遊戯王ARC-V -エンタメデュエリストと紅白の巫女-   作:坂本コウヤ

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どうも皆さん、お久しぶりです! 坂本コウヤです!!

いやぁ、実に一週間ぶりですね!! お待たせしちゃいました!! ようやく更新する事が出来ました。

というか、ついさっき確認してびっくりしたんですけど、ついにお気に入りが100人超えちゃってました!! その上、UAも13833と、多くの方に読んでいただけているというのが分かり、本当に嬉しく思います!! これからもがんばって書いていきますので、何卒よろしくお願いします!!


それではもう、早速第16話行っちゃいましょう!! どうぞ!!


第16話:社長推参! 3本勝負、ついに終幕!!

「遊矢!!」

 

「遊矢!!」

 

「遊矢君!!」

 

「「「遊矢お兄ちゃん(兄ちゃん)!!」」」

 

 

 

「柚子、権現坂!! それにみん、おわっと!?」

 

 

デュエルを終え、俺が観戦ブースに戻ってくると、そこには、皆の笑顔があった。デュエル前までは暗かった様子の柚子も、今ではすっかり、元のアイツの顔に戻っていた。

 

良かった、俺は、皆の期待に、応える事が出来たんだ! そう思っていると、後ろから急に誰かに抱きつかれた。誰かと思って見てみると、そこには笑顔の霊夢がいた。

 

 

「遊矢、よくやったわ!! 全くもう、心配させるんだから。」

 

「霊夢。あぁ!! お前の貸してくれた、スターダスト達のおかげだ!!」

 

「ううん、アンタの力よ、あれは! あの土壇場で、あのカードを引けたあなたのね!」

 

 

そう言って霊夢は、俺に向かってウィンクして見せた。その霊夢の仕草に、俺は何故か心がドキッとした。すると、それが表情に出てたのか、霊夢が不思議そうな顔を向けてきた。

 

 

「どうしたのよ、急に顔赤くして。」

 

「え、いや、な、何でもないよ。」

 

「ホント?」

 

「ホントだって!」

 

 

霊夢が相変わらずこちらを見ながら言って来るので、ついムキになって言い返してしまった。アッと思ったけど、霊夢はたいして気にしたそぶりも見せず、「そう、なら良いけど。」と言って、俺にまた笑いかけてきた。でもすぐに、「アッ、そうそう。」と、いつもの表情に戻ってまた口を開いた。

 

 

「後であのカード達、返しなさいよ。特にスターダストは、私の相棒なんだからね。」

 

「…あぁ、分かってるよ。」

 

 

俺は笑顔で、そう霊夢に返した。『今』って言わないのはたぶん、今回起こった、スターダストが俺のデッキに突然入ってきた事、そして、あのカード達の事を聞くためだと思う。まぁ、当然だよな。急に自分のエースが、他人のデッキに入ったりしたらな。

 

 

霊夢は俺の返事を聞くと、また笑い返してきた。それにしても、さっき制御室にいた霊夢の様子とは、全然違うな。あの時の霊夢は、普段の格好と相まって巫女さんって感じがすごく出てたけど、今は何か、機嫌が良い時の柚子に近い感じがするかな。今日は霊夢の色々な面が見れてる気がするな。これからもこうやって色々と、新しく仲間になったコイツの色々な表情とかを見ていくことになるんだろうな。そう思うと、何だかこれからの毎日が楽しみになってくるな。

 

俺は霊夢の笑顔を見ながら、そんな事を思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

◇≡

 

 

ふぅ、何とか無事に勝てましたか。全くヒヤヒヤしましたよもう。いきなり入って早々に塾が乗っ取られるなんて、最悪ですからね。

 

まぁ、デュエル中にカードが書き変わったり、霊夢さんのカードが遊矢君のデッキに入ったりと色々ありましたが、結果的に勝てたのなら、こういう場合は良しです。普通なら「ジャッジー!!」って言いたいところですけど、

こういう時は「最終的に、勝てばよかろうなのだあぁぁぁ!!」ですから。

 

 

――にしても霊夢さん、アレ素でやってるんですかね。もしそうならかなり性質が悪いですよ。ハァ~、私もあんな風に男の子を落とせたらいいんですけどね。えっ、私には胸があるって? ちょっと、誰ですかそんな事言ったのは?! 変態ですよ、変態!!

