スカイリム~廃人達の生き様~   作:荒ぶるメタボ

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8.とある凶悪指名手配犯の告白(マックミラーノ視点)

Side:マックミラーノ

 

僕の名前は■■■■■。イタリアフィレンツェ在住のナイスな無職20歳だ。

エルダースクロールズV:スカイリムではマックミラーノというイカすインペリアルのスナイパーをやっている。

そして今、僕は最高に興奮しているッ。なぜならッ……!

 

「Skyrimを起動したと思ったらゲームの世界に入っていた、ブラヴィッシモ(最高だ)!!」

 

吹き抜ける北風、流れる風のせせらぎ、燦々と降り注ぐ太陽。

素晴らしい、なんというリアルな夢。

スカイリムをプレイして9000時間オーバー、ついに僕は夢の中でスカイリムを再現する次元に至ったか。

 

 

 

いつまでも感慨に耽ってはせっかくの夢が覚めてしまう。

なので近くの村を目指して川辺に沿って歩いてると、突然そいつは現れた。

マッドクラブが進化したような人型のカニ人間、ドレーグ(Dreugh)が。

僅かに浮遊したそいつは僕が反応するよりも早く、有無を言わさず氷のビームを発射して来た。夢なのに容赦ない。

 

ホーリ○シット!思わず顔を庇った両手がフリーズしてカチコチになってしまった!夢だから大丈夫だけどな!

 

思わずつまづいて転んだ僕は、反撃しようと愛用のクロスボウを構えた。

しかし。

しかしである。

クロスボウの扱いなんて僕が知ってるわけがない!おまけに凍りついた両手ではチャンバーを引っ張ることもままならない。

プーさん蹴るな!夢パワーで何とかならないのかッ!?

 

そんな僕の事情をお構いなしに、スプレー噴射のように絶え間なく繰り出される氷のブレスは絶え間なく温度を奪う。

絶体絶命!

誰か、誰か僕を助けてくれ!このままでは死んでしまう!夢だけど!

 

「■■■!」

 

無我夢中で発した叫び声は、獣の咆哮のように大気を震わした。

「グローバル・コマンド」というフレーズが不意に頭を過ぎる。

次の瞬間

 

「主危険!私護る!魔物殺す!うぉえ゛り゛あ゛ぁぁあぁああああ!!!!」

 

降り注ぐ氷のスプレーごとドレッグを両断し、白銀の剣を振り抜いた白金の騎士が僕にその赤いマントを向けていた。

惚れ惚れするような芸術的なフォルムは、僕がよく知っている相手。

ゲームSkyrimで僕の相棒を勤めているエルフ殺しの英雄、ペリナル・ホワイトストレークだった。ちなみに夢だ。

 

「立てるか、我が主よ」

 

「ぼ、僕を助けてくれたのか……?」

 

差し伸べられた手を恐る恐る握り、ペリナルの助けを借りて立ち上がる。

酷い凍傷を負っていた両手は何時の間にか全癒していて、暖かな光を放つペリナルの右手を見て回復魔法だと理解した。さすが夢だ。

 

「我は主の剣なり」

 

多くの言葉はいらなかった。剣を収めたペリナルは短い言葉で僕に忠誠を誓った。夢だがな。

心強い味方を得て、僕はリバーウッドを目指して移動を再開する。

 

途中何度か狼やクマに襲われたけど、全てペリナルが無言で切り伏せた。

リアルの僕が強さとは無縁なのは自覚しているけど、せめて夢の中では活躍したかったよ……

 

そんな僕の気持ちを無視して、ペリナルはどんどん屍の山を築いていく。幼い熊や狼の子供も混じってるけど、論理的な問題は度外視だ。どうせ夢だからね。

 

途中で何度かクロスボウにチャレンジしてみたが、あさっての方向にボルトがとんだりしなければ、基本ペリナルにあたっていた。

援誤射撃はゲームではご法度だけど、ペリナルは一切気にしない。そもそも刺さってもいないし。夢だしね。

 

 

 

イリナルタ湖畔で目覚めた僕はそのまま湖を一周してリバーウッドにたどり着く。

ゲームで最初に訪れる町だ。家が6軒しかない小さな村だったはずなのに、小さな集落に発展していて、道歩く村人にも知らない顔が混じっている。

 

まぁ、夢だからね!

