スカイリム~廃人達の生き様~ 作:荒ぶるメタボ
Side:ヴィジョン
「わひゃわひゃ!このわらひにしょうぶをいどむなんざひゃくねんひゃいのだぁ~」
ジョッキいっぱいに注がれたエールを、たった一口啜っただけでアーカーシャは酔いつぶれた。酒弱っ!!
こんなに酒弱いのになぜ挑戦受けたし!?
着物をはだけて色々際どい似非幼女を押さえ込もうとした俺を制して、おっさんはその懐に手を伸ばす。
やはり最初からそっちが目的か!アーカーシャの奴簡単に乗せられやがって。
おっさんを止めようと手を伸ばしかけて、その手に握られている物に気づいた俺は、本能的に手を引っ込めた。
薄紫色の薔薇。見たことがある、それどころか見慣れたデザインのそれは、まさか……
「いやはや、負けちまったなぁ、嬢ちゃんの顔があまりにも面白いからついつい噴いちまったぞぉ。
でも、約束は約束だ。
ほれ、これが俺の宝具、……サングインの瞳だ」
まさか……
酒場、飲み比べ、酔っぱらい、薔薇、サングイン
通のスカイリムファンなら、この四つのキーワードからとある人物を連想するだろう。
いや、人物なんて生ぬるいものじゃあない。
それは笑顔で人を惨殺し、事も無げに酒を仰る悪魔のような存在。
それでいて死を持たず、殺しても殺しても何度でも蘇る不死身の存在。
怒らせたらただじゃ済まない神様よりタチの悪い邪神、デイドラロード、サングイン。
「どれ、良い具合に酒が回ったようだし、いいところに行かねぇか?酒が滝のように流れる夢のような場所だ!へへっ」
間違いねぇーー!!
ゲームのセリフほぼそのまんまだ!泥酔いしたアーカーシャがとんでもないことやらかして後始末に追われる展開が目に見えるぞ!
「ちょ、ちょっと待っておくれ、こいつはもう酔が回って立つことすらできないんだ。今夜はこのまま寝かせてやれないか?」
「……あ゛?お前さんはお呼びじゃあない。引っ込んでな」
背筋を電流が流れた。身体中から汗がどっと吹き出る。この男、やはり只者じゃあない……!
横目に睨まれただけで、呼吸が止まりかけたぜ。
「わひゃい、いくいく~いきましゅ~」
そして泥酔したアーカーシャはそんな俺の気も知らず嬉々としておっさんの後ろについて行く。
……無茶してんじゃねぇよ!こうなったら、アレだ。ひっそり後を尾行して大変な事をやらかさないように俺がフォローするしかない。
「待て、貴様ら!ブレトンにエルフ、親子じゃなさそうだな、こんな夜中にどこに行く気……」
言葉を最後まで発しえず、門番の衛兵は倒れた。慌てて駆け寄ると、うにゃうにゃと寝言を言っていた。
……生きてるだけ儲けもんだよアンタ。
間違いない、あのおっさん、正体はデイドラロードのサングインだ!
溝に落ちそうな際どい角度で気絶した衛兵を直してから、二人の後を追う。
……畜生、馬車を調達しやがった。
こっそり尾行する以上馬に乗って後を負うわけにも行かない俺は、潜伏した姿勢のまま呪文を念じる。
淡い光を放ちながら、掌に光の玉が現れた。
俺が念じた魔法は、「Pull Mastery Chain and Spider Web」というMODの「マスターチェイン」というスペル。
昼間首長の馬鹿息子を助けるために使った蜘蛛糸の鎖バージョンだ。
この呪文は敵に当てれば標的を引き寄せ、物に当てれば自分が飛んでいくという大変使い勝手の良い呪文で、使い方次第で進撃○巨人の立体○動装置のような変態的な機動力を得ることも可能だ。
つっても、調子に乗って失敗すると転落死するので、試したことはないが。
「マスターチェイン」を使って、物陰から物陰に移動しながら、馬車を尾行する。
途中何度か山賊が馬車に集ったが、スピードを上げた馬車によって尽く轢殺された。……ぱねぇ。
ホワイトランが位置する平原地帯を抜け、鬱蒼とした森を経過し、アーカーシャと同じ吸血鬼夫妻が経営する工房を過ぎて、墓場が目立ち始めたころ、馬車はゆっくりとスピードを落とした。
……ファルクリースか、こんなところに何の用だ?
