ヨルコさんが死んだ!?
原因は外から投げられたナイフが背中に刺さったようだ。
俺とキリトはそのナイフを投げたと思われる、黒いローブを来たプレーヤーを追う。
しかし、見失ってしまった。
あれがグリムロックさんなのだろうか?
ヨルコさんのいた部屋に戻るとシュミットさんが怯えていた。
「あれはグリムロックじゃない……グリムロックはもっと背が高かった……あれは……グリゼルダだ!?」
「は? グリゼルダさんって死んだんじゃ……」
「ああ、そのはずだ。あれはつまり幽霊だ!? 亡霊だ!? だったらなんでもありだよな……圏内で人を殺すことも出来るよな……」
怯えきって、言っていることがメチャクチャになっている。すると――
「バッカじゃないの! 幽霊だなんて、くっだらない! んなもんがアインクラッドにいるなら他の死んだプレーヤーが次々と圏内で殺人を犯してるわよ!」
――セナが言う。確かにその通りだ。
そのあとは狙われているシュミットさんを部屋にひとまず閉じ込めてセナに護衛を任せた。
「とりあえずシュミットさんから聞いたグリムロックさんの行き付けの店で張り込むしかないな」
「そうね」
「ああ、それと一応確認したいんだが、もうセナの疑いははれたも同然だよな?」
俺らはそのために協力していたものだ。もちろん疑いがはれても事件が解決するまで行動は共にするつもりだ。
「ああ、俺らがヨルコさんを追いかけている間、アスナがセナさんと一緒に居たし、アリバイが成立する」
「そうね。セナさんはずっと私と居たわ。ホーク君を追いかけようとしたのをとめたし。犯人の疑いははれたわ」
「だよな……ああ、でも事件が解決するまでは付き合うぞ」
「ありがとう。あ、そうだわ」
そう言ってアスナはアイテムストレージから三つの包みを出す。
「はい、二人にあげる」
俺とキリトが受け取ったのはバケットサンドだった。
「そろそろ耐久値が切れちゃうから急いで食べてね」
「お、おう、いただきます」
パクっと食べると……
「……旨い」
「でしょ」
「ひょっとして手作りか?」
「まあね。料理スキルは結構あるわ」
マジか……料理スキルと戦闘系スキルを同時にあげてる攻略組プレーヤーなんて俺くらいなもんだと思ってたのに……って、そういえば!
「そうだ! 俺も自分で作ったサンドの耐久値が切れちまう!?」
俺は急いでサンドを出すと――
パキィン!
――耐久値が切れて消滅した。
「ああ、勿体ない……」
「あーあ、ちゃんとその辺考えて作らないと……っていうかホーク君も料理スキルあげてるの?」
「ああ、似合わないってよく言われるけどリアルじゃ妹と二人暮らしでいつも料理してたから……調理器具とか集めるのが趣味で……」
「へぇー、いがーい」
アスナがそう言うと――
「そ、そうか! そうだったんだ!?」
キリトが叫んだ。どうしたんだ?
「俺らはとんでもない勘違いをしていた。圏内で人は死んでなんかいなかったんだ! カインズもヨルコさんも生きてる!」
「「は!?」」
どういう事だ!?
「いま、ホークのサンドが消滅したのを見てわかった。カインズは死んで消滅したんじゃない。鎧の耐久値が切れたのと同時に転移したんだ」
そうか! それなら圏内で人が死んだように見える!
「じゃあヨルコさんも着ていた服の耐久値が切れたのと同時にわざと窓から落ちたのか!?」
「ああ、だから俺らが追ったのはグリムロックでもグリゼルダでもない。恐らくカインズだ」
てことはこれは……
「この事件は圏内殺人事件じゃなくて――」
「ああ、恐らくヨルコさんとカインズのグリゼルダさんを殺した犯人を探すための幽霊事件だ」
そうか! ずっとヨルコさんがセナをかばったのが不可解だったが――つまりヨルコさん達の目的は……
「シュミットさんか!」
「ああ、ホーク。セナさんに連絡だ」
「おう! って連絡が入って――って、シュミットさんがいなくなった!?」
「なんだと!?」
しかし、探す方法はある。
「アスナ! たしか念のためにヨルコさんとフレンド登録してたよな? それで位置がわかる!」
かくして俺らはヨルコさん達のもとへ向かった。
19層。到着したときには――あれは!?
「ラフィン・コフィン!?」
殺人ギルド《笑う棺桶》。それがなんでここに!?
しかし――
「ち、『黒の剣士』に『閃光』、それに『鷹の盾』か、部が悪い。撤退だ」
ラフコフの奴等は俺らを見て去っていった。
そしてカインズ、ヨルコ、シュミット三名さんの話し合いが始まる。するとそこへ……
「……グリムロックさん!?」
が、現れた。グリムロックさんは語る。グリゼルダさんとはリアルでも夫婦だったと。デスゲームに怯えるだけの自分と違い、生き生きとしていてリアルの頃の妻はいないのだと。だから殺したと………なんだよそれ!?
「勝手な言い分だ! こんな世界で暮らして変わらない方がおかしい!」
そのあと、ヨルコさんたちがグリムロックさんを連れていった。処遇は自分達で決めたいそうだ。
セナに事件が解決した事を連絡して、俺らは行く。
「ねえ、キリト君、ホーク君。もし君らなら、仮に誰かと結婚したあとに相手の隠れた一面に気づいたとき、どう思う?」
アスナから聞かれた。
「俺は……考えたこともなかったな。うちの親は国際結婚だったから結婚してからお互いに知ったことも多かったらしいし、母親が亡くなって、最後まで知ることができなかったこともあるかも知れないし……」
「そうだったんだ……ゴメン、辛いこと思わせちゃった」
「いいよ。キリトはどうだ?」
「ラッキーだと思うかも」
へ? なんで? 理由を聞くと、それまで見えて好きだったにのに加えてさらに好きになれるからだそうだ。
アスナは……変なのと言った。
「ねぇ、二人とも。フレンド登録しよ」
こうして俺らはフレンド登録をしたのだった。
次回は74層。
なるべく早く投稿する予定です。