魔法少女と一角獣   作:牡蠣専用鍋

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 初めまして、牡蠣専用鍋です。
 初めての作品投稿で色々不安な点もありますが、どうぞよろしくお願いします。


一角獣との出会い

「魔法は実在するんだ」

 

 俺、浜寺 涼(はまじ りょう)は無事中学生に進級した12歳の春、いつもは絶対入ってはいけないと言われた土蔵に呼ばれ、普段以上に真面目な顔をした父さんは開口一番に言った。

 

「…………は?」

 

 働きすぎて遂に頭がおかしくなったんじゃないかと疑いたくなる様な発言に胡乱な視線を向けると、父さんはそう思われる事が分かっていたと言いたげな顔で頷き語り始めた。

 

「まあ、いきなりこんなことを言われて意味が分からないと思うけど、今言ったことは事実なんだ。この世界には実際に魔法と呼ばれる『技術』が存在するんだ」

「ま、待ってよ! いきなり過ぎてわけ分かんないし、そもそも魔法って何さ? しかも今魔法っていう技術って言った? タネも仕掛けもあったら魔法じゃないじゃないか」

 

 なんとなくだけど父さんが言った事は、嘘ではないと感じる。

 だけどそれ以上に違和感を感じさせるのは、いつもの優しげだけど厳しそうな顔では無く、何かを覚悟したような父さんの表情だ。

 

「ハハハッ、まあな。確かに魔法っていってもテレビでやってるようなトランプとかお札を使うモノじゃない。もっと危険な、使い道を誤れば命を落としかねないモノだ」

 

 そう言って、有無を言わさず魔法について説明を始めた。

 

 (いわ)く、魔法とは魔力素と言われるモノを操作し、効果を発揮させる『技術』であること。

 曰く、魔法を使うには『リンカーコア』と呼ばれる特殊な魔力生成器官が必要であること。

 曰く、魔法資質にはランクがあり、F~SSSランクまで存在すること。

 曰く、この世界は次元世界と呼ばれ、時空管理局と呼ばれる組織が魔法の管理、運営をしていること。

 曰く、地球は第97管理外世界と呼ばれること。

 曰く、曰く、曰く…………。

 

 途中何度も休憩をしながらの説明は何時間にも(わた)って行われ、昼過ぎから始めた筈が、気付けば夕方にまで及んでいた。

 

「ふぅ……、こんなところか。大方教えたが、理解出来ない事とかはあるか?」

「いや、実際にこの目で見るまでは理解したくなかったけど、流石に自分が使えてしまえばね……」

 

 突然デバイスとやらを渡されて、俺自身の魔力で魔力弾を生成させられれば、もう疑う余地はどこにも無い。

 

「そもそも、何で父さんは魔法技術のない地球に住んでるのさ? 元々管理局とかっていう組織の技術者だったんだろ?」

「まあ、そうなんだけどな。色々あって辞めたんだよ」

「色々って何だよ……。父さんの事だからうやむやにするって事は、絶対に説明する気は無いんだろ?」

「察しが良くて助かる。それじゃあ本題に入るが、お前に渡したい物があるんだ。着いてきてくれ」

 

 その渡したい物が、俺が生まれてから一度も入ることを許されず、日頃から父さんがよく籠っていたこの土蔵に呼ばれた理由だと分かったので、何も言わずに着いていく。

 

「さあ、乗ってくれ」

 

 土蔵の奥には、先程の説明の中にあった、遠くの場所を行き来する為の転送ポートがあった。

 

「これはどこに繋がってるの?」

「父さんの研究室兼ハンガーへの転送ポートだ。今から飛ぶが、少し気持ち悪くなるかもしれん。丹田に力を入れとくと少しマシになるぞ」

 

 そう言ってポートを起動すると周囲が光に包まれ、飛行機の離着陸時特有の浮遊感と、これは転送時の感覚だろうか? 浮遊感とはまた違った感覚がクる。……慣れるのに時間が掛かりそうだ。

