魔法少女と一角獣   作:牡蠣専用鍋

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 こんばんは、牡蠣です。

 今後は大体2~4日くらいの間隔で投稿していこうかと思います(ばらつき過ぎ)。



 では第10話どうぞ。


魔法少女の心

 昼間は学校に行って、放課後はなのはとユーノと一緒にジュエルシード探索をして、夜はシミュレーションでの戦闘訓練と基礎体力作りのトレーニング。この数日はこんなものだった。

 因みにフェイトは来なかった。そう、フェイトは来なかった。少々寂しかったが、彼女も彼女でジュエルシード集めをしているのだろう。ならば、またこの家を訪れた時に暖かく迎え入れるだけだ。

 後、なかなかジュエルシードが見つからない事に、なのはが焦りを見せていたのが気にかかる。これはしっかりと俺がフォローしなければいけないな。

 

「なのはー、こっちこっち」

「あ、涼さん、こんにちは!」

 

 今日は土曜日。約束していたなのはとの買い物をする為に町へ出ている。待ち合わせは11時に海鳴駅と決めてある。俺がなのはの家まで迎えに行っても良かったのだが、どうしても待ち合わせがいいと言っていたので、こうして待っていたのだ。

 尚、ユーノは留守番になったみたいだ。

 

「随分早いな。まだ15分も前だし、もっとゆっくり来ても良かったんだぞ?」

「ううん、待ち合わせの前に来るのは基本なの! それよりも、涼さんは早すぎるの。もしかして待ってたの?」

 

 あー、こういう時は何て言うんだっけ? ……ああ、そうだ。

 

「いや、ついさっき来たばかりだよ」

「そ、そうなんだ……」

「ちょっと早いけど、行こうか…………なのは?」

「ふぇっ!? な、何でもないの! い、行こう、涼さん!」

 

 なのはを見ると、両手で頬をぐにぐにとこねくり回していた。声に反応するとすぐにやめたが、口元が歪んでいるのが見え見えだ。

 やっぱりさっきのは気障ったらし過ぎたか? いや、嫌がっている様には見えないし……うーん、難しいな。『感覚』に頼るのも間違いだろうし、このままで大丈夫だろう。

 

「あんまりはしゃいで転ぶなよ?」

「むぅっ、そんなに急に転んだりは……きゃあっ!?」

 

 言ったそばから転びそうになるなのは。幸い距離は離れていなかったので、彼女の身体の前に腕を回す形で受け止める。

 

「言わんこっちゃない。魔法が絡まないと、運動の方は駄目みたいだな」

「あうぅ……」

「大丈夫か、顔が赤いぞ? もし体調が悪いなら、今日は帰った方が……」

「だ、大丈夫! 大丈夫だから、気にしないで!」

「そうか。それならいいんだ」

 

 心配したんだがこんなに威勢よく返されれば、気にしなくても良さそうだな。無理もしてないみたいだし。

 

「ほら、転ばないように手、繋いでおこう。それに今日の服は膝出てるんだから、気を付けるんだぞ」

「え、あっ!」

 

 改めてなのはを見ると、白い膝丈のシンプルなワンピースに薄桃色のカーディガン、肩掛けのポーチと実に春らしい出で立ちだ。どう贔屓目に見ても十二分に可愛らしいい。

 あ、これって声に出した方がいいんだっけか。

 

「なのは、服、良く似合ってて可愛いぞ」

「あっ……うん!!」

 

 良かった、笑顔になってくれた。今日は疲れ気味のなのはの心を休める日でもあるから、楽しんで貰わないとな。

 

「さあ、行こうか。まずはちょっと早めに昼ご飯を食べに行こう」

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 一緒にご飯食べて、色んなお店を回って、小洒落たカフェで休憩して、またお店巡りをして……。アリサちゃんやすずかちゃんとのお茶会や家族でのお出掛けとも違う、なんていうか……ちょっぴり大人になった気分。とっても楽しくて、とっても心地がいい。それは多分、今も私の手を握ってくれている涼さんが居るから。

 何でだろう? 涼さんとはつい二週間程前に出会ったばかりなのに、こんなにも安心出来ちゃう。心の何処かで感じてた『ズレ』が無くなっていくような感覚。錯覚だと言われるかもしれないけど、今感じているこの『感覚』だけは手放したくない。

 

「……ん? どうかしたのか?」

「うぅん、何でもないの!」

 

 私以上に『感覚』が鋭い涼さんは、視線に気付いて気遣うように声を掛けてくれる。たったそれだけで嬉しくなる。お友達にも、お父さんやお兄ちゃんにも感じない不思議な『感覚』が身体中を駆け巡る。