 

 

って、誰に突っ込んでるんですか私は。誰もいないのに。ハハハ、おかしなこともあるもので――

 

 

「早苗。」

 

「ひゃい?! な、何ですか、霊夢さん?」

 

「いや何って、つかアンタ、何変な声あげてんのよ。」

 

「へっ、な、ななな何でもないですよ。そう、何でもないんです。」

 

「…何か怪しいけど、今は追及しないでおいてあげる。」

 

 

ふぅ、何とか見逃してもらえたみたいですね。さすがに霊夢さんのさっきのウィンクについて考えてたとか、言えないですよ。言ったら最終的に何をされるのか分かったもんじゃないんですから。

 

と、私が何か色々と考えている間に、LDSの人達も含めて何か皆さんが向き合って集合していました。そして、一番前にいた霊夢さんと塾長さんが1歩前に出て、先に霊夢さんが口を開きました。

 

 

「約束は覚えてるわね。この3本勝負は先に2勝した方が勝者で、私達が勝ったら、今回の遊矢の件については不問にするって。ちゃんと私達が2勝したんだから、守ってもらうわよ。」

 

「バカな…。こんなことが――」

 

「認められないって? だったら、アンタ達の親玉に認めてもらうしかないわね。」

 

『えっ?』

 

 

その時、霊夢さんの一言に、その場にいた皆が同じタイミングで驚き、全員で霊夢さんの方に目を向けました。それは私も同じで、霊夢さんが急に何を言い出すのかと思いました。すると霊夢さんは一度目を閉じ、2、3秒黙った後、観戦ブースの端の事務所の方に通じている方に目を向けて、再び口を開きました。

 

 

「そこにいるんでしょ、赤馬零児。」

 

「…やはり、君にはばれていたか。上手く隠れていたつもりだったのだが。」

 

 

そう言いながら、通路の陰から赤いマフラーと眼鏡をかけた、長身の男の人が出てきました。もしかして、赤馬零児さんですか。確かに声も、霊夢さんのデュエルディスクの通信越しで聞いた声と同じですけど、もっと大人の人かと思っていました。

 

で、その人に目を向けている霊夢さんはというと、「フンッ!」と鼻を鳴らしながら、その人を少し不機嫌そうな顔で見てました。

 

 

「あんなので隠れてたって言われてもね。それにアンタ、人を呼び出しておきながら、私とそこの志島の試合が始まる前から隠れてたんじゃないの? 私も気づいたのはデュエルの途中だったけど、隅っこの方で動かないようにしてるやつがいるっていうのは分かってたのよ。大方そこの理事長が、結果が望み通りに行かなかったり、私達が引き分けになったりした時の奥の手として来てたんでしょうけど、残念ながら結果はこの通りよ。約束をなかった事にしたなんてなったら、アンタのとこの会社にとってもあまり良い事は無いでしょう?」

 

「そこまで見抜かれているとはな。さすが、というべきか。」

 

「アンタの存在に気付いてたら、バカでも無い限りわかるわよ。私の勘なんかに頼らなくてもね。で、約束は守ってくれるの?」

 

「あぁ。約束は約束だ。今回は負けを認めよう。」

 

「零児さん、何を言い出すんです?!」

 

「母様、いくら私と言えど、一度約束してしまわれた事を取り消すようなことはできませんよ。」

 

 

社長であり、息子さんでもある赤馬零児さんに言われては、さすがの理事長さんも黙ってしまいました。すると、今度は志島君が社長さんに謝り始めました。

 

 

「す、すみません社長。僕達が、あんな奴らに負けなければ――」

 

「いや、君達は良くやってくれた。むしろ、イレギュラーな事があったにもかかわらず、よく頑張ったと思う。」

 

「社長…。」

 

 

 

その言葉を聞いた志島君は、少し泣きそうになっていました。最初は結構高飛車な印象を受けましたが、実は意外と根は繊細で素直なのかもしれませんね。

 

社長さんはその後また霊夢さんと向き合い、その目を見据えて話し始めました。

 

 

「さて、君にも面倒をかけてしまったな、博麗霊夢。」

 

