個食べる?」
ハスキーな女性の声に呼び戻されると、サーディアがトマトを差し出してきた。
「いい、持ち合わせがないです」
「あら、いいのよ。これは私からのサービス。だってあなた、幸せそうな顔で食べるもの」
そういう事なら、人の好意は無碍にできないし、ありがたく頂戴する。
噛むたびに力が湧き上がって来るのを感じる。スクゥーマ(麻薬)入りのトマトというわけでもあるまいし、これは確定だ。
俺はトマトで生きていける……ッ!
二個のトマトを平らげ、なぜかニヤニヤしているヴィジョンを置いてカウンターに向かう。
先立つ資金がない以上、働いて稼ぐのが筋。
ヴィジョンの好意で自立できるまで面倒を見てもらうことになったけど、甘えてばかりじゃいられない。
「あら、あなた昨日の食い逃げよね……何か用?」
「え、えーと、あ、ゴホン、そのし、仕事を探しているんですけど、何かないですか?」
値踏みするような冷たい視線に思わず吃る。なんとか言い切ると、何を勘違いしたのかフルダの表情が柔らいだ。
「あら、脅かしてごめんなさい、悪気は無かったのよ。
あなたみたいな小さな女の子が一人旅なんてさぞ訳ありでしょうし……
見たところ剣士のようだけど、それならスキーヴァーの駆除をお願いできるかしら?」
「やります」
願ったり叶ったりだ。人を殺すのは気が引けるが、スカイリムはそんな綺麗事がまかり通る世界じゃない。
それに備えて戦闘経験を積んでおきたい俺にとって、スキーヴァー狩りはうってつけだ。
「そう、わかったわ。ホワイトランの地下水道で何故だかスキーヴァーが大量発生しているの。
首長の使いが来て手配書を置いていったわ、10匹仕留めるごとに金貨30枚ね」
安ッ、……いやでも、山賊団壊滅させても報酬が100ゴールドなんだから寧ろ高い方か?
というかホワイトラン地下水道ってどこぞ?
「上限はないんだね?」
首を傾げた俺の後ろに、いつの間にか来ていたヴィジョンがフルダに問うた。
「ええ、スキーヴァーの尻尾で数えるから、持てるだけ持っていけばいいわ」
「気前のいいコトで。さて、行こうか、アーカーシャ」
当たり前のように先導するヴィジョン。一緒にやってくれるらしい。
が、スキーヴァーなんか狩らなくたってヴィジョンなら山賊などもっと稼ぎの良い仕事がある筈だ。
それを聞くのは流石に失礼なので、黙って後をついていく事にした。
ヴィジョンに連れて来られたのは、先ほど服を着替えた下水道だった。
「ここってドラゴンズリーチ監獄の脱獄ルートですよね?」
「ああ、残念ながら目的地はこっち。誰かさんが入れたMODのお陰で増えた下水道ダンジョン」
そんなMODもあるのか?
ロックピックを取り出し、慣れた手つきでピッキングを試みるヴィジョンを眺めながら思考を巡らせる。
しばらくして解錠が済み、MODで追加したであろう、白銀のダガーを抜き出したヴィジョンが腰を落として俺に振り向いた。
「こっから先は敵が出る。見ての通り俺はアサシンだから盾役なんて期待するな、自分の身は自分で守れよ?」
「……善処します」
ドラゴンズベインを抜き放つ。稲妻のエフェクトを纏った、美しい刀身が下水道の冷気に触れ、微かに湿った。
俺の戦闘スタイルは……かなり特殊だ。
接近型のくせに鎧もなく、紙装甲。盾も持たなければ破壊魔法も初心者レベルのしか扱えない。
レベルは25固定、ポイントを体力と魔力に分けてるので、体力は250、魔力は150と少ない。
その上片手剣スキルは固定の15。
……チートありきの縛りプレイ専用ステータスだ。
「一匹ずつでいいですか?あまり多いと俺死にます。HP250しかないんで」
「おま……そのナリで魔術師か?」
「いえ、マジックソードですよ。破壊魔法3つしか使えませんけど」
ヴィジョンが無言で立ち上がる。屈んでいた事で遮断されていた気配が強くなる。
ゲームの仕様でいう、スニーク(潜伏)状態を解除したのだ。
「わかった、とりあえず俺が盾になるわ。……スキーヴァーぐらいで倒れるようなHPしてないしな。
お前はその剣を振って、当たるように練習しろ。意外と難しいぞ、ゲームみたいにボンボン当たると思うなよ?」
ヴィジョンの忠告に頷き返す。
一応高校の時剣道部に入っていたから刀の扱いには少し自信があるが、今やただの貧弱ニート。腕が鈍ってる可能性が大だ。