 そして5秒経つか経たないかの辺りで浮遊感が無くなると同時に、周囲を覆っていた光が消えると、如何にも研究室ですと言わんばかりの近代的な空間が広がっていた。

 

「凄い……、これが父さんの研究室?」

「ああそうだ。そして涼、お前に渡す物を作っている開発施設でもある」

 

 渡す物、研究、開発、まあこれだけ聞けばもう誰だって分かる。大方俺専用のデバイスか何かだろう。だけど先に進むほど険しくなっていく父さんの表情に素直に喜べずにいる。

 5分以上は歩いただろうか? 幾重にも張り巡らされた警備システムと、厳重にロックされた扉を何度もくぐるが、施設を誰ともすれ違うことも、会話1つ無く歩き続けて、一際頑丈そうな扉の前で立ち止まる。

 

「さて、この先にお前に渡す……いや、『託す』物があるわけだが、不思議に思ったんじゃないか? 何故誰ともすれ違わないのか、何故こんなにも厳重なロックが掛けられているのか……とかな」

「うん、普通こんなでっかい施設ならもっと人が居る筈だし、流石にここまで誰とも合わないのはおかしすぎる。それにただの研究所ならこんな厳重に警備も封鎖もする必要なんかない」

「流石は父さんの息子、その通りだ。そしてその理由の全てがこの扉の先にある」

 

 さっきまで扉を解除する為に使っていた赤いカードキーとは別の白いカードキーを懐から取り出すと、扉の横のコンソールに通し、パスワードを入力しモニターに目を近づけ網膜認証(?)をする。

 

「さあ、開くぞ」

 

 その言葉と同時に扉に長い一本角を生やした馬、『ユニコーン』の絵が浮かび上がり、ゆっくりと開いていく。

 完全に開き真っ暗な空間に光が灯ると、部屋の中央に約2m強程の身長の、真っ白な装甲を纏い額の中央から鋭い角を生やした人型が鎮座していた。

 

「これは……?」

「『ユニコーン』、UC計画というプロジェクトの産物だ。この施設にあった設計図やシステムを総動員して、ゼロから造りあげた機体だ」

「これを、父さんが?」

「そうだ、お前が生まれる以前、管理局に居た頃からずっと俺が1人で開発し続けていたんだが、先日漸く最終チェックが終わったんだ。……どれ、見てるだけじゃなく触れてみるといい」

 

 その言葉に従いゆっくりと近付きその純白の装甲に触れると、一見しただけでは何も分からなかったが、これが単なる機械ではない事だけは分かった。

 それと同時に、何故かは分からないが、この『ユニコーン』が自分の為に造られたのだという事を理解出来た。

 

コレ(・・)を、俺に……?」

「ああ、この機体は最初からお前の専用機として開発していたんだ。魔法技術と魔法とは別体系の科学技術の粋を結集させたこの機体をな」

「別の科学? 何でさ、魔法技術だけじゃいけない理由でもあるのか?」

「良い着眼点だ。その通り、魔法と科学の両方を合わせる必要があったのさ」

 

 父さんは説明好きなのだろうか、またも嬉々として説明を始めた。

 

 …………長かったのでまとめると

 次元世界の中には『虚数空間』という魔法が使えない特殊な空間があったり、魔法自体が効かない存在もいるのだそうだ。それに対抗、対処する為に『ユニコーン』には科学技術が使われているらしい。その逆も同様に、科学技術のみでは対処出来ない事象に対抗、対処する為、魔法技術は欠かせないそうだ。

 そして何より魔法と科学を融合させる事で、ソレ単体だけでは()し得なかったシステムが、この機体に積まれているらしい。

 

「うん、大体理解出来たよ。でもそのシステムって何なのさ?」

「『NT-D』だ。ニュータイプ・デストロイヤーの略称なんだが、既にその名前には意味が無いんだけどな、『ユニコーン』を完成させる為にはソレを積む必要があったんだ」

「『NT-D』……。一体どんなシステムなんだよ?」

「それはな…………っ!?」

 

