魔法少女と一角獣   作:牡蠣専用鍋

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 こんばんは、牡蠣専用鍋、略して牡蠣です。

 時間があったとはいえ、まさか1日で投稿できるとは思いませんでした。


 では、今回も楽しんでいただければ光栄です。どうぞ


魔法少女の選択

 あれから倒れていた仔犬の状態を確かめると特に異常は見られなかったので、軽い記憶処理を施した女性の近くに置く。少しして目を覚ました女性は不思議そうに周囲を見回すと、仔犬を連れて境内から去っていく。

 

「……もう出ても大丈夫だな」

 

 近くに誰も居ない事を確認して物陰から出る俺達。

 

「あの、バナージさん。少しお話しませんか?」

 

 早くここから去りたかったが真面目な顔をしたなのはに呼び止められ、そうもいかなくなる。

 

「何かな? 俺からは何も無いんだけど」

「あ、あのっ、ありがとうございます!!」

「…………」

「昨日の事も今日の事もですけど、きっとバナージさんが助けてくれなかったら私だけじゃなくてもっと色んな人が危ない事に巻き込まれてたと思うの! さっきの女の人だってそう! 私とユーノ君だけじゃこの神社だって壊してたかもしれないの。だけどバナージさんが私たちの事引っ張ってくれたから、昨日と今日でもうジュエルシードが2つも集める事が出来たし……だから、えっと、その、ありがとう!」

 

 敬語すら抜けているが、感謝と尊敬の念だけは人一倍感じる。それが今の俺には嫌で嫌で仕方なくなる。

 

「何で……」

「えっ?」

「何でそんな風に言えるんだよ……? まだ出会って2日、そう2日だ。それしか経っていない俺をどうしてそこまで信頼するんだ……? どう考えてもおかしいだろ。たった2回背中を預け合っただけの関係、ましてや俺は個人的理由で正体を隠しているんだぞ!? しかも名前だってどう聞いても偽名じゃないか! そんな俺をどうして……?」

 

 これは完全なる八つ当たりだ。つい最近力を手に入れて調子に乗ってた奴が、その力を使いこなせず不貞腐れてる。その醜い感情を自分より小さななのはとユーノにぶつけている。それがますます嫌になる。

 

「それでも」

「それでも、何だって言うんだよ」

「それでも、助けてくれたの。たった二日、二回一緒に戦っただけでも、私を助けたことには変わりはないの」

 

 『ユニコーン』を纏って隠れている筈の俺の目を見て、真剣に話すなのはに何も言えなくなる。

 

「それに私、結構『カン』が良いんですよ? なんとなくですけど、バナージさんは悪い人じゃないって、信じても大丈夫だって思います。昨日会ったばっかりの私が言うのも変、ですよねっ! にゃはは……」

「『カン』、ね……」

「はい、『カン』ですっ」

「えっ、え?」

 

 ワケも分からず俺となのはを交互に見て首をかしげているユーノをスルーして、改めてなのはに向き直る。

 

「ハ、ハハハッ、それなら仕方ないな。何せ俺も『カン』はイイ方だからな」

「か、かんって何なんですかぁ……」

 

 元々正体もなんとなく隠しただけだし、今なら俺の『カン』も大丈夫だと言っている。でも小学3年生に説得される俺って……、と思ってしまう。

 

「うん、じゃあちょっとしたクイズを出そう」

「「クイズ?」ですか?」

「心を読む超能力者。これが分かったら俺の所へいつでもおいで」

 

 多分噂好きな友達あたりに聞けばすぐに分かるだろう。これはちょっとした意地悪なのだから。聞き分けの悪い子供の癇癪みたいなものに付き合わせるみたいで、申し訳ないとも思うがこれが最後だ。

 

「それと、敬語はいらないよ。それじゃあな」

 

 二人に何かを言わせる前に、飛行魔法と認識阻害魔法を使いその場から去る。

 

「強く、ならないとな」

 

 思った事をあまり口に出すタイプの人間ではないが、これだけは出さなければいけない。そうと決まれば帰ったら早速魔法について勉強しないとな。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

「行っちゃったね、ユーノ君」

「う、うん。いまいち状況が分かんないけど、解決したって事でいいの?」

 

 まだ混乱してるユーノ君を肩に乗せて帰る。

 

「うん、これで私とバナージさんの間には固~い友情が結ばれるの! ホンネで語り合った人同士には切っても切れない友情で結ばれるってお姉ちゃんに借りた漫画にそう書いてあったし、それに敬語もいらないって言ってたし、間違いないの! 後はクイズを解いて直接聞きに行くだけ!」

「あ、あはは……」

 

 ホントは海辺でコブシをぶつけ合うんだけど、コブシの代わりに言葉をぶつけ合ったから、大丈夫だよね?