馬車から降りた二人は、松明も付けずに宿を目指して進んでいく。当然の様に止めに入った門番は鼻の下を伸ばして立ち尽くしていた。
サングインじゃない、今度はアーカーシャの奴が何かをやらかしたな。
……おおまか「吸血鬼の誘惑」だろうな。
宿に入ると身を隠す場所もないので、俺の守護石「影の石」の力を発動して、透明になる。
宿の中は、カオスな空間が広がっていた。
まず壁。店内なのに大きな横穴が開き、馬車が止まっている。
その奥にはどう考えてもおかしい岩肌剥き出しの横穴が開いている。
次に見たこともないような赤い鎧を着たカジート(猫)達が店の中でたむろっていて、あろうことかアーカーシャはその内一人に飛びつきやがった。
突然の暴挙に反射的に武器を抜いた他のカジート達を、サングインが酒瓶を片手に制し、あっという間にどんちゃ騒ぎに発展させる。
酔いつぶれてラリラリなカジート達とアーカーシャは意味不明なジャイブトークを交えながら、どんどんアップしていく。
騒ぎの元凶であるサングインは何時の間にか姿を消し、残った連中は酒瓶をかち割りながら物騒なカミソリダンスを披露。
よし、まだ全然許容の範囲内だ。これなら器物損害の罪で数日牢獄のお世話になるだけで済む。
酒が抜け始めたアーカーシャ達がこのまま目覚めることを祈りつつ観察していると、
やたらガタイの良いカジートが、馬車から袋を下ろしやがった。
乱雑に投げ捨てられた袋から出てきたのは、いびつな形をした紫色のボトル――間違いねぇ、スクゥーマだ。
そのスクゥーマをあろうことか、店の中の連中が、店主や吟遊詩人のデラコルトまでノリノリで飲み始めやがった。
おいマズイだろいい加減!!
アーカーシャが飲もうとしたスクゥーマを「スパイダーウェブ」で奪って、慌てて宿から飛び出し、衛兵を呼ぶ。
俺一人じゃとても手に負えそうになかったからな。
しかし、俺の予想を反して、衛兵団を見たやつの反応は過激だった。……アーカーシャの反応な。
最初に店に踏み込んだ衛兵は抜刀した途端、アーカーシャの「吸血鬼の手」でカウンターの向こうに投げ飛ばされた。
突然のことに浮き足立つ衛兵達に、独りでに浮かび上がった椅子テーブルが次々と飛び込んでいく。
「テレキネシス」……あいつ破壊魔法使えないとか抜かしてたが、それ以上にタチの悪い変性魔法使ってるじゃねぇか!
立ち上がった衛兵を「吸血鬼の手」で浮かせては落として、と完全に手玉に取って遊んでいたアーカーシャの表情が急に険しくなる。
酔いがさめたか!?
「ものどもぉ~!この聖域はかんらくしたぁ!いざ新たな新天地を求め旅だつとくぞぉ~!!」
おーいー!シリアスに酔っ払ってんじゃねぇ!しかもカジートてめぇらノリノリで武装してんじゃねぇ!
でもって大挙してスクゥーマ入の袋を持って堂々と宿から出てんじゃねぇ!
っべーぞ、このままじゃファルクリースの衛兵と全面戦争になりかねん。
慌てて後を追うも時すでに遅し。
フル武装したファルクリース衛兵隊と、アーカーシャの手勢?達が対峙していやがった。
「どいてくださぁい!われわれエルスウェアエイブス強権にはくっしませんよぉ~」
おーいー!なに宣ってんだこんボケがー!!
アーカーシャの野郎カジート達の先頭に立ってどう見てもリーダーじゃねぇか!
