「にゃー」
僕が通っている学校の帰り道。
学校を出て目の前の横断歩道を渡って左に曲がるとコンビニがある。そのコンビニを通過し、右折して真っすぐ進むとここにたどり着く。
「にゃー」
僕に向かって必ずこの猫は鳴く。そして遠ざかる。
よく、猫には『見える』というからもしかしたら僕に『何か』ついているのかもと思った。
考えを巡らしていると、猫が飽きたのかいつの間にか居なくなっていた。
何か閃く事もないまま帰ることにした。
「にゃー」
まただ。別の日でも。
甘えているんだろうか?
やはりついているんだろうか?
うーん。
何か訴えたいのかもしれない。
一体、なんだろう?
「にゃー」
今日も鳴く。どうやら僕以外には鳴かない上にちゃんと近くに寄るらしい。
しかし、いつもここにいるんだな。
今日は学校休みだ。だから猫に会いにきた。
そして、僕はレジ袋の中から猫缶を取り出した。
人生で初めてである。猫缶を買ったのが。
僕は猫缶を開け、地面に置いた。
「にゃー」
一回鳴いただけで食べようとしない。
それ以前に猫缶を見ていない。口に合わない事を知っていたのか?
猫缶を端によせて帰ることにした。
「……」
あれ?今日はいないのか?
まあそうだよな。いつも同じ所にはいないよな。
あの猫缶は中身が全部綺麗に食べられていた。
人の前じゃ食べられない性格なんだと理解した。
そうして安心した。
「にゃー」
今日はいた。また猫缶を置いておく。もちろん食べないと思っていた。
だから、そのままにした。
でも、きっとこの猫と仲良くなれると信じている。
「にゃー」
そんな僕の考えが伝わったのか、猫が近づいてきた。
そして、僕の隣におすわりした。
僕は猫を撫でようとした。が。
僕の手は猫の背中をすり抜けて地面についた。
その時、猫は振り向いてこう言った。
「にゃー」