セシリアさんとの決闘の後。僕は山田先生、千冬お姉ちゃん二人ともう一度話をして、白式の説明だけだとどうしても意味が分からなかった『雪片弐型』の説明をしてもらった。白式とは完全に分かりあっているわけでは無いので、例えとかが分かりにくかったのだ。
お姉ちゃんと山田先生が言うには、あのレーザーの刃が出ている状態は自分のシールドエネルギーを使っているらしく、無駄に使っているとシールドエネルギーが切れて動けなくなるらしい。試合ならエネルギーが先に0になった方の負けになるのだとか。わざわざ通常モードとレーザーモードを切り替えて使うのはそういうことらしい。
お姉ちゃんが第一回のモンドグロッソで優勝できたのはこの雪片の能力が大きく影響しているとのこと。あの頃はお姉ちゃんしか見てなくて、ISは注目してなかったから、『お姉ちゃんはスゴイ!』としか思ってなかった。
ここで更に疑問が生まれる。シールドエネルギーを使って何で勝てるのか。それは『バリア無効化攻撃』というのが出来るかららしい。相手のバリアを切り裂いて、相手のISに直接ダメージを与えられるんだって。
『元々の攻撃力』+『自分のシールドエネルギーを雪片弐型に使用』=『バリアが無くなった相手は大ダメージ』なんだってさ。
それが、雪片から丸々受け継いだ雪片弐型なのであります! きゃっほー!
「お姉ちゃんと同じ♪ お姉ちゃんと同じ♪」
「あらあら織斑君たら♪」
「やめろ恥ずかしいバカモノが」
ぺちんっ
さすりさすり、ごめんなさい。
「ありがとうお姉ちゃん!」
「あぁ、食事の後はちゃんと歯を磨いて寝ろよ? その後はお菓子は駄目だぞ」
「うん♪」
次の日。
良い天気だなぁ……こうも良い天気だと眠りたくなってくるよね~。
まぁそんな訳にも行かず、クラスのみんなは僕を含めてISスーツに着替えてグラウンドに集合している。
「ではこれよりISの基本的な飛行操縦をしてもらう。織斑、オルコット、試しに飛んでみろ」
「分かりましたわ!」
「んぇ? 飛ぶ?」
『ISで飛ぶんですよマスター』
あぁ、なるほどね。
セシリアさんはISを起動させて飛ぶ準備万端だ。
「早くしろ。熟練したIS操縦者は展開まで一秒とかからないぞ」
「そうなんだ。じゃあ白式お願い出来る?」
『了解ですマスター』
「また独り言か……。昨日の疲れが取れてないのか? 問題があるようなら精密検査を予約しておけ」
「問題ないです」
『マスター。私は基本的にマスターがイメージして頂ければスピードも上げられますのでお願いします。飛ぶ時や防御の時は基本的にイメージするだけで構いません』
イメージね……。飛ぶイメージ? 普段、飛ぶなんて事は有り得ないから分かり辛い。ここでも白式との付き合いの短さが出てる気がする。
確か授業の内容だと、自分の前方に角錐をイメージするとか言ってたね。んー、分かりやすい感じだと、自分の前方にパラソルチョコがあると思えば良いんだよね?
「問題ないなら良いが……では、飛べ!」
「「はい!」」
「パラソルチョコ~パラソルチョコ~……。こんな感じかな? あ! お菓子とかがあると思えば制限無しで良いのかも!? それなら! それなら! んーとんーと! イチゴパフェ~きな粉餅~練乳カキ氷~……」
『良い感じですマスター』
「やっぱり早いですわ! そ、その…宜しければ、放課後などに二人きりで練習をしてみませんか?」
「ん? 何か言った? 今は甘いモノで頭いっぱいなんだけど?」
『マスターと一緒に練習したいらしいですよ?』
え……?
……負けた腹いせに女子の派閥で寄ってたかって虐める気!?
『良いだろう。織斑、オルコット、急降下と完全停止をやってみせろ』
タイミングの良かったお姉ちゃんの通信に僕は真っ先に逃げる事を選択する。
「お、お先に~!!」
『マスターが考えている事は無いかと思うんですけどね』
「お、お待ちになって!」
『馬鹿者!! 一緒に急降下するな!!』
ガツンッ!!
「うわっ! 当たってバランスが……!!」
ズガーンッ!!
