スカイリム~廃人達の生き様~ 作:荒ぶるメタボ
「というか、街を自由に出入りする権利ってなんですか?普通家を買う権利ですよね?」
「お前な……その一番親しい者殺して開眼したような目でこの街を見てみろ、どこに家を立てるスペースがあるんだよ?」
結局子供達の愚痴こぼし大会に発展した晩餐会を抜け出し、バナードメアに帰る道中。
さっきから気になっていた質問にヴィジョンは呆れたように溜息をついた。
「そりゃ最初の内はブリーズホームを買う権利を貰えたさ、でも一軒しかないだろ?
トリップしてきた他の連中に買われちまったわけよ。それに街を自由に出入りする権利ってのはお前が思ってる以上に重要だぜ?
それがないと出入りする度に数十ゴールドの訪問者税を取られるんだからな」
数十ゴールド、なんて気軽に言うけど、実際に生活してわかったのは、とんでもない大金という事だった。
ゲームでは表示されなかったが、金貨以下の単位、銀貨と銅貨も存在していて、普通に生活する分には銀貨が最大の単位である。
山賊討伐がたったの100ゴールドなんて愚痴ってたが、普通に働く分には一ヶ月で数十ゴールドがいいところだ。
主人公補正の凄さに慄きながら、バナードメアに戻って女将のフルダから鍵を受け取る。
ヴィジョンが一ヶ月先まで部屋を取っているので、今のどころ金を払う必要はない。
「……で、どうする?お風呂」
「愚問ですね。俺と入りたいんですか?」
「ああ。……ただし背中を流して欲しいっつー意味でだがな」
「精神衛生のために却下します。それに背中なら湯船に毛布貼り付けてブリッジすればいいじゃないですか」
「なるほど、その手があったか!つか、良くよく考えてみたらヒデェ絵面だな……
ま、TSした野郎二人で同じ湯に浸かるよりマシか。先に入ってっぞ」
白いアサシンコートを脱ぎ捨て、タンクトップ一丁の姿になったヴィジョンはバスタオルをブンブン回しながら階段を降りる。
意外にも、言い寄る男が一人もいない。
……朝の一件もあるからな。
ミカエルがキナレス大聖堂で未だ治癒師のお世話になっているので、今晩の宿はかなり静か……でもない。
「無敵のタロス!的確なタロス!!難攻不落のタロス!!!あなたを!称賛するぅ!!」
いつもは街の広場で神様の演説をしている暇人プリースト、ヘイムスカーが、ここぞとばかりに酒場に出張演説しているのだ。
「なぁフルダよ、普段俺には文句言ってくるのにアレには何も言わねぇのかぁ?」
安酒を仰ぎながら、みすぼらしい格好した乞食の男、ブレナインが女将のフルダに愚痴垂れる。
他の食客もそうだそうだ、と頷く。
「仕方ないのよ、あいつちゃんとお金払ってるんだし……それもかなりの額。
もし吟遊詩人がいれば全額渡して雇いたいところなんだけどね……」
「いくら掴まされたんだぁ?」
「20ゴールドよ。全く、毎日像の前で演説してるだけの彼がどうやったらこんな大金稼げるのか不思議でならないわ」
20ゴールド、少ないように聞こえるが、バナードメアで2泊も出来る値段だ。
料理で言い換えるならスィートロールというお菓子200個。
なんだかんだでスキーヴァー討伐の報酬を有耶無耶にされた事を思い出し、無性に腹が立ってきた。
「お、嬢ちゃんさっきから食い入るように見てんなぁ。見慣れねぇ顔だし、ひょっとしてお前さん、吟遊詩人か?」
そっちこそ見慣れない顔だな。
ぼーっと立っていると急に話しかけて来た酔っぱらいの貴族風の男にそんな感想を抱く。
現実世界となったホワイトランは、その規模が拡大するばかりでなく、見知らぬNPC、もとい住民も大量に増えていた。
現にいつもなら6、7人しかいないこの宿も、20近くの客で賑わっている。
「どうしたぁ?黙り込んで、芸ある鷹は爪を隠すってか?
はっはっは!まぁなんでも良いから歌ってみろよ!おじさんからも報酬がでるぞ?」
馴れ馴れしく頭を撫でてくる酔っぱらい貴族。いい加減ヘイムスカーの演説にうんざりしていた他の客も煽り始めた。
冗談じゃない。見ず知らずの、それもこんな多数の前で歌なんて歌えるか。
貴族の手を振り払って部屋に逃げ込もうとした矢先、リュートを抱えた女給、サーディアに遮られた。
「あらいいわね、実は私リュートを奏でるのが得意なの。なんでも歌って、合わせて見せるわ」
……この政治犯ノリノリである。ケマツさんにチクるぞ。
「「「そうだそうだ!なんか歌えよ!わっはっは!!」」」
それまで耳を塞いで不味そうに酒を飲んでいた客たちも煽り始めて、いよいよ収束がつかない。
振り向いた先で先ほどの酔っぱらい貴族が物凄く良い顔でサムズアップしていた。
「……幾ら出すんです?」
「そうさなぁ、一曲100ゴールドってのはどうだ?」
「ひゃ!?」
ゴクリ、と唾を飲む音が聞こえた。俺が飲んでいた。
それぐらいあれば10日の生活は安泰だ。……しかも味噌は“一曲”。
吟遊詩人でもなんでもない俺に、その値段。
「……一曲だけですよ?」
「おー!待ってました!ささ、みんな拍手拍手!」
なんだか上手く乗せられてる気がする。
かと言ってヘイムスカーの演説を埋没するほど盛大な拍手をされて、今更歌わないなんて言える雰囲気じゃない。
……ええい、こうなったらヤケクソだ。歌うだけ歌って金を毟ってやる。
大爆笑する心構えはできたか!?