のんきにそんな事を考えていた僕に、気づく由もなかった。

僕の後ろで白金の騎士が怒りで身体を震わせ、赤いオーラを纏っていることに。

 

「おや、見ない顔だな。旅人かな?面倒は……」

 

「エールーフ!!!殺す殺す殺す!!!エルフは殺す!駄目だエルフは殺す!絶対に殺す!!一匹残らずこの世から駆逐する!!死ね死ね死ね死ね死ね!!!ヴぉえあ゛ぎひ゛ぃぃぃいいいい!!!」

 

僕に気づいて挨拶をしてきたウッドエルフのハンター、ファエンダルは一瞬で肉塊と化した。

 

Why?ペルケー(何故に?)何ゆえに!?何が起きた僕の夢ッ!?

 

「助けて!人殺しよ!!」

 

「スタァァップ!!そこのお前!今何をした!!」

 

老婆の悲鳴に続いてどこからともなく黄色い鎧を着た衛兵達が集まってきた。

それぞれに武器を構えた兵士たちは、僕たちを中心に円を作る。

 

「主、彼ら人間。しかし敵。殺してよいか?」

 

「い、い、いいわけないだろ!何やってんだよ!プーさん蹴るな!ファエンダルが何をしたって言うんだ!?」

 

「ファエンダル?不解。エルフ?殺す。殺す。生きる駄目。殺す。見逃す?不可能。殺す殺す殺す殺す。エルフは殺す。絶対に殺す。殺さなければならない殺さなければ救われない殺さなければ始まらない!!エルフ殺すエルフ殺すエルフ殺すエルフ殺す!!」

 

バラバラになったファエンダルだった物をグリーヴで更に踏み散らかしながら狂ったように叫ぶペリナル。

あまりの狂気に僕のみならず衛兵達も思わず後ずさった。

 

何が起きたのかわからない。いい夢のはずが、一瞬でB級ホラーも真っ青な悪夢に変容した。

 

わかるのはただ一つ、

 

「やめろぉぉぉ!!■■■、■■■■!!!」

 

まただ、発した言葉がフレーズにならず、獣のような咆哮に変容した。

途端にペリナルは抜き放った剣を収め、僕に頭を垂れた。

 

「そうか、貴様がそいつの主だな?ということは貴様がファエンダルを殺したわけだ。

このホワイトランで殺人を犯すとはいい度胸だな!貴様に与えられる選択肢は二つだ、ドラゴンズリーチのダンジョンで朽ち果てるか、ここで我々に正義を執行されるか!」

 

ファエンダルの返り血で白金の鎧を真っ赤に染めたペリナルを警戒しながら衛兵達がにじり寄る。

 

「ち、ちがう!僕は殺すつもりなんて、全部こいつが勝手にやったんだ!」

 

「そうか、よろしい。ならば血で償え!!」

 

聞く耳も持たず一斉に斬りかかってくる衛兵達。しかしなぜか、隣に佇むペリナルは武器を収めたまま微動だにしない。

ふざけるなぁ!全部お前が招いたトラブルじゃあないかッ!!

 

革の鎧に刀剣がめり込む。分厚い鎧を切り分けて先端が肌にくい込む。

ツーンと痛い痛覚が妙にリアルだ。どうしてこうなった、僕の夢!?

 

「ファ○ク!!」

 

目の前に立ち塞がる衛兵をタックルでどかし、次から次へと襲いかかる剣を鎧の性能に任せて受け止め、全速力で逃げ出す。

 

後ろから衛兵達が追いかけてくる。その更に後ろからペリナルが事も無げにランニングしてくる。

 

「おかしいだろ!仮に僕がファエンダルを殺すようペリナルに命令したとして、実行犯はそいつなんだからそいつを追えよ!

