ハッピードリップ―小さな喫茶店の小さい幸せなお話―   作:REKYU

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2話 ~新たなるスタート~

――夜――

俺は今日のことを振り返る。

「……今日は色んなことがあったな…」

かわりばえしないつまらないただ生きるだけの毎日だった。

もう一生自分が前を向いて生きていくことなんて俺にはないって思ってた。

でも、無理に焦ってやることを見つけてまた一生懸命我武者羅…なんてならなくてもいいんだ。だって…人生は長いんだ。ゆっくりやりたいことを見つけてゆっくり進んでいけばいい。今はまだ…明確なことは見つからないけど…。

 

 

きっと……あの場所なら…なにかが見えるんじゃないかなって…思えたんだ。

 

――翌日の放課後――

俺は今日もあの喫茶店に向かっている。今日はコーヒーを飲みにいくんじゃないんだけどな。実は昨日マスターから

「明日も来てくれるかな?一応形として面接しとかないとね」

って言われたんだ。形だけってまた変な感じだけどな…。改めて自己紹介とかする機会だしちゃんとしないとな。緊張とかはないんだけど…こう面接って言われるとやっぱりなんか…変な感じだ。いい表現出来ないけど。

「よし…ついた」

昨日事件があったって言うのに昨日より人が多いなー。あれか?常連客なのかな、普通なら来づらいと思うんだけどな~。っとそろそろ入ろう。ん?昨日は何の気なしに入ったけどしっかり店の看板見てなかったんだよな…えーと…なになに…?

「【喫茶 Drip】って言うのか……」

ここが…俺の新しいなにかを見つけるための…場所。よし!

 

 

カランコロンカラーン……

「こんにちはー…」

「いらっしゃ…やぁ、待ってたよ。」

マスターが優しい声で話しかけてくれる。いい声だな、渋いけどなんか心地いい。

「えと…面接って…」

「ああ、もうちょっとだけ後でいいかい?スタッフルームでやるつもりなんだけど、流石にお店の中を0にするわけにはいかないからね。」

「あ、わかりました」

「立ってるのもなんだから座りな?コーヒーでいいかい?」

「ありがとうございます…いただきます」

「うん、すぐ淹れるからねー」

マスターの目の前のカウンター席に座る。今日はテーブル3つ埋まってる、カウンターの端にも一人。こりゃ中を無人に出来ないのは頷ける。

ゆっくりと腰かけて店内の雰囲気を味わってると…

「はい、おまたせ。アイスで大丈夫かな?」

「ええ、どうも…」

俺が唯一飲めるブラックコーヒーが来る。じゃ早速…

「うん…やっぱり飲みやすい…」

なんなんだろうな…こう…口の中に苦いのが残らなくて香りだけふわっとくると言うか…スッキリしてるんだよな…いやコーヒーのこと詳しくは知らないからこれがこうでだから美味しい!ってのは答えられないんだけどな…。

などと考えながら飲んでいると…

「マスターおはようございまーす」

「ああ、おはよう。ちょっとお店頼んでいいかな?僕これから後ろで面接モドキをするからさ。じゃ、行こうか。こっちきて」

「はい!お願いします!」

呼ばれたので顔を上げると…昨日と同じ、可愛い…いや綺麗なウェイトレスさんがいた。目が合う。……くぅ…なんか照れるぞ…

「こ、こんちにちは…昨日はどうもありがとうございました…」

「こんにちは…えっと…どういたしまして?」

ぎこちない会話を交わして僕はマスターと一緒にスタッフルームに入っていく。

 

 

~スタッフルーム~

「じゃあ。適当に座って?」

「はい…失礼します」

マスターに言われて俺はソファに座る。うっわふかふかだ気持ちいい…。っと!面接だ面接。

「さっきも言ったけど面接とは名ばかりの自己紹介みたいなものだからね。普通に話してくれて構わないよ。まずは自己紹介だね、僕の名前は【林 純也(はやし じゅんや)】。ここの店長です、気軽にマスターでいいからね。」