片手剣にしてはあまりにも大きすぎるドラゴンズベイン、ましてや振るう俺自身は幼女だ。
両手で握り、目の前に垂れ下がっている苔を切ってみる。
バサリ
軽やかな音を立てて、錬金素材の「垂れ苔」が地に落ちる。
止まっている物への打ち込みは上々……次は動く相手か。
俺が垂れ苔を切ったのを見て、安心したように方の力を抜いたヴィジョンは、コートのポケットから木の棒を引っ張り出して、魔法で火を点けた。
「たいまつ」という照明アイテムだ。
ゲーム内ならホットキー一つで出し入れ自由だが、現実になった今こんな手間を挟まないといけないのか。
妙な感心をしつつ、明るくなって不要となった吸血鬼のスキル「暗視」を切る。
しばらく進むと、甲高いネズミの鳴き声が聞こえてきた。
「……来るぞ!」
咄嗟に身構えた俺のすぐ横を大きな影が過ぎり、ヴィジョンに突っ込んでいく。
子供身長な俺の太ももまである大型ネズミ、スキーヴァーだ。
それに気づいたヴィジョンはコートを翻していなすと、スキーヴァーを壁に蹴り付けた。
「いまだ!」
どうやら俺に生き物を「切る」経験をさせるために、態々手加減していたらしい。
心遣いに感謝しつつ、中段の構えでドラゴンズベインを構え、一気に突っ込む。
「キシャーー!!」
子供の臂力、ましてや片手剣スキル15では最上級の武器を使っても一撃では仕留められない。
痛みにのたうち回るスキーヴァーに、慎重に狙いを定めてその首を落とす。
「スキーヴァー相手にドラゴンズベイン二刀でとか(笑)、これだからロリはダメなんだよ」
「そこが良いんじゃないですか!だからこそ守ってあげたくなる愛でたくなる!」
「オーケイ、クールになれ。言っとくけど、その守って愛でてるのは俺だからな?性癖嗜好至ってノーマルな俺」
「……一匹仕留めましたね、次行きましょうか」
虚しい言葉のデッドボールを中断して、細い水路を進んでいく。
途中何度もスキーヴァーに襲われたが、全てヴィジョンを狙っていった。
スカイリムに「挑発」のようなスキルはない。ヴィジョンを狙っていくのは単にあいつが目立つからだ。
服の元ネタとなったゲームでもそうだけど、忍ばないアサシンほどタチが悪いものはないな……
しばらくして狭い一本道を抜け、開けた吹き抜けのような場所に出た。
地底湖、というには人工物めいたそれを見回していると、突如、足元に何かが刺さった。
「まずい時に道に迷ったようだな!」
「マジかよ!なんで山賊がこんなに……!くっ、逃げろアーカーシャ!!」
腕に刺さった矢を抜きながら、ヴィジョンは俺を通路に押し戻そうとする。
そうなったらお前はどうなる!?踏みとどまった俺は、彼女の後ろで鋼の両手斧を振り上げる山賊の姿を見た。
■□ステータス□■
名前:アーカーシャ(Akasha)
性別:女
種族:スノウエルフ(ベース:Mo○li)+吸血鬼(デイウォーカー)
レベル:25 体力:250 スタミナ:100 マジカ:150
スキル:片手剣15/両手剣15/変性100/召喚15/破壊15/回復100/幻術15/付呪100/弓術15/ブロック15/重装15/軽装15/錬金術15/鍛造15/解錠15/窃盗15/スニーク15/交渉5
クラス:マジックソード
得意魔法:????/????/????/????
固有チート:????/????/????/????
装備:ドラゴンズベイン/着物(MOD)/アージタルの靴/タロスのアミュレット
名前:ヴィジョン(Vision)
性別:女
種族:ポズマー(ベース:YgNo○d)
レベル:56 体力:420(+70) スタミナ:220(+74) マジカ:100(+52)
スキル:片手剣83/両手剣32/変性21/召喚36/破壊41/回復22/幻術91/付呪18/弓術71/ブロック15/重装15/軽装62/錬金術41/鍛造88/解錠57/窃盗61/スニーク96/交渉37
クラス:アサシン
得意魔法:????/????/????
固有チート:????/????
装備:シロディリック・シルバーダガー(MOD)/エ○ィオのコート(MOD/MP+22)/エツ○オのブーツ(MOD/SP+22)/インサニティ・マスク(MOD/SP+22)/付呪指輪(HP+40)/コールドールのアミュレット(HP+30/SP+30/MP+30)