To Loveる~二つの人格を持つ者~   作:TRcrant

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これより本篇となります。


第1話 始まり

「ん……」

 

窓から差し込む眩しい光に、俺は朝であると思いベッドから起き上がった。

俺、結城 竜介はどこにでもいる高校生だ。

ある一点を除いてだが。

 

「ふわぁ~」

 

しっかりと寝たはずなのだがあくびが漏れてしまうのは、まだ寝たりないからなのだろう。

だが、別に俺は夜更かしをしたというわけではない。

 

「竜介、起きてる?」

「ああ、ちゃんと起きてる」

 

そんなどうでもいい疑問を考えていると、ドアを開けて入ってくる黒髪を後ろの方に束ねる真面目そうな雰囲気をまとっている少女。

彼女は、俺の妹にあたる美柑だ。

 

「………」

「な、何だよ」

 

じーっと俺の事を見てくる美柑に、俺はその視線の理由を聞く。

 

「いや、竜斗じゃないかなって」

「話しているだけでわかってくれよ。あいつじゃないだろ?」

「そうだね。竜斗がまた昨日の夜家の中を歩き回っていて、びっくりしちゃって大きな声で叫んだら睨まれたから。だって、いきなり目の前に出てきたら誰だって驚くよ!」

 

美柑は俺に不満をぶつける。

ある意味正しいけど、言う相手を間違えている。

 

「………それはあいつに直接言ってくれ」

 

そんな美柑に、俺はげんなりとため息をつきながら返す。

 

「まあいいや。朝ごはんで来てるから、早く降りてきてね」

「分かった」

 

俺はそう告げて部屋を後にする美柑にそう答え、手早く制服に着替える。

それは何時も繰り返された日常のサイクルだ。

 

「っと、そうだった。日記日記っと」

 

ただ違うのは、そのサイクルの中に日記を確認するのがあること。

机の上に置かれた一冊のノートは通称『交換日記』だ。

とは言っても、他の誰かと交換日記をしているわけではない。

していたとしてもする相手がいない。

そんな俺が交換日記をしている相手は自分自身(・・・・)とだ。

俺はノートをめくり、昨日の日付のページを見る。

そこには読みやすく文字が綴られていた。

 

『その願いは取り下げだ。私が手を貸したら意味がないだろ? しかも男として最低の行為だ。そもそも私は恋愛関係は苦手だ』

 

俺の頼みはあっさりと却下された。

先日付のページに、”とある女子への告白をしたいから力を貸してほしい”ということを書いたのだ。

俺としては、冗談半分で書いたのだが、こうもあっさりと却下されると何だかショックだ。

その女子の事に関しては、またの機会に説明するとしよう

さらに、下の方に文字が続く。

 

『追伸:お前の妹に、いい加減慣れろと伝えてくれ。会うたびに悲鳴をあげられる身にもなってほしい』

 

(あいつも気にしてたのか)

 

その文章に、俺は思わず苦笑してしまった。

さて、俺のたった一つ普通の人と異なる点。

それは、俺の中にいるもう一人の”俺”の存在だ。

 

その兆候が出たのは俺が10歳の誕生日を迎えてからだ。

誕生日を迎えて数日後を境に、妹の美柑が俺を畏怖の目で見るようになったのだ。

その理由は”俺がまるで人が変わったかのように、怖くなったから”らしい。

その後もそんな事が頻繁に起きた。

それに伴って、俺自身も記憶が途切れたりすることが自然と多くなった。

そして記憶が戻った時には決まって周りの人が怯えたような目をする。

たまに帰ってきた両親に事情を話したところ、精神科で見て貰うことになった。

その結果、俺にはもう一人の人格が出来ているという診察結果が出た。

そして医者の勧めで交換日記を始めたところ、その人物と俺は今のような文談が可能となった。

ここまでなら、俺は普通の二重人格だろう。

 

普通のとは違うのは、もう一人の俺には不思議な力があること。

そして、俺の判断で自由に入れ替わったりすることが出来ることだ。

その方法も、もう一人の俺が教えてくれた。

何でも、体のどこか(手の甲などでもいい)に五芒星を描けば力のみを行使できるようになり、地面に描けば人格を任意に入れ替えることが出来るらしいのだ。

入れ替える際には地面に五芒星を描いた後にしゃがみ込んでどちらか片方の手でその場所に触れなければいけないという制約はつくが。

最初は俺も信じてはいなかったが、試しにやってみたら普段の俺にはできない芸当(100mを5秒で走ること)が簡単にできたのだ。

それ以来、俺は自分の手には負えないほどの問題(何故か看板が落ちてきたときや、階段から滑り落ちたりした時など)が起こった時に、もう一人の俺の力を借りるか、入れ替わったりしている。

その代り、夜に俺が寝た後はもう一人の俺の時間と決めている。

その時間は、彼が何をするのも自由な時間だ。

ちなみにもう一人の俺の名前が”竜斗”だ。

もっともこれは本名ではなく、俺がつけた名前だ。

理由としては俺の名前の、竜介と二つ目を示す”Two”の頭文字を取ったからだ。

彼曰く『どうでもいい』とのことなので、俺と美柑は彼を竜斗と呼んでいる。

一番不思議なのは、家族が俺達を受け入れた事だった。

病院に行く時まで怯えていた美柑でさえも、気づけば普通に接する(竜斗に対しては別だが)ことが出来るようになっていた。

だが、それは社会ではそれが通じない。

社会は俺のような異常な人物には厳しいのだから。

だからこそ、俺は学校などで不用意に力を解放したり、入れ替えたりしないように過ごしているのだ。

 

「竜介~!!」

「あ、ああ。今いく!!」

 

下の方から聞こえる声に、俺はそう返すと、慌てて自室を後にするのであった。

……この日を境に、力を解放したり入れ替えたりすることを迫られる状況が頻発することも知らずに。

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