「アーカーシャ、『俺がモテないのはどう考えてもてめえらが悪い』歌いまーす!」
選曲にとやかく言わないで欲しい。だって引きこもりニートですもん、味な歌知ってるわけないだろ?
適当にノリの良さそうなアニソンを選んで歌う。
……が、最初の絶叫部分でいきなりサーディアが伴奏の手を止めた。
当たり前だ、彼女が持ってるのはエレキギターじゃなくリュートだ。ヘヴィメタルじみたリズムに乗れるわけがない。
と思っていたら、半拍子遅れながらもなんとか演奏を合わせてきた。……やるじゃない。
走り語りのような吟遊詩人の歌と違って、色々とぶっ飛んだ俺の歌は案外受けが良く、場が以上に盛り上がっていく。
なんだこれ、楽しい。
「「「もう一曲、もう一曲!!」」」
「おっしゃぁあ!二番目、「全て俺のモン」お前ら俺の歌を聴けぇぇ!!」
サーディアもリズムを掴んできたのか、適切に演奏を合わせてくる。
物凄く乗せられてる気が半端ないが、それ以上に楽しい。最高にハイって気分だ!
一番目のサビを超え、ひと呼吸つこうとさりげなく視線を流した先で、
「…………」
「どうした、続けろ」
バスタオルで波打つ銀髪を拭いながらニヤニヤしているヴィジョンと目が合った。
息が止まる。身体が沸騰したように熱い。いや待て俺、なにやってんの俺?
こんな大衆の面前でアニソンマラソンとかどんな羞恥プレイですか?
「んん~?どうした、歌詞忘れちまったのかぁ?」
「いえ、そうじゃなくてですね、もう一曲歌ったことですし、約束のお金……」
「……なぁんだ?もう歌わねぇのか、残念だなぁ!しかし、約束は約束だ。
へへっ、ほら、ピカピカチャリチャリの金貨だ!持ってけ持ってけ!」
ズッシリ重い金貨袋に、場がどよめく。まさか本気で支払うとは思っていなかったらしい。俺もだけど。
ありがたく頂戴して部屋に駆け込もうとしたところで、袖を掴まれた。
「こんなに楽しいのは何年ぶりかなぁ。とにかく俺はお前さんのことが気に入ったぞぉ!
ここにエルスウェア・ムーン・エールがある、どうだ、俺と飲み比べしてみねぇか?」
「いや、おれ、私未成年なので……」
「そんな硬いこと言うなよ、な、一口。一口だけ勝負してみよう、顔色変えず飲めたら俺のお気に入りの宝具をあげちゃうぞ?」
一口だけ、とはなんとも胡散臭い。麻薬ディーラーが一番よく使う常套句だ。
それにエルスウェアのムーンエールってどう考えても素材に人をハッピーにするアレが含まれてるじゃないですか。
袖を振って断固拒絶する俺に、相変わらずニヤニヤしながら酒を勧めてくる貴族。
「……というか、お気に入りの宝具ってなんですか?」
「おま、そこに食いついてどうする!」
何時の間にか後ろに来ていたヴィジョンにそんな事を突っ込まれる。……いや、仕方ないじゃん。
百ゴールドをぽんとくれるような人の言う「宝具」って物凄く気になるだろ?
特に「お宝」じゃなく「宝具」と言ってくるあたりロマンを感じずにはいられない。
「お?お前さんも……ああ、なるほどなるほど。ったく相変わらず必死だなぁ(笑)」
「あの……?」
「お?おお、そうだそうだ、宝具の事だったな?こいつぁ凄いぞぉ?
売れば馬が二匹は変えるが……まぁ、売ろうなんて絶対に考えないような凄いものだぞぉ!」
馬が二匹買える?聞いて真っ先に思いつくのがデイドラの装備だ。確かにあれなら話術5の俺でも店に売れば2000ゴールドはくだらない。
デイドラの装備は希少品だが、金を積めば買えないこともないし、こういう貴族ならコレクションで持っているのもおかしくない。
それにもし万が一の事があっても、ヴィジョンが付いてる。
止めに入ってくれるだろう。
「分かりました、その勝負乗りましょう」
「そうこなくっちゃ!ささ、ジョッキにエールを注いだぞ!
