「2時間前、ハワイ沖で試験稼働だった アメリカ・イスラエルの共同開発の第3世代のIS、【シルバリオ・ゴスペル】通称【福音】が制御化を離れて暴走。監視空域より離脱したとの連絡があった。情報によれば無人のISということだ」
「無人……」
はい、こちら現場の織斑一夏です! ただ今、千冬お姉ちゃんより言われていた『やってもらいたい事』の説明を受けています。前にもあったけどISって暴走するんだね~。どう暴走しているかわからないけど、僕たちは何をするんでしょうか? 被害にあった人がいたら助けたりとか? 資材を運んだりとか? 多分そんな感じだと思われます。だって僕達1年生! 先輩達のお手伝いですよ~!! IS学園からここまで大変だろうけど、先輩達の到着を心よりお待ち申し上げますのだ!
「(ねぇねぇ、ISの暴走って、白式もしちゃったりするの?)」
『しちゃった方が良いですか?』
No Thank you.
それにしても……こんなに機材運び込んで、旅館に迷惑なんじゃ……? あれ、でもこれだけの機材がすぐに運び込まれてるのに、先輩達はまだ来ない。何でだろう? 噂によると専用機持ってる先輩も何人かいるって聞いたことあるんだけどな。僕達1年生の専用機持ちが多いらしいけどね。経験の差が違うのでしょう。
「その後、衛星による追跡の結果。福音はここから2キロ先の空域を通過することが分かった。時間にして50分後。学園上層部からの通達により我々がこの事態に対処することになった。教員は学園の訓練機を使用して空域、及び海域の封鎖を行う。よって本作戦の要はお前達、専用機持ちにやってもらう」
「……補佐じゃないの!?」
「つまり暴走したISを我々が止めると言う事か」
皆の力を合わせて止めるのか……暴走したISって、前に鈴と戦った無人のISと同じような感じだよね? だとしたらそこまで大変じゃないよね。
『以前のとは違うと思いますよ。今回は純正のコアのはずですから』
純正のコア? よく分からないけど、前のはイーズィモードだったってことか。
「それでは作戦会議を始める。意見がある者は挙手すること」
「はい! 目標ISの詳細なスペックデータを要求します」
「うむ、だが決して口外するな。情報が漏えいした場合、諸君には査問委員会による裁判と最低でも2年の監視が付けられる」
「了解しました」
あぁ、勝手に了解された。聞いたら話しちゃダメ。聞いたら話しちゃダメ。話したら裁判と監視。話したら裁判と監視。主にテレビとかのマスコミが多かったけど、お姉ちゃんがISで有名になった頃とか、束さんがISを発表した時とかは僕もかなり追われたのを思い出す。逃げるのが上手くなった理由の一つかもしれないけど、監視って聞くだけで怖いなぁ。でも情報がないと戦えないしねぇ。
『広域殲滅を目的とした特殊射撃型ですね。セシリアさんのブルー・ティアーズに近い印象を覚えますが、広域殲滅の武装、収束砲撃が気になりますね』
目まぐるしくデータが表示されていく。僕にはわけがわからないよ。
「私のISと同じ、オールレンジ攻撃が出来るようですわね……」
「攻撃と機動の両方に特化した機体ね……厄介だわ」
「この特殊武装が曲者って感じがするね……連続しての防御は難しい気がするよ」
「このデータでは格闘性能が未知数だ……偵察は行えないのですか?」
「それは無理だな。この機体は現在も超音速飛行を続けている。アプローチは1回が限界だ」
「1回きりのチャンス。という事はやはり、一撃必殺の攻撃力を持った機体で当たるしかありませんね」
何この人たち、怖い。白式はまぁ分かるけど、何でデータを一瞬見ただけでこんなに話が膨らむの? それにしても一撃必殺ね~。良いね良いね。なんかグッと来るよね。そそられるよね。でも、そんなの誰が出来るの?