 

 

 

 後でお姉ちゃんに漫画について詳しく聞いてみたら、様子の変なお兄ちゃんに青い顔して連れて行かれたの。

 

 

 

 

 

 次の日の学校に向かうバスの中で、いつも一緒の友達のアリサ・バニングスちゃんと月村すずかちゃんに、バナージさんの言っていたクイズについて聞いてみた。

 

「心を読む超能力者ぁ? 何、そんな眉唾モノについて知りたいの?」

「えっと……なんとなく? それで、2人なら何か知ってるんじゃないかなーって」

 

 思った通りアリサちゃんには変な顔をされちゃったけど、すずかちゃんには心当たりがあるみたいで、真剣な顔をして考え事をしてる。

 

「それで2人は何か知ってる? どんな話でもいいんだけど……」

「はぁ……なのは、アンタ知らないの? 今あたし達の通ってる聖祥大付属小に、その超能力者が通ってるって噂」

「え、えぇ!?」

 

 思った以上に近くにいた事に大きな声を出しちゃって注目されてしまい、私は顔を赤くして縮こまる。

 

「でも、なんで超能力者なのよ。もう少し信憑性の高い名前にしろって思うわよね」

「にゃはは……。あれ、すずかちゃん?」

「え!? あ、ううん、何でもないよ。それよりもその人、今は中等部に通ってるみたいだよ」

 

 まさかこんなに早くバナージさんの正体の手掛かりが掴めるとは思ってなかったけど、これはとっても大きな1歩なの。

 

「で、どうすんのよ? その噂の正体を確かめに行くなら私も連れて行きなさいよね!」

「なんだかんだ言って、アリサちゃんも気になるんだね」

「別にそういうワケじゃないわよ! 中等部にアンタ1人で行かせたら心配だから……あ゛」

 

 わお、釣れちゃったの。

 

「い、いいから今日は噂を確かめに行くわよ! すずか、アンタも来なさいよ!」

「うん……」

「……すずかちゃん?」

 

 心ここに非ずといった感じのすずかちゃんが気になるけど、曖昧に笑い返すだけで流されちゃって詳しくは聞けなかったの。

 

 

 それから授業間休みと昼休みを使って、色んな人に心を読む超能力者の噂を聞いてまわって大体の予想を付けられた頃には、放課後になっていたの。帰ってないといいけど……。

 

「さあ! 噂の中等部に行くわよ!」

 

 真っ先に荷物をまとめたアリサちゃんが声をかけてきた。多分私より噂の正体が気になってるんじゃないかな?

 

「うん、行こう!」

「う、うん」

 

 先導するアリサちゃんに続くすずかちゃんと私。いつもの3人のパーティーで、いざ()かん! ってヤツなの!

 

「それにしてもひっどい噂よね。幽霊屋敷に住む心を読む超能力者の化け物……。これが全部1人に付いてる噂とか、実際ソイツは何者だって感じよね」

「うん……、何1つ良い話聞かなかったし……」

「化け物……」

 

 とことん人を(けな)す噂話にアリサちゃんはどこか不機嫌そうにして、私は納得がいかず、すずかちゃんに至ってはもうお通夜状態。こんなに言われてる本人はどんな思いでいるのかな……。

 

 

「あの、ここに浜寺(はまじ)(りょう)って人がいるって聞いたんですけど」

 

 男子中等部の校舎についた私達。アリサちゃんが近くにいた中等部の人に話を聞くと、途端にその人が不機嫌になるの。

 