なんで非力で人畜無害な僕にターゲットを絞るんだ!弱いものイジメか、理不尽だぁぁ!!」

 

「主、命令。戦わない。私戦えない」

 

なんの命令だよ!もう突っ込む余裕もない。普段から運動と無縁な僕だ。

急に走り出して息が切れ切れ、心臓が悲鳴をあげている。

つまづきかけて前倒れになった僕の視界に、間近に迫った衛兵達の足が映った。

 

このままじゃ捕まってしまう!なにか、逃げる方法は?

そうだ、ポーションだ!スタミナポーションがあれば!

 

背中に背負った荷かごを漁ろうと、胸の前に回して初めて気づいた。異常に軽いそれはかごなんかじゃなく、白い金属でできたポットだった。

なんでこんなものを背負っていたんだ?

 

考える余裕なんてない。中に入ってるであろうポーションを探って手を突っ込んだ僕は、吸い込まれるように意識をなくした。

 

 

 

目を覚ますとそこはドーム状の石造建築の中だった。

四方にはドワーフが作った金色の機械人形達が佇んでいて、部屋の中央には石のベッドがある。

その後ろには下の階に降りる緩やかなスロープ。

 

ここはどこだ?見覚えがあるぞ……Dwemer Jarのなかじゃあないか!

 

ズトン、後ろから響いた重たい金属音に振り向くと、白い甲冑の騎士が立っていた。

 

「我が主よ」

 

僕がこんな目に遭っている元凶、狂戦士ペリナル・ホワイトストレーク。

今僕がいるこの空間はあの金属のかごの中。僕と僕の“フォロワー(仲間)”しか入れない独立した空間だ。

 

どうやらポーションを探そうとDwemer Jarに手を突っ込んでそのまま中に入ってしまったらしい。

 

後を追って衛兵達が来ないか神経をすり減らすこと数分、何も起きない。どうやら衛兵達は入ってこれないらしい。

安心してどっと疲れが溢れた僕は、目の前のベッドにダイブした。

 

「ガッ!」

 

フ○ック!!そういえば岩のベッドだこれ!!

思いっ切り鼻を打ち付けた僕は痛みにのたうち回りながら、醒めない悪夢に不安にかられる。

ドレッグの時の痛みと言い、剣で着られた時の痛みと言い、走った時の苦しさと言い、今鼻をぶつけた痛みと言い、夢ならとっくに目覚めているような要素ばかりだ。

 

まさか、……まさかね。

そんな事あるわけがない。これはタチの悪い夢なんだ。

 

現実逃避気味に、僕は石のベッドの上で仰向けになった。

 

 

 

そして目覚めた僕は思い知らされる事となった。

にわかには信じられないが、自分がゲームの世界に入ってしまったという事を。

 

Dwemer Jarの中で目覚めた僕はペリナルをその場に待機させて一人ポットの外に出た。そこはイタリアじゃ見当たらない、木造建築の中。訳が分からず出歩いた僕に、衛兵達が問答無用で襲いかかってくる。

 

そういえばファエンダルを殺した犯人という事になっていた事に気付き、慌てて逃げ出すと、僕が逃げる先々で人の悲鳴が上がった。

 

「売り物の肉が全部消えてしまった、一体何なんだ!?」

 

「新鮮な野菜や果物が一瞬で消えたわ!一体何が起きてるの!?」

 

「装飾品が!夫が作った装飾品が!!消えてしまった!ソラルドにあげる為にとっといたのに!誰か犯人を捕まえておくれ!!」

 

何が何だかよくわからないが、突然起きた怪現象に僕を追いかけていた衛兵達はやむを得ず兵力を割いだ。

これはチャンス、逃げまとう住民達の間に飛び込み、間を縫うように進んで衛兵達をまく。

 

そして気づかれないように下水道に近づき、背負ってきたDwemer Jarを水面につけ、その中に手を伸ばす。

 

浮遊感の後、僕は瓶の中の空間に戻っていた。

重力が独立してるのか、ドアの隙間から見て瓶全体が流されている筈なのに、中にいる僕達はなんともない。

 

