気分は少し落ち着いて放課後。
シャルルは僕と自主訓練に付き合ってくれます。
男友達って最高だよね!
「一夏。ちょっと相手してくれる? 白式と戦ってみたいんだ」
「良いよ~。あ、カッコいい~。キュリオスみたい」
『第2世代、ラファール・リヴァイヴのカスタム機ですね』
そう言えば山田先生が使ってたのは普通のラファール・リヴァイヴだった。あれはあれでデュナメスみたいだったね。
さてさて、たまには自分の力だけで戦ってみようと思い、白式には通常機動のみでAI的な役割はカットしてもらった。結果は負けたけど……。シャルルの射撃が上手いのなんのって……。白式がいかに大切かが理解できたよ。
いつもなら回避出来たと思うんだけど、
「―――強いね~。でも一夏が苦戦したのは単純に射撃武器の特性を把握してないからだよ」
「あ~白式に頼みきりだからな~」
『ふはははは、私の力を以てすればこの様な事など造作もないことよ』
「何そのキャラ? 前回はマジかるビャッキーだったけど……」
『いえ、自分の在り方を模索中でして』
ISも大変らしいです。
「またISと話してるの? この前の戦闘記録見せてもらったけど、一夏って射撃特性を理解してるだろうから射撃回避も上手いって思ってたんだけど、射撃特性の理解は白式のおかげなんだね。じゃあ少し練習してみようか。一夏自身が射撃を理解するともっと良くなると思うよ」
そう言ってシャルルは認証解除した自分のライフルを渡してきた。そして、離れた地点に的が出現した。
「ライフルは初めてだ……う~んっと…構えって…これで良いの?」
「えっと、脇をしめて…左腕はこっち…分かる?」
後ろから寄り添うようにシャルルが教えてくれます。
あれ? 良い匂いがする……。何だろう? ん~……あぁさっきのお菓子かな……いやでも違う様な……?
【Side 箒・鈴・セシリア】
「ねぇ、あの二人……ちょっと仲良過ぎるのと違う?」
「そうですわね……噂によるとBLと言う世界もあるそうですし……」
「そ、それは駄目だ! 不健全だ! やはり部屋も戻して貰った方が良い!!」
「どっちが不健全なのよ!」
「そうですわ! 抜け駆けは禁止と決めたではないですか!」
「う、うるさい! 私は一夏の事を思ってだな……!」
そうこう言っている内に射撃が始まる。
この位置からだと、どこに命中しているか定かではないが、
とりあえず言えることは。
「くっつき過ぎだ!」
「羨ましいわね!」
「射撃なら私が教えて差し上げますのに!
男同士で訓練しているだけの筈なのだが、
その光景は『羨ましい』という言葉が適していた。
【Side out】
「ねぇ、ちょっとアレ!」
「嘘! ドイツの第3世代じゃない!」
「まだ本国での
「確か……転校初日で織斑きゅんを叩いたとか……」
「嘘、信じられない……いっきゅんがキズモノに?」
「躾かな? 飼い主になるとか……」
「許せない! いっちゃんは私のなのに!」
「も、妄想酷いわねアンタ……」
さわさわと聞こえてくるざわめき。
そこには黒いISを身に纏ったラウラ・ボーデヴィッヒさんがいた。
「い、一夏!? 僕の後ろに隠れないでよ!
「(ガクガクブルブル……)いきなり叩いてくる人なんて怖いよ……」
睨んでるよ。怖いよ。
シャルルは僕の前からどいてしまう。なんでさぁ。
「織斑一夏」
「ぅぅぅ……な、何ですか?」
「貴様も専用機持ちだそうだな? ならば話は早い。私と戦え!」
「嫌です! ゴメンナサイ! スーパーお菓子タイムなので帰ります!」
「……その気が無いならば」
なんか大型カノン砲の口が僕に向いている気がする。
キュゴンッ!!
撃った。撃たれた。
あ、死んだ……もっと……ううん、もう少しでいいから、エリーゼとルマンドとマリービスケット食べたかったな……。あ、あとチョコバナナパフェとあんみつとブラックサンダーと飲み物はバナナ・オレとイチゴ・オレと……。
ガンッ!!