「ハッ、アレに用かよ。なんか知らねぇがずっと教室から出て行かねぇんだよ、気持ち悪い。アレに関わるとロクな事にならないぜ。端の教室にいるから見るだけ見たらさっさと帰った方がいいぞ」

 

 そう言って校舎から出ていく中等部の人。アリサちゃんと私は呆気にとられて、すずかちゃんは俯いてしまう。

 

「な、な、何よあの言い方! 人をアレ(・・)呼ばわり!? バッカじゃないの!?」

「あ、アリサちゃん……」

「…………」

「噂話の確認だけするつもりだったけど、浜寺ってヤツに1度言ってやらないと気が済まない!! なのは! すずか! 行くわよ!!」

 

 そう言って廊下を走って行ってしまう。

 

「え、えと……すずかちゃん?」

「……化け物って言われて、あんなふうに言われて、辛くないのかな」

「私には、分からないよ。けど、会ってみれば少しは分かるんじゃないかな?」

 

 そう、まだ本人と会って話の1つもしてないの。それでその人の事が分かるワケが無い。だから私はすずかちゃんの手を取って歩き出すの。知るために、お礼を言うために。

 

 

「……アリサちゃん?」

 

 目的の教室の扉を開けたポーズのまま固まってるアリサちゃんを見て、不思議に思って近付き視線の先に顔を向けた瞬間、時が止まる。

 

 

 

 

「待ってたよ」

 

 

 

 

 教室の窓から射す西日に照らされたバナージさんいや、浜寺さんは今まで出会った全ての人たちとは違う、独特の雰囲気を纏っていたの。お兄ちゃんみたいにカッコイイわけでもなく、ネタにしてテレビに出る程醜い容姿でもない。なのに目が離せない。私には想像出来ない何かを経験し、決意に満ちた雰囲気に呑まれる。足が竦み、前に進めなくなる。

 

 

 

 それでも

 

 

 

 私は1歩を踏み出す。

 

 『カン』が言っている。これは可能性。定められた本来の道筋とは違う、先の分からない運命の渦に飛び込むようなもの。

 

 『カン』が言っている。これは希望。絶望の淵に立たされながらも、未来に向かって光を示すもの。

 

 私はさらに一歩踏み出す。

 

 『カン』が言っている。進め、戻れ、進め、戻れ、ススメ、モドレ。

 

 『カン』が言っている。感覚に頼るな、自分の『想い』に従え。

 

 

 私は、私は……

 

 

 

≪Master.≫

 

 っ!! レイジングハート!?

 

≪このタイミングで言うのは卑怯かもしれません。ですが、言わせてもらいます。貴女の選択がどのようなものであれ、私は貴女に従い、私としての責務を全身全霊を持って支えます。どうか、選択することを恐れないで下さい≫

 

 ………………そうだね、そう、どんな運命だって、レイジングハートやユーノ君。今、私の前にいる浜寺涼さん。そしてまだ見ぬ仲間達となら切り拓ける。

 

 レイジングハートはこれ以上何も言わない。この先を選択するのは私だから。浜寺さんは何も言わずに待っている。

 

 

 

 本来なら悲しい運命にある人達を救えるかもしれない。その代わりに失うものもたくさんあるかもしれない。

 

 

 それでも

 

 

 

 私は

 

 

 

 選択する




 第4話にして文字量激減。切りを良くしたらこんなになってしまいました。

 書いてみて日常パート用、戦闘パート用で書き方を変えるのもアリかな? とも思いました。試行錯誤をしてより良い小説に出来るよう頑張ります。


 ところで主人公って涼じゃないの? と思う方もいると思いますが、この小説は、少年『少女』の成長記。即ち魔法少女も主人公なのです。

 あとアンチ・ヘイト、独自解釈・設定タグで誤解されるかもしれませんがこの小説は
これも全て管理局ってヤツの仕業なんだ。
 ↓
おのれ管理局、ゆ゛る゛ざん゛
 ↓
悪の管理局は滅びた。
 ↓
や っ た ぜ
 というお話ではありません。あしからず。

 他にも質問等受け付けています。作中で説明することがあるものに関してはあたりさわりのない回答になると思いますが……。

 ではまた近いうちに投稿……できるといいなぁ。
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