今回は前回からの続きで、後編(?)となっています。
第14話、どうぞ。
夜天だと思っていた本、闇の書から出てきた4人。守護騎士ヴォルケンリッターとか言ってたな。どうやらはやてを主として認識しているみたいだが、ここで俺はどう動くべきだろう……?
「涼さん涼さん」
「な、何だ?」
「なんや、痛い人たちやな」
「何を言ってるんだよ……」
守護騎士達に聞かれないように小声で話し掛けてきたと思ったら、とんでもない事を言い出すな。まあその気持ちは分かるけどさ。
「「「「…………」」」」
俺達の出方を窺っているんだろうけど、ピクリとも動かないのは少しだけ気味の悪さを感じる。まるで人形みたいだな……。
「涼さん涼さん」
「今度は何だよ」
「あの人達、闇の書から出てきたように見えるんやけど、私らの味方なん?」
「そうみたいだ。まずは詳しい事を聞いてみる」
「た、頼むで……。さっきごっそり魔力持ってかれてん。えらいキツいんよ」
「何だって? 分かった、早めにこの状況を何とかしよう」
よく見ると薄らと汗を掻いている。結構辛そうだ、早く休ませてあげないと。……話し合いに武器は必要無いよな? 『ビーム・サーベル』は仕舞っておこう。
「確認する。君たちはこの子、八神はやての守護騎士で間違いないな?」
「はい、間違いありません」
桃色の髪の女の人が答える。多分この人がリーダーなんだろう。
「色々聞きたい事があるだろうが、まずははやてを休ませたい。俺が抱えるから、車椅子を持って付いて来てくれ。飛行魔法で移動するが、何か問題はあるか?」
「畏まりました。移動手段については問題ありません」
「これから休める場所まで行くけど、はやての家と病院のどっちがいい? もしくは他に何処か候補があればそこでもいいぞ」
「え、えと……私ん家で!」
「分かった。とりあえず高度を上げるから、方向を教えてくれ」
そう言ってはやての身体を横抱きに持ち上げる。そして守護騎士の1人、如何にも屈強そうな男性が車椅子を持つのを確認してから、ブースターを使わずにゆっくりと上昇していく。
「わ、わぁ! 浮いとる、浮いとるよ! わぁー、わはー!」
「こ、こら、落ち着け! 落ちても知らないぞ!」
「あ、ご、ごめんな。でも飛んどるんやで!」
車椅子生活をしている分、行きたい所に自由に行ける手段に強い憧れがあるんだろう。『感覚』を繋いでいないのに、強い喜びの気持ちが流れ込んでくる。
「気持ちは分かるけど、今は休むのが先決だ。家の方角はどっちだ?」
「んーと……あっちや!」
「了解、安全航行で行くぞ。結界を解除する」
そうだ、移動の前に認識阻害魔法を掛けないと。
「守護騎士達!」
「「「「はっ」」」」
「ここは魔法文化の無い地だ。今から範囲型の認識阻害魔法を使って飛ぶから、範囲内から出るなよ?」
「「「「畏まりました」」」」
凄く畏まっているのは分かるけど、全員同じタイミングで同じ回答をする様はちょっとなぁ……。
「涼さんって私よりも『あるじ』っぽいなぁ」
「……はやて、ニヤニヤするじゃない」
念話で連携を取っているのだろう守護騎士に囲まれ、それから少しの間はやてのニヤケ顔に晒されながら飛んだのだった。
◇
何事も無くはやての家に着き、お邪魔してリビングに腰を落ち着ける。移動中に眠ってしまったはやてが目を覚ました後、騎士達が自己紹介をして改めて確認を取っていた。
「えーと、桃髪ポニーテールさんがシグナムで」
「はい」
「金髪ショートボブさんがシャマルで」
「はい」
「白髪ケモ耳さんがザフィーラで」
「はい」
「三つ編み赤毛ロリがヴィータやね」
「ろっ……は、はい……」
『はい』しか言わないのかと思ったら、見た目がはやてと同じかほんの少し幼いヴィータと呼ばれた騎士が、言われ様に対して少し不服そうにしている。
「後もう1人居った気がすんねんけど、誰やったかなぁ…………思い出せへんわ。まあ、とりあえずみんなの事は覚えたで。んでもって私が、ベルカっちゅう所の古い魔導書、闇の書の主ってワケなんかぁ」
