魔法少女と一角獣   作:牡蠣専用鍋

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 こんばんは、牡蠣専用鍋です。

 何とか3日以内に投稿することが出来ました。

 あまり長いと言えませんし、クオリティが高いとも言いづらいですが、楽しんでいただければ幸いです。


一角獣は知り、魔法少女は出会う

 目を覚ますと、土蔵の転送ポートの上にいた。

 

「確か何処かの地面に倒れたんじゃ……」

 

 それに加え、身に纏っていた筈の『ユニコーン』も無くなっていた。慌てて周囲を見回すと、目の前に一角獣の絵が描かれたカードが落ちていた。

 

「もしかしてコレが『ユニコーン』なのか?」

 

 全身の痛みを無視してカードを手に立ち上がると、その通りだと言わんばかりの、波長を感じた。どうやら言葉は発せなくとも、意思を伝える事は出来るようだ。どことなくただの機械ではないと感じていたが、あながち間違いでは無かったらしい。

 

「そうか……。これからよろしくな、『ユニコーン』」

 

 こちらこそ、という意思と共にカードがキラリと光った気がした。

 

 

 

 土蔵から出ると、外は既に日も落ち、春の夜らしい肌寒い空気に包まれていた。

 

「さて、と」

 

 明りの点いていない家を見ると、改めて独りになってしまった事を、嫌でも理解してしまう。

 

「あ……」

 

 母や兄弟も居ない俺にとって、唯一の肉親である父さんを失った悲しみが襲ってくる。だけど泣くわけにはいかない。『ユニコーン』との契約の時、誓ったんだ。どんなに辛くても、苦しくても泣かないと。

 

「男は顔で笑って、心で泣くものだって、何処かの誰かも言っていたしな!」

 

 そうと決まれば明日の初登校の準備をしよう。ほんの少しだけ目尻から溢れた涙を拭い、準備に取り掛かった。

 

 後日判明するのだが、父さんが亡くなったのにも関わらず葬式1つ営まなかった……いや、営めなかったのは、俺を除いた全ての人の記憶から父さんの記憶が消えていたからだった。そうなると、中学生が一軒家に1人で住んでいる等、色々と問題が浮上する筈だった。しかし、かなり前から周到に準備を重ねていたらしく、徐々に父さんという存在を認識出来なくさせ、最後には存在していたという事実すら消し去るという魔法(?)を使用していたらしい。そして俺の境遇なのだが、幼くして両親を亡くした子供(俺)を遠縁の親戚が引き取ろうとしたが、思い出の詰まった家を離れたくないという理由から、ヘルパーの協力を受けながら生活している……、ということになっているらしい。

 何故『らしい』かというと、父さんの部屋を整理しようと入ったら、財産の入った通帳と判子と共に部屋のテーブルの上に置いてあった手紙を読んで知ったからである。

 これらの事を俺に一切気取られること無くやってしまうのだから、末恐ろしい父だ。

 それと同時に、魔法技術の無い世界で魔法を使うことの恐ろしさも知る事が出来た。

 

 

 だけどさ、少しぐらい父さんの死を悼ませてくれたっていいじゃないか……。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 気が付けばあれから2日経っていたが、学校では何事もなく過ごせたし、元々父さんと家事を分担しながらやっていたので、生活は特に困らなかった。

 

 そして肝心の『ユニコーン』についてだが、父さんの手紙の中に説明があり、少しだけ分かった事がある。

 機体の内部骨格、纏った際俺の身体に触れる部分に、『サイコフレーム』と呼ばれる、操縦者の意思を汲み取り機体の制御に反映させる特殊な素材が使われている事。この『サイコフレーム』には、共振することにより、通常では起こり得ない現象が起こる場合があるらしい。そんな何が起こるか分からない物を、全身余す所無く使っていて問題は無いのかと聞きたくなるが、『NT-D』や『アルハザードへの道』に関係するもので、コレが無ければただの重たい金属の塊と化してしまうのだそうだ。

 

 次に『NT-D』だが、発動すると装甲を展開、内部骨格の『サイコフレーム』を露出させ「こう動きたい」というイメージを受け取り現実に反映させ、機動性を大幅に向上させるらしい。それに加え、操縦者の反応が間に合わなかった場合機体自身が自動で行動しサポートするのだが、イメージを受け取らせる逆の現象、イメージの逆流が起こり操縦者を機体の処理システムの一部として呑み込んでしまう事から、強い意志を持ち続ける事が重要になるようだ。後、このシステムは『アルハザードへの道』に関係しているみたいだが、これに関しては良く分からなかった。何せ「時期が来ればいずれ分かる」としか書かれていないのだから。