「いたたたた……」
『……これは……マスター、チェックの為 待機状態に戻りますね』
白式は僕との通信的なものを切ったのか、会話が途絶えてしまった。何かあったのかな。
出来た穴の上から山田先生と箒と千冬お姉ちゃんが覗きこんでくる。
「大丈夫ですか織斑君!? ほっ、大丈夫そうですね」
「馬鹿者、グラウンドに穴を開けてどうする」
「情けないぞ一夏! 私が教えた事をまだ分かって無いのか!」
うん ごめん。……何を教えてくれたのさ?
空から落ちてくる対処法なんて教わってないよ。
「い、一夏さんスミマセン! お怪我はなくて!?」
「う、うん大丈夫~……って“一夏さん”!?」
セシリアさんが昨日の試合の後から何かおかしい?
さっきはまた違うやり方で虐められると思ったけど……。
「一応 保健室までご一緒して見てもらいませんか?」
「無用だ。ISを装備していて怪我などする訳ないだろう?」
あ、箒。いつの間に
「あら篠ノ之さん。他人を気遣うのは当然の事でしてよ?」
「お前が言うか、この猫被りめ」
「鬼の皮を被っているよりはマシですわ」
おぉ…でかるちゃー……。何で目の前の二人は仲が悪いんでしょうか?
銀河の果てまで抱きしめて仲良くすればいいのに。でも僕はシェリル派。
「織斑きゅん!」
「クラス代表決定! おめでと~う!」
「「「「「おめでと~う!!」」」」」
クラッカーの破裂音が鼓膜を通り抜けて行く。
あぁ、もう逃げ場はない。クラスメイト達は僕を代表と言う座に縛りつけ、何かにつけて虐めてくるに違いない……。女子の虐めは半端ないらしいからな……死にたくないな……。
「い、いやぁ~やっぱりセシリアさんの方が代表者に相応しいんじゃないかな~? なーんて……」
「初心者であった一夏さんが私を倒したのですから当然ですわ。一夏さん以外がクラス代表者だなんて有り得ませんわ」
そこまで言いますか。
「まぁ負けても唯一の男の娘だもんね~。持ち上げてクラス代表者に仕立て上げるわよね~」
さ、最悪だ。男の子だとは言ってくれてるけど、結果はどうであれクラス代表にはさせる気だったんだ。やっぱり女の子だけしか使えないはずのISを男が使うことに怒りを覚えて計画的な虐めを考えてるんだ……どうしよう。
「人気者だな一夏」
「虐めでしょコレ……はぁ」
もしかして、箒も虐めに参加してるのかな……。剣道も強制してくるし、いつも怒ってるし、うぅ……胃が痛くなってきた。
カシャッ
おわっ! 撮られた!?
「はいどーもー新聞部でーす。セシリアちゃんも良いかな?」
「ふ、二人でですの?」
「注目の専用機持ちだからね~。あっ、握手とかしてると良いかもね」
「そ、そうですか。あ、あの撮った写真は当然 引き伸ばして後で頂けますわよね?」
何故、貰う必要があるんだろう? 何故、引き延ばす必要があるんだろう? 自分が好きなんでしょうか? まぁ好きそうではありますか……。いや違う。何かある。呪い的な何かに使うのか。それとも合成写真とか作られて酷い事されるのかもしれない。
「そりゃもちろん。さぁ立って立って。はい、もっと寄って寄って、緊張しないで~」
こ、これ以上寄るの!?
グイッ
わ、わわわ! 腰に手を!? 僕がセシリアさんにセクハラしてるような合成写真!? それはまずい! お姉ちゃんに迷惑がかかっちゃう!! わーわーっ!! ……わ?
カシャッ
あ、箒が間に入って助けてくれた……。
他のクラスメイトさん達も……。
「な、何故全員入ってますの!!」
「あはは~」
「セシリアだけ抜け駆けはないでしょ」
やっぱり箒は味方なのかな? 幼馴染だもんね。そうだよね?