「その通りです。ご命令頂ければ、今すぐにでも蒐集を開始致しますが……」
「蒐集ってぇのは、魔力の核……リンカーコアから魔力を吸い取るって事やろ?」
「はい。そして蒐集をし、闇の書の全ての頁を埋め完全なる主として覚醒すれば、強大な力を手にする事が可能です」
うわぁ、魔法云々を抜きにしても胡散臭過ぎるぞ……。
「うっはぁ、何やそれ。新手の詐欺みたいな謳い文句やないの」
し、思考がだだ被りじゃないか……。まあ、普通そう思うよな。
「んで、そうすれば私の足も治る……てか?」
「それをお望みとあらば」
「うむむ……でもなぁ……」
まあ、どんな願いでも叶う~とか言われれば揺れるよな。まるでジュエルシードみたい……いや、コレはもっと
「私はあんまし気が進まへんのやけど……」
「だぁもうメンドクセェな! いいからさっさと命じろよ! どうせお前も今までの主みたいに力が欲しいんだろっ!?」
「ヴィータ!! 主に向かって何て事を!!」
……雲行きが怪しくなってきたぞ? というかだ。確かに今、『今までの主』って言ったよな?
「ん~、確かに魔法を
「……はい?」
「な、何を言ってんだよ……」
……凄いな。一瞬でそんな決断を出来るなんて、本当にはやては凄いよ。
「それにな?」
真剣な表情のまま、この場にいる全員の顔を見回して息を吸う。
「『闇の書』なんて名前の魔導書が……まともなワケないやろ!」
「は、はやて?」
「あ、主?」
これは……まあ、そうだな。
「いかにも完成させたらヤバい事起こりそうな気配がビンビンや! そんでもってヴィータ?」
「な、何だよ……」
「さっき今までの主とか言ったやろ。それって前にもこの闇の書を手に入れて、完成させた人がおるって事やないの?」
「そうだよ。この本を手にして、その力を欲しがった奴はいっぱいいる。その中にはもちろん完成させた奴だっていたさ!」
待てよ? 完成させれば力が手に入る伝説級の魔導書なら、普通誰かに渡したりするか? ……これは追及しないといけないな。『カン』も何かを激しく訴えている。
「なあ、気になったんだが、闇の書を完成させたらどうなるんだっけ」
「それはさっきも言っただろ! すっげー力を手に……」
「違う、そうじゃない。完成させたその先だ。闇の書はどんな形で力を寄越す? どんな形で願いを叶える? 闇の書に一番近い守護騎士達はソレを見ている筈だ」
「さっすが涼さんや。言いたい事全部言ってくれたわ」
そりゃどうも。さあ、どう答える。
「それは、えっと……わ、分かんねぇ……。シグナム達は?」
「……申し訳ありません。私にも見当がつきません」
「ええ、私も」
「私もです」
やっぱりか。願いを叶える瞬間は見ていないと。
「加えて聞くが、はやてはもう1人いる気がすると言っていた。それについての心当たりはあるか?」
多分だが、このもう1人が重要な気がする。
「……いえ、我らには心当たりはありません」
「なるほど。…………なら、俺の考えを言わせてもらう。質問は後で受け付けるから、まずは話を聞いてくれ」
さっきのはやてと同じように、この場の全員の顔を見渡してから話し始める。
「この闇の書は意図的な改変、改悪をされているんだと思う。そしてそれを隠す為に、守護騎士達の記憶が消されている。この事から、闇の書の完成は何かは分からないが、とんでもない罠の起動スイッチになっているんだろう。そこでだ。ここで重要になってくるのは、はやてが言っていたもう1人の存在。俺が思うに、この人がカギだ。闇の書の異変や消された記憶の内容には、全てこの人が関わっている筈だ。……何か質問はあるか?」
はやてを含めた5人全員が呆けた顔で俺を見ている……って、何で呆けてるんだよ。
「はっ……!? 長き転生の旅の中でも我らには気付けなかった、隠された真実を僅かな間で見抜き、その解決の糸口まで掴んでしまわれるとは……」
「卓越した慧眼、流石は聖獣様で有らせられます。このザフィーラ、守護獣として感服致しました」
いやいや、持ち上げすぎじゃ…………ん? 今、変な単語が聞こえた気がするんだが?