「一夏! 大丈夫? って何幸せそうな顔してるの!?」
「んぇ? はっ! い、いきなり撃って来るなんて酷いじゃないか!!」
気付いたらシャルルが盾で防いでくれてました。また僕の前に出てくれるところを見ると本当に王子様。
『そこの生徒!! 何をやっている!!』
そして、先生が来て事態は収束しました。
でも……ラウラさん僕達に全ての説明を押しつけて逃げました。酷いよ……。
「じゃあ僕は先に部屋に戻ってるね」
「分かった~、僕はシャワー浴びてから戻るよ」
シャルルは箒と同じ考え方なのか、自分の部屋じゃないとお風呂に入らないらしい。そして、シャルルと分かれてシャワーを浴びて、僕は夕暮れの道を一人帰ることになった。そこで僕は重要な事に気付いた……。一人になったところを狙うのは犯罪者(?)の常套手段じゃないか!?
「ラウラさんラウラさん、お怒りでしたらお静まり下さい。お怒りでなくてもお見逃しください。お菓子が欲しいのでしたら……くっ……このチュッパチャップスだけなら差し上げます」
『コックリさんみたいですね。それに貢物が……カバンの中には他にもあるじゃないですか』
よく知ってるね。でもあげないよ。
「答えて下さい教官! 何故こんなところで!!」
うわぁっ!? 出たーーー!! って……教官?
あ、あれは……お姉ちゃんとラウラさん。
「何度も言わせるな。私には私の役目がある。それだけだ」
「こんな極東の地で何の役目があると言うのですか! お願いです教官。我がドイツで再びご指導を! ここでは貴方の能力は半分も活かされません!!」
「ほう?」
あ、あの雰囲気のお姉ちゃんは不味い……結構キテる。
怒り爆発しちゃうよ……。怖いもの知らずだなラウラさん。本当に怖い。
「だいたいこの学園の生徒など教官が教えるに足る人間に値しません。危機感に疎く、ISをファッションか何かと勘違いしている! その様な者達に教官が時間を割かれるなど……!!」
「そこまでにしておけよ小娘。少し見ない間に偉くなったな? 15歳でもう選ばれた人間気取りとは、恐れいる」
「わ、私は……!!」
「寮に戻れ。私は忙しい」
ラウラさんは悲しそうに去って行った。
……あぁ怖いな怖いなぁ……。でも、ラウラさんが僕を叩いた理由。少しだけ分かった気がする。寂しさや悲しさ悔しさがあるんだろう。
さて、それは置いといて帰ってお菓子を……。
がしっ
「こんなところで盗み聞きか? 異常性癖は感心しないぞ?」
「あ、いえまさか……お団子を落としてしまいまして」
「落とした団子を食べるのか?」
「ぅ~ん……大丈夫そうなら食べます」
ぺちんっ
さすりさすり。ごめんなさい。
お姉ちゃんはそれで行ってしまいそうだったので、勢い余って聞いてみました。
「あ、待って……さっきのラウラさんが言ってたこと……お姉ちゃんの弟とは認めないって……」
「妹と言っていたが?」
「そこは流して! その……僕の所為で2度目の優勝を逃した事を……」
「終わったことだ。お前が気に病む必要は無い。ではな……あ、いや、多少は気にすべきなのだろうが……まぁいい。済んだ事だ」
―――第2回モンドグロッソ。ISの世界大会。あの日、僕は何者かに連れ去られました。理由も目的も分からなかったけど、僕は拘束されて閉じ込められました。
そこに助けに来たのが千冬お姉ちゃんでした。決勝戦を放り出して助けに……。
当然、決勝戦はお姉ちゃんの不戦敗。誰もが2連覇を確信していただけに決勝戦の棄権は大きな騒ぎを呼びました。
僕の監禁場所に関する情報を提供してくれたドイツ軍に借りを返す為、1年とちょっとの間、ドイツ軍IS部隊の教官をやっていたのです。多分そこでラウラさんと会ったんだろう。
全部、全部僕が悪いんだ。
僕が道に続いて行くように用意されていたお皿の上に乗るお菓子を拾っ……不甲斐なさの所為。情けない弟ですよね。いつまでも千冬お姉ちゃんに守られている訳にも行きません。
お姉ちゃんが『多少は気にすべきなのだろう』というのは正にそれだ。お姉ちゃんに心配されないぐらいに強くなるんだ。
ガチャ
「ただいま……シャルル~? 居ないのかな? あ、まだお風呂か……」
結構 長風呂なんだよね~。
あ、ボディーソープ無くなりかけてたんだっけ。
僕は棚から予備を取り出して、お風呂場に向かった。
ガラァ……
「ボディソープ切れかけてるでしょ? 替えの……」
「ぅぁっ……ぁぁ……」
そこにはシャルルがいて……当然お風呂だから裸で……でも……男とは違って……何て言うか、胸があって……でも男で転入して来てて……男だから箒が別の部屋で、シャルルと同じ部屋になって……あれ?
