織斑一夏は男の娘   作:フリスタ

19 / 22
今後はアニメ2期を見て、書けるか考えます。
今、学園祭を見終わったところです。あれ? 妹さん出てこないねって感じですw


第17話「織斑一夏は男の娘」

 織斑一夏はIS学園に戻ってきました。そこにはなんと……!!

 

「本当に良いの!? いふぁい! 夢じゃない!!」

 

 織斑一夏は自分の頬を抓りあげ、その痛みで目の前の山は現実だと実感した。

 

「当り前よ」

「織斑きゅんの為に買ったんだもん」

「食べて食べて~♪」

 

 目の前に広がるのは御土産の山。一夏の椅子に座っての視点から見上げるその頂きは観測不可能となっている。頂上にはご当地ポッキーか? もしくは団子か? はたまた未知の味なのか?!

 

「織斑!」

 

「わわぁっ崩れる崩れる!!?」

 

 その声に比例するかのようにグラグラと揺れる桃源郷。その一箱一箱に詰まっているのはお菓子を超えた夢や希望に違いない。それを崩すわけにはいかないと、一夏はバランスゲームのように机の周りをくるくる回りズレを微調整して行く。

 

「全く何をやっている馬鹿者が……全て没収だ」

 

「ごめんなさいね~織斑君。規則ですので」

 

「やぁぁぁぁぁん!!! 見るだけ! 見るだけですからぁ!!」

 

 苦笑気味の山田先生と二人で分散して職員室へ持って行こうとする自分の姉でもある担任の織斑千冬に縋り付く一夏は大粒の涙をボロボロと目から宝石を落とすように零す。

 

「見るだけということは、食べないということか?」

 

「…… …… …… ……えへ♪」

 

 

 その一言で没収という運びになった御土産達。放課後に返される約束をされてもその日の一夏は落ち着かない様子が続いた。

 

 

 

 

 

 そして放課後。

 

「一夏~! 特訓行くわ……よ? どしたの?」

 

 二組所属の鈴は酷く落ち込む一夏を見た。セシリアは一夏を気遣いながらその質問に答えた。

 

「えぇ……お菓子を没収されてさっきお菓子を引き取りに行ったらしいのですが……」

 

「食べられてた……僕のお菓子ぃぃぃぃ~……あぁぁぁぁん……」

 

 お菓子の為にここまで泣いてくれる消費者がいれば、生産者としても有難いと言うモノだが、ここで問題なのは需要と供給と言った経済的な話ではなく、被害者と加害者に近しい犯罪チックな香りのするモノだった。決してお菓子の香りでは無い。つまり、一夏のお菓子は誰に食べられたのか? と言う事だった。

 

 積み上げられたお菓子の空箱にはバランスを取るための夢や希望の重みなど無く、積み上げればわずかな隙間が徐々に大きくなり崩れ、積み上げれば崩れを繰り返す。

 

「何で箱だけ貰ってきてるのよ……?」

 

「お菓子の供養をしているらしい」

 

「供養……?」

 

 ラウラの答えに鈴は首を傾げる。

 供養とは、一夏なりに『食べてあげればお菓子は幸せ』『食べられなかったお菓子はせめて遊んであげないと満足しない』らしく、空箱で遊んであげている。……らしい。何とも理解しがたい理論である。

 

「情けないぞ一夏! その程度の事で落ち込んでなんとする!」

 

 その箒の大声で空箱は全てが雪崩のように崩れ落ちる。

 

「あ……」

 

 それを見て箒は口元を押さえる。一夏は背を向けたままプルプルと震えだし、勢いよく席を立ち駈け出した。

 

「い、一夏!!」

 

 駈け出す一夏をシャルは引き留めようとするが、その足は思いのほか速い。

 

「一夏さん、泣いていましたわね……」

「泣いていたな……」

「あんだけ好きだったんだもん……」

「仕方……無いよね……」

「わ、私が大声を出したから……」

 

 

 さて、ここで冷静になって頂きたい。

 

 ――――――ただのお菓子である。

 ……ただ、弁解するとすれば織斑一夏にとっては死活問題ではあるだろう。

 

 

 

 

 

 夕焼けに染まる空。一夏はアリーナのカタパルト発進場の上。整備員しか登らない場所に体育座りで袖で目元を擦っていた。ラウラもかつて深夜に此処に立ち、怒られたことがあるが、その事実は公表されていない。

 

「ふんっだ。箒の馬鹿……その程度じゃないもん」

 

 

 一夏は朝見た重量感のある一つ一つの箱を思い出す。色とりどりの箱。没収は悲しかったが、受け取る時の期待は最高潮に達していた。しかし、受け取るとその重みは無かった。期待で膨らんだ胸もスッと落ちてしまい。悲しみが浮かんで来たのだ。

 

<ごめんなさい織斑君! 確かにお昼まではあったんですよ!? でも、さっき見たら……こんなことに……本当にごめんなさい!!>

 

 山田先生は頭を下げていたが、そんなことも目に入らなかった。一夏の眼には空っぽになってしまった夢や希望の姿だけがあった。

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!