「なぁ、聖獣って何の事だ?」
「聖獣とは伝説の獣、つまり『ユニコーン』の事でございます」
「『ユニコーン』が……? その、伝説って?」
「ああ! 説明が足りませんでした。我がベルカでは一角獣とは可能性の獣、希望の象徴、導きの聖獣として伝説になっているのです」
「な、何だって!?」
ベルカでも『ユニコーン』が!? いや、それよりも可能性の獣、希望の象徴って……。ああ、くそっ! やらなきゃいけない事とか、整理しないといけない情報がごちゃごちゃし過ぎてモヤモヤする! 1つずつ片づけるしかない、思考を戻そう。
「すげー、ザフィーラがこんなテンション高いのなんて初めて見た……」
「いつ如何なる時代、姿であろうと聖獣の証たる一角を見逃す筈が無いだろう。一瞬でも本当にこの方が聖獣の繰り手かと思ってしまった事を、深くお詫び申し上げます」
「お、おう、許す……というかそこまで畏まらないでくれ。とにかく聖獣云々は置いといて、俺は蒐集自体には賛成だ」
「涼さん!? な、何言うとるんよ!」
守護騎士達の雰囲気が一気に張り詰めるのと、はやてが焦って問いただしてくる。予想の範囲内だ。
「人の話は最後まで聞く。賛成とは言ったが、闇の書の完成には反対だ」
「……どういう事や?」
「これから説明する。シグナム、1つ聞くが闇の書は完成した時以外の記憶はあるんだろう?」
「ええ、完成後や今までの主の詳細、それと闇の書のもう1人以外の記憶については、ほぼ欠落は無い筈です」
おお、予想以上に欠落が少ないな。これなら大丈夫か?
「闇の書の完成がトリガーになっているなら、完成までに闇の書側から何かしらの反応がある筈だ。今出来る事は少ない。だからまずは蒐集しつつ様子見をする。もちろん、他に解決方法があるならそれも試すつもりだ」
「なるほど、理解しました。ですが、主はやては蒐集行為を良しとしません。我らとしても主の意見は尊重したいのです」
「分かってる。俺だって何も人から奪い取れなんて言わないさ」
「なら、どうするのです?」
「俺達の探し物に協力してもらう」
そう、まずはこの問題を解決しないと先へ進むのは無理だ。
「探し物……ですか?」
「そうだ。守護騎士は知らないだろうが、はやては聞いたことがあると思う」
「わ、私が?」
「……つい最近の海鳴市の巨大樹事件、聞いたことあるだろう?」
俺に、いや、俺達にとって忘れてはいけない事件だ。
「あぁ、あれか! あの事件が何か関係あるんか?」
「あれは魔法関連の事件なんだ。……まずはこれを見てくれ」
空中投影型のディスプレイを展開し全員に見せる。
「この宝石はジュエルシード。ロストロギアだ」
「ロストロギア!? 何故そのような物がこの地に!?」
「な、何や? そのロストロギアっちゅうんは?」
「ロストロギア、古代遺産とも言われる物なんだが……ああ、ロストテクノロジーって言った方が分かりやすいか?」
少し言い変えると理解出来たみたいで、続きを促してくる。
「遺跡から発掘されたジュエルシードを輸送している途中何者かに襲われて、この地にばら撒かれてしまったらしい。今は俺と発掘した本人ともう1人の魔導師の3人で探索をしているんだ」
「なぁ、そのもう1人の魔導師って、まさか管理局と繋がってるんじゃないだろうな?」
「いや、繋がってはいない。元ははやてと同じような、魔法の素質を持った子だよ。年もはやてと同じくらいだぞ。発掘した本人も管理局とは直接の繋がりは無いみたいだ」
「ふぅん……。ま、どんな奴でもアタシらの敵じゃねーけどな!」
……何を張り合っているんだ?
