前回以上に更新が遅れてしまいました。申し訳ありません。
それでは第9話をどうぞ。
拙い。テンションを上げて音頭を取ったら眼鏡を掛けたお姉さんが来てしまった。
「えーっと……どちら様?」
「あ、俺はなのはの友達の浜寺涼って言います。お邪魔しています」
「ご丁寧にどうも……。なのはの姉の高町
お兄さんのようななのはに近付く男は○す、みたいなタイプじゃなくて良かった。押しに弱そうな感じがするな。申し訳ないけど、ここは押し通させてもらおう。
(なのは、ここは俺に合わせてくれ。ユーノ、喋るなよ)
((は、はい!))
「実は今度なのはとアリサとすずかの3人に混ぜてもらうんですけど、その時何かお土産とか持って行ったらいいかなーって思ったんですよ。それでその事を相談してて、ちょうど話が纏まったところなんです」
素早くなのはに目配せ。
「え、あ、そうなの! 今度の日曜日のお茶会の前の土曜日に、涼さんとお買い物行く事になったから!」
「お、おお、そうなんだ」
あ、本当に3人で集まる予定だったのか。よし、いい感じに押せているぞ。このままなぁなぁにして早く帰らないと、例のお兄さんが来てしまうかもしれない。
「それだけ話しに来ただけだから、あんまり長居するのも悪いし帰ります」
美由希さんが呆気にとられている間に、さっさと帰らせてもらおう。
「まぁまぁ、そう言わずに…………なぁ?」
「あっ」
「美由希さん!? 『あっ』って何ですか『あっ』って!? ちょっと待って下さいなのはのお兄さん!」
あ、やばっ! 今この人の逆鱗に触れたぞ!?
「ほう、なのはを呼び捨てとは、お兄さんとはいい度胸じゃないか。ちょうどこれから鍛錬しようと思っていたんだ。君も一緒にやろうじゃないか、ええ?」
「」
フェイト、俺を守ってくれ……。
◆
「スズ……?」
「どうしたんだい、フェイト?」
「ううん、なんでもない。スズがくれたシュークリーム、おいしいね」
「ああ、スズって奴はホントにイイ奴だねぇ……」
「うん!」
◆
あれからなのはとユーノの不安気な視線と美由希さんの憐みの視線に見送られ、引き摺られるようにして道場まで連れて行かれた。
そこで待っていたのは鍛錬という名の地獄だった。竹刀を渡され、ひたすら打ち込まれ続けるだけの、単純故に非常に辛い時間。
何だよアレ。俺は魔法で動体視力とか身体能力を底上げしていたのに竹刀が見えないって……。見えないから『カン』に頼って防ぎまくった。
それがいけなかったのだろう。お兄さんがムキになって襲いかかってきた。しまいには俺の竹刀が弾けた。そう、折れたのではない、弾けたのだ。それにも関わらず打ち込んでくるお兄さん。仕方ないので限界まで全身に魔力を巡らせて、襲ってくる竹刀と木刀を受け流し、弾き続けた。
ん? 木刀……? 俺木刀とか素手で捌いてたのか……。そりゃお兄さんも変な雰囲気になる筈だ。
最終的に体力が無くなった俺の脳天に竹刀の一撃が入り、意識を失う事で鍛錬(?)は終了したらしい。何故らしいかというと、高町家のリビングにあるソファの上で目を覚ました後に聞かされたからだ。お兄さんはなのはにこってりと絞られた様子であった。
「フェイト……俺は生き残ったよ……」
「ごめんねぇ、
今俺の目の前にいるのは、なのはの母親の高町桃子さん。パッと見でなのはのお姉さんだと思ってしまった俺は悪くない筈。
「ああ、いえ……」
「それにしても、なのはに男の子の友達が出来るなんて、これはもしかして~?」
「もしかするかも~?」
「もう、お母さんもお姉ちゃんも変な事言わないでよぉ!」
あの、ホントにやめてくれませんかね……。恭也さんの目が、目が……。
「あの、俺そろそろ帰りますんで」
「いやいや、待ちたまえ。今日はウチで夕ご飯でもどうかな?」
突然後ろから声を掛けてきたのは、えっと……父親?
