織斑一夏は男の娘   作:フリスタ

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第02話「男の娘に逃げ場無し」

 

 

 とりあえず授業が終わって束の間の自由時間。

 

 誰も知ってる人いないよね……そう思っていたのはこの教室に入る前の事。クラスに入ると昔の印象が蘇える女の子がいた。僕の二つ左の席だ。あの子の名前は篠ノ之(しののの)(ほうき)。子供の頃良く遊んだなぁ。髪形が変わってないからすぐに分かったよ。ふふふ。

 

 しかし、そんな風に過去を振り返る余裕なんてモノはなく……。

 

 ギラギラした視線を浴びては、背筋をピンっと張り逃げ場を探すけど……男友達もいるわけないので……人類(ボク)に逃げ場なし!

 

 あぁウチのクラスだけじゃなくて、他のクラスの人も見に来てるぅ……誰だ! 『空気を読んでくれて助かるよ。IS学園サイコー!』なんて考えてたのは!! ……なんて数10分前の自分を責めても状況は変わることは無い。

 

 あぁ、噂話なら聞こえないようにして下さい……。

 

「あの子よ、世界で唯一ISを使える男性って!」

「入試の時にISを動かしちゃったんだってね~?」

「世界的な大ニュースだったわよね~顔は初めて見たけど」

「やっぱりこの学園に入って来たんだ~」

「あなた話しかけなさいよ」

「私行っちゃおうかしらぁ」

「待ってよ、まさか抜け駆けする気じゃないでしょうね!?」

「あ~でもしょうがないんじゃない? アレは飼いたくなるわよ~」

「IS動かしたのも本当は女の子だったのかもね~」

 

「え!? じゃあ何で男子の制服なんて作ったの?」

「共学とか?」

IS(・・)学園なんだからISを使用できない人は意味無いんじゃない?」

「うーん……まぁいずれにしても」

 

「「「「「アレは飼いたくなる♪(じゅるりっ)」」」」」

 

 

 飼う!? 何か生々しい音も聞こえた!?

 

 だ、誰かこの状況を助けて……。

 と、頭を抱える状況を救ってくれたのは、先ほど紹介した箒! 少し機嫌が悪そうな感じだけど……。

 

「ちょっといいか?」

 

「ぅ、うん。うんうんうん!」

 

 さぁ行こうすぐ行こう! 戦略的撤退作戦を図ってください司令官殿!

 

 

 

 

 

 連れて来られたのは人気のない1年校舎の屋上。2年生、3年生の屋上も見えるが人はいなさそうだ。助かった~……。

 

 ガシッと箒の手を掴みぶんぶんと上下に振り、勢いに任せて思いの丈を語った。

 

「ありがとう! 助かったよ箒! 僕はねさっきまで怖かった! 本っ当~に助けてくれてありがとう! そう言えば去年の剣道全国大会優勝おめでとう! 新聞で見たよ! あ、前後しちゃってごめん! 久しぶり! 6年ぶり! 元気だった!? 髪形も変わってないからすぐに分かったよ! 箒最高!」

 

「お、落ち着け! 変わってないのはお前だ! 髪が伸びた以外は少しも変わってないじゃないか!!」

 

「むっ、そんなこと無いもん! 箒と会わなくなってだから……身長は15センチも伸びたもん! 箒なんて僕よりすごく大きくなって……ずるいよ!!」

 

「な、好きで大きくなったわけではない!! それに9歳とかの話しだろう!? 最低でもプラス10センチ以上は伸びていていいはずだ!!」

 

 ガーンッ!!

 す、好きで大きくなって……ない? 僕が背を伸ばすためにしている努力を……。もう10センチ……?

 

「お、おい? ……しかしよくも覚えていたものだな……?」

 

「ぅぅ……忘れるわけないでしょ? 幼馴染なんだから……大きくなっても忘れないもん……」

 

「そ、そうか……」

 

「んぅ?」

 

 箒は何故か顔を赤らめてもじもじしている。お手洗い?

 

 キーンコーンカーンコーン♪

 

「あぁ、予鈴か戻ろう」

 

「いいよ。僕はもう少し身長についてお空の神様と話し合いをしな……」

 

 

「行くぞ!」

 

 ズルズルズル……

 あぁ、神様。僕の話も聞いてくれないのですね。

 

 

 

 

 

 んで、また授業が始まる。

 千冬お姉ちゃんは監督しているだけだ。

 基本的には山田先生が授業を進めて行く。

 

「―――では、ここまでで質問のある人~」

 

 ふふふ、分かる! 分かるぞ!!

 僕が理解できていない! ということが分かる!

 

 このアクティブなんちゃら~とか! 広域なんとか~って何!?