おーいそこの女給さん!審判を頼むぞぉ!俺と彼女、どっちが先に根を上げるか勝負だぁ!」
「ちょっとでも顔色が変わったらその人は負けですからね!」
おっと、そうだった、と豪快に笑う貴族をみて少し心配になったが、とにかく勝負だ。
互を睨みながら、真顔でジョッキを仰る。
ジーンと焼けるような味が喉の奥に広がる。少し強いが、我慢できない程度ではない。
「……ぷふっ、ぷふはははは!ダメだ、ダメだ!もう我慢できない!」
先に根をあげたのは貴族の方だった。腹を抱え盛大にひっくり返る。
ふふっ、この俺にポーカーフェイス勝負を挑むとは無謀な事を。
睨めっこしかり、やせ我慢大会しかり負けたことが一度もない俺に勝てるわけがないのだ!
「わひゃわひゃ!このわらひにしょうぶをいどむなんざひゃくねんひゃいのだぁ~」
あるぇー?おかしいぞ、頭がクラクラする、酒のせいか?
いいや、どうでもいい。どうせ俺の勝ちなのだ、勝てばよかろうなのだ!フゥーハハハハ!!
……あれ?なんだ、急に目の前が暗くなっていく。声も、だんだん遠く……
「いやはや、負けちまったなぁ、嬢ちゃんの顔があまりにも面白いからついつい噴いちまったぞぉ。
でも、約束は約束だ。
ほれ、これが俺の宝具、……サングインの瞳だ」
薄れいく意識の中で、誰かがそう呟いた。
「スタァァップ!首長の命により止まれ!」
気づくと何時の間にか武器を持った衛兵達に囲まれていた。
「おい新入り!ぼやっとしてんじゃない!スクーマの密輸で捕まったが最後、市中連れ回しの上縛り首だぞ!
そうなりたくなかったらこれを持って、さっさと逃げるんだよォッーー!!」
重たい荷袋を俺に持たせて、自身も同じような袋を抱えた黒毛のカジートはそう言って目にも止まらぬ速さで走り出した。
いやいや、なに?この状況。というか新入りって?
……見たところ目の前にいるのはファルクリースの衛兵達みたいだけど、
恐る恐る袋の中を覗き込むと、紫色の小瓶がびっしり。通常のポーションとは違う、いびつな形をしたそれは……
「スクゥーマじゃあないですかぁぁ!!」
「だからそう言っておろう!その袋をよこせ、貴様がスクゥーマの密輸に加担している証拠だ!」
そんな事言われて渡せるわけないだろ、むしろ渡したが最後、揺るぎない物的証拠を掴まれて牢獄⇒断頭台のデッドエンドコースまっしぐらだ。
「抵抗する気満々のようだな、よろしい!ならば血で償えッ!」
思わず後ずさった俺に、衛兵の一人が斬りかかってくる。
鋼の剣が眼前に迫る、瞬間――
視界の中央から広がっていくブラー効果。
アーカーシャをアーカーシャ足らしめるチートスキル、「時空掌握(クイックリフレックス鬼改)」が発動したのだ。
ビデオテープを止めたように動かない衛兵の一閃をかいくぐり、封鎖線を張る衛兵達の間を走り抜ける。
そして時が動き出す。
気づけば目の前に誰もいなくなった衛兵達が浮き足立つが、しばらくして後ろに俺がいると気づいて慌てて追いかけてくる。
畜生、一体何が起きてるんだ、俺はバナードメアで貴族のおっさんと飲み比べしてただけなのに!
……飲み比べ?バナードメア?
そういえば、気を失う直前に何かを貰った気がする。
懐に仕舞った、手の平サイズのそれを取り出す。淡いパープル色の、薔薇のような何か。
握っても潰れないところからして、見た目に反して硬質な素材でできたそれを、確かあのおっさんはこう呼んでいた
……サングインの瞳、と……
バナードメアに現れた謎の貴族。気づけばスクゥーマ密輸に巻き込まれたアーカーシャの運命やいかに!?
■□ステータス□■
名前:アーカーシャ(Akasha)
性別:女
種族:スノウエルフ(ベース:Mo○li)+吸血鬼(デイウォーカー)
レベル:25 体力:250 スタミナ:100 マジカ:150
スキル:戦士15/魔術師100/盗賊15
クラス:マジックソード
得意魔法:吸血鬼の手/????/????/????
固有チート:時空掌握(オリジナルMOD)/????/????/????
装備:ドラゴンズベイン/着物(MOD)/アージタルの靴/タロスのアミュレット
名前:ヴィジョン(Vision)
性別:女
種族:ポズマー(ベース:YgNo○d)
レベル:56 体力:420(+70) スタミナ:220(+74) マジカ:100(+52)
スキル:戦士83/魔術師33/盗賊91
クラス:アサシン
得意魔法:スパイダーウェブ/????/????
固有チート:Pull Mastery Chain and Spider Web/????
装備:シロディリック・シルバーダガー(MOD)/エ○ィオのコート(MOD/MP+22)/エツ○オのブーツ(MOD/SP+22)/インサニティ・マスク(MOD/SP+22)/付呪指輪(HP+40)/コールドールのアミュレット(HP+30/SP+30/MP+30)