この前の日曜日、千冬お姉ちゃんが休日を返上してクラス対抗戦に向けて指導してくれました。本気で病院とか連れて行かれそうになったけど……。
何故って? そりゃあ……ISと話してるかららしい。でもさ、本当に聞こえるし会話も出来るんだから異常じゃないよね?
『マスター。そこで急停止をかけて腰を捻るイメージです』
「分かった!」
ギュンッ!
反動制御・弾道予測・距離の取り方・1-0停止・アブソリュートターン・弾丸の特性・大気の状態・相手武装による相互影響を含めた思考戦闘……他にもあるらしいけど、順番に白式と潰して行って、今【アブソリュートターン】ってモノが出来たところです。
あ、降りて来いって指示出してるね。
「話が出来ると言うのは本当らしいな? こんなに上達が早いとは……白式は弾丸特性や思考戦闘のサポートも出来るのか?」
『出来ますよ』
「えっと、出来るらしいよ?」
「そうか……では、オルコット」
「はい!」
……いつからいたの? もしかして常に虐める機会を窺ってる?
「お前のブルー・ティアーズの武装。同じ名前でややこしいが、【ブルー・ティアーズ】を貸してやれ。認証登録をかけてやれば使用できるはずだ」
「分かりましたわ。これもクラス代表者の一夏さんの為。一肌脱ぎますわ。……あの、一夏さん。本当に脱いだらどうします?」
「……着せる?」
『放置するのが得策かと……』
やっぱりセシリアさんはセクハラの冤罪という方向性で虐めを計画してるみたいだ。それさえ分かれば何とかなる気がする。他の人たちは分からないけど、とりあえず虐め対策は一歩前進だ。
それはさておき、僕の白式に、武装【ブルー・ティアーズ】が追加登録されました。でも僕だけだと使うのは無理で、使うときは白式が全てやってくれるそうです。
最初はブレード武器の雪片弐型がスロットを全部使用してしまっているから後付け装備が出来ないって話だったんだけど、白式がそれを何とかしたらしいです。お姉ちゃん達も驚いていたのですが、白式が言うには『僕と白式だから出来る』らしいです。
その後、お姉ちゃんが居るおかげなのか虐めっぽい行動をしてこないセシリアさんからも『クロスグリッドターン』という動きを教えてもらったりしつつ猛特訓をしていたのですが、休憩時間になった時にスロットの問題がその場にいた皆にも分かる様に発覚というか、解消したのです。
「何だと……」
ISを解除した僕を見て、正確にはブレードを見てお姉ちゃんが驚きます。僕は驚きというより意味不明という感じでした。ブレードが納刀されなかったのです。量子化もされず、物体として残ったままになりました。普通、ISが量子化されれば武装も消えるのですが、されずに残ってます。ISを量子化せずに降りるような訓練機タイプなら分かるのですが、量子化設定されているはずのブレードだけが残りました。
『今回は分かりやすいように見せますね』
白式はそう言って、また僕を包み込み展開しました。すると、【スロット:射撃武装ブルーティアーズ解除】と表示され、スロットが空き、白式にブレードを持つように言われて持つと、ブレードが量子化されて消えました。
「……どういう事?」
白式が言うにはブレードを抜いて、ブルーティアーズ等を使う時は、ブレードをスロットから解除するとのこと、そうしないとスロットがいっぱいだから他の武装は使えないんだって。で、解除したら『インスタントデータ』として保存されているブルーティアーズを呼び出して起動すると、既に持っているブレードと、ブルーティアーズの両方が使えるようになる。けど、スロット解除したままのブレードは再登録しないと登録されてないから残ったままになる。
それを白式に聞き直しながらそのまま伝えるとお姉ちゃんが質問してきた。
「それだと解除した後のブレードを持ってもすぐに量子化されないはずだ。量子化の登録設定は非常に時間が掛かる。事前に設定しておかなければ……」
『ブレードはブレードのインスタントデータを準備してあります。それを読みだせば―――』
「―――すぐに量子化できるらしいです」
「インスタントデータと言うのは情報量は多くないのか」
更にお姉ちゃんが聞いてきますが、それも問題ないとのことです。ただ、問題点をあげるとしたら、読み込みに数秒から数分間の時間が掛かるらしくお勧め出来ないとのこと。
最初から展開した状態で出撃する事も可能らしいけど、武装が多くなって色々な事に対応できなくなってしまうらしい。