―――就寝時間。
「さっきは楽しかったか?」
「な、何だか怖いよ? あ、でもさっきは助かったよ箒~」
「そ、そうか? そうか……こ、これから寝間着に着換えるからアッチを向いてろ」
「はいはい……ふぁ……ぁふぅ……」
お祝いのケーキ美味しかったな~皆も食べてたから毒的な虐めは無いだろう。なんかホッとしたら眠気が……く~……すぅ……
【Side 箒】
『さっきは助かったよ箒~』
私がいて助かったか。
そうか、そうか。あのように笑顔で感謝するとは。
私は着替えて制服をハンガーにかけて仕切りを戻した。
この新しい帯をみて一夏は何と言ってくれるだろうか?
「ど、どうだ一夏?」
「く~……すぅ……」
……くっ! 寝顔までこうだと怒れないではないか!!
【Side out】
朝、爽やかな陽気に包まれて、
僕達の1年1組にとなりのクラスの噂が流れていた。
「もうすぐクラス対抗戦だね」
「2組のクラス代表が変更になったって聞いてる?」
「あ~ナントカって転校生に変わったのよね?」
ナン・トカさん? 留学生か……強いのかな? でもこの時期に転校生って言うのも不思議な話だね。ついこの間、入学したばかりなのにね。
「中国から来た子らしいよ?」
「今のところ専用機を持ってるのってウチと4組だけだから余裕だよ」
「その情報古いよ」
ん?
声の方に顔を向けると見覚えのある人物が教室の入り口に立っていた。
「2組も専用機持ちのクラス代表になったの。そう簡単に優勝できないから」
「あ、
この少女は
ちなみに箒が1stシーズンです。箒が小学校4年生の頃に転校しちゃって、鈴とはそれから出会ったんだ。中学2年生の時に引っ越しちゃったから2年ぶりぐらいになるのかな?
「し、知り合いなのですか一夏さん?」
セシリアさんが詰め寄る様に僕に聞いてきた。
あ、そうか。虐めグループじゃない人と知り合いなら助かるかもしれないのか。鈴も強気な子だし、力になってくれるかもしれない。
「うん、僕と同じ身長の……って大きくなってる!? 何やったの!? 悪魔に魂でも売ったの!? どこで売れるの!? 僕も寿命の5分の……ん、ん~半分までなら……!」
「誰が売るかー! アンタ人の話を聞きなさいよ! 私は中国代表候補生として……!! (ゴスッ!) あっ痛ぁ~……何すんの!? う゛っ!」
あ、もう授業か……。
「もうSHRの時間だぞ?」
「ち、千冬さん……」
「織斑先生と呼べ、さっさと戻れ、邪魔だ」
「す、すいません……また後で来るからね! 逃げないでよ一夏!」
逃げる必要がある事したっけ? え? もしかして鈴までも虐める側なの!?
食堂にて。
話題作りをして、なんとかこっちの仲間になってもらわないと僕はどこかの山で数年後に身元不明の無残な形で発見されるかもしれない。それだけは避けないと!
「さ、さっき代表候補生とか言ってたよね? いつなったの?」
「アンタこそ、ニュースで見た時ビックリしたじゃな~い」
本当は藍越学園に行く予定だったんだけどね……。
バンッ!
「一夏! そろそろ説明して欲しいのだが?」
「そうですわ一夏さん!」
怖い! 何故か仲良い!? 仲悪くなかった!? いや、違う結託したんだ! 虐めグループが吸収合併を繰り返し巨大組織になろうとしているんだ!
「ま、まさか ここここ、こちらの方と付き合ってらっしゃるの!?」
「べ、べっべべべ別に私は……」
付き合い? はっ! ここで鈴を嘘だとしても彼女とか言ったら鈴にやられるのか?
ここは一度距離を取って、あっちの仲間は増えないようにして、且つ虐め発生を遅らせて対策を立てる時間が必要だ。
「ぃ、いや、ただの幼馴染だよ? 鈴の家にご飯食べに行ったりするぐらいの仲だよね?」
ぁ、あれ? 少し怒ってる? 間違えたかな?
「なっ! 聞いてないぞ一夏!!」
「私もですわ!!」
え?……鈴の実家の中華料理屋にご飯食べに行くぐらいよくない?
まぁ辛いモノが多いから大変だったけど……。
嘘ついた方が正解だったのかな?
