《火星の地球人》だった男のインフィニット・ストラトス 作:匿田 名作
mvt.1 すべての始まりに回帰して
「・・・ここは・・・?」
僕、スレイン・トロイヤードは薄暗く機械的な空間にいた。
辺りはオイルのにおい、鉄っぽい血の匂いで充満している。
ここはどこだ・・・?
次第に目が慣れてくる。
僕の目の前には巨大なタルシス。
付近にはディオスクリアやオレンジ色の機体もあった。
そうか、戻ってきたのか・・・。
遠くに見えるザーツバルム卿はぐったりして、起きるそぶりを見せない。
あのころと、同じだ・・・。
でも昔と違うのは、IS学園のことが記憶の中にあること。
ここから僕は何をすればいい・・・?
ふと目に留まったタルシスに近づく。
思えばあのころはこいつに何回も世話になった。
手遅れになりそうなことも何度もあった。
でもこいつは僕の思い通りに動いて、いくつもの人を救ってこれた。
「タルシス・・・」
なぞるようにタルシスに触れる。
その表面はどこまでも無機質で、同時にどこまでも暖かかった。
右腕を見てみる。
今はない、ISのタルシス。
過去の思いでは消えてしまったのかと、一人でしんみりとする。
・・・そうだ!アセイラム姫は・・・!!?
急いで周囲を見渡す。
前は確か地球のカタフラクトの中に・・・
「・・・アセイラム・・・姫殿下・・・?」
アセイラム姫はどこにもいなかった。
理由はわからない。
でも、僕は自分でも不思議なくらい妙に落ち着いている。
まるで僕は、『こうなることを知っていた』みたいに・・・
もう一度タルシスを見る。
「お前なら・・・僕に力を貸してくれるのか・・・?」
そしてタルシスに触れる。
その瞬間、タルシスから多大な情報が流れ込んでくる。
まさか・・・
気づいた時にはそこにはもうタルシスはなくなっていた。
代わりに僕の右腕には、真っ白のブレスレットがついていた。
「これは・・・」
間違いない。あのころのIS『タルシス』だ。
離れ離れになってしまったけれど、またこんな形で会えるとは。
っと、とりあえずここから出ないと・・・
出口のほうを見てみる。
するとそこにはザーツバルム卿のディオスクリアが突き刺さっていた。
・・・とりあえず起動してどかせるか試してみよう・・・。
ISを展開して壊すにしてもここの壁は厚すぎる。
この機体をどかしたほうが早い。
はしごを下すため、足元のスイッチを押そうとする。
が、
ALDNOAH・DRIVE code 《DIOSCURIA》 ・・・boot
open file ・・・《Infinite Stratos》
Core System ・・・boot
《Link Start》
触れた途端にいきなりそんな機械音が鳴る。
とたんに意識が刈り取られ、目の前が真っ暗になる。
・・・またとんだ面倒事に巻き込まれることになりそうだ。