【Side 箒】
『もすもすひねもす~☆ ハ~イみんなのアイドル♪ 篠ノ之 束だよ~☆』
ムカッ!!!
『って待って待って切らないで箒ちゃん!!』
……そうだ落ちつけ、この人以外にどうしようもない事ではないか……頼む人が間違っていたとしても、この人しか頼める人はいないのだ。
「姉さん……」
そう、自分の姉以外には……。
『やぁやぁやぁ我が妹よ~。用件は分かっているよぉ~欲しいんだよねぇ? 君だけの専用機が』
その言葉に『はっ』とする。そうだ。私は専用機が欲しい。学年別トーナメントでもそれを味わった。一夏と特訓すると言っても打鉄を貸して貰えない事もある。ほとんどが生身での剣道になってしまっているのも現状だ。
そして何より、力が無いと何も出来ない。
『勿論用意してあるよ~最高性能にして規格外。そして白と並び立つモノ。その機体の名前は~『紅椿』!』
【Side out】
もぞもぞ……もぞもぞ……。
……かなり早い朝ですが、目が覚めました。何かとても嫌な予感がするんです。
手を伸ばし携帯を取る。時刻は早朝6時。こんなに早く起きる事になるなんて……おかしい。そもそも何だこの感触は……暖か過ぎる気がする寝具。恐怖心を覚えながらも、僕は寝返りをうつ。そこには……
ラウラ!? ……何故に裸!? 何コレ。何コレ!? ……ここは、こっそりと抜け出そう。そして、頭を冷やして考えるんだ。
部屋を出てロビーに来ました。冷たい炭酸のジュースが、僕の脳を覚醒に持って行きます。……いや、もう一本飲もう。まだ冷静じゃないみたいだ。えへへへ~。
くぴ……くぴくぴ……ぷはぁ~! 朝一番の炭酸飲料は効くね~!!
よし。冷静だぞ~。……僕は現在一人部屋だ。シャルルが移動したから間違いない。じゃあ何故に僕の寝ているベッドにラウラがいる? 寝ぼけてラウラの部屋に入っちゃったとか?
有り得ない。寝ぼけて他人に迷惑なんて掛けた事が無い……と思う。
そうだ。ラウラと言えば部屋移動したシャルルと相部屋になった筈だ。……思い出せ、先ほどの状況を。確か、隣のベッドは誰も寝てなかった筈だ。
シャルルが抜け出してるとか? まさか~。早朝練習は今日は予定してないし、遅くまで一緒に勉強してたからシャルルも深い眠りについている筈だ……と思う。
つまり!! 僕はあの部屋の住人で間違いが無い。侵入者はラウラの方だ!! ……でも何故に裸で?
「……あ」
<お、お前は私の嫁にする!! 決定事項だ、異論は認めん!!>
「あれかな?」
バカな事を思い出しているのは分かってる。でも、それ以外に理由なんて思いつかない。とりあえず、話し合って御退出願おう。
「私の嫁……」
「寝ぼけてるし……良いラウラ? この部屋は僕の部屋で、ラウラの部屋はシャルルと同じでしょ? さ、早く戻って」
手を差し伸べた瞬間。
ラウラは僕の手に跳びかかる様に関節技を掛けてきた。
「うわっ!?」
「ふふふ……お前は寝技を覚えた方が良い」
「よっ!! っと~危ないなぁ……もう少しで決まるところだったでしょ!」
「ば、バカな!? 決まっていた筈だぞ!?」
ふふふ……中学の臨海学校や修学旅行での惨劇……いや、細かいモノも含めれば数え切れないほどの襲撃。何故か襲いかかって来る僕と同じ男子の猛攻を捻じ伏せて、あらゆる回避手段、反撃方法を学んできた僕が、そう簡単に囚われますかってんだ。……あ、あの頃を思い出したら少し気持ち悪くなってきた。みんながゾンビみたいに涎垂らしてのそりのそりと押し寄せてくるのは気持ち悪かった。
ガチャ
「一夏、早朝特訓の時間だぞ。学年別トーナメントは終わったが油断していては……なっ!? なななななな……」
「む? 不作法な奴だな。夫婦の寝室に……」
「夫婦ーっ!?」
「ちょっとトイレ~」
ガチャ……バタン。
……はて? 今、箒が来てたような? ……気の所為だよね。
ドタン! バタン!! ガシャーンッ!!