このままじゃマズイ、最悪スクゥーマ密輸の主犯で縛り首だ。
衛兵達に気づかれないように「マスターチェイン」で向かいの雑貨店の屋根に飛び上がり、アーカーシャに狙いを定める。
こうなったらあいつを引っ張ってこのばからとんずらするしかねぇ。
狙いを済ました一撃をしかし、アーカーシャはマトリ○クス避けで躱しやがった。
ふざけんなこんな時まで一丁前にチート使ってんじゃねぇ!てめぇは無限増殖するエージェントか!
「スタァァップ!首長の命により止まれ!」
衛兵が決め文句をぶっぱなした。
条件反射か悪党の直感か、その一言だけでカジート達が我に返った。
「おい新入り!ぼやっとしてんじゃない!スクーマの密輸で捕まったが最後、市中連れ回しの上縛り首だぞ!
そうなりたくなかったらこれを持って、さっさと逃げるんだよォッーー!!」
ブツの一部をアーカーシャに押し付け、蜘蛛の子を散らすように走り去るカジート達。
半拍子遅れて正気に戻ったアーカーシャは目の前の衛兵達と手元の袋を見比べ、目を瞬かせて、絶叫。
「スクゥーマじゃあないですかぁぁ!!」
「だからそう言っておろう!その袋をよこせ、貴様がスクゥーマの密輸に加担している証拠だ!」
怒鳴った衛兵の膝が笑っている。さっき店の中で散々振り回された衛兵の一人だ。同情するぜぇ……
「抵抗する気満々のようだな、よろしい!ならば血で償えッ!」
掛け声と共に一斉に斬りかかる衛兵達。しかしその間を縫うよう赤い影が奔る。
また例の「時間静止MOD」を発動したか。
副作用も無ければ予備動作もない。インチキ効果も大概にしろ!
なんて憤慨してる間に、治癒魔法を片手に猛疾走したアーカーシャの姿がどんどん小さくなっていく。
まずい、早く追いかけないと。
追いかけてどうするか、まるで考えが浮かばねぇが、このまま放っといたら大事になるっつーことだけは確かだ。
回復魔法による常時ダッシュに加え、隙あらば「蝙蝠の疾走」で距離を空けるアーカーシャに追いつくのはかなり骨が折れる。
移動手段豊富なあいつに対して俺の移動手段は「マスターチェイン」とダッシュのみだ。
その両方も、スタミナとマジカが底を付き始めた今では途切れとぎれで、化物のようなスタミナを誇る衛兵隊からも、距離を引き離されていく。
このままじゃジリ貧どころの話じゃねぇ。
何か方法は?崖の上を走りながらショートカットで先回りする俺の目に、黒くて大きいそれが映る。
馬。……盗むか?懸賞金がとんでもねぇ高さだが、背に腹は代えられねぇ。
見つからないように潜伏して近づき、一気に飛び乗る。
「ゴルァ!待てこの盗人エルフめ!!舐めたマネしやがってぶっ殺すぞ!!」
やっぱ気づかれたーー!!
こんちくしょー、こうなったら自棄だ、とことん追い抜いてやる。黒王号よ風となれ!
「ブヒヒヒィイン!!」
「うぉぉぁぁっ!?」
嘶き声を上げ、前肢を持ち上げた黒馬の背中で俺は大事な事実に気づいた。
俺、馬に乗れないじゃん。
「かはっ!」
肺の中から空気が押し出される。石床に叩きつけられた頭がクラクラする。
暗転する視界のなかで、俺は毛皮の鎧を着た馬の持ち主を見た。
「エールを三杯飲み干すと~♪エルフは顔を顰め、別れの挨拶をした~♪それで実際誰かが死ぬとは知らずに♪」
歌と呼ぶにはあまりにも酷すぎる音に目を覚ます。
頭が痛ぇ……。具体的には後頭部の右側あたりがヒリヒリする。
摩ろうと伸ばした手を、何かが拒んだ。
ガチャリと硬質な金属音をあげて、揺れるそれは――
「おお?やっとお目覚めか馬泥棒ちゃん。これでやっと話が出来るな、へへっ」
俺が入っている檻らしき物を揺らして、モヒカンの髪したノルドが近づいてくる。
その視線は俺の体に注がれ、釣られてみると上着を脱ぎ捨てられた俺は全裸でつるし上げられていた。くそ、アングル悪いぜ……
じゃねぇよ!