「あぁ、良いわよ別に。私は気にしてないし。ただ、遊矢には謝っといてよ。アンタが言い出したんじゃないのは分かってるし、それにアンタが積極的に関わって無いのも何となく想像できるけど、有らぬ因縁つけられて、一番迷惑したのは彼なんだし。」

 

「そうだな。確かに、彼には謝っておくべきかもしれんな。」

 

 

へぇ、あの一物抱えてそうな会社の社長さんなのに、意外と自分達の非は認めて下さる方なんですね。ちょっとイメージと違いますね。それにしても霊夢さん、あの人が積極的に関わってないって、どうして分かったんでしょう? まぁ、いつもの勘なのかもしれませんがね。

 

と、私がこんな事を考えている間に、霊夢さんは遊矢君を呼んで、社長さんの前に連れてきていました。呼ばれた遊矢君はというと、色々な感情が渦巻いているからか、はたまた大企業の社長さんが目の前にいるからか、緊張した面持ちで社長さんと向き合ってました。

 

向き合って、初めに口を開いたのは社長さんでした。

 

 

「榊、遊矢だな。」

 

「…はい。」

 

「私は赤馬零児。『レオ・コーポレーション』の社長をしている者だ。」

 

「アンタが、『レオ・コーポレーション』の社長さん?」

 

「あぁ。…そう緊張しなくていい。まずは、君を沢渡シンゴ襲撃事件の犯人と疑ってしまった事を、ここで詫びておこう。すまなかったな。」

 

 

社長さんはそう言うと、綺麗なお辞儀をして見せた。さすがの遊矢君もこれにはびっくりしてしまったようで、オタオタしていました。反対に霊夢さんは、表情を緩めてましたが。

 

 

「え、えぇ~っと、そ、そんな。顔を上げて下さいよ。俺、そんなに、気にしてないですし、それに――」

 

「いいのよ遊矢。これはコイツなりの礼儀なのよ。そこで当事者のアンタがそんな風になってたらダメでしょ。シャキッとしなさい。」

 

「で、でも――」

 

「でもも何もないわ。世間的に見れば、アンタは濡れ衣を着せられてたんだから、この程度は当然なの。社長だろうと何だろうと関係ないわ。むしろ面子にこだわらず、アンタに頭下げたコイツは立派よ。そこでアンタがオタオタするのは、コイツの誠意に対する冒涜よ。分かった?」

 

 

う~ん、やっぱり霊夢さん時々辛辣ですね。でも確かに、上の人であっても、謝る事は重要だと私も思います。その点、今謝って下さっている社長さんは立派です。やっぱり謝罪というものに、上下の差は関係ないですよね。遊矢君はまだ納得できていないようですが、いずれわかるようになると思いますよ。

 

 

と思って見ていると、社長さんが急に少し笑い始めました。その眼の前にいる二人は、不思議そうな顔をして(霊夢さんは若干怒りがこもってますが)社長さんを見返していました。

 

 

「ちょっと、何がおかしいのよ赤馬。」

 

「いや、失礼。こうして見聞きしていると、まるで姉弟の様だなと思ってな。」

 

「えっ?」

 

「ブーーーーーッ!!」

 

 

社長さんの言葉を聞いて、遊矢君が若干固まってしまってました。ただ、私はその発言にツボってしまい、遊矢君の隣にいる霊夢さんは顔を真っ赤にして社長さんに言い返していました。

 

 

 

「だ、だだだ誰がコイツと、し、ししっ姉弟みたいですって?!! バ、バカじゃないのもう!! からかうのもたいがいにしなさいよね!!」

 

「フフフ、れ、霊夢さんと、遊矢君が、し、姉弟…。クククククク…。」

 

「早苗…、アンタ取りあえず後で必ず表に出なさい。」

 

「す、すいません…。ちょっと、想像しただけで、ツボっちゃって…、あぁダメです! 我慢できない、アハハハハハハハ!!!」

 

「よし、後で死刑確定ね。」

 

 

何か霊夢さんが言ってましたけど、もう私は、さっきツボったシチュエーションの妄想が暴走していて、そこを理解するのに割けるほどの脳回路は残っていませんでした。

 

 

 

 

◇≡

 

 

 

あぁ~んもう、赤馬にはバカにされるわ、早苗にはツボられるわで、全く踏んだり蹴ったりよ。赤馬、後で覚えときなさいよ。

 