「聞いてるの!?」
「んぇ!? 僕!? 何!? 何の話!?」
「アンタの白式の零落白夜で落とすのよ」
「それしかありませんわね……ただ、問題は……」
「どうやって一夏をそこまで運ぶか……エネルギーは全部攻撃に使わないと難しいだろうから……移動をどうするか」
「目標に追いつける速度のISでなければいけないな。超高感度ハイパーセンサーも必要だろう」
「ちょ、ちょっと待って……僕が行くの?」
『「「「「「当然!」」」」」』
ぅ……白式までも……。えーと情報をまとめると、速いんでしょ? 死角が無いぐらいに射撃に特化してるんでしょ? で、近接戦闘能力は不明なんでしょ? それから~なんだっけ……。
「織斑。これは訓練ではない。実戦だ。もし、覚悟が無いなら無理強いはしない」
『ここで逃げたら男じゃないですよマスター』
「やります!! だって僕 男の子!!」
カタンッ
その物音は天井からだった。
「待った待った~!! その作戦ちょっと待った~!!」
天井から逆さまに顔を出す束さん。忍者みたい……カッコいい~!!
「うわっ!? またキラキラした目してる!?」
「アンタ何に憧れてるのよ!?」
何って、カッコいいモノだよ!!
「ちぃちゃん ちぃちゃん! その作戦よりも更に良い作戦が私の頭の中にナウプリンティング~!!」
と、束さんは千冬お姉ちゃんを呼びますが、何故か僕を後ろから抱き締めてます。
「ヤメロ」
「ここは断然、紅椿の出番なんだよ~!!」
「そんなことはどうでもいいから ヤメロ」
束さんに抱き締められている僕。束さんにアイアンクローをしているお姉ちゃん。上を見上げればお姉ちゃんの手で表情は見えないけど楽しそうな束さん。……というか、『そんなことはどうでもいい』って、特命任務レベルAとか重大そうな事言ってなかったっけ!?
ところ変わって、やってきました滝の見える大自然!! 遊びに来たんじゃないよ? ここで出撃準備するみたいです。箒がISを身に纏い、『展開装甲』とか言うのを出しました。機体から見えるのがそれらしいのですが、束さん曰く、箒のIS紅椿は雪片弐型が進化した様なものらしいです。
「何と! 全身のアーマーを展開装甲にしちゃいました~! ぶいぶい~♪」
「ぶいぶい~♪」
「やめろ織斑」
……怒られました。
「それにしてもアレだね~。海で暴走って、10年前の白騎士事件を思い出すね~」
「白騎士事件かぁ……」
―――10年前。……てーんいやーずあーごー。おーけー?
束さんがISを発表して1カ月。全世界各国のミサイル2341発。それらが一斉にハッキングされ、日本に向けて発射された。世界が混乱する中現れたのが、白銀のISを纏った一人の女性だった。後に白騎士と呼ばれる事になったそのISは全てのミサイルを撃墜し、日没と共に忽然と姿を消した。まるで幻だったかのように。
って言うのは表向きの話!! 聞いてよ酷いんだよ!? ここからは回想でどーぞ!! もうプンプンですよ!!