 詳しい話を聞こうとした直後、大きな爆発音と揺れが施設全体に襲ってきた。

 

「な、何!? 何が起こったの、父さん!?」

「くっ、遂にここまで来たか……! 涼、今すぐ『ユニコーン』を起動させる。機体の前で手をかざせ」

「ええ!? ああもうっ、落ち着いたら全部話してもらうからな!!」

 

 爆発音とかからして、研究所(ここ)が襲撃されてるらしい事は分かった。それ以外にも聞きたい事は山ほどあったが、今は我慢して父さんの指示に従う事にし、おとなしく手をかざす。

 

「生体登録開始、同時に同調、起動準備開始」

 

 父さんが機体の横にあったコンソールを操作すると、手の平に合わせて小さい魔法陣が展開され、次に頭から足にかけて大きな魔法陣がCTスキャンの様にゆっくりと下りていく。

 

「登録完了。続いて同調、起動前最終チェック開始」

 

 魔法陣が消えると『ユニコーン』が粒子化され、俺を包むように粒子が展開されていく。

 

「同調、最終チェック完了。……これでもう、コイツはお前の言うことしか聞かん。お前を相応しい乗り手と判断すれば、『ユニコーン』は無二の力を与える。アルハザードへの道も拓かれるだろう」

「アルハザード……?」

「俺たち最後のアルの一族を縛り続けてきた呪縛。使いようによってはこの次元世界に良くも悪くも、決して小さくない影響を与えるだろう」

 

 また新しい単語が出てきたり、次元世界に影響を与えるだの規模の大きすぎる話に、理解が追い付かない。

 

「いつまでも過去の人間が世界の舵取りをしていてはいけないんだ。いつだって時代を動かすのは、その時代に『生きている』存在なのだから」

「なんだよ……、何なんだよそれ!」

 

 いつの間にか俺を包んでいた粒子の光も収まり、『ユニコーン』を身に纏っていた。それと同時に爆発によるものであろう炎がこのハンガーにまで及んでいる事に気が付いた。だけど、それよりも今の言葉を理解したくなくて、父さんに詰め寄る。

 

「明日の予定だって、来週の予定だってあるんだぞ! それをこんな所でワケの分からない内に死ぬみたいな言い方……、まともな人の死に方じゃあないよ!!」

「確かにそうなのかもしれない。しかし、これで良かったのかもしれん。希望を、可能性という希望を託せる。お前は重荷に思うだろう、恨むだろう。だが、いつかは託さねばならなかった。すまない…………」

 

 言いながら、俺に手を伸ばしてくる。その手は血に濡れていた。

 

「父さん……!?」

「俺の言った事を全く理解出来ないかもしれない。母さんがお前を生んですぐに死んで、母さんの代わりに俺が2人分の親の愛をもっともっと注がなければならないのに、お前を独りにする事が悔しい……」

「今更勝手過ぎるよ……」

 

 伸ばした手は『ユニコーン』の頬に触れ、純白の装甲を赤く染める。その手を包むように握ると、何故か父さんはゆっくりと離れていく。

 

「許してほしい……。お前とはもっと……」

 

(涼……。俺の望みは叶ったよ……、母さん、今……)

 

 何かを言いかけたが、不意に近くで爆発が起こり、父さんの姿が炎に包まれて消える。

 

「父さん!!!」

 

 熱と衝撃から操縦者を守る為だろうか、視界が黒く染まる。

 

「父さん……、俺、まだ言いたい事がいっぱいあったのに……」

 

 決して多いとは言えないが、とても楽しく、嬉しかった父さんとの思い出が、脳裏を次々と過ぎていく。その中でも特に胸に残っている、2人でソファに座り、ある絵を見せられていた時の思い出が甦る。

 

