魔法少女と一角獣   作:牡蠣専用鍋

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 こんばんは、じわじわ増えるUAに喜びを隠せない作者、牡蠣です。

 あまり長々と語るのは良くありませんね。


 では早速第7話、どうぞ


黒い魔法少女と一角獣

 家に帰ると、玄関の前にフェイトが所在無さげに立っていた。端から見れば鍵をなくして家に入れず、家族の誰かが帰ってくるのを待っている鍵っ子の様だ。それよりも『ユニコーン』を纏ったまま玄関前に降り立つところだったから、早めに彼女の存在に気付けて良かった。待たせるのは悪いと思ったが、何故こんな夜遅くに出かけていたか聞かれた時の言い訳の為にコンビニに寄って来たが、ずっとその場で待っていたのだろうか?

 

「フェイト、こんな時間にどうしたんだ?」

 

 声を掛けると、木の棒で地面に何か落書きをしていた彼女は、俺の顔を見て『ほにゃっ』と笑う。うん、この笑みはクセになりそうだ。

 

「スズを待ってたんだ。アルフから手紙渡してくれって頼まれたのと、それと一緒にジュエルシードを探しに。それでこの近くでジュエルシードの発動を感知したんだけどすぐに消えちゃったから、多分私達以外にも回収してる人達がいるんだと思う。スズは何か知らないかな?」

「……いや」

 

 そう聞きながら手紙を渡してくるフェイトは、どことなく疲れ気味の様子。多分アルフさんとやらからの手紙に、ここに来させた理由とかが書かれているみたいだから、もらってその場で読む。

 

 それにしても読みづらい字だ。まあ違う次元世界の人間だし仕方ないよな。そう思いつつ読んだ手紙にはこう書かれていた。

 

「先に書いておくと、これを読んでいるのがフェイトの言うスズって奴だと思って書いてるよ。初めまして、アタシの名前はアルフってんだ、呼び捨てで構わないよ。この前はウチのフェイトが世話になったね、ありがとね。

 既にフェイトから色々聞いちまってるみたいだからここに書いちまうけど、アタシ達はジュエルシードを集める為だけにこの国へ来ているんだ。だけどあの子はまだ幼いし、ジュエルシード集めなんて言う大変な事にずっと掛かりっきりなのは駄目だと思っていたんだけど、アタシじゃ言っても聞いてくれなかったんだ。

 そんな時に経緯はどうあれ、別の事に意識を向けてくれた事には感謝するよ。そこでスズ、アンタをイイ奴だと見込んで頼みがある。時間の許す限りでいい、フェイトと一緒に居てあげてほしいんだ。今のままじゃアタシ以外誰とも関わらない、それはあの子の為にはならないと思ったんだ。

 それと少しだけでもあの子にこの国の『常識』ってのを教えてくれないか? どうにもそこらへんに疎くて手を焼いててさ、身内のアタシが言っても流されちまうみたいなんだよ。

 だけど、変な事教えたり手を出したりしたら、その喉笛噛み千切ってやるからね!

 

 勝手だけど、ホントに頼んだよ」

 

 ああ、勝手過ぎるよ……。アルフは馬鹿だ。フェイトから話を聞いただけの俺を信用するなんて、本当に馬鹿だよ。だけど、俺にとってこれは効果的すぎる攻撃だ。

 

 ……はぁ、仕方ない。

 

「フェイト、入りなよ」

「いいの?」

「こんな夜更けに女の子を門前払いするなんて、男のする事じゃないよ。あがったら先に手を洗っておいで」

 

 鍵を開けてフェイトを招き入れる。洗面所へ行ったのを確認すると電気を点けて、ついでにストーブにも火を入れる。いくら4月とはいえ夜は冷える。少しの間でも外にいた彼女ならば猶更だ。ついでに風呂も沸かしておこう。

 

「冷えたろ。今部屋暖めてるから、コレ食べて待っててくれ」

 

 コンビニのビニール袋から、まだ温かい肉まんを取り出して渡す。

 

「? これ、何?」

「何って……肉まんだよ。袋開けたらそのまま手で持って食べるんだ」

 

 まさか肉まんを知らないとは……。いや、彼女なら知らなくてもおかしくはないか?