ラウラ一人で騒がしいなぁ、片付けてくれるかなぁ……。
今日の授業は午前中で終わりです。帰りのSHRで臨海学校の話題が出ました。持ちモノとか、重要事項の伝達だったのです。僕は重要事項の伝達が終わった山田先生に超・重要事項の質問をした。
「先生! おやつは300円までですか!?」
「え? あ、いえ……特に決まりはありませんが……」
ふぉぉぉぉぉぉっ、す、凄いぞ高校生!! 限度額は無し!! ふぁぁぁ夢の様だ~!! はっ! 大きめのバッグが必要だ!! 海外旅行用の2週間用のキャリーケースが必要か……。ドラムバッグだと潰れちゃうかもしれないしね!! 行きでお菓子を大量に詰めて、帰りでは御当地お菓子を大量に買ってくれば最高じゃないか!!
「待て織斑」
「はい!!」
「あははは……そのキラキラした目でお菓子の事を考えられても……」
「お前の場合限度を知らんからな、本日これよりお前のオヤツを私が選ぼう」
「え?…… えええええぇぇぇっ!?」
ぺちんっ
痛い……さすりさすり……。
と言う訳で、今日の帰りにお姉ちゃんと買い物に行く事になりました。
「あ、そうだ。ねぇねぇ、シャルルも買い物に行かない? 臨海学校の時に持って行く水着とかさ、あるなら良いけど」
「ぼ、僕も? 一夏……僕を誘って……って僕はシャルロット! 二人の時はそう呼んでくれるって話でしょ!」
そうだったっけ? シャルロット……シャルロット……。
「ねぇねぇ、『シャル』じゃダメ? シャルロットって呼びにくいし、シャルの方が呼びやすいし親しみやすいし……ラ行で噛んじゃいそうだよ」
「シャル? 良いよ! 凄く良い!! (シャルかぁ~コレってちょっと特別な関係だよね?)」
「待たせたな。ん? なんだデュノアも行くのか」
「シャルは買い物する場所とか知らないだろうから連れて来ました~」
「……そうか。行くぞ」
電車に揺られ数分。人が沢山いるショッピングモールにやってきました。ふと、アクセサリーショップが目に入り、千冬お姉ちゃんとシャルを先に行かせて、僕はアクセサリーを一つ買いましたとさ。もうすぐ誕生日だもんね。お?
「……プール用水着、ビーチ用水着、勝負水着、ウルトラ勝負水着、超ウルトラ勝負水着! 各種取り揃えて、いざって時に備えないと」
「いざって時っていつ~?」
そこには五反田兄妹がいました。
「んなぁぁぁ! んななな……」
「一夏、お前も買い物か?」
「やほ~だんだん~♪ 今度臨海学校でね、お菓子とか水着とか買いに来たの~。そっちは凄い量だね……それ全部水泳グッズ?」
「あぁ、コイツがお前に見せつけるんだって、気合い入っだぱ~~~~!!!」
だんだんがいきなり飛んでったーーー!? 何!? 何があったの!?
「えっと、一夏さんも水着を買いに?」
「え、あ、うん。今度、臨海学校に行くからその水着も買いに……」
えー……だんだん……大丈夫かな……? 何で飛んでったんだろ……?
「くっ! そうと分かっていたら一夏さんに選んでもらうんだったぁ……そうだ! 来年になったら私、一夏さんの後輩になるんですよ?」
「え? あっ、じゃあIS学園に来るんだ?」
「はい! 第一志望です! よろしくお願いしますね!」
「そっか~受験勉強頑張ってね」
「はい! ありがとうございます! えっと~お兄ぃったらどこに行ったんだろ……」
やっぱり蘭ちゃん良い子だな~お兄ちゃん思いで、結構今日は機嫌がいいみたいで、僕とも笑顔で話してくれる。
んぅ? 僕もだんだんを探そうとしたところ、シャルが現れたぞ?
「一夏ちょっと来て!」
「わっ! なになに!?」
連れて来られたのは女性用の水着コーナー……恥ずかしい……場違いだ!!