難しい話だ。お姉ちゃんは考えながら納得しているような感じだ。僕にはさっぱりだよ。
そして、明日は遂にクラス対抗戦が始まるのです。
『と言う訳で始まりました学年別クラス対抗戦!! 学年TOPをその手に掴み取るのはどのクラスなのか!? では第一試合は噂の男子生徒、織斑君が腹痛・頭痛・優しさ半分の薬も効かないと言う事で残念ながら辞退してしまったので第2試合から……!』
スパーンッ
『勝手に放送部の仕事を盗るな。嘘をつくな。着替えて行って来い』
駄目でした。勇気を出して徹夜で作った文面を繰り返し読んで失敗しないようにがんばったんだけどな……。どこがいけなかったんでしょうか? はー、もう緊張して顔真っ赤ですよ。
「何やってたのよ……逃げる気だったの? 今謝るなら少し痛めつけるレベルを下げてあげるけど?」
「何を謝るのか分からないよ。こう言う場所に慣れてないの! 恥ずかしくないの? みんなに見られて」
『もうマスターったら恥ずかしがり屋さんなんですから♪』
それにしても、初戦から鈴と当たるなんてな……。
プァァァァアアアンッ!!
【試合開始!】
「行くよ白式!」
『了解ですマスター!』
「ISに声掛けるって練習中に頭でも打ったの?」
鈴は大きい青龍刀を連結させて、ブンブン回して接近してくる。
『マスター。いつも通りにブレードで行きましょう。雪片弐型では消費してしまうかもしれません。ブレードで感覚を掴んで、一気に行きましょう』
「分かった!」
「ただのブレード? そんなんじゃ折れちゃうわよ?」
ガキィィンッ!
「重っ! 確かに折れるかも」
『大丈夫ですよ。折れた方が良い事ありますし』
「どう言う事?」
『ずっとシステムを弄ってました。そろそろだと思うんですけどね……』
何が?
「よそ見してるなんて余裕そう……ね!」
ガキンッ!
「危なっ! 当たったら痛そうだね……」
『とりあえず受けに回りましょう。ブレードで防御する事を心がけて下さい』
「避ければいいんじゃないの?」
『避けてばかりでは接近戦では勝ち残れません。受けて、崩す。これが相手の隙も生みます』
あー剣道でもそれが基本だった気がする。
「さっきからブツブツ言って! 体調悪いなら言いなさいよね!」
『マスター来ます!』
「何が? っとわぁ!? 何今の!?」
「良く避けたわね? まぁ今のは威嚇だけどね……」
『衝撃砲、空間自体に圧力をかけ砲身を作り、衝撃を砲弾として打ち出すモノです。砲弾だけではなく、砲身すら目に見えないのが特徴で、アレは砲身の稼動限界角度はないですね』
「……どうしろと?」
『乱数回避と、高速機動で撹乱しつつ、イグニッションブーストで距離を潰すのが最良かと思いますね』
「了解~。鈴! 当たらなければどうという事は無いよ!」
「言うじゃない。当たって泣いても知らないんだから!」
「おぉっと! セシリアさん直伝!『クロスグリットターン!』」
Side 管制室
「何をやってますの!? 私が教えたクロスグリットターンで……! あっ使って頂けましたわ……一夏さんたら……」
「何をやっている一夏! 練習した事が出来てないじゃないか! 本当に逃げることばかり上手くなって……!!」
応援に熱を入れている箒とセシリアをよそに、千冬はある違和感を覚えていた。
「またか……」
「どうかされましたか? 織斑君、上手くブレードを使って捌けてるみたいですけど」
「オルコットの武装を使っていない。それに何度か打ち込む隙もあったが、雪片弐型に切り替えない……」
「あ、確かにそうですね。あ、でもほら、本人は結構パニック中かもしれませんし」
「だとしたら、鼻歌を歌っている場合か?」
「あ……」
そう、いつの間にか一夏はまた鼻歌を歌っていた。
余裕があると言う事だ。何度も何度もブレードで受ける白式。セシリアの武装も使わない。まるで遊んでいるかのように……。
そして、衝撃砲すらもブレードで受け始める。狙ってだ。
見えない砲弾をどうやって受けているのか? それは相手の狙いも理解しているから出来ることだ。
「弾道予測も出来ているか。ふっ、良く出来た弟だな……」
『あー!! 割れた!!』
突然、モニターから織斑一夏の悲鳴が上がる。
そこにはブレードが縦に割れた様子が映っている。
「何だと!?」
「近接戦闘用のブレードが……真っ二つに?」
「一夏!」
「一夏さん!?」
Side out
真っ二つに割れちゃったよ……。綺麗に縦に。何故に?