このまま衛兵に見つからずに夜までやり過ごせることを祈る。

夜になって、黒っぽい服装に着替え、闇夜に紛れてホワイトラン領から逃げだせばとりあえず安全のはずだ。

 

着替えの服を漁ろうと振り向いた僕は、目の前の小山に絶句した。

 

色とり取りの新鮮野菜に狩ってきたばかりの肉、その他にも金属のインゴットやらなめした革やらソウルジェムやらアクセサリーやら、所謂生産アイテムが小高く積み上がっていた。

さっきまで無かったこれらのアイテムは、先ほど悲鳴をあげていた店主達の売り物だったような気が……

 

そういえば僕は雑多なアイテムのせいでメモリー不足になるのが嫌で、視界に映るアイテムを自動で採集する「Auto Harvest」というModを導入している。

まさかそれのせいで……

 

「我が主よ、窃盗は良くない」

 

「ぬ、盗んでなんかいない!!」

 

僕だってそんな事はしたくないさ!でもまさか、それだと、どこに行っても僕は……

 

 

 

「スタァァップ!!」

 

あえて考えないようにしていた最悪の事態が、現実となった。

何とかホワイトランを抜け出し、ドーンスターに向かおうと農場を通過した途端、農場の主人が悲鳴を上げ、一瞬で空になった畑を見て近くを巡回していた衛兵が駆けつけてきた。

 

「貴様は大量窃盗の罪を犯した!罰金の920ゴールドを払うか、ドーンスターの牢獄で頭を冷やすんだな!」

 

「誤解だぁぁぁ!!」

 

水辺まで逃げて川に飛び込むふりしてDwemer Jarに飛び込む。

そのまま流された先のファルクリース領で、

 

「はっはっは!新鮮な肉が自分から飛び込んできたぞ!一滴残らず血を吸い尽くしてやる!!」

 

「どうやったか知らないけど、製材所の木材を根こそぎ奪うなんて……総額12000ゴールド、吸血鬼の私達じゃなくても死刑よ!」

 

「もう嫌だこんな生活ーー!!!」

 

吸血鬼夫婦が経営している木材工場の木材を根こそぎ奪い、命からがら逃げ込んだイヴァルステッドで、

 

「ナルフィは悲しい!たった一つ残ったレイダの思い出が!レイダレイダレイダぁぁ!!!」

 

「おい泣くなナルフィ!……帝国のこそ泥め、ぶっ潰してやる!」

 

「フッ、真実とは、願望でしかないのか……」

 

乞食の家をすっからかんにしてしまい、村人総出で追いかけられ、滝に飛び込んで逃げた僕は、いよいよ悟りを開いた。

 

人里に近づけばこの呪われたアイテム自動採取能力でたちまち犯罪者に。

ただひとりの味方ペリナルは、エルフと見れば時と場所と場合を弁えずすべてを投げ打ってでも惨殺しないと気が済まない天然危険物。

 

こうして行く場所のない僕は、文明生活を諦め、山賊や魔物の巣穴に挑んではその日の食材や生活用品を調達する狩り暮らしの生活を選ばざるを得なかった。

 

そして――

 

「主?危険。私、確かめる。……エルフ?エルフ。エルフ!エルフは死ね!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!!エルフは死ねエルフは死ねエルフは死ね!!!!!肋骨砕いて心臓潰して殺ス!!!!!ヒャァーー!!もう我慢できない!殺す殺す殺す!!エルフぶっ殺す!!!慈悲はない!!!う゛ぁごい゛え゛ぁぁああぁああああああーーーー!!!!」

 

食材を探しに忍び込んだ盗賊のアジトで、悲劇が再び僕を襲った。

 




マックミラーノの犯罪歴、以上です。
えーと、補足というかこんなコアな小説読んでる方なら知ってると思いますけど、ペリナルはプレイヤーじゃなくNPCです。
三度の飯よりエルフをぶっ殺すのが大好きなイカしたナイスミドルです。

ドレーグですが、これはTES3モロウィンドに登場したモンスターで、誰かがSkyrim Monster Modを入れたおかげで登場しました。
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