 

「こう、かな……あむっ。……! おいひい!」

 

 余程気に入ったのか、顔を輝かせて小さな口で精一杯頬張る。一つ目が無くなるのはすぐだった。

 

「もう一個食うか? これはあんまんだけど……」

「え、あっ!」

 

 夢中で頬張ってたのを思い出して、頬を赤く染める。何なんだこの子は! ……可愛いじゃないか。

 

「ホラ、俺より年下なのに遠慮するなって。肉まん以外にもお菓子とかあるんだから、気にせず食べな」

「う、うん……!」

 

 そうやって笑ってくれるだけで、あんまんもあげた価値があるってもんだ。

 

「はむっ、あむっ!」

 

 精一杯どころか一心不乱に頬張る姿は、非常に庇護欲をそそる。……いかんいかん。

 

「……ふぅ。あ、もう無くなっちゃった……」

「まあまあ、また今度買って来てやるから。っと、あんこついてるぞ」

 

 頬についていたあんを人差し指で取ってやる。取ったのどうしよう……食っちまえ。

 

「ありがとう」

「いえいえ、どういたしまして。さて、そろそろ風呂が沸くだろうから、入っておいで。その鞄、着替えとか入ってるんだろ?」

「うん、でも、こんなにしてもらって申し訳ないよ……」

「だから遠慮するなって。フェイトは俺の妹分みたいなモンなんだから、これくらいお安い御用だよ」

「じゃあ、お言葉に甘えて……」

 

 そう言って風呂場に向かって行って、程なくしてお湯の流れる音が聞こえてくる。

 

 あぁ、あの時俺に殺気を向けてきたなのはの兄(?)の気持ち、今なら分かる。こんな可愛い妹がいれば、シスコンになるに決まってる。そりゃ危害を加えるかもしれない奴がいたら、殺気を放つくらいワケないわ。

 

 

 

 んん!? フェイト、着替え持って行ったか!?

 

 

 

 

 

 もちろん下着1つ脱衣所に持って行かなかったフェイトは、浴槽に()かって上気した顔と共にバスタオルを体に巻いただけの、アブナイ恰好で茶の間に入ってきた。着替えるよう言って一旦外に出た俺は少し頭を冷やした後、茶の間に戻ってそわそわしている彼女に倫理とか諸々の常識を教え込む事となった。

 

 

 

 髪を下したフェイトは、小学校中学年程の女の子が放っていい色気ではなかったとだけ言っておこう。

 

 

 

 それにしても、フェイトはやはりどこかおかしい。見た目の問題ではなく精神的な意味で、である。心の壁みたいなものが薄いと言えばいいのだろうか? なのはと同じ九歳らしいが、それにしては身内以外の人間に対する警戒が無い。いや、あるにはあるのだろうが、意識的に警戒しないとソレが働かないのか。少しでも心に触れた瞬間警戒がゼロになり、身内と同じくらいの親愛、友愛を向けてくるのだ。下手したら死ねと言われればすぐさま実行に移せるくらい……。それはおかしいというレベルの話ではなく、最早異常と言っても過言ではない。

 アルフが心配するのも無理はない。もしこの子が悪人に言葉巧みに騙され、悲惨な目に遭ってしまったらと。知り合ってまだ数日の俺でこうなのだ。身内のアルフとでは比べものにならないだろう。

 

 待てよ? とすればフェイトの親はどうしてるんだ……? こんな善人と悪人の区別も付かないような子供を放って置くだろうか。普通そんな事あるわけがないだろう。しかし、もし仮にそうなのだとしたらそれは親なんてものではなく、赤の他人と変わらない。そう、いくらフェイトがソレを親だと慕っていてもだ。彼女の価値観に口を出すのは間違いだと思う。

 

 それでも、俺は彼女と関わってしまったのだ。少しでも守りたいと思ってしまったのだ。彼女の純粋すぎる心を、想いを、守りたいと思ってしまったのだ。

 

 今の俺に出来る事は少ない。かなり杜撰(ずさん)な隠し方とはいえ、『ユニコーン』でなのはと共にジュエルシードを集めている事を隠しているのだ。もしこれが最悪な形で露見したら、フェイトが受けるショックは大きいだろう。ならば、上手くやらなければいけない……。何でこんなふうに考えるのか、自分でも分からない。だけど、彼女の兄貴分だと自称したのだ。だったら、彼女の仮の兄として、彼女を守るんだ。

 

 

 

 っ!

