転生して存在意義は見付かりますか?   作:一方逃避

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自分の新小説、『転生して、存在意義は見つかりますか?』です。
最後、話を付け足しました。


人間やめました
始まりの転生


 俺はただ、自分の存在する理由を見つけたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 辺りを見渡せば、どこまでも続く真っ白な空間。東京ドーム何個分だろうか? 遠くには、誰かがイスの様なものに座っているのが見える。そして、俺の隣にはイケメンのお兄さん。

 

「俺、死んじゃいましたかー」

 

「そ。理解早くて助かるわー」

 

 そう、俺は死んでしまった。多分、事故死だったと思う。あまり死んだときのことなんて思い出したくないね。けど、死んでしまったということは……ここどこ?

 

「毎回聞かれるから先に答えるけど、ここはいわゆる地獄と天国の(あいだ)。死者が集う場所。ちなみに俺は死者の列の誘導係。あ、これ名刺ね」

 

「あ、いらないです」

 

 名刺を渡そうとしてくるが、拒否しておく。どうせすぐ捨てるだろうし、第一こんな所で貰ったとしても、何の得にもならない。紙は大切にしなきゃ。

 

「残念やなあ……。他の子達は貰ってくれとったのに……。やっぱ、デザインの問題?」

 

「その子達が優しいだけでしょう、多分」

 

 サラリーマンじゃあるまいし。さっき少し見えたが、そのデザインはやめた方がいいと思う。貰っても反応に困るだけだ。

 

「つーか、地獄と天国の(あいだ)って……そんなクソファンタジー信じられないんですけど」

 

「そんなこと言うなら、君がここにいるのもおかしいんとちゃうん?」

 

「まあ、そうなっちゃうわけですか」

 

 信じるしかない、か。まず、死んだ記憶を持つ俺がこんな所にいるわけないし――それも真実かはわからないが――、どちらを信じるかといえば、この人の言っていることを信じた方が、全てのつじつまが合う。全てを受け入れてしまおう。その方がきっと良いこと有るさ。それに、生きていたとしても、存在していなかった様なものだしね……。

 

「てか普通、地獄行ってから天国行きか、地獄で罰受けるか決めんじゃないんですか?」

 

「そういうのもあるけどね、色々やね。まず、宗教とか神様自体色々あるわけで。死者の今後の決め方も色々っちゅーわけ。ここに来ることなんて、最近はあんまなかったで? ピークも過ぎたし」

 

「ピーク?」

 

「夏、海難事故とか熱中症で死んじゃう人、多くてね~。いや~、最近は暇で暇で、平和過ぎて」

 

 ふむ、確かに夏はよくそういったニュースを耳にする。俺も毎年多いな、とは感じていた。どうやっても起きてしまうのかもしれない。一人一人の管理が必要不可欠なのだろう。それに俺も事故で死んでしまったのだ。

 

「それでも俺しかいないのって、何かおかしくないですか?」

 

 連日、朝のニュースでは死亡のニュースが1つや2つくらいある。事件、事故問わず。逆にそのニュースが無いこと自体、珍しい。

 

「それはね、色々な場所で分割してるらや。だから、ここに送られてくるのも少ないんよ。それに……ここは敬遠されてるし……」

 

「は?」

 

 敬遠? どういう意味だ? ここには何かあるのか?

 

「おおっと、これはいかん! 話し過ぎてしもうた! さ、早く早く。どこ行くか決めて貰わんと」

 

 いきなり慌て始める、お兄さん。何か尋常ではない。

 

「いや、敬遠って……」

 

「そんなことはいいから、早く行かないと! ほら、行ってらっしゃい! ここ真っ直ぐ行ってイスに座ってる人に話しかければいいから。じゃあね!」

 

 走ってどこかへ行ってしまった。わざわざ追いかけるのも面倒だし、指示に従って行った方がいいだろう。しかし、不穏なワードにしか聴こえないぞ、敬遠って。

 

 なにわともあれ、歩くしか道はない。歩くだけに道ってね! 黙って歩こう……。

 

 歩いてみると、目的まで行くのにそんなに時間はかからなかった。そこにいたのは中年くらいのおじさん。にこにこ笑顔が眩しいぜ!

 

「えーと……、来てみたんですけど」

 

「おおっ! やっと来てくれたか。最近は誰も来なくて、僕が出向いて殺りに行こうかと思ってたけど丁度いい! 君に頼みたいことがあるんだけどね? 」

 

 なにこのハイテンション。そんなに嬉しいのだろうか。少し照れる。でも会って早速、頼み事とはフレンドリー過ぎやしないか?