「えっと……これボディソープ……」
「あ、うん……ありがとう……」
「……き」
「……き?」
「きゃぁぁぁぁぁぁーーーっ!!」
「……。って何で
部屋を飛び出して会う人会う人に「男が女で部屋が同じで」と分かりやすく説明をするんだけど、誰もかれもが「織斑きゅんってやっぱり女の子だったの!?」とか「フタナリ!?」とか行って鼻血出す人もいて話にならない。フタナリってなにさ? 日本語で教えてよ!!
少し走ったらだんだん冷静になってきて、僕は部屋に戻った。
そこにはシャルルが寝間着にしてるジャージ姿でベッドに座っていた。
「……シャルル……男が女でフタナリで女の子で同じ部屋ってどういう意味?」
「し、知らないよ!」
「ぅ~……」
ダッ!
と、居た堪れなくなり僕はまた部屋から撤退しようとするけど、
ガシッ
と、捕まった。
「落ち着いて聞いて一夏」
「……あ、当たってるシャルル……」
そう、後ろから抱き止められているのです。ですので胸が……。
「あっ……一夏のえっち……」
「……ぅぅぅ……うわぁぁぁぁ~んっ! 男友達だと思ったのに~!!」
僕は男だと思っていたし、友達だと思っていたし、女子でも友達が増えたと思っていた。それなのに怖いラウラさんが現れて、男友達は実は女子で、えっちって言われて、頭の中がぐちゃぐちゃになって もう何がなんだか分からなくなり泣いた。
「な、泣かないで一夏。ね? あ~……あ、ほら! マーブルチョコだよ~?」
「うわぁぁぁ~んっ! 美味しい~!! うわぁぁぁ~んっ!」
「あぁ駄目だ。食べながらも泣き止まない……」
「うぁぁ~~んっ! ……あっ! 実はお湯で男、水で女に……!」
「違うよ!」
「うわぁぁぁ~んっ!!」
「あぁ、落ち着いて一夏。ね? ワケを話すから。ね?」
シャルルの話をまとめるとこう言う事らしいです。
シャルル・デュノアと言う名前で男装し、他にも存在した男性操縦者という触れ込みで、IS学園に転入してきた。シャルルは実子ではあるけれど、社長である父親の愛人の娘で、母親の死後に引き取られたデュノア家に居場所はなかったらしい。
そして、自分の意志と関係なくIS開発のための道具として扱われてきた。IS学園へ転入したのも実家であるデュノア社がIS開発の遅れによる経営危機に陥り、会社のアピールのために世間の注目を集めさせて、僕に接近して 僕のISである『白式』のデータを盗めという社長命令によるものでだった。
男同士ということで僕と部屋も同室になって、訓練や私生活を通して友情を深めていたけど、つい先ほど女性であることが僕にバレてしまった。
「―――はぁ、本当の事 話したら楽になったよ。聞いてくれてありがとう。それと今まで嘘吐いててごめん」
「……それで良いの? 親がいなければ今のシャルルはいない。そうかも知れないけどさ、言いなりだけだなんて良いワケないよ!」
「一夏……」
「僕も千冬お姉ちゃんも両親に捨てられたから……」
「っ!」
「ううん! 僕の事は良い。今更会いたいとも思わない。でも、シャルルはこの後どうするの?」
「どうって……女だって事がバレたから、きっと本国に呼び戻されるだろうね。後の事は分からない。良くて牢屋行きかな」
「だったらここにいなよ! 僕が黙ってれば誰にもバレない!」
『ここでビャッキーの一口アドバイス~♪ このIS学園の生徒は国家・組織・団体に帰属しない。生徒手帳にも載ってますよ~。ではまた来週~』
来週まで出て来ないのだろうか? って今はそれよりも。
「生徒手帳にも載ってる。特記事項にも書かれてる。会社やお父さんにバレたとしても手出しできない」