 

 

 

 声が、聞こえた気がした。誰が何処から発したかは分からない。しかし、その声は今俺の腕の中で眠る少女を想う声だったのは確かだった。

 

 一緒に寝ている事に文句を垂れているみたいなのも、気のせいではないんだろうなぁ……。

 

「かあ……さん……」

 

 …………。今夜はフェイトが寂しくないようしっかりと抱きしめて寝よう……。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 翌朝、フェイトを起こさないように静かに布団を抜け、着替え、洗顔をし、愛用の白いエプロンを身に着け朝食の準備に取り掛かる。

 炊飯器は昨夜の内に準備しておいたので大丈夫。フライパンを熱し油を薄く延ばして、ちょうど良い温度になった所でベーコンを5枚投入。その間に冷蔵庫から卵を2つ、いや3つ取り出し、ベーコンが程よく焼けた所で卵を綺麗に割り、形が崩れていない事を確認しすぐさま蓋をする。少し経ったところで水を入れる。これで良し。

 野菜室からレタスを取り出し葉を2枚ほど千切る。軽く水洗いをして更に4等分に千切る。

 後は皿を用意して千切ったレタスを乗せて、フライパンを熱していたコンロの火を止める。ここからフェイトを起こせば余熱によって程よく半熟と完熟の中間の目玉焼きの完成だ。

 

「フェイトー、朝だぞー」

「うぅ、あさー」

 

 声を掛けて優しく揺すると、寝ぼけているようだが返事が返ってきた。二度寝は許さんとばかりにカーテンを開け放つ。うん、今日もいい天気だ。窓から差し込んだ光は寝ぼけ眼のフェイトに降り注ぎ、完全に目を覚まさせる。金色の髪が太陽の光を受けて光る様は、さながら天使のようだ。事実、フェイトは天使だ。

 

「まぶしぃ……」

「はい起きた起きた。朝ごはん食べて準備したら出かけるぞ。今日はピクニックだ!」

「ぴく、にっく……え? す、スズ!?」

「スズですよー。目は覚めたか? 着替えて顔洗ってきな。朝ごはん出来てるから、洗ったらリビングにいてくれよ」

「う、うん!」

 

 彼女の頭を一撫でし、台所に戻ると朝食の仕上げに掛かる。

 フライパンの蓋を開けると、湯気の後に端っこはカリカリ、黄身は半完熟のベーコン目玉焼きが顔を出した。

 

「よし!」

 

 いつも以上の完璧な出来に思わずガッツポーズ。形を崩さないように大皿に移して茶の間に持って行くと、ちょうど着替えを洗顔を終えて、髪の毛をツインテールにしたフェイトが入ってくる。

 

「そこに座ってて。今白ごはん持ってくるから」

「うん」

 

 多すぎず少なすぎず、茶碗に米をよそう。お盆に茶碗2つ、箸2膳とフェイト用にナイフとフォーク、コップ2つと牛乳を乗せて運ぶ。

 

「スズ、これは何?」

 

 配膳を終えたところで目玉焼きを指さして聞いてくる。

 

「これは目玉焼きっていう、簡単だけど奥が深い料理さ」

「めだまやき……」

「さあ、食べよう! 食べづらかったらナイフとフォークも使っていいからな」

「ありがとう。でも、箸を使うよ」

 

 そう言って箸を持って食べようとするが、それに待ったをかける。

 

「フェイト、この国では食べる前に食材に感謝して、『いただきます』と言ってから食べる習わしがあるんだ。忘れちゃいけないよ」

「分かった。それじゃあ」

 

「「いただきます」」

 

 

 

 

 

 やはりフェイトには箸は難しかったみたいだ。尚、目玉焼きは大層お気に召したようだ。

 

 

 

 

「行ってきます」

「おじゃましました」

 

 

 

 

 朝食と準備を終えた俺達は家を出て一路、海鳴公園を目指す。途中寄り道しながらぶらぶらと海鳴の町を歩くと、ちょうど良いお昼時に海を見渡せる海鳴公園に着く事が出来た。やはり雲1つない快晴の日曜日という事もあって、公園には家族連れがそこそこ多く見られる。

 