 

「なんですか?」

 

 出来ればめんどくさいことでなければいいと思う。でも、頼み事を聞いてくれたら、天国行きだったりして! 少しの期待と不安が生まれる。

 

「君には転生してもらいたいんだ。ただ、それには条件があってね……」

 

 転生! それは、よく二次小説にある、死後、ラノベとかアニメの世界に行けるという天国に行くよりも断然いいものだ。あくまで俺にとってだけど。でも、転生って神様のミスで死んだ人が~、っていうのがよくある話。俺の死って普通のものじゃないのか? それとも条件が関係しているのか?

 

「条件は只1つ。君が転生する世界にいるもう1人の転生者を殺して欲しい。まあ、出来ればだけどね」

 

「殺すってそん……」

 

 そんなこと、出来るわけがない。いくら転生するためだってそんなこと……。

 

「ああ、安心して欲しい。出来ればだし、殺すといっても、またこっちに戻すだけだよ? 別に存在が無くなるとかじゃないし。こっちに戻したら天国にでも放り込むし。僕だって鬼じゃあない。私怨っちゃあ、私怨なんだけど」

 

 ただ、と付け加えて

 

「その転生者自体、僕の予定になかったんだ。他のやつが勝手にやりやがってね。全く……困るんだよねえ、勝手にやられちゃあ」

 

「でも、その人だってその世界で生きてるんでしょ!? 悲しむ人だってきっと」

 

 もうその人はその世界で大切な人を見つけたかもしれない。それなのに、それを引き裂くなんて俺には出来ない。

 

「だから、アフターケアは万全にしようとしてるんだよ? 出来ないなら別にいいよ。他の死者に頼むしね。全く、転生すれば新しい存在意義が生まれるかと思ったのに」

 

 “存在意義”。その言葉で俺の考えは180度変わった。俺が、最も欲していたもの。その人が死んだら悲しむとか、大切な人がいるとか、もうどうでもよくなった。俺が今まで、どうやっても手にすることが出来なかったそれ。今はただ、それを手にしたいと強く思うだけ。

 

「お前……本当に見つけられるんだな。俺の存在意義を。俺の生きる理由を……」

 

「へえ、まさか食いつくとは思わなかったねえ。そうだよ、保証しようか。君が、もう1人の転生するを殺すこと。それが、今から君の手にする君自身の存在意義であり、存在する理由であることを」

 

 どんなものでもいい。俺は俺自身が存在する理由が欲しい。それをあるというならば、どんなことだってしてやろう!

 

「いい目だ。なら、君を転生させてあげよう。ただ、勘違いはしないで欲しい。殺すことは強制はしない。まあ、そうなると存在意義が薄れるかもしれないが、自分の判断で全てやってくれ」

 

 それは暗にやれと言っている様なものではないのか、何て疑問は浮かばなかった。ただ、今は俺の欲しいものがてに入れられる、という喜びに満ち溢れていた。

 

「でも、そんなに都合良くその転生者に会えるもんなのか?」

 

 今から行く世界がどんなものかは知らないが、世界という物は広い。出会う確率なんて低すぎるのではないか?

 

「その点については安心して欲しいね。転生者というのは出会う運命なんだ。生きていく中で、出会わないなんてことは、ありえない。どこかで、引き合い出会う。そんなものだ」

 

「なら、いい」

 

「じゃ、これに入ってね」

 

 おじさんが用意したのは円柱状の透明なポッド。下には(無限)の文字。人1人が入ることの出来る大きさだ。

 

「なんだこれ?」

 

「君が今から行く世界で必要になる物だよ。大切にするといい」

 

 入ってみると中は窮屈ではなかった。と言っても手足を広げることなど出来そうにはない。まるで、何かを培養するポッドに入るみたい。

 

「あ、最後に質問。貰うなら、無敵の鎧を持つのと、気を練り出して撃つのと、宙を自由に走れるようになる道。どれがいい?」

 

 う~ん。正直、どれも捨てがたい。無敵なのはいいが、そういうのは、何か相手に力を合わせられて倒されるというのがよくテレビなどである話だ。それに、気を練り出して撃つ、というのもよくわからない。それなら、宙を自由に走れる道、というのが一番いいのではないか。空を飛べるわけではないだろうが、かなり重宝しそうなものだ。

 

「宙を自由に走れる道で」

 

「おや、欲がないんだね。……ますます良い。それでは、君を転生させよう。新たな存在意義を見つけるために殺戮の限りでも尽くしてくれ」

 

 ポッドの上部が閉まった。そして、下から染み出してくる、液体!?

 

「おい! 何だこれは!?」

 

 これでは、転生する前に溺死してしまう。それでは、何も見つけられないじゃないか! 溺死するというよりも、その方が怖かった。

 

「どうなってんだ!」

 

 ポッドの壁を叩くが、おじさんはただ、にこにこと手を振るだけ。胸の辺りまで、液体はもう来ている!