『貴婦人と一角獣』

 

 未だにその意味を知ることは出来ないし、これから知る事が出来るかは分からない。だけど、その時言われた言葉だけは覚えている。

 

(俺のたった1つの望み、可能性の獣、希望の象徴)

 

 多分、この言葉に全てが込められていたのだろう。今となっては確認を取ることも出来ないが。

 

「父さん……母さん……分かったよ。分かんない事ばっかりだけど、俺に前を向いて、進んでほしい事だけは分かった。だから、往くよ……!!」

 

 その声に呼応するように『ユニコーン』が起動し始める。

 そして、起動のカギとなる起動呪文が機体を通じて頭に浮かぶ。

 

 

 

 

『我、可能性の獣を従えし者なり。契約のもと、その戒めを解き放て。激情は明日(あす)へ進む(かて)に、希望は明日への道しるべに、そして何者にも屈さぬ不屈の魂は、燃え盛る心の炎と共にこの胸に!! この手に今日を、明日を、未来を越える力を!! ユニコォォォォォォォォォォン!!!!!!』

 

 

 

 

 叫びと共にあらゆる枷を解き放ち、唸りを上げる『ユニコーン』。

 直後、轟音が響き、俺の身の丈の2倍はありそうな、謎の4脚歩行ロボットがハンガーに侵入してきた。

 

「お前が原因か……!」

 

 こちらを敵と判断したのか、銃口を向けてくるロボット。

 

「お前がっ!!」

 

 『ユニコーン』のカメラアイに光が灯り、背中のブースターから出る青炎と共に、銃を撃たせる間も無くロボットに衝突する。強烈な衝撃が襲うが、それを無視して更にブースターを吹かす。

 

「ここから……ここからっ、出ていけええぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 猛烈な推力に踏ん張りが効かなくなったロボットを、ハンガーの外に押し出そうとすると、後ろが壁だと分かったのか、ロボットは自身の背後に向けて魔力で砲撃を放つ。その直後に壁にぶつかるが、砲撃で脆くなっていたのか、壁を突き破って外に出る。

 突き抜けた先は、何処か別の次元世界なのだろう。薄暗く、陽の射さない惑星の平地だった。ロボットを弾き飛ばし、出力を調整しながらゆっくりと地面に降り立つ。

 

「父さんを殺した張本人……。父さんごめん、今だけは怒りに身を任せるよ」

 

 その言葉と同時に視界のモニター全体に『NT-D』という文字が浮かびあがり、全身に痛みが走る。

 

「うっ、ぐぅっ、うあぁぁああぁあぁぁ!!!」

 

 それを隙と見たロボットが砲撃を放つが、『ユニコーン』に当たる直前機体の目の前で砲撃が湾曲し、逸れる。

 その間に、装甲の隙間から赤い光を漏らしながら、『ユニコーン』は、足から頭にかけて、装甲を展開し『変身』していき、最後に象徴的な角が真ん中から割れ、V字のアンテナに変わる。

 そして背中の白い筒を引き抜くと、桃色の刀身、ビームサーベルを展開し、倍以上に増えた背中のスラスターノズルから炎を吐き出して、ロボットに急接近する。スピードに対処出来ずに反応が遅れたところで更に接近し、一刀のもと真っ二つに切り捨てる。

 

「やった……、とう……さん……」

 

 切り捨てたところで稼働限界時間を迎えた『ユニコーン』は、展開していた装甲を閉じて、元の白い一角獣に戻る。

 そこで俺の意識も限界を迎え、地面へ倒れこむ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが、俺の戦いの1歩目、全ての運命が変わった日の出来事である。

 




 実を言うと最後のシーンをやりたいが為に、かなり駆け足になってしまい、矛盾点が出てくるかもしれません。
 後、早く原作キャラと絡ませたいんですよね。

 不定期になりそうですが、出来るだけ早く次の話を投稿出来たらなぁ、と思います。
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