魔法少女と一角獣   作:牡蠣専用鍋

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 こんばんは、牡蠣です。

 もっと早く投稿したかったのですが、遅れてしまい申し訳ありません。


 では、第8話をどうぞ。


魔法少女と一角獣と小動物と不屈の心

 なのは達との合流地点に向かう途中、俺の魔力に釣られて木の枝が襲って来たが前から向かってくる必要最低限の枝のみを『ビーム・サーベル』で切り裂き、それ以外は全て速度で振り切った。合流地点のビルに着くと、程なくしてなのは達も屋上に上ってきた。

 

「お待たせしました! お願い、レイジングハート!」

 

≪Stand by ready. Set up.≫

 

 すぐさま変身すると、側に寄って来た。

 

「涼さん、町が……」

「ああ……。ユーノ、ジュエルシードはここまで強いモノなのか?」

「多分、これは人が発動させたんだと思います。強い想いを持った者が願いを込めて発動させた時、ジュエルシードは最も強い力を発揮するモノですから」

 

 想いか……。ふと考え込みそうになる思考を頭を振って打ち切る。

 

「っ……やっぱり、あの時の子が持ってたんだ!」

「やっぱりって事は心当たりが?」

 

 なのはが漏らした声に反応すると、申し訳なさそうに話し始める。

 

「うん。私、気付いてた筈なのに……。こんな事になる前に、止められたかもしれないのに……」

 

 町中に広がる木に目を向け自分を責め立てるなのはに、声を掛けずにはいられない。

 

「気にするなとは言わない。多分、俺だって誰かが持っているのを見かけても、何とかなるだろうって思ってしまうよ」

「涼さん……」

「なのは……、涼さん……」

「それはジュエルシードがここまでの被害を及ぼすモノだと、ちゃんと理解と把握をしていなかったから。ジュエルシードを侮っていたからだ」

 

 ゆっくりと、諭すようになのはとユーノ、そして自分自身にも言い聞かせる。

 

「なら、どうすればいいと思う?」

「それは……次からはこんな事にならないように、もっと頑張らないと……」

「そうだ。もうこんな大きな被害を起こさないよう、努力するんだ」

 

 そう、まだ俺達には次がある。

 

「言うだけなら簡単だ。だけど、俺達にはそれを可能とする力がある。力を扱う為の努力が出来る」

「力……」

 

 なのはは自分の胸に手を当て、レイジングハートを見る。

 

「今、俺達に出来る事はなんだ? ここで俯いている事でも、あの時ああしていれば、こうしていればなんて後悔に囚われている事でもない」

「今、私達に出来る事は……ジュエルシードを封印して、被害の広がりを止める事……」

 

 杖を握る腕に力が籠るのが分かる。これ以上言葉は必要ないみたいだ。俺も、これ以上逃げてはいられないな。

 

 

 俺を縛っていた枷が1つ、外れた気がした。

 

 

「……イケるな?」

「うん! ユーノ君」

「な、何っ?」

「こういう時、どうすればいいの?」

 

 俺達の様子を窺っていたユーノは、急に話しかけられて驚いていたが、どもりながらも教えてくれる。

 

「えっと、分かっていると思うけど、封印するには近付いての封印魔法か、魔力による強制封印が必要なんだ。その為にはまず、元となっているジュエルシードを見つけなきゃいけない。でも、これだけ広い範囲に広がっちゃうと、どうやって見つけたらいいか……」

「元を見つければいいんだね!」

「なのは、俺の知覚能力を貸そう」

「え? 2人共?」

 

 枷が外れたおかげだろう。俺が持つ人より鋭敏な感覚をなのはと共有出来ると、『ユニコーン』が伝えてくる。なのはの肩に手を置き集中する。それだけで後は機体が勝手にやってくれる。

 

「これが、涼さんが感じている世界……! これなら!」

 

≪Area search.≫

 

 杖を掲げ探知魔法を発動させると、全方位に魔力で作られた端末、サーチャーが飛んでいく。

 

「ううっ、声が……」

「余計な声は聞くな。ただ、ジュエルシードのみを知りたいと願うんだ」

 

 やはり感情の波がサーチャーを通して頭に響いてくるのだろう。軽いアドバイスに加え、俺の方からも流入する波をある程度までカットする。

 

「焦るな、なのはなら出来る」

「うん………………見つけた!」

 