「そこらへんも置いといて。このジュエルシードは持った者の願いを叶える、願望機のようなロストロギアだ」
「……そんなん小学生でも考えんで(笑)」
「言ってやるなよ、俺だって我慢したのに……。んで、コイツの正体は次元干渉型エネルギー結晶体……つまり、魔力を持っているって事。ここまで言えば分かるだろ?」
「ええ、魔力を持っているという事は、蒐集を出来ます……!」
「これなら誰にも迷惑が掛からんどころか、町の平和も守れるって事やね! くぅ~、面白くなってきたで!」
よし、はやても納得してくれたし、守護騎士達も士気が高まっている。これならいけそうだ。
「協力……してくれるな?」
「もちろんや! なぁ、みんな!」
「はい、我ら全員、全力で協力を致します」
「おう、アタシらに掛かればそんなもんすぐに済むぜ!」
「ええ、私達に敵は有りませんもの」
「主や聖獣様の住まう地を守れるとは……守護の獣として力の及ぶ限り、協力させて頂きます」
さて、纏まった所で自己紹介しないとな。このまま聖獣と呼ばれるとか、背中がむず痒くて仕方がない。
「ありがとう。改めて、俺の名前は浜寺涼だ。これからは一緒の目的を持つ仲間なんだ、聖獣様とか畏まった言い方なんてしなくていいから、涼って呼んでくれるとありがたい」
「分かりました。では涼と呼ばせて頂きます」
「アタシも涼って呼ぶから、ヴィータって呼べよな」
「それじゃあ私は涼君って呼ぶわね」
「……そう仰るのであれば、涼殿とお呼びします」
よしよし、これで少しはマシになったぞ。
「ほんなら、主の私は守護騎士のみんなとは家族みたいなんになるんやし、私の呼び方もあんまり固いのは嫌やなぁ~」
「ぜ、善処します……」
「ま、呼び方は後回しや。それよりも、私は主としてみんなの衣食住、きっちり面倒見なアカンゆう事や。幸い住むとこはあるし、料理は得意や。後は、お洋服! ……て言いたいとこやけど、今日はもう遅いし明日にしよか」
「なら今だけ魔力で服を作ればいいんじゃないか? 流石にその恰好はどうかと思うぞ」
ああ、ずっとツッコミたかったんだ。何で全員黒いインナーしか着てないんだよって……。
「魔力ってそんな事も出来るん!? 便利やなぁ……」
「……倫理的に問題があるのならば仕方ありません」
あ、普通の服も知ってるのか。そうなら何でもっと早くに着替えなかったんだ。
「それじゃあ俺はそろそろ……」
「え、もう帰るん……?」
…………その目には逆らえないよ。
「分かった、食べていく。でも6人分の食材は無いだろうから、今から買いに行こう」
「あ……うん!」
本当は今日1日ゆっくり休む筈だったけど、こういうのも悪くない。いや、まあ闇の書とか新しい問題も浮上したけどさ。
因みに夕食は、俺とはやての合作ハンバーグだった。夢中でご飯を食べていたヴィータは、とても可愛かったと言っておこう。
明日からは心機一転、頑張りますか!!
おまけ ~変身?~
「なあなあ涼さん」
「何だ?」
「あのロボット、『ユニコーン』になる時の事なんやけど……変身ポーズとか決めへんの?」
「ぽ、ポーズ?」
「ホラ、仮面ラ○ダーとかみたいに!」
「え、ええ!? 別にいらないと思うけど……」
「アカン! 変身ポーズはやらなアカンよ! アレは戦う覚悟を決める為の儀式なんやから!!」
「儀式って、難しい言葉知ってるな……。でもそうか、戦闘用の思考に切り替える時に使えそうだな」
「せやろ? ほんなら1号から試してみよ!」
という話があったりなかったり。
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はい、というワケで原作が次元断層に飲み込まれましたね。
書いてて思ったのは「フェイト陣営の勝率がほぼ0じゃないか?」でした。
色々考えてはいますが、上手く文章に変換出来なくてもどかしいです。
ですがそこは気合で頑張ります!
ではまた次回で。