「特記事項なんて よく覚えてたね……一夏。庇ってくれてありがとう」
コンコンコンッ
「一夏さん。まだ夕食を取られていないようですけどお加減でも悪いのですか? 一夏さん入りますよ」
ガチャ。
シャルルをベッドに押し込み、僕は突然の来訪者セシリアに連れ去られた。
ご飯持って帰って来るからね~……。
「と言う訳でご飯持ってきたよ」
「あ、ありがとう……ぅぇっ!?」
「どうしたの?」
「いやぁ! 何でもない何でもない!」
と言いつつ、シャルルはお箸を手の平に掴んで食べられずにいる。
あ、和食でお箸が使い辛いのか……。デザート貰った事は言わないでおこう。
「ご、ごめん。フォーク貰って来るよ」
「え!? い、良いよそんな!」
「むっ! シャルルは他人にもうちょっと甘えるって言うか、頼ることを覚えた方がいいよ? そんなに遠慮ばかりしてたら損するって。最初は僕に頼ることから始めてみたら?」
「ん……じゃあ一夏が食べさせて?」
「え?」
……何で?
「あ、甘えても良いって言うから……」
『男に二言は?』
「お、男に二言は無い! だって僕は男の子! じゃ、じゃあ…はい、あーん」
「あーん……」
「お、美味しい?」
「うん、美味しい♪」
「そ、そっか。良かった」
「その……次はご飯が良いな」
一瞬で甘え上手になるシャルルに僕は箸で魚やご飯を食べさせて行きます。
うん。男の子じゃないのは残念だったけど……大事な友達だもんね。
「あれ一夏」
「ん? なに? お魚?」
「今日の夕食はデザート無いの?」
「……シャルルさん」
「何?」
「バレなきゃ犯罪じゃないんですよぉ」
「僕にばれてるよ!」
証拠隠滅を図り、僕は今日のデザートだったゼリーのカップは食堂に捨ててきた事を伝えると、「じゃあ明日のデザート貰うね♪」だってさ! 全てを自白したのに酷くない!? これじゃあ明日の僕のデザートはシャルルに行って、箒と鈴とセシリアさんから貰える3個だけになっちゃうじゃないか!!
【Side ラウラ】
夜のアリーナ。
夜風に神経を研ぎ澄ませながら様々な思考を巡らす。
「教官。あなたの完全無非な強さこそ私の目標であり、存在理由」
私は眼帯を取り、ISとの適合性向上のために行われたヴォーダン・オージェの不適合により左目が金色に変色した目を夜風に曝す。
「織斑一夏。教官に汚点を与えた張本人。排除する。どのような手段を使ってでも!」
「こらー!! 夜中にそんなところで何をしている! 何年何組だー!! あっ! こら逃げるなー!!」
私は寮に急いで戻る事にした。
決して見回りの教員に怒られたからではない。
逃げる訳ではない。
急いだのはアレだ。適度な運動だ。
それもこれも織斑一夏の所為だ……。許せん!
【Side out】
感想は随時受付中です。
誤字脱字報告も頂ければ嬉しい限りです。
また、評価頂けた方、本当にありがとうございます。
第2回のモンドグロッソ。千冬は優勝を目前に会場から姿を消した。その原因ともなってしまった一夏は……!!?
『バレなきゃ犯罪じゃないんですよぉ』って言葉があるらしい。完全に使い方を間違えた文章ですねw
☆ if ☆ ※ifであって本編には欠片も影響しません。
女子1「一夏きゅんシャルル君のデザート食べちゃったらしいよぉ」
女子2「知ってるよ!実は…」
女子3「あ、まさか一夏きゅんの使ったスプーンじゃ!? アンタまさか舐めるつもりじゃないでしょうね~」
女子2「えへへ~」
なんてことは無いのでご安心ください。
セキュリティシステム【千冬 the お姉ちゃん】はそんな気も起きないほどに万全です。