 目を閉じて集中していた彼女は不意に顔を上げると、ジュエルシードがあると思われる方向を見る。

 

「かなり遠いな……」

 

 感覚を共有している俺にも、大体の位置が伝わってくる。

 

「ううん、大丈夫!」

「……え?」

「レイジングハート!」

 

≪Mode change. Cannon mode.≫

 

 杖を砲撃形態に移行させると、足元にいつも以上に大きい魔方陣が展開する。

 

「まさか……長距離砲撃!?」

「そうか、俺の感覚となのはの砲撃があれば!」

「その通りなの!」

 

 杖の排気口付近から魔力翼を広げ、補助バレルとして魔力リングが幾重にも展開される。

 

≪Divine Buster.≫

 

「シュート!」

 

 放出された魔力は寸分の狂いもなく直撃し、ジュエルシードは強制封印される。それと同時に町中に生い茂っていた樹木が跡形もなく消え去る。

 

 

 

 

 

 

「封印、成功ですね」

「うん……」

「だけどな……」

 

 町は道路が罅割れ、いたる所の窓ガラスも割れている。しかし建物が倒壊するような被害はなく、探知の際に感覚で探ったが重症者もいなかったのが救いだった。

 

「ユーノ、治癒魔法は使えるか? 俺には適性が無いみたいなんだ」

「あ、はい、使えますけど……」

「なら、ケガ人を治療しに行くぞ。それが今俺達に出来る事だ。なのは、ユーノを借りるぞ」

「分かりました!」

「え、え?」

 

 俺と俺の肩に乗ったユーノを交互に見るなのはに言う。

 

「なのはが封印を頑張ったんだ。出来るだけの後処理は俺達に任せて、今日はもう家に帰って休むんだ」

「でもっ」

「なのは、僕からもお願い。後は僕たちに任せて!」

「うぅ」

 

 責任感の強すぎるなのはの事だ。分かってはいても、素直に頷けないのだろう。しかしこれ以上渋られても困るので、少々強引にでも納得してもらおう。

 

「さっきも言っただろう、出来る事をやるって。補助用の治療はユーノにしか出来ないし、魔法隠蔽の為の記憶処理は俺にしか出来ない。今のなのはに出来る事は、ゆっくりと休んでジュエルシードの発動に備える事。だから、ここからは俺とユーノに任せて欲しいんだ」

「……分かったの」

「よし、それじゃあ家まで送ろう」

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 なのはを家に送り届けた後、サーチャーと俺の感覚でケガ人を探して治療して回ってる途中、ユーノが話しかけてきた。

 

「涼さん、ありがとうございます」

「ん? 何がさ」

「これまでジュエルシードを集めてくれたり、なのはを励ましたりしてくれた事とかです。それ以外にもたくさん……」

 

 2人になるこのタイミングで言って来たってことは、なのはには聞かれたくなかったのか? いや、多分なのはの前で言ったら気にしてしまうからか。

 

「あー、まあ、俺達の中じゃあ俺が1番年上だし、2人を支えて引っ張っていかなきゃいけない、とか考えてるところがあったから、あんまり気にしないでくれよ」

「……やっぱり、涼さんはカッコ良くて頼りになりますね」

「は、え? いやいや、いきなり何言ってんのさ!?」

 

 急に自分の事を褒められたら誰でも驚くに決まってる。一度腰を落ち着けて話す為、何処かのビルの屋上に降り立つ。

 

「いきなりじゃないですよ。初めて会った時からです。犬の暴走体の時も巨人の時も今日のなのはの事だって……」

「……よしてくれよ。はっきり言うけどな、最初は義務感で助けていたんだぞ?」

 

 ユーノを肩から下ろして正面から向き合う。この際もう全部話してしまった方が楽だと思うから吐き出そう。

 

「俺が魔法を知ったのは、なのはよりほんの少し前の事だ。その時父さんからこの『ユニコーン』を託されたんだ」

「え、それじゃあ……?」

「ああ、その時に父さんも……な」

 

 ふと思い返せば父さんが死んだ時の光景が出てくる。だけど、今俺が言うべき事はその事ではない。

 

「まあそれで、魔法の『ま』の字も知らなかった奴が魔法を知って、強大な力を持てば、どうなるか分かるだろう?」

「はい……」

「もちろん誇示したいって思いもあった。だけど、俺はそれ以上に父さんから託されたこの力を、正しい事に使いたかった。小さい頃からさんざん言い聞かされてたからな。力は振りかざす物ではない。私利私欲の為に振るうソレは、ただの暴力だ……ってな」

