短編作品集   作:玄音

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かなりお待たせした感がありますね。ほんとに。
今回は季節外れのホラーです。

かなり文面が難ありですが、満足感と達成感があります。


醜い蕾(つぼみ)

明かりに照らされ出されたソレは紅く完熟しくみずみずしいその唇、透き通る闇を宿すその瞳は妖艶で長い髪が身体に覆い被さる様に垂れ真っ黒な物体からは見えるのは唇と隙間から見える白く滑らかな身体、卑しく哀しく美しさを重ね合わせたソレはただひたすらに繰り返す。

ズズズと這いずり寄る何かにすがるようで咬み殺すように息を荒らげながら迫り来る。遅いはずなのに重苦しい雰囲気に飲まれればたちまち脚と腕は何かに絡め取られ息苦しさすら感じ始める。

 

黒髪の隙間から除く赤い瞳、猫のように鋭く血のように紅い瞳、逸らすことの叶わないソレに飲まれる様に息つく間すらありはしない。

 

しまいには少年の足元に顔はあり、段々と近づいてくる。ジッとこっちを眺めながらつま先から太もも、股間にかけ腹から胸にそして首に到達した時、シュル。熟れた舌が少年の首を何度も何度も丁寧にゆっくりと舐める。

 

頬は赤くとても可愛く甲高い声が一層高まる。いわれぬ何かが身体中をかけめぐる。ただただその何かに身をゆだねる。

 

ス、スー。突然、白い手が胸から下へと撫で降りる。ドクン、ドクン。と脈が早く動き始め、巡っていた血流はある一点に集中し出す。太もも辺りに添えられた手の感触は布のように滑らかなで餅のように柔らかい肌。お互いの顔は見つめ合う、動けばぶつかりそうな距離少年の頬はより紅く、視点は泳ぎ唇から目を行ったり来たりしていた。

 

少年の顔は突然ソレと重なる。互のモノが絡め合う、柔らかくどこか甘く感じられた。

 

快楽に身を委ねるかのように目を閉じる。息つくまもなく次第に激しくなる絡め合いにただただ為すすべもない。

 

 

・・・ズブ。目を見開く、甘味なる快楽の幻影にいた少年を槍の如く貫く痛みが走り、現実に引き戻した。

 

 

瞳は下に動き顔も合わせて動く。心臓が脈打つ音が早まる。白い手が胸に沈む。口から溢れる血をソレは湧き水の如く飲んでいた。骨も肉も掻き分けて進む手を止めるすべはこの時少年は持ち合わせていない。いや、抵抗すらできないだろう。二度と味わえない快楽の波に飲まれているのだから。目の前のソレが喉を鳴らしながら自分の血を飲むさまは普通なら恐ろしく感じるだろう。だが少年は歓喜にもにた感覚に襲われていた。自分の血が白い体を汚すさま、自分の血が飲まれているさま、さの光景を目の当たりにして感じていた。

 

消されいく意識が見せた最後。ソレは心臓を掴み引きちぎろうと入っていた手を引く。ブチブチブチと引き切れる肉、血管の音は身の毛もよだつ。が、その音ですら天使の音のような安らぎを与える。風前の灯のように命が枯れる。ああ、とてもとても、美しい。白と赤が混じり合う醜美に最高潮の快楽が押し寄せる。心臓を口に運び貪り尽くす、獣のように激しく時折乙女のように優しく残らず貪る。ソレにかかえられた少年はこと切れた人形になっていた。火は消えもう暖かさえないただの生肉。

 

 

大事そうに抱える、親が子を抱くように。髪の毛が少年を覆いソレはうつむき白い頬を伝う涙は赤い。

 

口がだんだん首筋に近づき凶悪な八重歯はズブリと張った皮膚を引き裂きかぶりつく。吹き出す血は水と同じく冷たい。生々しく響き渡る音。やがてそれも終わる。支えきれなくなった頭は落ち、どこかに転がっていった。手探りで探す、飲めど喰らえど満たされることない渇きを無くしてくれる。闇の中に伸ばした手にぶつかる何か、引っ張る。ピクリとも動かない。両の手で何かを触る。丸みはない、おうとつもない、目や口といったものがない。不自然な何かを確認する。

 

 

それは足だった。何より暖かさがあった。

 

 

男はソレの額に銃を突きつける。黒く無機質で異様な存在感を放つ銃、何があっても勝てないと赤い瞳で睨みつける。男はまぶたを閉じるとすぐに開いた。

 

 

ソレの赤を超える紅を瞳に宿して。同じようで違う。一層の深みに達したような紅にソレは見とれていた。欲しい欲しい欲しい欲しい、かすれた声で何度もつぶやき手を伸ばす。

 

 

整った顔は男とも女ともつかない。それがあの美しさを演出している。幼さを残す顔は少女であり、悲しさが語るのは男の顔である。反するものの不自然が自然になるとき。至極の美しさというものが完成する。

 

 

・・・・・・カランッ。空薬莢が乾いた音を鳴らし地をはねる。火薬の匂いが少した。額に一つの通り道を作り、突き抜け鮮血を巻き込む弾丸。

 

 

冷たい視線と熱い視線。手を伸ばしても届かない果実。いったいどれほどの味がするのだろう。どれほどの感動が押し寄せるのだろう。どれほどのそれに近づけるのだろう。

 

 

銃をしまい黒いコートのポケットに手を入れる。哀れ見るような憎悪の眼差しは骸と化したソレに向けられる。美しさが醜さに変わり果て美は消える。

 

 

 

月明かりの元を歩き出す男の頬は紅い涙が流れていた。

 

 

 

 

ただ、ただ。

 

 

月明かりに照らされた醜い蕾(つぼみ)は今宵美しい華として蘇る。

 

 

ソレは完成された。美しい華として。

 

 

白く紅いその色彩はどこかで魅了し続けるだろう。

 

 

男がまた枯らすまで。




なんでこのホラー回を書くことになったのかと言えば。

だいたい寝る前に小説を書いてしまうこととか、
作業BGMが欝っぽかったりとか色々あります。
長く書いたつもりですが意外と少ないものですね。

誤字脱字がありましたら、御指摘下さい。
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