1本の包丁が2本になった様な感じだ。薄くなって。
「あははは~! 降参する? いいわよ? そんなんじゃ次は横に折って4等分にしてあげるんだから!」
『マスター。お待たせしました。
「え?」
ピピッ
【雪片弐型・Type2】
「うわっ何?……二刀流!?」
『先日からずーっと細工をしていたんですけどね。上手く行って良かったですよ』
「じゃあコレ、割れたんじゃなくて……」
『割った。と言う方が正しいですね。ほぼ性能は変わらずに雪片弐型が2本になったとお考えください。さぁ行きましょう『インスタントデータ』ロード』
「また独り言? どうするの? 降参? 武装無しでタックルして来る?」
バシュッ!
僕は白式に言われるがままにブルー・ティアーズを射出した。
「射撃型武装……まだあったのね」
『射撃は任せて下さい』
「分かった。絶対に勝ってデザート1週間分貰うよ!」
レーザーブレードにモードを切り替えて、僕は鈴に向かって飛ぶ。
「ブレードも!? 二刀流だったの!?」
鈴は距離を取って、見えない砲弾を撃って来る。
でも当たらない。白式がバックアップしてくれてるからだ。
青いビットが鈴の死角から連続放射する。
「これなら! 千冬お姉ちゃん直伝……イグニッションブースト!」
「くっ、距離が……!?」
そして、斬ろうとする直前だった。
ドォォォォォオオオンッ!!!
『試合中止! 織斑! 凰! 直ちに退避しろ!!』
え? え? なに?
黒煙を上げるフィールド。アリーナにはアラートが鳴り響き、観覧席はシールドで塞がれていく。
『マスター! 緊急事態です! 所属不明のISにロックされてます!』
「えー……。聞いてないよ?」
「一夏! 早くピットに戻りなさい! 私が時間稼ぐから!! 早……!!」
鈴が言い終わる前にビームが鈴に向かって飛んでいく。
「危ない!!」
「……ちょ、ちょっと一夏!? 放しなさいよ! バカァッ!」
『織斑君! 凰さん! 早くアリーナから撤退して下さい!! あとは先生達に任せて……!』
「逃げたいのは山々何ですけど、まだ避難しきれてない生徒があんなにいるじゃないですか。何とかしますよ」
『何とかって……』
『本人がやると言っているんだ。コーヒーでも飲んで落ち着け山田君』
『……織斑先生。それ砂糖じゃなくて塩ですけど』
何やってるのお姉ちゃん……。
『マスター。アレは無人機です。人が操縦してません』
「え? ……鈴~。あれって無人のISらしいけど、そんな事ってあるの?」
「無人機!? ISは人が乗らないと動かないわよ!?」
うーん。そう言われても白式がそう言ってるしな……。
無人機らしきISの高出力のビームを回避しながら雪片弐型を双剣で構える。
「どっちにしてもやるしかないよね?」
『そうですね』
「か、勝手に動かないでよ! 私も……ぁ」
鈴がロックオンされた。高出力のビームが鈴に放たれる。
駄目だ。鈴は回避できない。僕は間に合う。……それなら。
『マスター!? くっ! エネルギー転換!!【
鈴を守るために敵に背を向けた。
そう、僕はあの高出力ビームに撃ち抜かれるだろう。
目の前の鈴が何かを叫んでいる様な気がする。
エネルギーが回復して行く……いや、回復じゃないのか攻撃への出力がメーターを振り切る勢いで一気に上がる。
「おわっ! 光ってる!?」
『間に合ってよかったですよ。零落白夜ですマスター。私のワンオフ・アビリティです』
「れいらくびゃくや? ワンオフ?」
白式は説明を続ける。
零落白夜。対象のエネルギー全てを消滅させる白式の
相手が無人機だからこそのアビリティとも言えるこれは、腕を容易く斬り飛ばす事も出来るらしい。そりゃあ人には使えないや。
とりあえず、全力全壊の攻撃が出来るようだ。
「一夏! 一夏!!」
「んぅ? あぁ大丈夫大丈夫~♪ じゃあ……行くよ!」
僕は千冬お姉ちゃんを鈴を箒を……ここにいるみんなを守る!