そんな私は、先程の動揺からすぐに立ち直り、赤馬に再び向き直って口を開いた。

 

 

「ハァ、取りあえずあそこでネジぶっ飛んじゃってる子はほっといて、これからの話ね。」

 

「あぁ、そう言えば、本来なら今日、君と本社で話す予定だったな。」

 

「えぇ。でもこんな事になっちゃったし、その話は明日にでも――」

 

「おい霊夢、どういう事だよ!! 話って何だ?!」

 

 

私と赤馬が昨日約束していた事について話していると、隣にいた遊矢が私に詰め寄ってきた。そんな遊矢の反応を見て、柚子達も私を心配そうな目で見てきた。権現坂に至っては険しい顔つきでこちらを睨んでいる。まぁ、普通はそういう反応するわよね。相手の会社の社長と話をするなんて言ったら、誰だって詰め寄りたくなるわ。とはいえ、今説明している時間もない。悪いけど、後回しにするしかないわね。

 

 

「心配しないで、遊矢。それに皆も。これは私個人の話だし、塾同士の事や講師云々とは全く関係のない話だから。後でちゃんと説明するから、ね?」

 

「霊夢…。分かった。でもその代わり、後で本当に話してくれよ。」

 

「分かってるわ。」

 

 

私がそう言ってほほ笑むと、皆も取りあえずは表情を緩めてくれた。その皆の顔を見て、取りあえず私も安心した。取りあえずこっちはこれで大丈夫ね。さて、本題に戻さないと。

 

私は赤馬に顔を向け、取りあえずさっきの話に戻った。

 

 

「悪いわね、途中で切っちゃって。」

 

「構わんさ。君も随分、仲間に信頼されているようだな。」

 

「まぁね。で、話を戻すけど、今日しようって言ってた話、明日にしない? さすがにこの空気では、話もしにくいでしょうし。」

 

「…そうだな。では、また明日連絡する。それで良いか?」

 

「問題無しよ。あっそうそう、そこのまだ腹抱えて笑ってるバカも同伴で良い? 出来ればこの子とデュエルもしてやってほしいんだけど。」

 

「? 構わないが。」

 

「決まりね。じゃあそういう事で、よろしくね。」

 

「あぁ。では、私達はこれで失礼する。」

 

 

そう言って赤馬は、理事長達を連れて外に出て行った。それと同時に、部屋の中を包んでいた重い空気も無くなったようで、皆が一斉に緊張が解けた声を上げた。

 

最初に口を開いたのは、この中でも年の低い、タクヤ君達だった。

 

 

「全く、一時はどうなるかと思ったよ。」

 

「ホントだぜ。でも、遊矢兄ちゃんたちが頑張ってくれたおかげで、俺達の遊勝塾は守られたんだよな。」

 

「うん! ホントに良かったぁ。」

 

 

3人の声からは本当に安堵したといった感じがしており、この3本デュエル中も、意外と張り詰めていたのが分かった。まぁ自分の通ってる塾が無くなるかどうかってなったら、普通心配になるわよね。でも、結果的にその心配がなくなったっていうのは、この子達にとって本当にうれしいことだと思うわ。

 

それにつられる様に、柚子達も安堵の息をこぼしていた。

 

 

「本当に、遊勝塾が無くならなくてよかった。」

 

「あぁ。これも、遊矢達のおかげだな。」

 

「そうね。まぁ、私は負けちゃったけど…。」

 

 

柚子がそう言って、さっき私に怒られた後の時みたいにまた落ち込みだした。まぁ、あれは私もちょっと柄にもなく言い過ぎちゃったしね。ここで謝っておくのが言いかな。

 

私は、少々俯き気味になってる柚子の元へいき、そっと肩に手を置いてあげた。柚子は少し肩をビクッとさせ、恐る恐る顔を向けてきた。私は、なるべく彼女を怯えさせない様に、やさしく微笑んで見せた。ただ、その顔が少し怖かったのか、柚子の顔はまだちょっとだけ引きつっていた。

 

 

「れ、霊夢…。」

 

「柚子。」

 

 

私はそうやさしく柚子の名前を呼び、ちょっと目を逸らしながら謝った。

 

