ナンバーズの中で、たった一人の男、インフィニート。彼には姉である存在が3人いる。ナンバーⅠウーノ、ナンバーⅡドゥーエ、ナンバーⅢトーレ。
だが彼は、彼女らを姉という存在とは思っていない。ただ、生まれるのが早かった、それだけ。もちろん、お姉さんなどとは呼ばない。呼び捨てである。当の呼ばれている彼女達もそれで良しとしていた。
転生してから5年、そんな彼にも妹となる存在が2人出来た。
「あー暇、ちょー暇、何で5年も収穫無しなんだろう……」
ここは彼の自室。彼の心が休まる数少ない場所である。というのも、ここには男性はドクターと彼の2人しかおらず、女性は5人もいるのだ。そのため、その気まずまさを紛らわすために自室で本を読むという生活が長く続いていた。存在意義どうのこうのの前に、インフィニートは男である。年相応の恥ずかしさを持っているのだ。
この5年でその空間には慣れたのだが、長く続いたものは習慣になってしまい、本を自室で読むということは彼の日課になっていた。今も彼の周りには既読の本が所狭しと並べられ、天井に届くほど高く積み上げられている。
「インフィ
「クアットロ、部屋に入る前にはノックぐらいしろよ……ってチンクも来たのか」
いきなり部屋に入って来たのは、新しく造られた彼の妹達、ナンバーⅣクアットロ、ナンバーⅤチンク。どちらも彼にとって大切な――少なくとも、周りに散乱している本よりは――家族である。
「私のISの調整をしたくてな。申し訳ないが兄上、少し付き合ってはもらえないだろうか?」
「それなら、丁度暇だったし良いんだけど、クアットロは何をしに来たんだ?」
実を言うと、インフィニートはクアットロのことが少し苦手である。クアットロの教育をしたドゥーエ――インフィニートも少しだけ、クアットロの教育には関わっている――にも苦手意識を持っている。そのため、ドゥーエに教育を施されたクアットロも苦手なのである。明るそうな雰囲気に垣間見える黒さ。そういう所があまり好きになれないのだ。ただ、姉妹の中で、一番会話の回数が多いのは、ドゥーエとクアットロなのではあるが……。
「私は見物です。それとお兄様、また本を少し借りていってもよろしいですか~?」
「好きにしろ。ただ、元有った所に戻しておけよ」
「ありがとうございますぅ~」
このように、クアットロはよくインフィニートの部屋に来ては、彼の本を借りていく。部屋に入るときは、絶対にノックをしない。本はちゃんと片付けるので、聞き分けが良いのか、悪いのか、そこの判断にインフィニートは困っていた。
「それじゃぁ、ただ調整をしてもつまらないから、賭けをしよう。俺が勝ったらチンク、俺のことを一時間お兄ちゃんと呼べ」
「なっ! 何故そんなことをしなければならない!?」
「癒しも必要なのさ……。チンクが勝ったらまぁ、大抵の願いは聞いてやる」
「しかし……」
「兄様はお強いですから~。チンクちゃんも頑張って下さいねぇ~」
チンクは顔を赤くしているが、賭けをすることは決まってしまったこと。取り消せはしない。チンクが勝てば良い話なのだが、それは少しハードルが高い。
インフィニートは、前々から言われてみたかったのだ。チンクに、お兄ちゃんと。トーレより少し大きい身長のインフィニートから見ると、チンクは可愛いマスコットの様なもの――本人が聞いたら怒りそうだが――である。だが、彼はロリコンではない。ロリコンでは断じてない。
インフィニートにとっては癒しを賭けた、チンクにとっては恥ずかしい姿を晒すか否かの戦いが始まる。それはもはや、調整や模擬戦などではなく、血戦であった。
「絶対に負けるものかっ! IS発動、ランブルデトネイターッ!」
「IS発動、
刃が飛び交い、爆発が起こった。
「うぅ…………お……おぉお兄……ちゃん……」
「うんうん、チンクはやっぱり可愛いな~」
結果はインフィニートの勝利である。チンクが飛ばすスティンガーをISの能力で止める。爆発のダメージはあったものの、それは微々たるものだった。
インフィニートは顔を赤くしたチンクの頭をずっと撫でていた。その姿は、子犬を愛でるただの青年の様である。
「あ、あの時に止められていなければ……。大体兄上のISはっ」
「はいはい、お兄ちゃんね~。あと、51分、51分」
「うぅ、こんな恥辱を……」
「良いじゃないか、可愛いんだから。なーんか、チンクは誰かに似てるんだよねー、誰だっけ?」
始めてチンクを見たときから、何か引っ掛かっていたインフィニート。綺麗な銀色の髪、小さな身長、声と口調。それらに、見覚えがありすぎるのだ。
「兄様の記憶のことですか? 不幸ですよね、人間に記憶を植え付けられるなんて~」
「ああ……そうだね……」
これは彼自信の記憶なのだが、周りでは彼が造られる際に人為的に植え付けられた記憶ということになっている。クアットロ自身、人間を見下しているので、敬愛する兄が人間にそんなことをされていたことが許せないのだ。インフィニートは、彼女のそんな気持ちには気付いていない。そのため、クアットロのこの様な言動があまり、好きではない。元が人間であるから当然ではある。
「そんな人間は早くぶち殺してしまえばいいんですよね、お兄ちゃん?」
「…………」
「ですよね、お兄ちゃん?」
「…………」
「あの何か反応を……」
「いや、お前が言うと何か違うというか、心が震えないっつーか……」
「私も少し引いたぞ……」
「そんなぁ~、チンクちゃんまで……、クアットロはお兄ちゃんのためを思ってやりましたのにぃ~」
「はっきり言うけど……、お前がやると似合わない」
インフィニートは先程のクアットロの言葉で少し、イラついてしまった。だから、こんな言葉が出てしまったのかもしれない。普段なら少しは喜んでいただろう。クアットロがやると点は、同じかもしれないが。
「うぅぁ…………ドゥーエ姉様に言いつけてやりますぅ~っ!」
クアットロは両手で顔を押さえ、どこかへ走り去ってしまった。その頬はは羞恥なのか泣いていたのか、赤くなっていた。
「何だ? あいつ」
「おぉぉぉぉぉぉ兄ちゃ……んは追いかけなくて良いのか?」
「別に良いよ。それに、あいつ昨日“涙で越える修羅場道、惨の巻”読んでたからな。実践でもしてんじゃね?」
「そうは思えないがな……」
「まー、ドゥーエに何されるかが怖いけど」
ドゥーエは敵に残酷で、味方に優しい。ドゥーエには、妹を泣かせたとして、怒られるかもしれない。教育した妹では、尚更である。
「クアットロも、まだ生まれて間もないからな。こんなこともあるだろう。」
「いくら、クアットロを苦手としていても、あれは少しひどかったのではないか?」
「気づいてたのか、お前」
「兄……んんっ、お兄ちゃんの言動を見てればすぐわかる」
「これからは少し気を付けるよ、大切な妹なんだし……」
「それが一番良いだろう」
だが、クアットロのあの性格ではそれは難しいかもしれない。少し教育に携わったとはいえ、そのほとんどはドゥーエが担当している。性格的な所から噛み合わない。
「ドゥーエもクアットロもああいうのが無ければ、良いんだけどね……。まぁ、ドゥーエの
未来で、インフィニートは後悔することになる。いや、未来でああなってしまうのは、このことが一因であったのかもしれない。
視点を三人称に変えてみました。
これからは、全ての小説で三人称でやっていこうと思います。
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