◆ ◆ ◆
―――午後4時21分。
織斑一夏はテレビに釘付けだった。それもそのはず、決定的なシーンを目の当たりにしていたからだ。そう、もう終わってしまうという感情と、いや、ここからが本番じゃないかという妙な高揚感が織斑一夏を包み込んでいた。夕日に染まり始めたある日の午後だった。
『愚か者! 余の顔を見忘れたか!』
『余じゃと~? ……っ!? う、上様!? ははぁっ!!』
『八坂陣之介、己の罪を不幸な親子に被せ……断じて許さんぞ!!』
『え、えぇい。この者は上様の名を語る偽物じゃ!! 斬り捨てぇい!!』
そうだ。織斑一夏はこれを待っていた。悪が悪を貫く、それを正義が正義を貫き正す。夏休みのある日、親友の五反田弾にもう少し遊ぼうと誘われても、これだけは、この時間だけは帰らせてくれと泣いて頼んだ作品が目の前に展開されていた。最後の上様お決まりのセリフ『成敗!!』が聞ければそれで満足だった。その時―――――。
『番組の途中ですが緊急ニュースをお伝えいたします!!』
「もぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
そのニュースに対して一夏はよく分からない奇声を発していた。「何でだよっ!」「上様を出せっ!」とでも言うような猛抗議の奇声であった。
―――――奇声を発し終えたその家の住人。織斑一夏は自然と涙を流した。更にそのニュースは日本は終わるような事を伝えるニュースだった。織斑一夏は、姉である織斑千冬に買い置きされていたお菓子を一心不乱に貪った。ミサイル? そんな事より上様だ!! そんな上様が名前も知らない割り込みニュースキャスターに消された。その怒りは涙として流れ、両手は菓子を取り続け、口はそれを受け入れ続ける。胃袋の空きは十分か! 僕の胃袋は宇宙だ! と言わんばかりに貪った。
しかし、家にあった全てのお菓子の在庫を胃袋に納めてしばらく時間が経つと、ミサイルは全て撃墜されたというニュースに切り替わった。織斑一夏は血の気を引かせた。冷静になったのだ。
「ぜ、全部食べちゃった……ど、どうしよう!?」
結局のところ普通の一般人にしてみれば何もなかったも同然の事件だった。被害なんてなかったのだから。強いて言うなら、ミサイルの発表で混乱し慌てた人が転んで怪我をしたとかその程度だったはずだ。
しかし、一夏にとっては重大な事件が目の前に発生したのだ。いや、自分で引き起こした問題なのだが、一夏はとにかく焦った。
千冬お姉ちゃんに怒られてしまう!! 『一日一つだけだぞ?』と言われていた大量のお菓子の在庫を1日で全て食べてしまった。
そして、刑事ドラマの犯人役の様に一夏はその罪を認めるのではなく隠蔽することにした。「ばれないようにしなくては!!」そう思った織斑一夏は、貯め始めていたお小遣いの貯金箱。ボケっとモンスターの貯金箱を床に叩き落とし割った。
「このお金で買えるだけ買いに行って……」
ミサイルが飛んできている!! そんなニュースがあったにも関わらず、駄菓子屋のお婆ちゃんはそれを見ていなかったのか、死ぬ時は死ぬと諦めていたのかは分からないが、いつもどおりにお店をやっていた。織斑一夏はお菓子を買えるだけ買って家に急いだ。この時だけはお菓子選びに時間は掛けなかった。【ぽてち・コンソメ】を1つならば同じモノを一つ。無いのであれば【のり塩】でも、最悪違うメーカーのチップスを選んだ。
ミサイルが撃墜されたというニュースが流れてから2時間ほどの出来事だった。
買い物袋をガッサガッサ音を鳴らしながら全力で走る。家に着いたら貯金箱の片付け、食べてしまったお菓子の袋のゴミや食べカスを綺麗にして、ゴミ箱に捨てたらバレるから、今持っている駄菓子屋で貰った今持っている袋にゴミをまとめて―――と、隠蔽の計画も練りながら全力疾走である。そして、タイムリミットも頭の中で考える。
「お姉ちゃんは学校で、急いでも帰ってくるまでに後30分ぐらい。でも、ミサイルの事件で交通機関はマヒしてるからもうちょっとかかるはず、間に合う、間に合うよ!!」
しかし、鍵を閉めて行ったはずの玄関の扉は開いていた。
