スカイリム~廃人達の生き様~ 作:荒ぶるメタボ
「……と、いう事があったんだよ。さて、君たちのジャッジを聞かせてくれ。
僕はギルティなのか?それとも世界がギルティなのか?」
想像を絶するようなアレな経歴を淡々と語り、どこか悟りを開いたようなマックミラーノは死んだ魚のような目で見上げてきた。
こいつ摩耗してるな……
「急にそんなことを言われてもな……」
「そう言うと思っていたよ。いや、そこからファイアボールの雨を落として来なかっただけマシか。
……もう放っといてくれ、どうせ僕はどこに行ってもトラブルしか起こせない文字通りのトラブル体質。
よしんばここから出ても惨めな狩り暮らし生活に戻るだけ。誰からも理解されず、誰からも必要とされずいつか寿命が来て人知れずひっそり死んで骨の粉になって風に混ざって飛び散るんだ……せめて死ぬ前に、もう一度ピザを食べたかったなぁ……」
うわぁ……この人完全に暗いマックス入ってるぞ……
“Mod名: Auto Harvest”
“保有者:マックミラーノ”
“ランク:A”
“効果: 周囲30フィート内に存在する素材アイテムを自動でインベントリに転移する”
“犯罪歴:マックミラーノ”
“殺人:2――ファエンダル、ヴィジョン”
”窃盗:418”
“脱獄:1”
一応サングインの目で見てみると、本当にModのせいらしい。
「いいえ、私は信じますよ、マックミラーノさんの話を」
「ちょ、お前自分で凶悪犯だから気をつけろって言ったよな!?」
「言いましたけど、話聞いてませんでした?
あなたは顔が不自由というだけでその人を全否定するタイプですか?」
「……悪ぃ、そういう意味で言ったんじゃ……」
苦虫を噛み潰したようなヴィジョンの表情が生々しい。
こいつも顔面格差社会の被害者か……
「そういう事なので、マックミラーノさんちょっとそのポットに入っててください。
「テレキネシス」で引き上げますから」
「いいよ、どうせ僕なんか……」
「……いいから、早く入ってください。それとも「吸血鬼の手」で直接引っ張って欲しいですか?」
「ははは、拒否権もないとは。世界はどこまでも不条理だ、僕が何をしたんだろう?いや、考えるに何もしていない方がおかしいのか。
今まで糧となった家畜たちの犠牲の上に僕は立っているんだから。そう考えると人間誰しもが罪人ではないのか?罪人が罪人を裁くなんておかしな話じゃないか。いや、そもそも僕がこんな事態に陥いてることが神様の裁きなのか、だが、…………」
俺は無視して膝を抱えてブツブツ呟いてるマックミラーノを無言で引き上げた。
Dwemer Jarが何故か尻にくっついていて、さながら便器に座った考える人のような彼を便器ごと隣に下ろす。
「宗教の話はわかりませんけど、そんなに悲観しないでください。陳腐な言葉ですが、生きていればいい事はありますよ」
「いい事なんて、ない。僕を見てくれよ、この有様を。
生きているだけで周りに迷惑を掛ける、傍から見れば山賊と何変わらない生粋の犯罪者なんだぞ?!」
「迷惑じゃないですよ、現にマックミラーノさんが山賊を倒したおかげで助かった人もいますし、さっきも私を助けてくれました。
情けは人の為ならず、巡りに巡って自分に帰ってきてくれます」
「つーか、私も殺されているんですがそれは」
やばい、言ってて背中が痒くなってきた。
普通ならクサすぎて考えるだけでもゾッとするような台詞も声が可愛いせいでバンバン出てくる。
現にドン引きしたマックミラーノが唖然と俺をガン見していた。
「……美しい。なんて心の美しい女性なんだ、君は!」
「え、ちょ、ええッ?!」
無気力に便器座りしていたマックミラーノは一変、獲物を見つけたゾンビのように俺の手をとって、あろうことか手の甲にキスてきた。
「あー、プレイヤー同士だから言っとくが、そいつ中身男だぜ」
「はぁ?」
「ええ、そうです。こう見えても俺男ですから」
ヴィジョンの服で拭おうとして全力で躱され、仕方なく地面に擦りつける。
倒錯野郎が次に変なことをしてきたら壁に叩きつけるつもりで、「吸血鬼の手」を構えた左手を突き出しながら。
「いいや、君は女性だ。僕にはわかる。母性をくすぐる幼いアバターに優しい心。
決め付けはそのキモノ、ヤマトナデシコの証だ!」
「間違った日本文化に傾倒してるとこ悪いんですけど、俺本当に男ですから」
「突然手の甲にキスなんてしてすまない、でもそれは僕の国では婦人に対する礼儀なんだ。
決してやましい気持はなかったんだ、だからそんなに警戒しないでおくれ!」
どうしよう、物凄く殴りたい。
胸に片手当てて膝立ちとかどこのロメオだ己は。
といって本当に殴ったら殴ったでどうせまた一人で暗いマックス迎えようとするだろうし、面倒くさいやつだな……
「あーはいはい、もうそういう事でいいですよ。それじゃあ、俺たちは帰りますので」
「お、もしかして照れてる?なぁお前照れてる?ねぇねぇ、男に言い寄られてどんな気持ち?ねぇどんな気持ちぃ?」
「マックミラーノさん、さっきの白いの出しちゃっていいですよ。いいえ、出してください」
「殺す気か!」
殺す気だよ。
ご丁寧に肩に手を回してウザイ質問を連呼するヴィジョンの脇腹をド突いて、さっさとヘタリア人から逃げようと足を早めた矢先、
「待ってくれ!……お願いがあるんだ、僕も連れて行ってくれないか?
