To Loveる~二つの人格を持つ者~   作:TRcrant

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大変お待たせしました。
第8話になります。

本作は一応原作沿いです。
そして、平均文字数は3000~5000字程度にしております。


第8話 話と始まり

「ん………」

 

次の日、俺はいつものように目を覚ました。

 

「って、また寝てるし」

 

横を見るとまた裸で寝ているララさんの姿があった。

彼女には羞恥心と言うものがないのだろうか?

 

(今なら、クーリング・オフができるチャンスなのではないか?)

 

無防備に眠っているララさんを見て、そんなことを考えてしまった。

だが、その考えをすぐに振り払った。

 

(それができなかったからこうなっているわけだし。それに)

 

今自分がやろうとしていることにものすごく抵抗を感じていた。

 

「あ、そういえば交換日記」

 

そこで俺は交換日記のことを思い出し、ララさんを起こさないようにベッドから出ると机の上に置かれた交換日記帳を開いた。

交換日記には、このどうしようもない状況をなんとかするべく突破口を聞いておいたのだ。

 

「………」

 

ノートを開いた俺は、そこに書かれている内容を見て愕然とした。

 

『美柑でもなくこの私に聞いたということは、非常に物事の通りをわきまえているとみる』

 

最初は称賛の言葉が綴られていた。

そしてその下の行にさらに続いていた。

 

『だったら分かるだろ? 竜介』

 

その文字の下にはやや大きめの文字で答えが書かれていた。

 

『諦めな』

 

と。

 

「ば、バッサリと切り捨てたな」

 

まあ何かをしてもらおうと考えていた俺に問題があるのは確かだが、もう少し言い方というものもあるだろう。

 

(そういえば、美柑のことを名前で書くようにしたんだ)

 

これまでは”あいつ”や”妹君”などだったが、今回はちゃんと名前が書いてあった。

どうやらいい方向に改善したようだ。

もっとも、それが今の状況に何の影響も与えないことは言うまでもないが。

 

「リュウスケー、おはよ~」

「うん、おはよう。そしてさっさと服を着てっ」

 

目をこすりながら上半身を起こすララさんに、僕は自然に挨拶をしながら服を着るように告げた。

 

「わかった。ペケ」

「はい、ララ様」

 

ララさんの言葉に応じたペケによっていつもの服装に変わった。

 

(本当にどうすればいいんだ)

 

残り時間はあと12時間ほど。

はたして、俺にクーリングオフをすることができるのだろうか?

 

(でも、やるしかないんだ)

 

そうでなければ俺の人生はとんでもないことになるかもしれないからだ。

いや、別に婚約が嫌なわけではないのだが。

だが、このまま成り行きでというのは後悔するような気がしたのだ。

 

「竜介~、ララさん。朝ご飯の支度が出来たよー!」

「ほーい。リュウスケも早く」

「あ、うん」

 

下のほうから聞こえてきた美柑の声に応えたララさんが俺にそう告げると、俺の腕をつかんで半ば強引に自室を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(残り1時間)

 

夜。

 

夕食を終えた俺は、リビングのソファーの上に腰掛けながら時計を見ていた。

クーリングオフができるまでもう時間が残されていないのだ。

今、ララさんは食器を片付けている美柑の手伝い中だ。

ララさんはすっかり結城家に溶け込んでいた。

これはララさんがすごいのか、それとも美柑の心が広いのか。

恐らく両方だろう。

 

(もう、時間がない)

 

つまりは、今のうちに何とかする必要がある。

口で言うのは簡単だ。

相手に婚約解消を宣言すればいいのだから。

とはいえ、胸を揉みながらというのがそれを難しくしている。

それに何より……

 

『竜介はそんないい加減な人じゃないから』

 

少し前に言われたララさんの言葉が、手をこまねいている一番の理由だった。

もし、不意打ちにも近い形で胸を揉んで婚約解消をしたら、ララさんを裏切ることになる。

確かに俺は婚約を解消したい。

でも、それは誰かを裏切るような卑怯な真似をしてまでするべきことなのだろうか?