 

「その、さっきは悪かったわ。あんなに、怒鳴ったりして。」

 

「霊夢…、違うの。謝るのは、私のほうよ。だって、大事な試合だったのに、いつもの自分のデュエルすら、満足に出来なかったんだから。」

 

「柚子…。」

 

「遊矢も霊夢も、あんなに楽しそうに、自分のデュエルをしてたのに、私だけ、あんな無様なデュエルをしちゃって…。それで負けちゃったなんて、最低だよね…。」

 

 

柚子は、震えた声で、そう口にした。

 

柚子、私があの時怒ってから、こんなに思いつめてたのね。きっと、デュエル中はあの黒遊矢のことで頭がいっぱいだったのに、あそこであれだけ私に怒られて…。そりゃ、こうもなるわよね。そう思うと、少しだけ罪悪感が出てきた。ハァ、やっぱり、慣れない事はするもんじゃないわね。だって、加減がきかないんだもの。

 

柚子はずっと下を向いて俯いていたけど、きっと、涙とか目に溜めてんでしょうね。あぁんもう、こういうのは本来慧音とかの仕事なんだけど、いないやつの事言ってもしょうがないし、泣かせちゃった大半の原因は私だし、ここは私がやるしかないわね。えぇい、ままよ!

 

そう思って私は、柚子の身体をやさしく抱きしめてあげた。一瞬柚子がビクッと動いたのが感じられたけど、今の私はそんな事は気にしていなかった。ただ、急に私がそんな事をやり始めた事に、とうの柚子は驚きの声を上げていた。

 

 

「えっ、ちょっと霊夢?! 急に何を――」

 

「悪かったわね。」

 

「えっ?」

 

「悪かったわねって、言ったの。まさか、そんなに思いつめられるとは、思ってなかったから。」

 

「霊夢…。」

 

「だから、これはお詫び。泣きたいって言うんなら、私が全部受け止めてあげるから。」

 

「べ、別に、泣きたいなんて――」

 

「顔を見せないようにしてるのとか、声が若干震えてるとか、そんなのを見たり聞いたりしたら、嫌でも分かるわよ。そうなってるのはきっと、私のせいだろうし。だから、その責任ぐらいは私が取るから。こんな事ぐらいしか出来ないけど、でも、受け止めてあげる事ぐらいは、私にだって出来るから。だから、吐き出しちゃいなさい。ここで全部、ね?」

 

「……。」

 

 

柚子はそう言われるとしばらく黙り込み、急に私の胸の辺りに顔をうずめてきた。ちょっとびっくりしたけど、その行動の意味は、柚子が言葉にしてくれたおかげですぐに分かった。

 

 

「…しばらく、このままでいさせて。皆に、遊矢に、こんな顔見せられないから。」

 

「…分かったわ。」

 

 

私はそう言って、柚子の頭を抱きかかえる様に、そっと抱擁した。すると、柚子のすすり泣く声が聞こえ始めた。私は、その声がなるべく漏れないように、柚子の顔を袖とかで覆い隠してあげた。

 

 

 

 

 

◇≡

 

 

 

あぁ、笑い転げましたよ、ホントもう。あの社長さん、ユーモアのセンスありますね。

 

とか考えてる間に、何か霊夢さんが柚子さんをあやすような素振りをしてるんですけど、ってエエエエエェェェェェェェェ!!!!!!!!!!!! ちょちょちょちょちょちょちょちょっとちょっとちょっとぉぉ!!!! どどどどうなってるんですかいったい?!?! 何で霊夢さんが柚子さんをあやしてるんですか?! まるで意味がわからんぞ!!

 

ハッ!? もしかして、夢を見てるんでしょうか私は? それかもしくは、遂に妄想の中の世界に入り込んでしまうと言う奇跡でも起こってしまったんでしょうか?! だとしたら、一刻も早く妄想の世界から目を覚まさーー

 

 

「あっ、え~っと、早苗だっけ。やっと落ち着いたか?」

 

「えっ、ゆ、ゆゆ遊矢君?! どうしたんです、いったい?」

 

「いや、どうしたって言われても・・・。俺はただ、さっきまで笑い転げてたのが落ち着いたのかって聞いただけなんだけど。」

 