迷惑は掛けない!街中にいる時はポットの中に隠れているから」
一番聞きたくなかった台詞が飛んできた。
俺の首に回してたヴィジョンの手がピタリと固まる。俺も同じだ。
「いえ、悪いですよ。街の中にいる間ずっとポットの中なんて可哀想じゃないですか、マックミラーノさんはこれからも是非山賊退治に精を出してください」
「そうだよ、それにほら、街はダメでもオークの要塞とか人が少ないところなら誠意込めて謝れば分かってくれるかも知れないぜ!」
ここで応えてしまったらダメ人間を養う義務が生じてしまう気がして、ヴィジョンも俺も全力で遠まわしに拒否する。
「いや、ダメだ。君みたいな優しい女性をそんなオカマ野郎と一緒に居させるなんてできない!
確かに僕は無力かもしれないけど、装備や素材アイテムなら沢山ある。戦闘面は無理だけど、ほかの場面で役にたつはずだ」
「それ全部盗品ですよね」
「うぐ……」
とはいえ、このまま放っといてもその内また憂鬱メーターが溜まってハイフロスガーから紐なしバンジージャンプやらかしかねない。
そうなったら寝目覚めが悪すぎる。何か方法は?
要するに問題はその自動採取Modなんだから、外すなりして機能オフにすればいいんだが。
“パワー:マックミラーノ”
“皇帝の声”
“異種間通信”
“Auto Harvest Config(自動採取設定)”
なにか方法はないか、そう思ってマックミラーノを見ていると、こんな文字が浮かび上がってきた。
サングインの瞳のアナライズ機能か。メニューだけじゃなく、相手のスキルも覗けるなんて案外便利かも知れない。
「その自動採取Modの事ですが、もしかしたら何とかなるかも知れません」
「えっ?本当かい!?」
「ええ、マックミラーノさん、魔法の使い方わかりますよね」
「分からない……」
そういえばマジカ低かったなこいつ。
戦闘もあんな規格外がいるんだから苦労なんてしなかっただろうし、自動採取があるんだから食べ物やポーションには事欠かないだろうし、寝床だってポットの中に入れば……あれ、なにこのチート星人。
「……「Auto Harvest Config」って念じて、喉に意識を集中して読み上げてください」
「なんで?ああ!そうか、それが呪文なのか!
……よし、Auto Harvest Config!って、うぉぉっ!?」
突然目の前に7つの光玉が浮かび、マックミラーノは驚いて腰を抜かした。
それを追いかけるように光の玉がゆらゆらと動き、彼の顔の前で静止する。
“錬金素材自動採取:ON”
“食べ物自動採取:ON”
“鍛造素材自動採取:ON”
“付呪素材自動採取:ON”
“建築素材自動採取:ON”
“宝箱自動採取:OFF”
“戦利品自動採取:OFF”
サングインの瞳を通して、青い光玉がONで、赤い光玉がOFFという意味なのがわかる。
「な、なんだこの光は……?ば、爆発しないよな?」
「大丈夫です、その光の玉は自動採取Modの設定状態を表していて、無害なはずですから。
青い玉をすべて赤にすれば自動採取の機能を全部OFFにできるはずなんですが、どうすれば良いか分かりますか?」
「そんなこと急に言われてもわかるわけないだろ……」
「要するにスイッチみたいなモンだろ?捻ってみたらどうだ?」
「や、嫌だよ!火傷するかもしれないだろ!?」
「大丈夫です、私回復魔法レベル100ですから。もし最悪死んだとしても、リザレクションで蘇生できます」
「……っ!もう、わかったよ!ええい、どうにでもなれ!!」
大きく深呼吸して、目を閉じたマックミラーノの手が光玉に触れる。そのまま摘むように捻ると……
青い光が赤色に変色し、サングインの瞳で見た数値もOFFになった。
恐る恐る目を開けたマックミラーノはそれを見て、俺の方に振り向く。
頷いてやると、同じような要領で全ての光玉を赤に変えた。
「これで大丈夫なのか……?」
「試してみましょうか。ちょうどそこに宝箱がありますし、なにか素材アイテムが入ってるかもしれません」
もし自動採取がオフになっているのなら、箱から出したアイテムは消えずに残るはず。
よく見る四角い木の箱ではなく、鉄で出来た丸みを帯びた宝箱……ダンジョン制圧の報酬箱を開き、中身を漁る。
これは、ヴィジョンのアサシンコートじゃないか、何も着てないと思ったらこの中に入ってたのか。
他には、青いガラスのような材料で出来た片手剣と、皮の盾、それに……
「…………」
俺は無言で宝箱を閉じた。
「おい、どうしたんだよ。素材アイテムなかったのか?でも空っぽって訳じゃあないだろ?