「俺は【橘 洋介(たちばな ようすけ)】です。宜しくお願いします…マスター。」

「うん、これから宜しくね。」

マスターが手を差し出して来た。握手かな…右手を出してしっかり握手を交わす…。

「固い手だね…男の子らしい手だね」

マスターが手の感想を言う。固いと男らしいのだろうか…よくわかんないけどなんか嬉しいな。

「ありがとうございます…肩をダメにするまでずっと野球をやってきてるので…バット振ってできたタコや指先にはボール投げてできたタコもあるんで…あんまり綺麗な手じゃ無くなってしまいましたね」

自嘲まじりでそうポロリと言葉が出る。…ふと思ったんだけどやっぱお客様に飲み物とか軽食運ぶことってあるよな…綺麗な手じゃないけど平気なのかな…?

「ううん、綺麗な手だよ、それは君が頑張っていた最高の証じゃないかな。普通の人はそんな手にはならないよ。この手は誇っていい、努力の手だよ。」

………この人は俺を泣かせたいんだろうか。嬉しい言葉しかかけてこない…誰か一人にそう言って貰えるだけで心が満たされるよ。

「さて、これからは説明と質問かな。まずは説明だね」

ん、こっからはメモ取ってキッチリ覚えないとな。俺はカバンからメモ帳とボールペンを取り出す。

「ん、メモ取るほどの難しい説明はしないから大丈夫だよ。まず1つ目ね、ここはまがりなりにも食品を扱うお店だからね。身だしなみはキチッとすること。髪の毛は…スポーツやってたみたいだし大丈夫だね。あとは爪とか、ちゃんと長くなる前に切るようにお願いするよ。」

うん、その辺は大丈夫そうだ。投手やってたから爪も伸ばさなかったし、髪は当然野球するのに邪魔だったから常にスポーツ刈りにしてた。今はちょこっと伸びてるけど平気と言われたからOKなんだろう。

「次ね、わからないことがあったら僕なり仲間にすぐ聞くこと。わからないのにやって不備があったら困るからね。怒ったりしないからしっかり聞くこと。ああ物とかの説明はやりながらするからね。ゆっくり覚えて行けば大丈夫だよ。」

困ったら聞くこと…メモメモ

「で、最後。常に笑顔でいること。ここが一番大事だよ。特にお客様の前では最高のスマイルでお願いするよ。」

常に笑顔で…メモメモ…。笑えるかなぁ…俺あんまり笑うことなかったしなぁ…。

「お客様に気分よくなってもらうのがこっちの義務…というか真心というかな。来てくださったお客様が嫌な気持ちになったら申し訳ないでしょう?だから笑顔でお客様に笑顔が移るくらい明るくいること。ぶすっとしてたらお客様も「愛想悪い」とか「態度悪い」って思っちゃうからね。君も無愛想な人が店員さんだったら嫌だろう?」

「そう…ですね。わかりました。」

なるほどなぁ…でも笑えるかなぁ?とりあえず元気よくしよう。違うかな?

「これで説明は以上だよ。メモとる必要なかったでしょう?」

うん…たしかになかった。でもこれは自分が変わるために記したんだ。ちゃんと残していかないとね。

「じゃあ今度は質問。聞きたいことあるかな?」

聞きたいこと…か?マスターはどんな生き方をしてきたとか聞きたいけど仕事に関係ないよね…。

「大丈夫です、質問はないです。精一杯頑張りますのでご指導ご鞭撻宜しくお願いします!」

「畏まらなくても大丈夫だってば。ハハ…それじゃ洋介くん。週にどれくらい入れるかな?うちは月曜日は定休日だからね。ちゃんと休みは入るしそれなりに入って貰えるとありがたいけどね…」

