拝啓愛しのエリゼ。お兄ちゃんは今トールズ士官学園の入学式に出るためにトールズの駅を出ました。不思議です。満開に咲いているであるでしょうライノの花が視界に入りません。今私の視界はある存在を捉えて離さないのです。
金色の透き通るようにきめ細やかな髪に短めの丈のスカート。背は俺より一回り小さくて、背中まで伸びた髪の毛はツインテールで纏められている。
そんな抱き締めたくなるような女の子………………………………………………………………………………の前にいるゴリラに。
prologue ゴリラ
……ゴリラだ……
何かの間違いだと思いたかったけど、完璧にゴリラだ。だって本当にゴリラなんだもん。
もっと物語みたいに金色の逆立った髪してたり、異様に横に長い肩パット着いた戦闘服着てればまだ否定できたかもしれないけど、完璧にゴリラなんだもん。
「ウホ」
ほらだって今言ったもん。ウホって言ったもん。正面にいる女の子が目の前の現実を受け入れられないといった顔をしている。きっと俺もそんな顔をしている。顔を影が濃いもん。凄い毛がふさふさしてるし真っ黒なんだもん。まごう事なきゴリラなんだもん。学名ゴリラなんだもん。
あっ?女の子がチャックがないな調べ始めた。どうやら現実に帰ってきたらしい。しかし、無駄だ。俺は中に人が入っているなら気配で分かる。目の前の存在の気配は完全にゴリラである。女の子は結局チャックが無くてどうしたらいいか分からない。初めてのおつかいで財布を落とした子供のような顔をしている。そして俺の存在に気付いたのか。縋るような目線を向けてきた。
(助けて!!私にこの状況は荷が重すぎる!)
(助けて欲しいのは俺も同じだ…)
(何でゴリラなの?まだ可愛いワンちゃんとか猫なら幸せな学校生活の始まりを予感出来るのに、何でゴリラなの?何を予感させる気なの?)
(分からない。ただ分かることは1つ。ロクなことは起きないということだ)
(男子でしょ!ゴリラの一種でしょ!なんとかコンタクト取ってよ!)
(ゴリラの一種ってなんだよ!男=ゴリラは体育教師だけに通じる方程式だから!男子みんなゴリラじゃないから!)
(もうどうでもいいからなんとかしてよ!)
やれと言われてどうしろと?この目の前でウホウホ言ってるゴリラとコンタクトを取れと?
けど、やるしかない。このままじゃあ動くことすら出来ない。
「え…っと…その…、おはよう?」
「……ウホ」
返事が帰ってきた!!何を言ってるか分かんないけど返事が帰ってきた。これはもしかしたらいけるかもしれない!
女の子もほっとした顔をしている。見たことか!やっぱり頑張れば伝わるんだ!
そして余裕が出来てきたので改めてゴリラを見てみると、何やらショルダーバックを肩に掛けている。もしや飼いゴリラなのだろうか?
ゴソゴソ
そして何やらショルダーバックの中から何かを取り出そうとしている。ゴリラなのだからバナナでも入っているのだろうか?何にせよ飼いゴリラならばこんなに目立つのだからすぐに飼い主が来るだろう。そう考える余裕が出来き
「ウホ」
ショルダーバック→
紅い士官学園の制服!!!
((なっ!なんでだーー!!))
え?ゴリラだよね?ゴリラなんだよね?もしかして最近のゴリラって学校に通うものなの?ゴリラってそんな動物なの?ゴリラ?ゴリラって何?ゴリラって哲学?
(れ…れれ冷静になりなさい…ゴリラなのよ!ゴリラ!きっと飼い主が制服一式忘れたから届けにきたのよ!)
(そ…そうだよな!ゴリラだもんな)
「ウホウホ」
→肩に制服の上着を引っ掛けた
((だからなんでだーー!!))
「ウホ」
→手を差し出してきた
((握手を要求してきたーー!!))
(え?もしかして同じ色の制服だから仲間的な解釈されちゃった?仲間だと思われた?さっきから見て見ぬふりしてみんな足早に学校に走っていく人達みんな制服の色違くてあれ?って思ったけど)
(早く握手をしてあげなさいよ!話進まないでしょ!導入に何文字使う気なのよ!)
(メタネタは止めろおおお!!)
「えっと…よろしく」
「ウホ」
→固い握手をした
「握手もしたし、俺そろそろ遅刻しちゃうからいいかな?君もそうだろ」
「(ナイス!)え…ええ。そろそろ行かないと遅刻しちゃうわね。早く行きましょう」
「だからここでお別れだな。また機会があったら会おう」
「ウホ」
「そうか。じゃあまたな」
スタスタ
「ウホウホ」
スタスタ
「……」
「……」
スタスタ
「ウホ」
スタスタ
「……」
「……」
(着いて来る!!!)
(何で着いて来るの!何で私達の後ろをウホウホ言いながらゴリラが着いて来るの!学校ってゴリラなの!ゴリラって何なの!)
(俺が聞きたいよ!多分制服着てるから生徒なんだよ!ゴリラも生徒なんだよ!ゴリラなんだもん!なんもおかしくない!ゴリラだもん!)
(現実逃避はやめろー!ゴリラが生徒なわけ無いでしょ!どんな学校よ!)
(けど確実に着いて来てるんだ!ゴリラが俺たちの後ろをウホウホ言いながら着いて来てるんだ!もう否定出来ない!それにどうせ正門でなんとかなる!今は身を任せるんだ!)
(そ…それもそうよね!ゴリラだもんね!)
(そうだ!ゴリラなんだから!)
「ウホ」
そして俺たちは正門に到着した。後ろには当然のようにゴリラがいるけど。
そして正門に入った俺たちを出迎えてくれたのは身長の低い可愛らしい女の子と、作業着を着た優しそうな雰囲気の先輩だった。
「ようこそトールズ士官がくぇ……ゑ?」
「ウホ」
(よし!どうにかなりそうだぞ!正直見て見ぬふりされるんじゃないなと心配してたけど大丈夫そうだ)
(そうね!なんせゴリラだもん!ゴリラが学校に入れるわけ…)
「えっと…君は…ゴリラ…君?」
「ウホ」
急いで名簿を確認する2人。何故確認する必要があるんだ。
「え?嘘?なんであるの?」
「知らないけど。正式に手続きされてるし…」
「でもどっからどう見てもゴリラ…」
なんか不穏な会話が聞こえたぞ?何を迷ってるんだ?さっさと保健所に連絡を入れれば解決するだろ!
「「えっと…ゴホン。最後の3人だね。改めてようこそトールズ士官学園へ!!」」
「「おいいいい!!」」
「ウホ」
「なんでですか!ゴリラですよ!なんで頭数に入ってるんですか!ゴリラですよ!!」
「俺気配で分かるんです!あれは正真正銘のゴリラなんです!着ぐるみでもなんでもないんです!」
「2人共」
彼女の声に俺と女の子は口を閉じる。と言うかゴリラのインパクト強すぎて名前聞きそびれてた。
「世の中にはね。理不尽が満ちてるの。これもそれの1つなの。…わかってくれる?」
「「……」」
「トワ…」
「ウホ」
何も言えない…!だって彼女は泣いているんだ!その可愛い丸い瞳から溢れる涙を見たら…っう!
「…もう一度言うよ…ようこそトールズ士官学園へ。理不尽こといっぱい有るだろうけど。頑張ってね」
「「…はい」」
彼女の瞳から涙が溢れた涙が地面に落ちた。そして俺たちの目から涙が止まらなかった。
「ウホ」
この物語はゴリラ8割で構成されています。