敵に高速接近して、右の腕を振り下ろす。
敵の左腕が吹っ飛ぶ。
敵の右腕のカウンターが来る。
僕は左の腕を振り上げる。
左腕も飛ばす。
終わったね……。
『お見事ですマスター』
「コレ凄いね。零落白夜。豆腐みたいに斬れる斬れる♪」
『相手のバリア等は絶対守護域すらも無効化されますからね。さっき言いましたが今回は無人機相手でしたから直接斬り落とせたわけです。人に使うには問題がありますからね』
「へ~。使い過ぎは自滅するみたいだけど凄いね本当に」
『織斑 良くやった。後は教員が対処する。ピットに戻って休め』
「は~い。あっ、鈴! デザート1週間分だからね!」
「分かったわよ。私の負けよ……強くなってるじゃない……」
「何か言った~? ほら行こうよ~」
「あ……うん!」
Side 研究室
「やはり無人機ですね。登録されてないコアでした」
「……そうか」
アリーナに突如現れた謎の無人機。
それは世界に467機しかないはずのコアとは別モノのコアが使用されていた。
それが何を意味するのか?
そして、誰が送り込んだモノなのか?
事件なのか事故なのか?
それは一切不明だ。
とりあえずは、ISの実験中の暴走として処理し、
騒ぎを起こさないようにすることとなった。
「でも、織斑君は凄かったですね。本当にこの短い期間で射撃に必要な練習をしただけなんですか?」
「あぁ……ISの声が聞こえるらしい」
「は? ISの声……ですか?」
「昨日それとなく検査はしたが異常は無さそうだった。だとしたら……声は本当に聞こえてるのだろうな。私達が知らない知識も持っているようだ」
ISは操縦者との操縦時間によって特性を掴んでいく。
もし、ISと話が出来るなら操縦時間では無く会話した時間で相互理解を深めて行けるパートナーと言えるだろう。
「で、でも……流石にISと話すだなんて……」
「本人がそう言っているんだ。アレは嘘はつかないからな……」
「あ、もしかして今デレました?」
「山田君。塩のコーヒーを味わうと良い……さぁ」
「ひぃぃぃっ! ゴメンナサイゴメンナサイ!! うぶっごふぁっ!!」
Side out
感想は随時受付中です。
誤字脱字の報告でもありがたいです。
☆オリジナル設定:スロットについて☆
凄い武器だからスロット全て使っている。というのは分かる。
ならば、最初から何らかの方法で2つ目とか持てないか考えた結果、
インスタント武装としての呼び出しが出来ないかって感じのモノです。
他の人の武装が使えないわけじゃないなら、可能かと思い、こうしました。
パソコンで言うとパソコンにデータがいっぱいだったとして、ネット(クラウド)上にデータが預けてあって、ダウンロードして使う。ただ、パソコンはデータいっぱいなのでそれを削除してからのダウンロード。
って考えです。駄目かな(汗
あ、虐めに関しては次話で解除される予定ですw