「あ、あなたは? 俺は浜寺涼です」
「なのはの父親の高町士郎です。なのはと知り合った経緯とか含めて、色々聞きたい事があるんだ」
この人もか……。軽く肩に手を置いてるように見えても、全く立ち上がれないってどういう事だ。
「あー、はい、分かりました。えっと、本当にご馳走になってもいいんですか?」
「ええ、1人くらい増えても全然大丈夫よ。それにウチの家族全員、なのはと涼君の関係が気になるからね~」
そうだよな。小学生と中学生が知り合うとかおかしいもんな。
「……わかりました。今夜はご馳走になります」
「涼さん、いいの?」
どうやら家族には魔法については隠しているのか、困ったような視線を向けてくる。ふむ、ここは念話で言葉の裏も伝えとくか。
「なのはが気にする事じゃないさ」
(大丈夫だよ。魔法については上手く隠して話すからさ)
「涼さん……」
あ、でもその頼もしそうな視線はやめてほしいかな。背後の圧力がヤバいから。
「あら~、見つめ合っちゃって~」
「なんとなくただの友達じゃないのは分かってたけど、ここまでとはねぇ~」
桃子さんと美由希さんが俺となのはを見比べてニヤニヤしている。……これってもしかして男女的な意味で勘繰られているのか?
「そ、そんなんじゃないってばぁ!」
「なのは、こういうのはムキになって反論するから駄目なんだ。さらっと受け流さないと」
「うぅ、納得いかないけど、分かったの……」
「「ニヤニヤ」」
でもこの生暖かい視線と、背後の威圧感はキツいなぁ。
◇
結果から言えば、何とかなってしまった。いや、この場合うやむやになったと言うべきか。
家に連絡しなくて大丈夫かと聞かれた時に、両親が居ませんと素直に答えてしまったが為に変な空気になったのが理由だろう。
知り合った経緯も、聖祥大付属繋がりという事で納得はしたみたいだ。俺が悪い意味で噂になってると聞いた時の士郎さんと恭也さんは本気で怖かった。
「それじゃあ俺は帰ります」
「いつでもウチにいらっしゃいね」
「桃子さん……。ありがとうございます」
試作とはいえ、店で出そうと考えているケーキまでいただいてしまった。
「君はちょっと変わっているけど、とてもいい子だというのは分かった。これからもなのはの事、よろしく頼むよ」
「はい、士郎さん」
なのはのお父さんに認められてしまったのが謎だが、悪い印象を持たれなかったので良しとしよう。
「道場ではすまなかった。だが涼、お前はスジが良いから鍛えれば強くなれる。今度鍛錬しに来てくれれば、私情抜きで鍛えよう」
「はい、近いうちに行かせてもらいます」
恭也さんはなのはが絡まなければいい人だという事が分かった。それに鍛えたかったので、これは渡りに船だ。
「いや~、どうなるかと思ったけど、何とかなって良かったよ」
「いやいや、美由希さんが最初に恭也さんを止めてくれれば、俺が痛い目を見る事無かった筈ですよ……」
なんだろう、高町家の中で美由希さんが1番ちゃっかりしてる気がするぞ。
「涼さん! また来てね!」
「分かったよ。ああそうだ、俺の家と携帯の電話番号教えておくよ」
いつもは念話で済ませがちだったので、普段の連絡手段として番号を書いた紙を渡しておく。
(念話はこうやって内緒話する時と、緊急時だけ使うようにしような)
(うん、分かったの!)
良く分からないけど、一緒に食事してる時からずっと満面の笑顔のなのは。まあずっと落ち込んだままよりはいいか。
「お邪魔しました」
一礼して家を後にする。
さて、帰ったら『ユニコーン』について調べなおすか……。
◆
「アルフ、行くよ」
「あいよ!」
スズから特別な事情でもない限り昼間は魔法を使ってはいけないと言われたので、日が沈むのを待ってから夜の街の上空を飛ぶ。
そういえば、何でスズは魔法の事を知ってるんだろう? あんまり意識していなかったけど、もしかしたら管理局と繋がっていたり……ううん、スズはあの組織の人間じゃない。次に会う時、聞いてみよう。相手の話を聞かずに決めつけるのは良くないってスズが言ってたし。
「ジュエルシードの反応は?」
「この先の山からだよ。発動はまだしてないけど、危ないかもしれないから早めに封印しちまおうよ」
「うん、そうだね。この町の人たちに迷惑は掛けられないから」
私の少し後ろを飛ぶ使い魔のアルフは、どことなく嬉しそうに頷いて私に合わせて速度を上げる。
ジュエルシードの封印は特に苦も無く終わった。周囲の魔力を取り込んで、後もう数分もしないうちに発動する寸前だったので助かった。