 

「おあっああぁ……」

 

 液体で満たされ、息をすることが出来ない。肺にあった酸素が一気に外に出ていってしまう。

 

 意識が無くなるのに、そう時間はかからなかった。最後に見たのは、ポッドの透明な壁に映る俺の顔が徐々に機械の様になっていく様子だけだった。

 

 

●●

 

 

「あ~あ。転生しちゃうんや~」

 

 ポッドの中でもがいている彼に手を降っていたら、後ろから声をかけられる。誰なのかは振り向かなくてもわかる。この場には僕と彼、そして今まさに転生しようとしている彼しかいない。列誘導係りのホンダ君だ。

 

「これはこれは、ホンダ君。列の方は良かったのかい?」

 

「最近は暇やからなあ。大丈夫、大丈夫。それにしてもその子、大丈夫なん?」

 

 ポッドの中に入っている彼――生前の名前は知らない――はとっくに意識を失っていた。死んだわけではない。転生のため、身体を再構成しているのだ。本当は落とし穴に落としたかったのだけれども、どうせ転生した後も、ポッドの中に入ることは有るのだし、いつ体験しようがあまり変わりはないだろう。

 

「問題はないよ。それより君……そのしゃべり方やめてくれない? キャラ作ってんの、バンバン伝わってくるからさあ」

 

 本来のホンダ君の口調はこんなものではない。誘導するにあたって、フレンドリーな軽い兄ちゃんを演じているだけだ。本来の彼を知っているため、そのまま話しかけられるのは不愉快だった。

 

「まあまあ……あんま気にしないで欲しいんだけどなあ。仕方ねえかあ。これで、OKか?」

 

「ああ、いいねえ」

 

 ところで、とホンダ君はポッドの中の彼を指さし、

 

「まさか、その子があんたの要求を飲むとは思えなかったけど、どんな魔法を使ったんだ?」

 

「それは君も知っているんじゃないのかな? こっちに来る死者を選んでいるのは君だろう?」

 

 本来はそれは僕の業務なのだが、最近は誰も来ないし、僕は僕で用事があるから彼に一任している。とはいっても、今日が初めてだが。実に僕好みの死者を連れて来てくれて、とても有難い。

 

「他のやつが勝手に転生させた転生者を殺して欲しい……、随分と残酷な要求で。よく彼もやる気になったな」

 

「僕も少し驚いているよ。でもねぇ、“存在意義”。これを彼は欲しいらしい。世の中、変わった死者がいるもんだねぇ」

 

 だが、彼には感謝している。僕自身が殺りに行く、と言ったがそんなこと本当は出来ない。ただの負け惜しみの様なものだ。その世界の事象には干渉できるが、人間には干渉できない。例えば、転生先の世界で火事は起こそうと思えば起こせるが――起こそうと思わないけど――誰が助かり、死ぬかは僕では決められない。後はその人の運次第だ。僕だって万能じゃない。

 

「まったく……。人を信じられないくせに、必要とされるとホイホイついていく少年、家族も知らないのに、また家族を失った少女、守る者のためなら、たとえデメリットしかなくてもどんなことでもやる少年。そして、今度は存在意義を欲しいがために人を殺そうとしている少年、か。あんたが転生させる死者はそんな奴らばっかだな。ま、最後のは俺が連れてきたんだけど」

 

 そう、僕はそんな死者ばかり選んでここに連れて来て、転生させる。そんなことを知らない彼らは、運が良かったくらいにしか思っていないだろう。

 

「だって面白いじゃないか! 生前何かしらの問題を抱えた死者が新たな世界で何を見出だすのか……。正に素晴らしい娯楽だ!」

 

「でも3人目の子は下手すりゃ死んでましたけどね」

 

 3人目の子については実に予想外な事ばかり起きる。まさか、守りたい者を彼自身が殺してしまうとは思わなかったけ。けれど、最初から死なないことはわかっていた。死ぬようなやつを転生させはしない。それに最初から因子保有者(ドライバー)と呼んでいた時点で彼には気づいて欲しかった。原作知っているなら、なおさら。1人目の子は知らなかったみたいだけど。そういえば、2人目の子も死にそうな場面に出くわしたんだっけか。あの時は、本当にハラハラしたなぁ。

 

「僕は僕の娯楽に干渉されるのが大嫌いでね。勝手にやられちゃぁ困るわけ。自分の創ったものを横取りされるのは誰だって嫌なはずだ。静かに彼らの生き様を鑑賞していようじゃないか。ほら、どうやら決着がつきそうだ」

 

 宙に浮く、4つの大きなスクリーン。彼らが頑張っているのが見える。これからどんな物語が展開されるのか。

 

「今度、皆に何か贈り物をしてあげよう。そうだ、今度彼らで試合をさせてまようかなぁ」

 

 何せ、僕の娯楽は始まったばかり。ふふっ。胸が踊る。まるで、旅行前の子供の様だよ!




アドバイス、感想などよろしくお願いします。


11/25付け足し
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