「って何で更衣室に一緒に入るの!?」
「(しーっ!)」
【Side ラウラ】
凰鈴音とセシリア・オルコットと共に、私の嫁とシャルロット・デュノアの事を尾行していたのだが……どうやら見抜かれたのか……。
しかし、これが全て水着とは……この世にはこんなに様々な水着があったのか……。む? 水着を選んでいる女子がいるな……。
「しっかり気合い入れて選ばなくっちゃねー♪」
「似合わない水着着てったら彼氏に一発で嫌われちゃうもん」
「他の事が全部100点でも、水着がカッコ悪かったら致命的だもんね~♪」
ズキューンッ!!!
ピッ! トゥルルルルル……。
「クラリッサ。私だ、緊急事態発生! ……う、うむ、例の織斑一夏の事なのだが……そうだ、お前が教えてくれたところのいわゆる『私の嫁』だ……」
【Side out】
「んぅ? ねぇねぇ、外に誰かいるの? 有名人~?」
「だ、誰もいないよ!?」
あれ? そう言えばお姉ちゃんはどこに? はっ! 勝手にお菓子を決められてしまうという大ピンチ!!?
「シャル、僕お菓子を―――」
「良いからとにかくここにいて! すぐに着替えるから!!」
「うわわぁぁっ!?」
慌てて僕は壁側に向き直る。シャルは何がしたいんだ!? うわっ! 本当に脱ぎ出した!!? そうだ! 何か別の事を考えよう!!
え~っと! そうだ! ポッキー!! チョコ味・イチゴ味・ミルク味・ムースだとクリーミー・ベリー・ビター・抹茶・カスタードフォンデュ。えっとえっと他には黒ゴマ・アーモンド・はちみつ・ぶどう・御当地ジャイアントポッキー・夏みかん・ワイン。あっ! 金箔入り食べてない!! 抹茶あずきもだ!!
「……もう良いよ」
「良くない!!」
「え? だ、駄目かな……?」
振り返った先には水着姿のシャルがいる。あ……似合う。
「ううん! 凄く良いと思う……」
「……お、お客様?」
「わぁっ!?」
シャッ!!
開けられる更衣室のカーテン。そこには困惑顔の店員さんと静かに怒った顔のお姉ちゃんが……。
「何をしている……一夏……お菓子無し。水着を女子用のモノを着る。選ばせてやろう。どちらが良い?
究極の二択!? お菓子無し何て……でも女子用の水着なんて着れる訳が無いし……うぁぁぁぁ~~~!!!
「えっぐ…えっぐ……選べまぜん……ひっく……お菓子食べたいです……でも男の水着が良いです……」
「……全く、もう一つ選択肢をやろう。私に似合う色を言ってみろ」
……お姉ちゃんに似合う色?
……黒? でも赤……白は違うかなぁ……うーん。やっぱり黒かな? あ、でも青も足して青黒デッキにすればあのコンボが……って違う!!
「く、黒……?」
「……本当だな?」
「う、うん。お姉ちゃんには黒が似合うと思います」
「分かった。……黒にしよう。反応に期待してもいいんだな?」
な、何の話か分からないんだけど……反応?
「返事は!」
「ヴァイ!!」
「……よし。とりあえずこれは私からだ。後は1000円までだからな。それ以上は駄目だ」
「あ……ありがとうお姉ちゃん!!(ニパァァァァ♪)」
「う、うむ……こほんっ。私は残務があるからな、先に学園に戻る。気をつけて帰って来いよ? デュノア、コイツにこれ以上何かしたら……許さんぞ?」
「さ、サー! イエッサー!!」
お姉ちゃんがくれたのはリボンが巻かれた金平糖の小瓶だった。大好きです! この丸いトゲトゲの甘い誘惑にもうメロメロです!!
『そして、遂に臨海学校が始まるのでした!!』
「わっ! びっくりした~……白式、ずっと黙ってたね~」
『ISについて触れませんでしたからね。マスターが女性物の水着を買い間違えてるとこまで見ました』
「買ってないよ!? ……買ってないよ!!」
『何で一応袋の中を確認するんですか』
「白式のいじわるーっ!」
感想は随時受付中です。
ではまた次回。