月曜日は定休日なのか、まあ関係ないな。

「基本毎日入れます。部活やめたので時間はもて余してますよ」

「頼もしいね…じゃあ基本はこっちでシフトを決めても大丈夫かな?不都合があったら遠慮なく言ってくれて構わないよ。ちゃんと働きづめにならないようにもするからね。ありがとう。」

マスターがメモを取り始める。それぞれの予定を加味して組むんだろうな。だから皆の予定はメモるわけか。

「それと基本は接客なんだけど、一気に混んだりしてしまうと厨房の手がまわらなくなったりしちゃうことがあるんだけど…洋介くん、料理は出来る?」

料理か…全く出来ないってことはないんだろうけど…ううむ。

「殆どやったことないです…ね。多分食材を切るとかくらいなら出来るとは思いますけど。」

「ふむ…そっかそっか。洋介くん、料理…覚えてみたくはない?」

「興味はあります」

「じゃあ料理も少しずつ教えて行こうか。どっちも出来るようになってくれると助かるからね。」

「はい!頑張ります!」

やれることなら出来る限りやろう。頑張るぞ!!

「うん、一緒に頑張ろうね。あと最後に少し。このスタッフルームは基本的に更衣室になるんだ。そこのロッカーに店で着る服を入れてもらうとこ。あとはコーヒー豆とかが置いてあるからね。位置だけ覚えておいてくれればいいよ。持ってきてもらうこともあるだろうから。どうしようか?今日から入る?服はあるから着替えたら出来るけど」

「そうですね…少しでも覚えたいからやらせて頂きます」

1日でも早く仕事を覚えて迷惑をかけないようにしないとな。

「ん、了解したよ。着替えは入ってるから丁度いいのを着てね。僕は店に戻るから終わったら戻ってきてね、じゃあまた後でね」

――ガチャッ…パタン…――

マスターが店に戻っていく。

……今日からかぁ…楽しみだけど少し緊張するよなぁ…でも…新しい1歩…だもんな。今さらビビっても仕方ない…よし!着替えるぞ!

ロッカーは…こっちが男用か…おー、なんかデザインカッコイーな!これ来て仕事ってなんか出来る人みたいだ!執事…とは違うんだろうが落ち着いたような服ってこうゆうようなやつなんだろうな。サイズは…L…Lと…あった! じゃ着替えるか。

学ラン脱いで…、ワイシャツ…ボタンイチイチ外すの面倒だな…一気に脱ご。

んしょ…あれ、引っ掛かるな…んしょ…

 

 

――――コンコン…ガチャッ…――――

えっ…………ガチャッ…?うぉい!?まだ着替え終わってないよ!

「し、失礼しま………」

あーあ…入ってきちゃった…。

バッチリ目もあっちゃったよ…。顔真っ赤だし…なにこれ…こんな展開漫画だけだと思ってたんだけど…。……次の瞬間………

「イヤァァァァァァァァァァァッ!!」

喫茶Dripは2日連続で悲鳴が聞こえましたとさ…。




ここでキャラクターを紹介

■主人公
橘 洋介(たちばな ようすけ)
本作の主人公。野球一筋で自分の全てだったが肩を故障して野球が出来なくなってしまう。同時に生き甲斐をなくして人生をつまらなく思う。たまたま入ったこの喫茶Dripでマスターに出会い、ゆっくりとでも自分のまたやりたいことを見つけていこうと思い始める。

大友 宗也(おおとも そうや)
洋介と同じ野球部でバッテリーを組んでいた相棒。野球から離れて脱け殻だった洋介を心配してる。今後もちょくちょく出す予定

林 純也(はやし じゅんや)
喫茶Dripの店長(マスター)。優しい物腰と柔らかい言葉で話す常識人。年齢も若く、店の固定客はマスターに会いに来る女性客も多いらしい。なお本人は気付いていない。



今後ももう少しキャラクターを増やしていく予定です!
その都度紹介もしますよ!次回はヒロイン候補の1人がついに……ですね!



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