「ふぅ、結構歩いたな。フェイトは疲れてないか?」

「大丈夫だよ。それにとっても楽しかったから」

 

 町を歩いている間、一緒にいる俺も楽しくなるくらいにずっと楽しそうだったからな。案内した甲斐があるよ。

 

「それじゃあお待ちかねの昼ごはんだ!」

 

 背負っていたリュックから小さめの弁当箱と普通の弁当箱を取り出し、小さい方をフェイトに渡す。

 

「あ、えっと、いただきます」

「はい召し上がれ。俺も、いただきます」

 

 中身は同じ、真ん中を仕切りで分けて、半分をごはん、半分をおかずの卵焼きとから揚げとプチトマトの3種類の、本当に簡単な弁当だ。

 

「スズ! この卵焼き、おいしいよ!」

「気に入ってくれたか。なら俺の卵焼きも食べるといい」

「いいの? ありがとう!」

 

 それを始終ニコニコしながら食べてくれれば、こんなに嬉しい事はない。

 

 

 

 昼ご飯を食べ、公園を後にする。時間は3時か。そろそろだな。

 

「フェイト、今日は楽しかったか?」

「うん!」

「それは良かった。でもそろそろ帰る時間だ。アルフが帰りを待ってる筈だよ」

 

 その言葉にフェイトは表情を暗くするが、アルフの事を考えて、強く言い出せないのだろう。

 

「前にも言ったろう? 来たかったらいつでも来いって。流石に平日は無理だけど、昨日とか今日みたいな休日ならこうして一緒に居られるから、な?」

「うん……分かった」

「いい子だ。それじゃあ隣町まで送ろう」

「ううん、駅までで大丈夫」

 

 そう言うフェイトの顔は、昨日みたいな疲労やストレスの影も形も無い。うん、いい顔だ。

 

「そうか、じゃあここでさよならだな」

「うん、さよなら」

「っと、その前にコレを持って行きな」

 

 最後にリュックから白い箱を取り出す。

 

「これは?」

「シュークリームさ。甘いお菓子だよ。アルフと二人で食べな」

「うん、ありがとう!」

 

 大事そうに胸に抱えると、今日一番の笑顔でお礼を言ってくる。これ以上一緒に居ると、俺が離れたくなくなりそうだ。

 

「それじゃ、フェイト。『またな』」

「! うん、『またね』」

 

 再会の意味を強く籠める。感覚で気付いたフェイトは、それに合わせるように返してくる。これは……また一緒に行きたい……か。これ以上の会話は必要無いみたいだな。感覚を閉めた俺は手を振る。彼女もまた手を振って、改札を通っていく。

 

「ふぅ、さあ、帰ろう」

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 あれから宛てもなく町を歩いていると、微かにだが地面が揺れている事に気付いた。地震か? と思っていると猛烈な異物感、ジュエルシードの発動を感知すると同時に、激しい揺れと爆発音と、メキメキという音が聞こえてきた。

 

「な、なんだ!? ジュエルシード!? あ、ああっ! 町が!」

 

 広範囲に突如発生した木による被害は、とても俺1人では、いや、ユーノと力を合わせても結界に閉じ込めるのは無理だ。

 

(なのは! ユーノ! ジュエルシードが!)

(う、うんっ!)

(こっちでも感知しました! 涼さんは今何処に!?)

 

 感知していたか。なら話は早い。

 

(今は外にいる! 集合場所はこっちで決める! ……ここでいいか!?)

 

 なのは達と俺の位置を感覚とサーチャーで軽く測って、少しなのは達の位置に近いビルの座標を念話で送る。

 

(分かったの!)

(今から向かいます!)

 

 念話が切れる。ぼーっとしている暇はない。俺は物陰に隠れて『ユニコーン』を緊急起動させる。

 

「行くぞ、『ユニコーン』」

 

 俺は全速力で合流地点へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 楽しかった1日の締めくくりが、ジュエルシードの発動。

 俺達は古代遺産(ロストロギア)というものを、侮っていたのかもしれない…………。




 如何でしたでしょうか?

 今回はフェイトと涼の関係の進展でした。

 そして次回、町が木によって滅茶苦茶にされる、原作では覚悟回となっていますね。

 なのは、涼、ユーノの覚悟をしっかりと描写出来るよう頑張ります。


 ではまた次回に。
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