「話は放課後のアリーナで聞こう」
「そうですわね」
えー……。じわじわと虐める気だよこれ。
その日はISの練習機を借りてきた箒と、専用機のセシリアにワケの分からないコンビネーションにてんやわんやで疲れた。白式もメンテナンスだとかで制御とかは初期設定時と同じ感じの普通のオートモードでした。酷いよ……。
「お疲れ一夏。はいスポーツドリンクとタオル」
「わぁ、ありがと~。こんな時間まで待っててくれたの?」
「まぁね♪ ……やっと二人きりだね。一夏さ……やっぱ私がいないと寂しかった?」
鈴の質問に僕はどきっとした。まずい。スポーツドリンクは美味しいけど。あ、これも危ない飲み物とか!? と、とりあえず寮まで戻れば何とかなるかもしれない。
「ぁ、うん。遊び相手が減って寂しかったよ。あ、そろそろ箒もシャワー終わってるだろうから部屋に戻るね。飲み物ありがと~」
「ちょ、ちょっと? 箒ってさっきの子よね? どうしてその子がシャワー終わると一夏が部屋に戻るのよ?」
「そりゃあ、同じ部屋だから……あ、僕も最初は困ったんだけどね、幼馴染だから気を使う事も他人に比べれば……」
「どうして同じ部屋なのよ!? 日本って異常なの!?」
「んぇ? あぁ、そう言う事か。部屋が用意できなかったんだってさ」
「……幼馴染なら良い訳ね?」
「いや、て言うか僕は男だし一人が良いんだけど……」
そうだ、一人部屋を急いでもらえば心配も減るぞ。山田先生に相談でいいのかな?
「幼馴染なら良い訳ね!?」
「あれ!? 人の話聞いてる!?」
「と言う訳で部屋変わって♪」
あ~……こうなりますか……。虐めは私が先導する。という事なのだろう。
「ふざけるな! 何故私が!!」
もう寝ようと寝間着に着替え終わっている箒が怒り始める。
さっきまで割と機嫌良かったのに……。どっちが主導で動いていくかで考えも変わるんだろう。派閥って怖いな……。
「いやぁ~篠ノ之さんも男と同室なんて嫌でしょう?」
「べ、別に嫌とは言っていない! それにこれは私と一夏の問題だ!」
どんな問題さ……?
「ところで一夏さ、私との約束覚えてる? 小学校の時に……」
「む、無視するな! こうなったら……!!」
「わーわーっ! 箒落ち着いて! 暴力駄目!!」
竹刀を抜き取った箒を前に出て止める。危ないったらありゃしない。
怒りん坊だな……。
ここで仮にも暴力を見過ごしたら、僕にも暴力がくる可能性が高い。断固阻止!
あれ? 箒は仲間なんだっけ? いや、確証もないしなぁ。様子見しかできないなんて。
「い、一夏がそう言うなら……」
「別にそのまま私に振り下ろしてくれても良かったけどね」
「あ、あ~約束とか言ってたけど、アレ? 鈴の料理の腕が上がったら毎日……」
えぇと毎日……。
「そう! それ!」
「そうだ。毎日 甘い杏仁豆腐を奢ってくれるって話だったよね? あとゴマ団子と~、あんまんと~……」
「違う!! 何で杏仁豆腐なのよ!? 中華料理を……! それに奢るんじゃなくて……!! あーもうっ! そのキラキラした目やめなさいよ!!」
え? 奢るんじゃない……?
僕は少しキレた。別に普通の会話の嘘なら許すよ? でも甘いものをあげると言っていたのに嘘つかれたらもうプチッですよ!!
「嘘付き! 僕は辛いの駄目だから甘いの奢ってくれるって言ってたじゃん!!」
「だから人の話を聞きなさいよ!! もういい!クラス対抗戦で勝負よっ!! 私が勝ったら何でも言う事を一つ聞いてもらうからね!!」
「あぁ良いよ! じゃあ僕が勝ったらご飯の時のデザートを1週間分貰うからね!! あっ! それから悪魔に魂を売って身長を伸ばす方法もね!!」
「知るわけないでしょー!!」
そう言って鈴は部屋を出て行った。
「一夏……」
「ん? 何?」
「私のもデザート食べるか?」
「良いの!? きゃっほ~ぃ♪」
んぅ? 何だか箒の顔がニヤけてない?
デザートを差し出してニヤけるって……やっぱり怪しい。
ん? ……あれ!? 僕さっき鈴に何て言った!?
感想は随時受付中です。
というわけで勘違いが加速したお話でした。
少ししたら解消されます。しばしお待ちください。