 

「そうか。なら次は何処に行こうか? 明日の差し入れは買ったし、なのはの好きな所でいいぞ」

「えっと……海鳴公園!」

「分かった。それじゃ行こうか」

 

 2つ返事で頷いてくれる涼さん。でもその前に。

 

「あ、えっと……」

「! 荷物は全部持っててあげるから、行っておいで」

「あ、ありがとう」

 

 察しがいいのは嬉しいけど、こういう時は複雑な気分なの……。

 

 

 

 

「お待たせ~。じゃあ行こう?」

「ああ」

 

 お手洗いから戻ると涼さんが右手を差し出して、私はそれを左手で握って二人揃って歩き出す。特に何も無ければずっと手を繋いでいたから、自然と出来ちゃう。その事に気付いてまた嬉しくなる。多分、ううん、絶対涼さんはただ私が転ばないように心配してくれてるだけなのかもしれないけど、それでもいいの。今こうしていられるだけで幸せだから。

 

 

 

 

 

 

「おお、ちょうどいいタイミングで来れたな」

 

 私達が海鳴公園に着いたのは、夕日が海に反射してキラキラと光っていて、私が1番好きな海の時間。

 

「うん、何回見ても綺麗なの」

「そこのベンチに座ろうか。……はい、ここに座って」

「ありがとう、涼さん」

 

 涼さんがポケットから出したハンカチを私の座るところに敷いてくれる。

 

 

 

「…………」

「…………」

 

 しばらく海を静かに眺めていると、不意に涼さんが話し掛けてきた。

 

「今日、楽しめたか?」

「うん、もちろん! とっても楽しかったよ!」

「そうか……」

「うん」

 

 それだけ言って会話が途切れる。

 

「…………」

「…………」

「……ここ数日さ、ジュエルシードが見つからなくて焦ってたろ。だからさ、どうにかして心を休めてくれればいいと思ってたんだ。楽しんでくれて良かった」

 

 そうだったんだ……。確かにあの町のジュエルシード以来、1個も見つからないからもっと頑張らなきゃって思ってたけど、涼さんには全部分かってたみたい。

 

「もちろん、今日は俺も休もうと思ってたし、楽しかったぞ? なのはみたいな可愛い子とデートも出来たしな」

「ふぇっ!? え、あ、いや……うぅ……」

 

 あうぅ、夕日とあんまり見せない笑顔と一瞬だけ強く握った手の組み合わせは卑怯なの!! ふぇぇ、顔が熱いの……。

 

「うぅ~、じょ、冗談は嫌いなの……」

「あ、ああ、すまない。困らせるつもりは無かったんだ。えぇと、どうしよう、どうすればいい……?」

 

 本当に冗談だったみたい。本気だったら良かったのに……なんて思っちゃう私に、私自身驚いてる。だけど結構本気で困り気味の涼さんの様子で、顔はまだ赤いままだけど少し落ち着いたの。

 

「じゃあ少しの間こうさせてっ」

 

 言って、涼さんに寄り掛かる。テレビで見るようなカップルみたいに肩に頭を預けられはしないけど、これはこれで満足できるから別に気にしない。

 

「私、今日1日一緒にいて本当に楽しかったの。一緒にご飯食べて、一緒に服を見たり、一緒に同じものを見て、涼さんと一緒だったから……」

 

 あぁ…………そうなんだ、これってもしかして……。

 

「……なのは」

 

 ……優しい声音なのに、不安に駆られる。

 

「な、何?」

「その気持ちは、まだ表に出しちゃいけないモノだ」

 

 その言葉を聞いた瞬間、私は涼さんの手を振りほどいて立ち上がっていた。

 

「ま、まだ何も言ってないのっ! 涼さんが人の心をなんとなく読めるのは知ってるよ? でも、でも、この気持ちを出しちゃいけないって……!」

 

 自分を否定されて、まるでこの気持ちを『いらない』と言われた気がして、声を荒げてしまう。

 

「私は、私はっ!」

「聞いてくれ、『なのは』」

「うぅっ」

 

 だけど重圧すら感じるくらいに強く心を籠めて私の名前を呼んでくれた事で、少しだけ冷静さを取り戻せた。

 

「言い方が悪かった。出しちゃいけないモノなんかじゃない。『まだ出すべきではないモノ』だ」

 

 分かりやすく力を籠めて言ってくれるけど、まだ理解出来ない。

 