 まさか全部覚えないといけないの!?

 

「織斑君何かありますか? 質問があったら聞いて下さいね? 何せ私は先生ですから~」

 

「せ、先生……」

 

「はい! 織斑君♪」

 

「ほとんど全部分かりませぇん」

 

 僕は自分の出来無さ過ぎに涙を零した。

 

「ぅえ゛……ぜ、全部ですか? 今の段階で分からないって言う人はどれぐらいいますか?」

 

 僕を除くクラスの全員が「理解してます」と言わんばかりに誰も手を上げたりせず沈黙を回答とする。マジですか? そんなにハイレベルなの?

 

 あぁ、僕はこの世界のオンリーワンになれたんだ……。

 

「織斑。入学前の参考書は読んだか? 必読と書いてあったはずだぞ?」

 

 ひぃっ! 千冬お姉ちゃんが起動した!?

 え、えっと入学前の参考書? 確か分厚いやつで……中学の教科書とかと一緒に……。

 

「いやぁ……間違って捨てちゃいました」

 

 ぺちんっ

 

「あ痛っ……(さすりさすり)」

 

「後で再発行してやるから、一週間以内で覚えろ。良いな?」

 

 

「は、はぁい……(あの厚さを一週間か……)」

 

 

「時間があるときは見てやる。今はとりあえず授業を聞け」

 

「で、では授業を続けます。テキストの12ページを開いてください―――」

 

 

 

 

 授業が終わり、また束の間の自由時間です。

 

 んぅ~。あの厚さを1週間か~。まぁどうにかなるかな。

 でも、お姉ちゃんに時間の余裕なんて無いだろうな。家に帰ってくるのも月に1、2回だったんだから今の先生の仕事はかなり忙しいんだろう。これは自分で頑張らないとね。迷惑はかけられない。

 

「ちょっとよろしくて?」

 

 お嬢様的な口調で後ろから声をかけられる。

 

「んぇ?」

 

「まぁ! なんですのそのお返事! 私に話しかけられるだけでも光栄なのですから、ソレ相応の態度というものがあるのではないかしら?」

 

「光栄です~ファンだったんですよ~。で、えーと……誰ですか? さっきの自己紹介もまともに聞いてなくて……」

 

「馬鹿にしてますの!? 私を知らない!? セシリア・オルコットを!? イギリスの代表候補生にして入試主席のこの私を!?」

 

 

「ぁ、ぅ、えっと……ごめんなさい」

 

 なんだか面倒くさい感じのお嬢様だね……。でも主席だから頭はすごく良いんだろう。あ、もしかしてクラスに馴染めない僕を助けようとしてくれてる!? さっきの授業も分からない僕に教えてくれようとしてる!? なら良い人じゃないか!!

 

 それに代表候補生ってアレでしょ? 千冬お姉ちゃんが日本代表だったから。このセシリアさんはイギリスの代表の候補でエリートさん!! なんかこの人の背景に薔薇の花びらが見えた気がするけど……。

 

 

「―――。大体、何も知らずに良くこの学園に入れましたわね? 唯一男でISを操縦出来ると聞いていましたけど、期待はずれですわね。見た目も男性では無いようですし」

 

 

 いや、僕に期待しても何も出て来ないと思うけど……。

 それに容姿は関係ないじゃないか……。

 

 

「まぁでも、私は優秀ですから? あなたの様な人間にも優しくしてあげますわよ? 分からない事があれば、泣いて頼まれれば教えてあげない事も無くってよ?」

 

 泣かないと教えてくれないのか……目薬が必要なのかな?

 

 

「―――何せ私、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから?」

 

「あ、僕も倒した~。一緒だね仲間仲間♪」

 

 

「はぁっ!?」

 

 倒したって言うか……逃げ回って、

 壁に激突した試験官さんがノビてるところをコツンッとしただけだけど。

 

 

「わ、私だけだと聞いていましたが……あなたっ! あなたも教官を倒したって言うの!?」

 

「え? うん。一応……だから仲間なか……」

 

 

「冗談じゃありませんわっ!」

 

 キーンコーンカーンコーン♪

 

 

「話の続きはまた改めて! 良いですわね!!」

 

 えー……?