「……へぇ、何の話だい?サウナの湯加減を言ってるんなら、すこぶる最悪だね」
「すみませんお客様ちょうど薪を切らしておりまして、しかしご安心くだせぇ、すぐに温めて差し上げますゆえってね!」
ガチャリ、と牢獄の鍵が外される。
いやらしい笑顔を浮かべたノルドが、下卑な笑いを浮かべながら近づいてくる。この顔はよく知っている。欲情した顔だ。
……え?なぜよく知ってるかって?
ほら、スクリーンが暗転するとき鏡みたいに自分の顔が映るだろ?
なんて現実逃避してる間に野郎俺の胸を掴みやがったよ畜生!!
「てめぇ今すぐ手を離せ!さもないとぶっ殺すぞ!!」
「おいおい、さっきまでの余裕が台無しじゃあないか。まぁいいけどな!
俺としちゃあ嫌がる女を無理やりヤった方が気持ちがいいんでなぁ。どぉれ、少しばかり飾り付けをしてやろうじゃねぇか」
不気味な舌なめずりを残してノルドが檻から出て行く。何をするか想像に難しくない。
向かう先に並べられた器具を見れば、紳士な俺なら大体想像がつく。
……って、アレは!!
待った!異議あり!!誰か助けてぇーー!!
確かに俺はDeath AlternativeっつーMODでわざと山賊キャンプに玉砕突撃してチョメチョメアーンされるエロゲー的展開を嗜んでいるが、体は女でも心は男!
エロゲーは好きでもエロゲーにされるのはまっぴらゴメンだ!!
落ち着け俺、クールになれ俺!
俺はドラゴンボーン!アーカーシャみてぇなぶっ飛んだチートはねぇが、公式チートの名は伊達じゃねぇ!
手足を繋がれても口が空いてる今なら、アレが使えるじゃあないか!
上から目線で命令ばかり下していけ好かないシャーマンの命と引き換えに手に入れた声の力。
効果時間が短いのが難所だが、鍵を外させるぐらいは出来る。
俺はその力、ベンドウィル(洗脳)を高らかに叫ぶ。
「コール!ハ!!ドーヴ!!!ベンドウィル!!」
金色の洗脳光線がこちらに背中を向けた無防備な世紀末ノルドに迫る。
器具を持った手が力なく垂れ下がる。やった、洗脳成功だ。あとは鍵を開けるよう命令すれば……
「貴様エルフか!?違う、違う!だが死ね!ホワイトストレークビーム!!!」
裏返った野太い男の奇声と共に迸った白い光線に、洗脳したノルドは真っ二つに裂かれた。
おおおいいい!!!山賊ぅ!!!
「うへぇ、もう少しマシな殺し方しろよな……って、おい、そこに誰かいるのか?」
「主?危険。私、確かめる。……エルフ?エルフ。エルフ!エルフは死ね!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!!エルフは死ねエルフは死ねエルフは死ね!!!!!肋骨砕いて心臓潰して殺ス!!!!!ヒャァーー!!もう我慢できない!殺す殺す殺す!!エルフぶっ殺す!!!慈悲はない!!!う゛ぁごい゛え゛ぁぁああぁああああああーーーー!!!!」
のそりと檻を覗き込んだ白い鎧の騎士は、難解なマシンガントークをぶちまけて、白い甲冑の手で俺の心臓を貫いた。
Mod名: Death Alternative
保有者:ヴィジョン(Vision)
クラス:アサシン
ランク:C+
効果:常人離れした強い悪運で大抵の場合、死を免れることができる。幸運C+以上の敵には作用しない。
皆さんのおかげで登場人物が大体決まりました。そろそろ人物紹介乗せようと思います。