 

(こうなったら……)

 

「ララさん」

「何? リュウスケ」

 

だからこそ、俺は一世一代の大勝負に出る決意を胸に、ララさんに声をかけた。

 

「ちょっと話したいことがある。ついてきて」

「話したいこと? うん、わかったよ」

 

俺の誘いに、ララさんは何ら疑問を持った様子もなく答えると、最後のお皿だったのかそれを美柑に手渡してこちらのほうに駆け寄ってきた。

そして俺たちはそのまま自宅を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が出した結論、それは直接真正面からララさんに話すことだった。

卑怯な手は使わずにちゃんと話したうえで婚約を解消する、

これが、今俺が考えている中で一番最善の策のような気がした。

まあ、そのあとにどのようなことが起こるかまでは予想ができないけれど。

 

(もし本当に地球消滅になったらどうしよう)

 

そんな不安に駆られるが、だからと言ってここで尻込みするわけにはいかない。

 

(よし、俺はやるっ。婚約解消を)

 

俺は自分に気合を入れる。

そうこうしているうちに近くの土手にたどり着いた俺は、そこに腰を落ち着かせる。

 

「ララさんもどうぞ」

「それじゃあ」

 

俺の促す言葉に、ララさんは静かに俺の隣に腰掛けた。

だが、そこで静寂が俺たちを包み込んだ。

俺が本題に入ればいいだけだが、それを口にすることを躊躇していた。

いざ本題を切り出そうとすると、口が凍り付いたかのように動かなくなってしまうのだ。

 

「婚約の件だけど」

 

そんな中、ようやっと紡ぎ出せたのはその一言だった。

だが、きっかけさえ作れば後は簡単なものだ。

俺はこの場の流れに任せることにした。

 

「嬉しかったよ」

「え?」

 

そんな俺の作戦も、ララさんの一言で止められてしまった。

 

「第一公女っていうのもなんだか窮屈なんだよね。お見合いとか会食とか、お父様がこう言ったとかって。

誰も私の話を聞こうともしなくて」

「………」

 

どこか悲しげでそれでいてつらそうな表情を浮かべながら口にした言葉は、聞いているだけでも胸が締め付けられるような内容だった。

 

「だから、家出したんだ」

 

それが、家出の理由だった

 

(って、家出だったのかよ)

 

何となく気づいてはいたが、本当にそうだったということを知った俺は、どんな反応をすればいいのかに心の中で首をかしげるしかなかった。

 

「でもリュウスケは違った。突然現れた私の話を聞いてくれて、私を守ってくれた。だから、ありがとう」

「……」

 

柔らかい笑みを向けられた俺は、それ以上彼女の顔を見ていることができなかったため顔を逸らし川のほうへと視線を向ける。

水面には夜空がうつっていて、それを見ているだけでなぜか心が落ち着くような感じがした。

 

「それで、リュウスケの話って何?」

「それは……」

 

改めてララさんに切り出された俺は、肝心の本題を言えずにいた。

簡単なことだ。

ただ婚約を破棄することを告げればいい、それだけのはず。

なのに、どうして俺は何も言えないのだろうか?

 

(理由なんてわかってる)

 

それは俺の気持ち。

彼女との婚約を破棄すればララさんが悲しむことになる。

でも、俺には片思いの相手がいる。

二つの相反する思いが先の言葉を言うことを憚っていたのだ。

それを打ち破ったのは、けたたましく鳴り響くアラーム音だった。

音源は、ここに来る際に持ってきておいた時計だった。

これが意味することはただ一つ。

 

(お、終わった……)

 

婚約解消のクーリングオフ期間が終了したというとだった。

ふと体から力が抜けた俺はそのまま草むらに倒れた

 

「リュウスケ? 大丈夫? リュウスケー」

 

ララさんに呼びかけられるものの、俺はただただ苦笑するしかなかった。

これが、婚約解消作戦の顛末だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦失敗という散々な結果に終わった翌朝、学校に行こうと玄関を開けた俺(と俺を見送りについてきたララさん)を待っていたのは、ザスティンさんとボディーガードと思われっる黒のスーツにサングラスを身に纏った男の人の花道のようなものだった。

 

「婿殿とララ様の婚約を祝して、ばんざーい!」

「……」

 

正直に言おう。

ものすごく恥ずかしい。

しかも花道を作っている男たちは皆塀よりも背が高く黒のサングラスに黒のスーツというその姿はマフィアを彷彿とさせるものであり、人から見れば異様な光景でもある。

現に道行くご近所のおばさんたちは、何事だとばかりにこちらを見ている。

この状況を見る限り、花道を作るのを婚約が確定するまで待っていたと思われる。

 

「……いってきます」

またあとでね(・・・・・・)リュウスケ~」

 

雲一つもない(訳がないが)青空に反して、俺の心の中は曇天だった。

しかもそのうち雨でも降りだすのではないかと思えるほどに。

後のほうでかけられたララさんの言葉も頭に入ってこないほどに憂鬱だった。

だが、俺はこの言葉の意味をしっかりと考えればよかった。

そんなふうに後悔するのは今から数十分後のことだった。

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