《火星の地球人》だった男のインフィニット・ストラトス 作:匿田 名作
「何を考えている!?界塚!?」
「そうですわ!!二人で正体不明の機体を落とすなんて無謀すぎますわ!!」
「あんた、この時の戦闘っていうものをなめてるでしょ!?」
「やめなよ、危険だよ!?」
「伊奈帆、今回は私からも言わせてもらう、無理だ」
上から篠ノ之さん、オルコットさん、鳳さん、デュノアさん、そしてボーデヴィッヒさんの順だ。
当然僕もいろいろ言いたいのはやまやまなんだが・・・
五人の意見は至極真っ当だ。
ヒョイと出たISを使って間もない男子二人が迎撃作戦をしようというのだ。
僕だって正直に言うと無理だと思う。
だが界塚は淡々と反論に答えた。
「まず一つ、僕にとってこの機体は正体不明でも何でもない。
この機体は広域殲滅を目的とした特殊射撃型。オルコットさんの機体と同じく、オールレンジ攻撃を行えます
近接武装は特になし。
ただ、最大の難点はその機体反応速度にあるでしょう。
中に人が入っているとはいえ、今は完全機械制御と推測できます。
人間独特の動揺や、判断ミスが圧倒的に少ないということが考えられます。
――――織斑先生、僕の発言に何か間違いでもありましたか・・・?」
こいつ、簡易スペックを見ただけでここまで推測したのか・・・?
「あぁ、こいつの言っていることは大方あっている・・・」
織斑先生も半ば感心したようで、少し唸っている。
篠ノ之博士は依然としてにこにこ笑顔でいるだけだ。
「あ、あと、この作戦にもういくつか必要なものがありました。
織斑の雪片弐型。オルコットさんのスターライトmk-3、ビット。鳳さんの双天牙月。デュノアさんの重火器一式。あとはボーデヴィッヒさんのワイヤーブレードを一時的に貸していただけませんか?」
こいつもこいつで大概にしておけよ・・・
「なんでこんな無茶をしようとする、界塚伊奈帆」
僕は海岸に出て、界塚伊奈帆とプライベートチャネルで会話をしていた。
『まず一つに、明らかに浮かれているようにうかがえる篠ノ之さんを強制的に参加させないようにするため。
次に、この作戦は僕ら二人で当たっても十分に戦えるものであると判断したから。
もう一つ、調整したスレイプニールの実力の測定をする必要があったから。
最後にもう一つ。
暴走した福音の目的地、および目的を探り出すためだ。
恐らく暴走をするからには何らかの要因があるはずだ。
さっき本格的なスペックデータを見たところ、異常値を出しているデータは何一つとしてなかった。
ゆえに、その現場で調整をミスしたか、それとも――――』
「だれかが暴走
『恐らく君の見解で間違いはない。
暴走させたのち、何かをさせるつもりなんだろう。
上層部が隠しているだけでほんとはIS学園の生徒だけでは抑えきれないと高をくくっているんだろう。
僕が考えるに、今回の一件は、
暴走に
当然、ISの軍事利用はルール上してはならない。だからこんなめんどくさい形をとっているんだと判断できる
ゆえに僕らの本当の仕事は『そのある場所を突き止め、原因を探ること』だ』
こいつはそこまでのことを考えて・・・。
『恐らく、戦場を渡り歩いていない代表候補性がこんなきな臭い事態に当たるのは少し早い。
その分僕らだったら、その辺の事情はよく分かっているだろう?』
人の事情までよく考えたうえで・・・。
「・・・わかった。それじゃあ手筈通りに。
失敗は許さないからな?『オレンジ色』」
『ふっ、お前こそな。『コウモリ』」
僕はかつての敵と相乗りすることにした。
『オールレンジ攻撃、来るぞ。
未来予測を駆使しつつ、ボーデヴィッヒさんのワイヤーで敵を拘束するんだ』