念のために周囲に走らせていた探知魔法を打ち切って、一旦拠点のマンションに戻る。
「これで、3つ目……」
「イイ感じだね」
スズから貰ったモノ、探索で見つけたモノ、先程封印したモノ。まだこの地に足を踏み入れてから一週間もしない内に、これだけ集められたのは十分な成果だ。
「残りは18個、出来れば全部集めたいところだけど、この町に他の魔導師がいるみたい」
「ああ、発動した筈のジュエルシードの反応がすぐに消えるわけないからね」
管理局に見つかるわけにはいかない。もしその魔導師が局員だった場合、倒してでも奪わなければ……。
「早く集めなきゃ……」
「フェイト……」
「それに、この町にはスズも住んでるんだ。早く集めて安心させてあげないと……」
「フェイト……!」
使い魔として繋がっている精神リンクから、アルフの嬉しいという感情が伝わってくる。何が嬉しいのか分からないけど、彼女が嬉しいと私も嬉しい。
「まだ探索を続けるけど、アルフは大丈夫?」
「ああ! アタシはまだまだイケるよ!」
「なら、さっきとは反対の方を探そう。バルディッシュ」
≪Yes sir.≫
私の相棒に声を掛けて、探知魔法を発動させる。そのまま周囲を走らせながら、夜の空に飛び立つ。
「さあ、行こう」
「おうよ!」
◆
あの時以来入る事の無かった土蔵に足を踏み入れる。分かってはいたけど、ここに来ると気分が重くなる。
「転送ポートは…………使えないか」
軽く調べるが、うんともすんともいわない。諦めて他に何か無いか調べる事にすると、本棚にある本の1冊が点滅しているのに気が付いた。
「入った時は光って無かった筈……」
恐る恐るその本を手に取ると、俺の手を離れ転送ポートの中央に飛んでいく。そしてひとりでにあるページを開くと、映像が流れだした。
「……これを見ている頃には、俺はもうこの世には居ないだろう。そして涼、お前の元には『ユニコーン』があると思う」
「と、父さん!?」
立体映像だと分かっても再び父さんの姿を見れたことに、驚きと喜びを隠せない。
「あらかじめ言っておく。これは録画した映像だ。その事を踏まえて、喋らずにコレを聞いて欲しい」
思わず色々聞いてしまいそうになる衝動を堪えて、続きを見る事に専念する。
「1つ、この映像の流れる条件は、『ユニコーン』の最初の枷が外れるという条件になっている。2つ、他の枷が外れる事で解禁される映像がある。3つ、映像ごとに外れた枷に対応する能力の解説をする。主な内容はこの3つだ。という事で、まずは能力について解説をしよう。
今回解放された能力は、感覚共有、クロッシングと言われる能力だ。感覚という言葉で分かると思うが、涼、お前の持つ特殊な感覚。相手の心や気配等を読む力を、触れた者と共有する能力だ。共有と言っても、どこまで共有するかはお前次第だ。
フルに共有すれば相手もお前と同じ感覚を使えるが、聞こえすぎた声に心をやられる場合がある。気を付けろよ」
クロッシング、か。良く分からないけど、この力にも色々と問題がありそうだ。
「次に、何故枷なんてモノがあるかだ。これはお前の実力や精神が十分でない場合、枷の無い『ユニコーン』が暴走してしまう事態を防ぐ為だ。ここまで言えば分かるだろう」
過ぎた力は身を滅ぼすってヤツか。
「ああそれと、全ての枷が外れた時、『アルハザードへの道』が示される。お前の事だ。きっとその頃には力の使い方を間違えない人間になってるだろう」
ん!? さらっと言ったけど、それって1番重要な事だろ!?
「…………俺達の一族の運命なんかに巻き込んでしまってすまない。だが、これだけは分かって欲しい。運命に負けるな。可能性は無限だ。諦めない限り、道はどこまでも続いていく」
「……ああ! もちろんだ!」
「1冊目の映像はこれで終わりだ。次の映像で会おう」
その言葉の直後光と映像が消え、本は地面に落ちる。それを回収して、元にあった場所へ戻す。
「なんか最後まで父さんらしい映像だったな」
久しぶりに父さんの喋っている姿を見て、少しだけ心が楽になった気がする。
「とりあえず、鍛えろって事だろ? やってやろうじゃないか」
土蔵を出ると深呼吸をして、気合を入れなおす。
「『ユニコーン』、俺がお前の乗り手として相応しくなるまで、よろしく頼むぞ」
よろしくという意思と、少しだけ『ユニコーン』も嬉しそうなのが伝わってきた。
今回は高町家との交流とフェイトの現状、『ユニコーン』の追加能力の解説でした。
次回の投稿はあまり遅くならないよう、頑張ります。
ではまた次回。