そして、リビングには泣き崩れる姉の姿があった。
―――アリバイ作りというほどでもないが、織斑千冬は束と計画していた通りに日没頃に全てのミサイルを落とし終わるとその日は家に急いで帰る事にしていた。
織斑千冬は急いで家に帰ると、弟はいなかった。まだ電話や交通機関は麻痺状態だ。弟はどこだと探す。そして、リビングに入るとそこには食い散らかしたお菓子の数々。それは織斑千冬が弟の為に用意したお菓子の数々だった。そして、弟が大切にしていたボケっとモンスターの貯金箱だったであろう破片達。
「一夏……一夏!? どこだ一夏!?」
探した。探し続けた。同じ場所を何度も確認するが、どこにもいない弟。叫んでも返事が返ってくる事もない。ミサイル事件に乗じて空き巣の様な者が侵入し貯金箱を割ったのだろうか? 金目のモノを探しながら一夏の菓子を食い散らかしたのだろうか? 一夏は攫われたのだろうか? 嫌な予感、予測しか頭に浮かばない。風呂場の浴槽、洗濯機の中、トイレ、ベッドの下、テレビの裏側、紅い液体がある可能性すらも頭の片隅に置きながらくまなく探した。
織斑千冬は泣き崩れた。気丈な姿はどこにもない。
ガチャッ
「開いてる!?」
弟の声だ。織斑千冬は涙も拭き取らずにリビングのドアを力なく見つめていた。ゆっくりと開けられるドア。そこには最愛の弟がいた。
―――数分後、織斑一夏は怒られた。その上、割れた貯金箱の破片でも怒られた。
「心配させるな……全く。1週間お菓子抜きだ!! これも没収!!」
「がーんっ!!」
「嘘は付くな。心配させるな。物は大切にしろ。全く、貯金箱は底の部分から開けられたというのに」
「マックマー!! ごめんねーマックマー!! うわぁぁぁんっ!!」
※マックマ……『ボケっとモンスター』で織斑一夏が一番好きなモンスター。貯金箱で、底の部分にゴム製のフタがある。クマっぽいデザインのモンスター。TEDっぽいがクマモンのようなスリムさも兼ね備えている。俊敏なパワー系モンスターだ。
◆ ◆ ◆
……つまりだよ? あの時の割り込みニュースキャスターさんさえ出て来なければ、マックマが粉々になる事も、僕が怒られる事もなかったわけさ。酷いでしょ!!?
「白騎士って一体誰だったんだろうね~!? ねぇねぇちぃちゃ~ん!」
「知らん」
「うんうん。私の予想ではバスト88セン……!!」
流石は天才・束さん! 白騎士の予想がついてるてんて凄いな~! お姉ちゃんが白騎士の正体を明かそうとする束さんをアイアンクローで押さえつけてるけど、お姉ちゃんもあまり思い出したくない事件なのかもしれない。はい、僕のせいです。
「え、白騎士の正体って……」
「流石ですわね……」
みんなも正体がわかったらしいです。すごいね。何で分かるんだろ? もしかして有名人なのかな? バスト88って情報だけで特定されるってすごいね。でもバストって何だろう? バーストモード
さてさて、作戦の話に戻るようです。セシリアさんは強襲用高機動パッケージ『ストライク・ガンナー』があれば絶対成功させると言い切りましたが、量子変換されてないのでボツ。束さんの設定する紅椿は7分で行けるらしく。箒と僕で挑む事になりました。
何としても成功させないといけないね。
一撃必殺は僕にしかできない事なんだから。
箒と一緒に……そう思って箒の方を向くと、箒もこっちを見てます。
「えへへ~」
「……ふ」
硬かった箒の表情も少し緩みました。
さぁ、あとは福音を落とす事だけに集中すれ……。
「あ、おね……織斑先生!! シュークリーム分が不足してます!!」
「そう言うと思って山田君に用意してもらってある」
「はい♪ お待たせしました!」
わふ~!! 抹茶にイチゴにバニラにチョコ、いろんな種類があるぞ~!!
シューアイスまで!? おいふぃ~♪
感想は随時受付中です。
バストの意味なんて一夏でも知ってるはずだけど、いきなり束がそんな事を言うはずがないという一夏の束を美化した考えからこんな感じに。
そして、白騎士の正体を一夏は知らないという設定です。特に意味は……無いはずです。多分。
そいつは素敵だ大好きだ。―――by少佐