 

 

 

 日は暮れて、今日と言う日が終わる。今日から住むことになる寮に向かうのだが、後ろにぞろぞろと女子の皆さんがいる。

 

 先に行かせようと思い少しペースを落とすと、あちらもペースを落とす。

 もう少し距離を取ろうとペースを上げると、あちらもペースを上げる。

 こだまでしょうか? いいえ、誰でも。

 

 と、監視されているのか何なのか分からないけど、凄く見られてます。中学の時みたいにストーカー的なモノがなければいいけど……女子とは言え、仲良く話せるなら良いよ? でもさ、これはちょっと辛いね……。

 

 

 

 

 で、部屋に辿り着く。二人一組のお部屋が宛がわれるこのお部屋。

 中はと言うと、ほぉ~~~。綺麗な部屋~。ベッドもフカフカ~。

 でも、ベッドがもう一つあるって事は……。

 

 いや、まさかね。ないない。僕は男なんだ。僕だけは一人部屋だよ。ベッドが二つあるのは片付けが間に合わなかったからで、明日になれば運び出されているはずさ。そうだよ! 高校生にもなって男女同室で住まわせるとかありえない。ここだけが今の僕の逃げ場所になりそ……。

 

 ガチャ

 

「あぁ、こんな恰好で済まない。シャワーを先に使わせてもらったぞ? 私はルームメイトの篠ノ之箒だよろしく頼……なっ! い、一夏!?」

 

「ありえないー!!」

 

「一夏! 貴様っ! 女子の部屋に侵入するとは遂に変態になり下がったか!!」

 

「遂にって何!? 僕もこの部屋だって!!」

 

 箒の繰り出す木刀を避け続ける僕。突きや打ち降ろし、横薙ぎ等を数分間避け続けると、箒は息を切らし始めた。

 

「くっ、避ける事だけは一人前だな……また汗をかいてしまったではないか。……ほ、本当に同室なのか?」

 

 呼吸を整えながら確認してくる箒に僕は部屋番号の札を見せる。

 

「そうだって。ホラ僕が貰った部屋番号……コレ」

 

「間違いではなさそうだな……。その……お、お、お、お前から頼んだのか? 私と同じ部屋にして欲しいと?」

 

「え? 無理でしょ? 箒がこの学園にいるのも今日初めて知ったんだから」

 

「む、無理とはなんだー!!」

 

「うわっ! 危ない! 当たったら危険が危ない! 顔が怖い!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日の事です。事件は起こったんです。姉さん事件です。と言うかその事件の発端を千冬お姉ちゃんが語りだします。

 

「これより、再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決める」

 

 えーと、クラス代表者と言うのはこの『対抗戦』と言うモノだけでなく、生徒会の会議や委員会の出席など、クラス長みたいなモノと同じような役割もあるらしい。

 

 

「自薦他薦は問わない。誰かいないか?」

 

 あーこう言うのって誰もやりたがらないよね~?

 まぁ僕も静観させてもらおう。男一人で肩身狭いですしね。

 

「はい。織斑きゅんを推薦します」

 

 きゅん? 噛んだのか? ……ってちょっと!?

 

「私もそれが良いと思います!」

 

「んぇ!? 僕!? ちょっと待ってよ!!」

 

「他にはいないのか? いないなら無投票当選だぞ?」

 

 お姉ちゃんまで!? 人類(ボク)にやっぱり逃げ場無し!?

 

 

 バンッ!

 

「納得がいきませんわ! その様な選出は認められません!」

 

「そ、そーだそーだ! 人権もあるぞー!」

 

 ぺちんっ

 

「黙って聞いてやれ」

 

 (さすりさすり)……うん、逃げ場無し。

 セシリアさん頑張って!! 千冬お姉ちゃんを説得して!!

 

「男がクラス代表だなんて良い恥さらしですわ」

 

 そーだそーだ!

 ISは元々は女性しか使えないんだから女性が代表であるべきだー!

 

「このセシリア・オルコットにその様な屈辱を1年間味わえと仰るのですか?」

 

 プライドもあるよ~。良いよ良いよ~! その調子!

 

「大体! 男だか女だかもハッキリしない様な方が代表と言う事自体が!!」

 

「ちょっ! 僕は男! 男だってば!!」

 

「あなたは口を挟まないで下さる!? 大体! それに文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体耐え難い苦痛で……!」

 

「僕の話じゃなかったの!? それにイギリスだって同じ様な感じでしょ!? ご飯だって美味しくないって聞くし!」

 

「な!? 美味しい料理は沢山ありますわ! あなたっ! 私の祖国を侮辱しますの!? ……決闘ですわ!!」

 

 あ、あれ? 何でこうなっちゃった!?

 今からでも遅くない謝ろう。それで万事解決だよね……。

 

「話はまとまったな? それでは勝負は次の月曜、第3アリーナで行う」

 

「まとまってない! まとまってな……!」

 

 ギランッ

 

「ま、まとまりましたっけかね。あはははは……」

 

 

 あぁ、セシリアさんは怒ってて、

 わざと負ければ奴隷って言ってるし、えー……。

 

 

 





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