 

 最後に武装について。これは戦いの道具であるが、決して私利私欲の為に悪用してはいけないと書かれていた。もちろん俺にはそんなつもりは無いが、第三者の手に渡る事だけは防がなければならない。そして、リストにあったのが、『ビーム・マグナム』、『ビーム・サーベル』、『ハイパー・バズーカ』、『頭部バルカン砲』、『シールド』の5種。どれも強力なもので、取り扱いには細心の注意が必要みたいだった。

 

「っと、もうこんな時間か」

 

 父さんの部屋にあった魔法技術の教科書を、覚えたてのマルチタスクの練習をしながら読んでいたら、時計の短針が9を指していた。

 

「そろそろ明日の準備でもするか」

 

(聞こえますか……、僕の声が……。聞こえますか……!)

 

 立ち上がった途端、頭の中に直接声が流れ込んできた。

 

 これは……思念通話!?

 

(聞いて下さい……、僕の声が聞こえるあなた、お願いです……! 僕に少しだけ、力を貸して下さい!)

 

 しかも無差別な広域念話である事から、相当に切羽詰まっているようだ。

 

(お願い……僕の所へ! 時間が、危険がもうっ……!)

 

 念話が途切れる。次の瞬間には『ユニコーン』の待機形態であるカード片手に駆け出していた。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

「『ユニコーン』、起動!」

 

 念話の発信源に向かう途中、流石に顔を見られるのは拙いと思い、『ユニコーン』を身に纏う。それによって機体がデバイスの役割も担ってくれるので、素人の俺でも小難しい魔法を使えるようになる。すぐさま夜中という点を考慮して背中のブースターではなく、飛行魔法を展開する。それと魔法技術の秘匿の為に、結界を張るのを忘れない。そして結界も飛行も全て『ユニコーン』任せにし、発信源に向かって全速力で飛ぶのだった。

 

 結界を張ったのならブースターを吹かしても問題ない事に気付いたのは、飛び始めた少し後だった……。

 

 

 

 

 少しの間飛ぶと、念話の発信源であろう動物病院が見えてきた。ブロック塀が少し崩れているところを見ると、まだ被害はそこまで大きくなってはいないみたいだ。そして小動物を抱いた女の子と、少し離れた所に、塀に突っ込んで抜け出そうとする黒い何かがいた。状況は小動物が発した念話を聞いた女の子が、黒い怪物に襲われそうになった小動物を間一髪助けたといったところだろう。敵味方のマーカーを視界モニターに表示させると、女の子と怪物の間に女の子を守るように降り立つ。

 

「え、えぇ!? 今度はロボット!? 何が起こってるの!?」

「あ、あなたも僕の声に応えてくれたんですか……?」

 

 怒涛の展開に戸惑い気味の女の子と、不安そうに確認を取ってくる小動物(?)。

 

「喋る動物……? とりあえず味方だ、安心してくれ。出来れば詳しい事情を聞きたいとこだけど、それはアイツを倒してからだ。……倒し方は分かるか?」

 

 怪物に向き直りながら味方アピールをすると、一応納得してくれたのか、小動物は簡単に事情を教えてくれる。

 

「はい! えっと、あれはジュエルシードの異相体といって、純粋な魔力の塊なので、魔力による封印をしなければ倒せません! その為のデバイスはあるのですが、僕には扱いきれなくて……」

「魔力、か。分かった、何とかしてみる。そこの君、危ないから下がってて」

「え、あ、はいっ!」

 

 早口で交わされる会話についていけてない女の子に注意を促すと、素直に従い電柱の陰に隠れる。丁度抜け出せたのであろう異相体が俺を視界に入れると、襲いかかってくる。

 

「『シールド』! 『ビーム・マグナム』!」

 

 デバイスの格納領域から、音声認証で左腕のハードポイントに『シールド』、右手に『ビーム・マグナム』を装備する。そして両足に力を籠め、盾を構え飛びかかってきた異相体を受け止めようと備える。すると衝突する寸前『シールド』が縦にスライドし、中心の円から対魔力フィールド、Iフィールドを展開し、魔力で構成されている異相体を弾き飛ばす。

 

「よし、次はマグナムを……!」

 

 言って、右手のマグナムをまともに着地出来ずに蠢いている異相体に向け、左手でサイドグリップを握り機体のサポートを受けて照準を合わせる。ロックオンマーカーが重なった瞬間、引き金を引く。

 

「ぐぅっ!」

 