「いい、人だったんですね」

 

 ホントに、超が付くくらいイイ父親だよ。

 

「だから最初は義務感だって言ったんだ。俺は力を持ってるんだから、助けないとってな。でも今日、町が滅茶苦茶になったりケガをする人を見て分かった。コレはそんな上辺だけの気持ちで関わっちゃいけない事なんだって」

 

 ジュエルシードを探している時、サーチャーを通して入ってきた感情。恐怖を感じてしまったのだ。

 

「それでも、俺は逃げない。逃げたくない。色んな理由があるけど、1番強い想いは、守りたいんだ。この町や、人を」

「涼さん……」

「義務感なんかじゃない。俺は、俺の意思でジュエルシードを集める。ユーノ、これからもよろしく頼む」

「はい……はい! 僕の方こそ、よろしくお願いします!」

 

 お互いに改めて決意を固めあう。

 

「じゃあまずは敬語をやめようか。いつもなのはと喋ってる時と同じ感じで話してくれよ」

「え、いいんですか? ああっ、違う。い、いいの?」

「ああ、俺達は仲間だろ? なら敬語なんか必要ないさ」

 

 言って、ユーノを肩に乗せる。

 

「さあ、他にケガ人が居ないか探しに行くぞ!」

「はい! ……じゃなかった。うん!」

 

 最後はちょっと締まらないなぁ。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 家まで送ってくれた涼さんを見送ってから家に入る。

 

「ただいま~」

 

 そんなに大きな声ではないけど、耳聡く聞きつけたお父さんが走り寄ってくる。

 

「おかえりなのは。町の方で何か騒ぎがあったみたいだけど、大丈夫だったかい?」

「うん、大丈夫だよ。危ないみたいだったから、早めに帰ってきたの」

「そうか。ならもう今日は家でゆっくりしてるんだぞ。なんか疲れているみたいだしな」

 

 ありゃ、やっぱりお父さんは凄いの。

 

「うん、お父さんはこれから出るんだよね?」

「ああ、もう一仕事、頑張ってくるよ。それじゃ、行ってきます」

「いってらっしゃ~い」

 

 

 

 それから部屋に戻って着替えて、ベッドに倒れこむ。

 

「はぁ……」

 

 一息吐くと、今日の出来事が思い起こされる。サッカーチームの男の子がジュエルシードを持っていた事、発動したソレが町を滅茶苦茶にしてしまった事。そして、涼さんの感覚でジュエルシードを探している時に感じた強い恐怖。あれが何より私自身を責める。

 

「私は……なんで……」

 

 考えれば考える程後悔の渦に嵌っていく。膝を抱えてひたすら自問自答してしまう。

 

≪Master.≫

 

 それを遮ったのは相棒のレイジングハートだった。机の上に敷いたハンカチの上に載っている相棒に視線を向けると、チカチカと点滅しながら声を掛けてくる。

 

≪あなたは、あの時点で出来る最大限の行動を取りました。それではいけないのですか?≫

 

「そうだけど……それより前に何とか出来たかもしれないって思うと……」

 

≪起きてしまった過去は変えられません。故に『彼』が言う、今あなたに出来る事とは後悔ではなく反省し、ソレを明日以降の活動に活かす事です。違いますか?≫

 

 相棒の言葉は私の考えている事に対して的確に反論してくる。そうしなきゃいけないってことも分かる。でも、どうしても考えてしまう。

 

「違わない、違わないよ。けど!」

 

≪なら何故逃げているのです≫

 

「逃げてなんかっ!」

 

≪いいえ、今のあなたは逃げています。心の何処かでこう考えている筈です。こうして塞ぎ込んでいればその内『彼』が何とかしてくれると≫

 

「っ!!」

 

 分かってた。こうしていれば彼……涼さんが私の事を優しく励ましてくれるんじゃないかって。こうしていれば、その内ジュエルシードを全部集めてくれるんじゃないかって。

 だって彼は強い。いつもリーダーシップを発揮して私とユーノ君を引っ張ってくれたり、時には隣で支えてくれたりと、助けられてばかり。今日だってあの感覚の持ち主である彼が感じた恐怖の感情は私の想像以上に決まってる。なのに自分の事より私達の事を優先して励ましてくれた。