「わかっている!」
僕は福音から発射される何千発もの羽のような弾丸を『ダブルイグニッション・ブースト』と『未来予測』を駆使して、接近しつつ弾丸をすべてよける。
そして、ボーデヴィッヒさんから借りたワイヤーブレードを使って福音の手足を拘束。
「狙いは!?」
『完璧だ・・・』
福音に高速で青いビーム弾が着弾する。
界塚が遠距離からスターライトmk-3を使って射撃をしたのだ。
『いったんワイヤーブレードをしまって、中距離攻撃に切り替えろ。
後ろからビットと双天牙月で援護する』
「了解!」
ワイヤーブレードを収納し、後ろにセットしたデュノアさんの重火器を装備。
まずはショットガンで敵を吹き飛ばす。
すると後ろからビットのレーザーの雨が福音に降り注ぐ。
僕は動きが止まった瞬間を狙い、後ろに回り込んでスラスターのみをマシンガンで破壊する。
「やったか!?」
『いや、まだだ。
PICでの行動はできる。
雪片弐型で福音のSEを100以内にまで落とし込め』
僕はいったん福音から距離をとる。
すると福音がオールレンジ攻撃の態勢に入るが、そこを
さっき界塚が投げた双天牙月が直撃。
エネルギーを二回排出、後両方吸収。
『ダブルイグニッション・ブースト』発動。
「はぁああああああアアアアアアアッ!!!」
僕は雪片弐型のビームブレードを福音に直撃させる。
福音はもう残りエネルギーが少ない。
『セカンドシフトを発動させないように、ステイギスでギリギリまで追い打ちをかけろ!』
僕は指示の後、ステイギスを展開。
福音めがけて一斉射撃を行う。
そして後ろから手足がないと考えられる場所のフレームをデュノアさんから借りたライフルで打ち抜く。
『福音のエネルギーが0になる。残りはひたすら内臓したあるソードで浅手を決めつづけろ』
「了解」
僕は盾内部に装備してあるソードを展開。
致命傷にならない程度の攻撃を何度も福音に当て続ける。
『よし、あとは僕が解析する。お前は後ろで有事にそなえろ』
そういうや否や、界塚がこちらに接近。
情報解析用のケーブルをシールドエネルギーがわずかな福音に差し込む。
「なにかよさそうなものは得られたか?」
『あぁ。目的地はIS学園。
ちなみに目的はIS学園の全生徒、全教職員の抹殺だそうだ』
「んな!?
それならなぜ僕らにそのことを通達したんだ・・・!?」
『最初にも言ったとおり、あくまでも暴走という形をとらなければならなかった。
だから念のためにの布石だろう』
「・・・」
まさか水面下でこんなことが起きていたとは・・・
今回この作戦に失敗していたらどうなっていたことか・・・
学園のみんな。
それに清香だって・・・
「なぁ、一つ訊いてもいいか・・・?
アセイラム姫のことをお前はどう思っている・・・?」
ふと疑問に思ったことを界塚に訊く。
『アセイラム姫は僕にとってとても大切な人だ。
それは今も変わらない』
「・・・そうか」
僕だって今もアセイラム姫が大事だ。
でも僕にはもっと守りたいものができてしまった。
『だから―――――!!?』
「どうした!!?」
『このデータはッ・・・!
搭乗者データが改変されていたのか!?
シルバリオ・ゴスペル、搭乗者――――
―――スレイン・ザーツバルム・トロイヤード・・・』
「んな!!?」
それはほんの一瞬の出来事だった。
福音が一瞬で姿を変え、拘束を抜け出して僕にとびかかって、頭を装甲ごと薙ぎ払われた。
痛い、なんていう感覚はもはやない。
一瞬だけ見えた福音は闇夜を思わせる黒に染まっていた。
『ふん・・・しょせん過去の私などこの程度の者か』
最後の言葉は聞かずに終わってしまった。