 銃口にエネルギーが収束し特徴的な発砲音と共に猛烈な熱量が思念体を襲う。強烈な反動を抑えきれず照準が少しズレるが、掠めただけで思念体の体の大部分を消し去る。しかしただのエネルギーが弾である『ビーム・マグナム』では、やはり封印は難しかった。

 

「コイツは強力過ぎる……! 使いどころを見極めないとな」

 

 銃身の急速冷却が終わり使い切った(エネルギー)パックを排出、次弾を装填し空のEパックを格納領域に収納する。残弾を確認、残り4発。

 

(封印は難しい、なら封印方法を持ってる小動物に任せるか。何かするみたいだし、時間稼ぎをしよう)

 

 行動を決め異相体の動きを抑えながら、後ろの電柱の陰にいる女の子と小動物の様子を窺う。

 

 次の瞬間、雲を突き抜ける程凄まじい桃色の光の柱が発生した。

 

「一体何が起こってるんだ……?」

 

 

 

 ◆

 

 

 

 頭に響く声に導かれるまま、学校の帰りに動物病院に預けたフェレットを助けたまではいいものの、次々襲いくる怒涛の展開に頭の処理が追いつかない私『高町なのは』は、分からない事ばかりの中で自分にも出来る事は何か無いかと考えていた。

 

 私にも白い人みたいな力があれば……。

 

「あ、あの、フェレットさん! 私にも何か出来る事は無いかな……?」

 

 そういえばと、腕の中のフェレットさんがあの異相体を封印する為の物を持っているとか言っていたのを思い出して尋ねる。

 

「はい、あるにはあるのですが……」

 

 どうにも歯切れの悪い物言いに、焦れた私はフェレットさんに詰め寄る。

 

「なら教えて! ただここで見ているだけなんて嫌なの!」

「分かりました……。あなたに託します、『魔法』の力を!」

「ま、魔法……?」

 

 突然出てきたファンタジーな言葉に狼狽(うろた)えるが、それどころではないと思考を打ち切り、フェレットさんの首に掛かっていた小さな赤い宝石を受け取る。

 

「暖かい……」

「新規使用者登録モード! さあ、それを手に目を閉じて心を澄ませて、僕の言う通り繰り返して」

 

 仄かに暖かいソレに身を(ゆだ)ねるように握りしめ、耳に届く言葉を紡ぐ。

 

「我、使命を受けし者なり」

『我、使命を受けし者なり』

 

 手の中の宝石が熱を持ち始める。

 

「契約のもと、その力を解き放て」

『契約のもと、その力を解き放て』

 

 宝石が脈動する。

 

「風は空に、星は天に」

『風は空に、星は天に』

 

 胸が熱い。

 

「そして不屈の心は」

『そして不屈の心は』

 

 苦しい。

 

「『この胸に! この手に魔法を!! レイジングハート、セット! アップ!』」

 

 呪文と共に熱を、想いを、解き放つ。

 

≪Stand by ready. Set up.≫

 

 電子的な声が聞こえ、身体の内側から溢れた光に包まれる。

 

「なんて魔力だ……!」

 

 光が収まると、赤い宝石改めレイジングハートと共に空中にいた。

 

≪はじめまして、新たな使用者さん≫

 

「あ、はい! 初めまして!」

 

≪あなたの魔法資質を確認しました。デバイス、防護服(バリアジャケット)ともに、最適な形状を自動選択しますが、よろしいですか?≫

 

「え……と、とりあえず、はい!」

 

 いきなり杖と服をデザインしろと言われても困るだけなので、レイジングハートに一任する。

 

≪All right. Stand by ready. Set up.≫

 

 電子音声と共に今着ている服が分解され、赤い宝玉が金色の輪に繋ぎ止められた、白い持ち手の杖が構成される。

 

≪Barrier jacket set up.≫

 

 次にバリアジャケットの構成に入る。黒いインナー、金色のハードシェル装甲が胸部にある白いアンダーアーマーの順に構成され、その上に赤い宝玉を装着、宝玉に付属したウィングが展開、その後白を基調としたロングスカートのジャケットが魔力によって編まれ、仕上げに袖口の青いブレスガード、靴、頭に白いリボンが構成され、バリアジャケットが完成する。

 

「やった! 成功だ!」

 

 フェレットさんが喜びの声を上げ、私はそのすぐ傍に降り立つ。

 

「ふぅ……え、えぇぇぇ!?」

「大きい魔力に惹かれてそっちに行った! 逃げろ!!」

 