どれどれ……おっ、これ俺のコートじゃん!山賊の野郎こんなとこに入れやがって。
この剣みたことないけど、誰かのModで追加したやつか?でこっちは皮の盾か。これだけショボイな……それとこれは……」
ヴィジョンは無言で宝箱を閉じた。
「どうしたんだ、二人共。無言で宝箱閉じて?
中に素材アイテムなかったのか?でもまだ何か入ってるようだけど……ってこれは!」
三人目のマックミラーノは驚いた様子で箱の中身を取り出した。
『新たな手が灯火に触れる』
眩い光を放って、その白い球体……メリディアのビーコン(光の女魔神の宝玉)が独りでに喋りだす。
「おぉぉぉいぃぃぃ!!マックミラーノォォ!!あえて無視してたのにてめぇ空気読めぇぇ!!」
「俺は何も聞いてません何も見てません」
速攻で離れようとした俺の背中にジリジリと熱い感覚が広がる。
『死霊術師マルコランがおぞましい死霊術で我が聖域を犯しています。我が勇者アーカーシャよ、キルクリース山に向かうのです、マルコランを倒し、おぞまじい死霊術から我が聖域を解放するのです』
何も聞いてない何も聞いてない何も聞いてない。
「というか、なんで名指しなんですか?私吸血鬼ですよ?」
メリディアと言うのはとにもかくもアンデッドが嫌いなデイドラロードで、言ってしまえば吸血鬼の俺も目の敵のはずなんだが。
『事がなった暁には、我が秘宝ドーンブレイカーの担い手にしてあげましょう』
「……もう帰っていいですか?」
『待ちなさいよ!待って!……私だって貴女のようなゲロカス吸血鬼を勇者にしたくなかったわよ!
でも折角モラから譲ってもらっ……こほん、献上させたModが運営から削除されて、ダウンロードしたのが貴女しかいなかったからしょうがないじゃない!!
とにかく今すぐに来なさい!メリディアがお前に命じます!……こ、来なかったら手下のデイドラ達を使って毎朝カーテンを捲るからね!』
うわぁ……嫌がらせが地味だ……
でもなぁ、一応相手はデイドラロードだし、その上アンデッド大嫌いのメンヘラ女神。本気で怒らせたら片目じゃ済まない気がする。
なんて思っているうちにメリディアのビーコンは輝きを失い、吸い込まれるように俺の体の中に消えた。
「キルクリース山かぁ……嫌だなぁ……ソリチュードまで行くの面倒くさいです……」
「……まぁ、なんだその、ドンマイ」
「ちょっと待ってくれ、なんで二人共そんな嫌そうな顔してるんだ?
デイドラのアーティファクトが手に入る滅多にないチャンスなんだぞ?」
「そう思うなら一人でソリチュードまで行ってきてください。
俺は嫌ですよ、なんで態々北の端まで行って、アンデッドの大群倒して、鉄の剣に毛が生えた程度の攻撃力と初級魔法以下の付呪が付いた、子供のおもちゃの木刀よりも成長性がない上一々エフェクトがウザイ駄剣を取らないといけないんですか。
それに俺吸血鬼ですから効果が発動したら自分も巻き添え喰らいますし」
なんて愚痴まけても、名指しで指名された上、体の中に得体の知れない物をねじ込まれて無視するわけにもいかない。
これ以上ない溜息をついて、不服さをありったけアピールしてから、重たい足取りで洞窟を後にした。
Modの影響が全てのプレイヤーに出るものと個人に出るものの境界線についてですが、今のところ
ダンジョン・NPC・モンスター・アイテム追加⇒共通。ホワイトラン地下水道(Skyrim Sewers)やファルクリースの宿屋(Moonpath to Elswayr)、ドレーグ(SkyMoMod)とか。
フォロワー⇒導入したプレイヤーとは無関係に生活しています。マックミラーノとペリナルは関係が特殊なので、例外です。
スキル・魔法・特技⇒固有。スタンドや宝具みたいなもの。
モンスター強化⇒NPC<超えられない壁<生物なので、AI系強化は全て無効。反映されるのは魔法やスキルの追加ぐらい。
LevelList⇒カオス。雑魚と野生のラスボスが混在するレベル。
……こんな感じです。カオス過ぎる要素は世界の修正力で直されますが、度を抜いて凄まじいのは生き残ります。シェオゴラス様の加護で。