「感じてしまったから正直に言うが、気持ちと言うモノはその場の勢いで出すべきでは無い。植物で言えば、それはまだ種から出たばかりの『芽』だ。ここまでは分かるな?」

「うん……」

 

 丁寧に教えてくれたから分かる。気持ちは、心は……。

 

「つまり気持ちは植物と同じで、乱暴に扱ってはいけない。ゆっくりと、多くの時間をかけて育てるものだ。もし乱暴に扱ってしまったら、壊れて元に戻らなくなってしまう。気持ち……心が壊れるのはとても痛いんだ。痛くて、辛くて、心がこんがらがってそこで時間が止まっちゃうんだ。

 よっぽど心の強い人でもない限り、あの時ああしていればこうしていればっていう、後悔の念に囚われてしまう。そんな思いをなのはにはしてほしくないんだ」

「涼……さん……」

 

 涼さんの手が私の手に触れ、涼さんの『感覚』を共有する。何で理解出来るか分からないけど、分かってしまう。感じてしまう。

 私よりも小さい頃の涼さんが、制御の利かなくなって暴走した『感覚』を通して受け取った、黒く醜い感情の波に飲み込まれてしまった時の事を。

 

「なのはの気持ちは、好意は凄く嬉しい。でも、その気持ちはまだ、芽生えたばかりのモノ。もしかしたら友情に育つかもしれない。いや、恋情に、愛情に、憧れにも、尊敬にも育つかもしれない、色々な『可能性』の塊なんだ。

 だから今はまだ駄目だ。その気持ちを心に抱いて、大事に、大切に育ててほしいんだ」

「涼さん、涼さんっ」

「ごめん……。けど、『感覚』を共有してでもなのはには知っていてほしかった。だから、今はこれで許してほしい」

 

 涼さんが私の手を引っ張り、そのまま抱きしめられる。30cm近い身長差があって、私の頭がちょうど彼の胸に収まる。

 

「うん、うんっ」

「辛い『感覚』を与えてすまない。今だけは泣いてもいいんだ」

「涼さん……うぅ、うわぁぁぁぁぁぁん!!」

「ごめん、ごめんな。大丈夫、俺はここにいるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 あれから泣き止んでベンチに座りなおした頃には、すっかり日も暮れて街灯が点いていた。

 

「……大丈夫か?」

「うん、大丈夫だよ……にゃはは……」

 

 笑って返そうと思ったけど失敗しちゃったの。

 

「本当に、ごめんなさい」

 

 急に立ち上がって、深々と頭を下げて謝ってくる涼さん。

 

「頭を上げてよ、涼さん。私はアレを感じた事を後悔はしてないし、むしろお礼を言いたいくらいなのっ。……ありがとう」

「なのは……」

「それに少しだけど、涼さんの事を知る事が出来たし……ね? 私は大丈夫!」

 

 今度こそちゃんと笑って伝えられたから、大丈夫。

 

「そうか。……そうか」

「うん! それと涼さんの言う通り、私の涼さんへの気持ちは大切にするの。だけど、いつまでも私の事を、自分よりも年下の妹みたいな女の子だって思ってると、痛い目を見るからねっ」

 

 私は私に出来る精一杯の大人っぽい笑顔を魅せる。

 ふっふっふ、一瞬だけど見惚れてたのは見逃さなかったの!

 

「それじゃ、帰ろう?」

「ああ、いつまでも居たら補導されるからな」

 

 私達はどちらからともなく手を繋いで公園を後にする。

 

 

 

 

 

 

 家に帰ってから、私の涙の痕を見たお父さんとお兄ちゃんの様子がとっても怖かったです。ちゃんと説明したから大丈夫……だよね?

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 なのはに俺の辛い記憶を見せて罪悪感に(まみ)れていたら、一瞬だけとはいえ、彼女の蠱惑(こわく)な笑顔に魅せられてしまった。

 

「うわぁ、拙い。頭から離れない……」

 

 彼女を引っ張っていたつもりが、実は操られてましたとか笑えないぞ……。あれは、あの雰囲気は拙い。確実に夢に出るぞアレ。

 

「……早く帰ろう」

 

 明日はまた別の約束があるから、寝坊しないように気を付けよう。そう思いながら家に帰る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえり、スズ」

「フェ、フェイト……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ、お邪魔してるよ」

「!? …………!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 家に帰るとフェイトとオレンジ髪のお姉さんが居ました……。どういう事だよ……。




 何だかだんだんとなのはのキャラがブレてきている気がしなくもないです。
 なのはが成長してるってことで…………駄目ですよね。

 頑張ります!


 ではまた次回にて
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