 驚く間も無く白い人から檄が飛んでくる。

 

「ふぇぇ!?」

 

 考えるよりも先に後ろへ飛ぶと、そのまま空中へと退避する。まさかいきなり襲われるとも空を飛ぶとも思わなかったのでさらに驚いていると、レイジングハートから声が掛けられる。

 

≪魔法についての知識は?≫

 

「全然! 全くありません!」

 

≪では全て教えます。私の指示通りに≫

 

「はいっ!」

 

 どうやって魔法を使ったらいいか分からなかったので、レイジングハートの言葉は頼もしいの一言に尽きる。

 

≪飛びます≫

 

 その声と同時に足に桃色に光る羽が現れ、飛びかかってきた異相体を避ける。

 

≪Protection≫

 

 しかし、素早く反転した異相体の突撃は避けられないと判断し防御魔法を展開する。その守りは先程の白い人と同じように異相体を弾き飛ばす。

 

≪良い魔力をお持ちです。では次に封印方法ですが、接近による封印魔法の発動か、大威力魔法が必要です≫

 

「えっと、それってどうすればいいの?」

 

≪あなたの思い描く『強力な一撃』をイメージしてください≫

 

「強力……そういえば白い人が凄いの撃ってたよね……。あれを再現できないかな?」

 

≪あなたがそれを望むなら≫

 

 なんとも心強い杖。なら後は私がそれをイメージするのみ。

 

「良かった、無事だったんだな。……それが封印の為の杖か?」

「白い人……、はい! あ、えっと、お名前……」

 

 異相体に襲われそうになっていたフェレットさんを助けて、胸に抱えた白い人が飛行中の私に寄り添い無事を確認してくれる。それといつまでも白い人なんて呼び方は失礼だと気付いた私は、窺うように聞く。

 

「……『ユニコーン』とでも呼んでくれ。それで、封印は出来るか? 俺の装備では純粋魔力体のアイツを消し飛ばすだけで、完全な封印は出来ないんだ。頼めるか?」

「ユニコーンさんですね! 私の名前は高町なのはです! 封印は任せてください! レイジングハートが出来るって言ってくれてる、なら何も問題はないの!」

「高町なのは……、覚えたよ。それじゃあ俺が動きを止める! その隙に封印魔法を頼む!」

 

 ユニコーンさんがその場に止まり、私はその少し後ろに降り立ち封印の準備に取り掛かる。

 

≪Cannon mode≫

 

 レイジングハートが丸みを帯びたフォルムから、鋭角的なフォルムに変化しトリガーユニットが増設され、杖というより大砲を彷彿とさせる。

 

「やろう、レイジングハート!」

 

≪All right. Master.≫

 

「直射砲!?」

 

 いつの間にかユニコーンさんの腕から私の傍に来ていたフェレットさんが驚きの声を上げるが、今はそれに構っている暇はない。

 

「来たぞ! 準備はいいか!」

「はい!!」

 

 建物の影を移動して、広い通りに出た私たちを見つけた異相体は、唸り声をあげて近づいてくる。

 

「『ビーム・マグナム』!」

 

 上空に待機していたユニコーンさんが手に持っていた銃から、強力なビームを撃つ。その一撃は異相体の体を地面に縫い付けるには十分すぎる威力だった。

 

「今だ、高町!!」

「はい!! レイジングハート!!」

 

≪All right. Divine≫

 

 杖の先に私の胸の奥から溢れ出た魔力が集まる。後はそれを解放するのみ。

 

「バスタァァァァ!!!」

 

 トリガーワードと共に引き鉄を引く。撃ち出された魔法は膨大な光の奔流となって異相体を呑み込み、封印を出来たという確かな手ごたえを感じる。

 

「はぁっ、はぁっ、やったの!?」

「はい! 封印成功です!」

 

 フェレットさんが成功したことを教えてくれる。その瞬間緊張で固まっていた体の力が抜け倒れそうになるが、ユニコーンさんが支えてくれたので倒れる事はなかった。

 

「よくやったな、高町!」

「はいぃ、よ、よかった~」

 

 ユニコーンさんの褒め称える声に私は安堵し、初めての魔法の使用で火照った体を冷ます為夜の風に身を任せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが、私の戦いの1歩目、平凡な日常と魔法の世界を行き来するようになる日の出来事でした。




 どうでしたでしょうか?

 今回は主人公である涼の説明回と、なのはの魔法との出会い、ユニコーンとなのはの出会いですが、自分の語彙の少なさに苦労しました。

 次回もまた近いうちに投稿出来ればと思います。
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