 そこに突如として降り立ったのはデカい人参だった。

 この登場は見覚えがある。

 

 真中から縦に割れる人参からは篠ノ之 束が現れた。

 

「ありゃりゃ? どしたのいっきゅん? 元気ないぞぉ?」

 

 

 一夏は思い出すように涙ぐみながらも、かくかくしかじかと説明をした。束はいつものようにカラカラと笑うのではなく、一夏の視線に合わせるようにしゃがみ込み、一つ一つ頷く様に話を聞いていた。

 

「やぁそれは困ったね~。束さんでも新しいのしか用意できないや」

 

 新しいのしか用意できない。つまり買い直してくれると言う事だ。しかし、これに食い付く一夏ではない。

 

「ぅん……ありがとう束さん……」

 

「そうだよね~いっきゅんはお菓子が食べたいって言うのもあるけど、ソレじゃないと駄目なんだもんね~」

 

 過去の失敗。道に続くお菓子を拾ったから姉である織斑千冬に多大な迷惑をかけた。第2回のモンドグロッソは棄権し、さらに情報提供してくれたドイツに行ってしまった。だからお菓子ならば何でも良いと言うわけではなく、自分で用意したモノ、もしくは自分の為に心を込めて用意されたものにしか手を出さないのだ。過ちを繰り返さないように。

 

「ん~。犯人探しする?」

 

「ふぇ?」

 

 その涙を流し続け、擦り続けた目下は赤く腫れ上がっていた。しかし、眼には少しばかりの力が入る。お菓子を食べた犯人を捕まえられるかもしれない。その希望は小さな火を一夏に宿した。

 

 

 

「お菓子は朝にちぃちゃんに没収されて、昼にはあったんだよね?」

 

「山田先生はそう言ってた……」

 

 頷く一夏を見ると束はダウジングの様なウサギの耳の様な金属製の棒を取り出し、歩き始める。それがどういう原理なのかは分からないが、犯人。若しくはそれに繋がるモノを見つけられるらしい。

 

 ピピピッ

 

「おぉっ? 意外と近いよいっきゅん♪」

 

「本当!?」

 

 そこはただ真下に降りただけの第2アリーナだった。ISを使用している生徒もいるが、暗くなり始めたアリーナではその数を減らしている。

 

 ピーーーーーーッ

 

「発見!!」

 

「え!?」

 

 そこには空から地上に降りてきた紅いISがいた。

 

「一夏! どこに行ってたんだ! もう大丈夫なら特訓を……いや、今日はもう無理か……」

 

「ほう……き? ……箒だったの!?」

 

「な、何がだ? 姉さんまで、どういうことですか?」

 

 一夏は怒りが込み上げるよりも先に悲しさが湧き上がっていた。どうして知らぬ顔で自分のお菓子を盗み食べたのか? そして怒りに切り替え、言葉を発しようとするとき。

 

「あ、いっきゅんゴメン。これ『箒ちゃん探知機』だった♪」

 

「うわぁぁぁぁん! 束さんの嘘つきーーーー!!」

 

 一夏はポカポカと束の腰元辺りを叩きながら泣いた。もう少しで大事な人に謂れのない怒りをぶつけるところだった。

 

「ごめんごめん♪」

 

「箒~どうしたの~? って一夏じゃない! 元気になった!? それからそっちは……篠ノ之博士!?」

 

 

 

 

 結局、その場では未解決となり、一夏は泣き疲れて眠ってしまい、束に背負われて寮へと送り届けられた。

 

「(ねぇ篠ノ之博士って捜索願い出されてるんじゃなかった?)」

「(うむ。我が国でも発見、確保は不可能だ……それがなぜ……)」

「(それが何で一夏を背負ってるのよ! アンタのお姉さんでしょ!?)」

「(わ、私に聞くな! この人の行動は理解不能だ!)」

「(そんなこと言ってる間に寮に着いてしまいましたわ……)」

 

「やぁやぁちぃちゃんこんばんわ♪ いっきゅん貰って良いかな?」

 

 グワシッ!!!