 だから、きっと私が居なくても何とかしてしまうんじゃないかって。私が……『いらない』んじゃないかって。

 

≪あなたは『彼』が1人で何でも出来るとお思いでしょうが、それは違います≫

 

「えっ?」

 

 思っている事を言い当てられたのと、直後にそれを否定されたことで素直に聞き返してしまう。

 

≪『彼』にも出来ない事はあります。その最たるモノがあなたには分かる筈です。『彼』はいつも、あなたに何を頼んでいますか?≫

 

 私に出来て涼さんに出来ない事……? いつも私に頼む事といえば……。

 

「……封印?」

 

≪その通りです。『彼』にはあなたのように長距離封印魔法を使えませんし、ジュエルシードを通常封印する事も難しいでしょう。出来て未発動の上に簡易封印処理を施せるレベルでしょう≫

 

「私に出来る事……」

 

≪あなたは『彼』と同等かそれ以上の魔法の才能をお持ちです。あなたにはあなたの、『彼』には『彼』の役割があります。今のあなたには何が出来ますか?≫

 

 今の私に出来る事は……。

 

「今日みたいな事が起きないように努力する事……」

 

≪答えは出たみたいですね≫

 

「レイジングハート……。ありがとう」

 

 色んな想いを籠めて、相棒にお礼を言う。

 

「ユーノ君が帰ってきたら、言いたいことがあるの。だからもう少しだけまってて!」

 

≪All right.≫

 

 最後にいつものように淡白な一言で会話を終える。なんだかんだで私の想いに応えてくれる、大事な大事な相棒。本当にありがとう。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 あれから30分程すると、部屋の窓からノック音が聞こえた。ふと窓の外に目を向けるとギョッとした。2階の部屋の窓の外に、白い一本角……涼さんが居れば普通ビックリするに決まってる。窓を開けると腕を伝ってユーノ君が部屋に入ってきた。足を拭くのは忘れない。

 

「え、えっと、おかえり?」

「ただいま、なのは」

「あれ、元気になってる」

 

 さっすが涼さん。一目見ただけで分かっちゃうみたい。

 

「あの、涼さん、ユーノ君。聞いて欲しい事があるの」

「なのは?」

「……分かった。ここで……良くないか」

「えっと、ここから入ってもいいよ」

「あー、おじゃまします」

 

 飛行魔法を上手く調整して窓枠にぶつからないように入ってくると、バリアジャケット(?)のユニコーンを解除する。靴は格納領域っていうところにしまったみたい。

 

「で、話って何かな?」

「うん、えっとね、今日の事を考えていたんだけど、レイジングハートに色々言われたの。それでね、私決めたの!」

 

 1度深呼吸して、レイジングハート、涼さん、ユーノ君の順番に見渡す。涼さんを見ていた時間が長かったのは気のせいなの。

 

「私、逃げない。私のせいで誰かに迷惑をかけるのは嫌だから。私は私に出来る事をする。自分なりの精一杯じゃなくて、本当の全力で。ユーノ君のお手伝いじゃなくて、私の意思でジュエルシード集めをするの。もう絶対、今日みたいな事にならないように」

「なのは……」

「そうか。もうユーノには言ってあるけど、俺からも。」

 

 涼さんは居住まいを正すと、私たちを見渡す。

 

「俺も、もう逃げるのはやめる。力を持っていても何も出来ないのは悔しいから。俺に出来る事を全力でやり(とお)す。この町や人を、みんなを守りたいから。だから、これまでも、これからも、よろしくお願いします!」

「私からも。これから、よろしくお願いします!」

「うん、僕からも、よろしくお願いします!」

 

 レイジングハートはクールにキラリと光って応える。

 

「これからは今までみたく、軽い気持ちじゃない。本当の本気、全力全開でジュエルシード集めをするんだ、頑張るぞ!」

 

「「「おー!!!」」」

 

 

 

 

 

 

≪おー≫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが私達が改めて団結した日の事でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なのはー? 誰か来てるのー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「あ゛」」」

 

 おう……お姉ちゃん…………。




 如何でしたか?

 今回はなのはと涼と、ついでにユーノが覚悟を決めて、レイジングハートを含めた四人(?)が改めて団結しました。

 レイジングハートってこんなに喋らせていいのかなぁ。と思いつつも、喋らせました。


 


 次回、言い訳。

 お楽しみに……してくれると嬉しいです。

 ではまた。
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