 

 開口一番のそれに、たまたま玄関にいた織斑千冬は白いジャージ姿で天才の頭をアイアンクローで出迎える運びとなった。

 

「何もしてないだろうな……束?」

 

「いやぁ相変わらず容赦のないアイアンクローだね? 先日に同じ事をやったデジャビュさえ感じられるよ」

 

「天才の脳も限界が来たか? 実際に数日前に潰しておくべきだったか?」

 

 

 

 

 

 一夏は目を覚ます。そこは学生寮の食堂で、目の前には湯気が立った晩御飯が用意されている。しかし、一瞬でフラッシュバックする。お菓子はもうどこにもいない……。一夏は再び自然とぽろりぽろりと涙を流し始めた。

 

「泣かないで~いっきゅん。とりあえずご飯食べて。ね?」

 

 横には何故か初恋の相手の束がいる。隣のテーブルには箒達がいてこちらを窺うように食事を進めている。一夏も何も食べてないわけだからお腹は空いているわけで、鼻を啜りながら箸を取った。

 

「一夏」

 

「千冬お姉ちゃん?」

 

 『織斑』ではなく、下の名前で呼ばれたことにより、一夏は自然と「先生」ではなくいつもの呼び方になる。しかし、いつもの姉という威厳のある存在感は少し薄い。少しばかり苦虫を噛潰すような顔で千冬は頭を下げた。

 

「すまない……探している犯人は私だ」

 

 衝撃の告白。信じられないと言う気持ちと、何か別の事を指しているのかと思い、少し呆けてしまう一夏を尻目に千冬は大きめの段ボール箱を持ってきて、テーブルの脇に用意して、その箱を開いた。そこにはぎっしりと例の空箱達の中身が詰まっていた。夢と希望だ。

 

「どう……して?」

 

「いっきゅん。ちぃちゃんはね、いっきゅんが心配だったんだよ。あの量を目の前に用意されたらいっきゅんのご飯はお菓子ばっかりになっちゃうからね」

 

 そうだ。際限なく貪り喰うだろう。これはある意味で仕切り直しなのだ。戸棚に用意された沢山のお菓子。一日一つだけと言う約束。そんな過去がふと湧き上がる。一気に全て食べて怒られた記憶。少量パッケージ1つでは満足できずに、怒られるか不安に思いながらも「もう1っこ食べていい?」と聞けば困ったように「まったく……今日はこれで最後だぞ?」と甘やかしてくれる姉の存在。

 

「そんな事になったらいっきゅんも成長しないよぉ~?」

 

 いつもなら大きな声で「そんなの嫌だ」と答えるだろう。しかし、一夏は目の前の姉の存在にお菓子を隠されていた事に対して小さな怒りを浮かべると共に、そんなことは些細ですら無いほどに大きな、とても大きな感情を覚えていた。全てを一気に食べるのではなく、1日1個。小分けにして少しずつ噛みしめる幸せ。少しずつ手に入れる夢や希望。わざわざ箱だけを残し、中身だけを段ボールに収めている理由がそれなのだろう。

 

「お姉ちゃん……ありがとう」

 

「あぁ」

 

 食事が終わり、「今日の分だ」と1つの子袋を渡される。それだけで一夏は今日一番の笑顔を見せた。

 

 それを引き裂くように。天才は口を開いた。

 

「それでいっきゅん」

 

「んぅ? なんですか?」

 

「誰が好きなの?」

 

「ふぇ!?」

 

「「「「「っ!!」」」」」

 

 隣の席からガタガタッ! と席を勢いよく立つ音がする。

 

「おねえ……」

 

 止めてくれるであろう存在に目を移す。しかし、姉は止めるようなことはせず、腕組みをしたままに―――。

 

「―――毎日膝枕で耳かきをしてやるぞ?」

 

 と、何故か自信満々に口を開く。

 

「えぇぇぇぇぇ……」

 

「私の事は初恋だったよね? 可愛かったな~いっきゅん♪ もちろん今でも束さん大歓迎! ほら、これ覚えてる? いっきゅんがくれた指輪」

 

 

「一夏さん……」

「いちか……」

「ワタシよね?」

「一夏……」

「私の嫁だろ?」

 

 逃げ場をなくし、混乱した一夏は……。

 

「み、みんな大好きだから選べないーーー!!」

 

 と言って逃げ出した。

 その大きな声は寮に響き渡り、何故か織斑一夏を捕まえた者が織斑一夏をGet出来ると一瞬で曲解され伝わった。

 

「皆の者~出会え出会えー!!」

「共闘はしても意味ないわよー!!」

「おっ先ー!!」

「織斑きゅ~ん!!」

「うわっ! IS起動する気!?」

 

 一夏は自分のISであるアクセサリーでもあるガントレットに救援を求めるが。

 

「助けてせっちゃん!!」

『えっと、それで誰が好きなんですか?』

 

「うぁぁぁぁぁんっ! せっちゃんの意地悪ーーーーー!!」

 

 

 

 織斑一夏。

 

 性別:一夏

 

 ISが起動できる男……の娘である。

 

 

 

 

 




感想は随時受付中です。



箒ちゃん探知機は犯人探しには使えない。
だって箒ちゃんしか探せないのだから!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。