「へっ? あ、あぁ、そういう事ですか。大丈夫ですよ、私は。いたって普通ですよ。落ち着いてますよ。」

 

 

私は笑顔で遊矢君にそう言って見せた。でもどうやら、遊矢君にはそれが大丈夫な様子とは映らなかったようで、「本当に大丈夫なのか?」と聞かれてしまいました。

 

まぁ私自身、今目の前で起こってる謎現象が現実なのかどうかで、かなり頭が混乱しています。だって『あの』霊夢さんがですよ、霊夢さんが!! これがまだお友達の遊矢君とかだったら分かりますけど、霊夢さんが誰かをあやしている、しかもさっき滅茶苦茶怒鳴った柚子さんを、ですよ?! これがもし現実に起こってる事だとしたら、明日は核戦争にでもなってるんじゃないですかって位のレベルですよ?! これが現実とは到底思えないんですけど――

 

と、視線がさっきから霊夢さんをチラチラ見ているのが分かりやすかったからか、遊矢君が私にまた話しかけてきた。

 

 

「あれな、実は早苗が笑い転げてる間に、柚子がまた泣きそうになっちゃってさ。それで霊夢が、自分の責任だからって言って、急にあぁし出したんだよ。」

 

「……。」

 

 

その説明を聞いて、私は少し思い当たる事がありました。そう言えば、以前の異変の時に魔理沙さんが呪縛から解き放たれ、その時の記憶を覚えていたが故に自殺しそうになってた事があったって。その時に魔理沙さんを止めた霊夢さんが、確かこんな事をしていたって、文さんから聞いたか、写真を見せてもらった覚えが。あれ、本当だったんですね。

 

そう思うと、何となく自然に私はこう呟いていました。

 

 

「…霊夢さんって。」

 

「えっ?」

 

「いつもは無感動で、よっぽどの事がないと、感情を出したり、誰かを思いやったりする事って、ないんですよね。」

 

「……。」

 

「何かをやる時も基本的に自分本位で、他人の事情なんてお構いなし。でも、そんな時の霊夢さんより、こういう誰かを思いやったりしている時の霊夢さんの方が、私的には、霊夢さんらしいなって、思うんですよね。」

 

 

そこまで言って、私は一度口を閉じました。一方遊矢君は、私の独り言を横で静かに聞いて、それから、数秒の沈黙を置いてから、また話し始めました。

 

 

「俺はさ、まだ会って3日しか一緒にいないから、早苗ほど霊夢の事を知ってるわけじゃない。でも、きっとそれが、本当の霊夢らしさなんだと、俺は思うよ。」

 

「遊矢君。」

 

「本当はきっと、霊夢も仲間思いなんだと思う。でも、何か事情があって、その思いを素直に出せないんじゃないかな。例えば、親を失ったショックで、他の誰かを信じて、その信じた人がいなくなるのが怖い、だから素直になれない、とか。もしかしたら、単にアイツが素直じゃないだけかもしれないけど。」

 

「遊矢君…。」

 

 

遊矢君が導き出した一つの解答に、私は少しびっくりしていた。たった3日間しか一緒にいなかったのに、これだけ霊夢さんの事を分かるというのは、ある意味すごいと思います。

 

 

ただ、そう言えば霊夢さん、こっちの街だともう両親を亡くしたって事になってるんですよね。『幻想郷』での本当の霊夢さんを知らない遊矢君だからこそ、言える言葉ですよね。遊矢君も確か、お父さんを亡くされてるんですよね。それでも、こんなにたくさんの仲間に囲まれているというのは、きっと彼が、皆を信じたから、という事があるからかもしれませんね。

 

まぁ、遊矢君の予想を起点に考えるなら、後者の方が正解だと思うんですけどね。だって本当に素直じゃないですもん、霊夢さん。どれくらい素直じゃないかって? それはもう、ツンとデレの比率が『9:1』位のレベルですね。というより『1』の方がほぼ0に近い『1』かもしれません。それぐらい素直じゃないです。

 

後はたぶん、『博麗の巫女』としての立場上、あまり誰かと特別な関係を築こうとしていないだけかもしれません。全ての異変を平等に解決する、そんな立場でい続けるには、誰かと特別な関係を築くなんて事は出来ないですよね。

 

 

でも、これだけの情報不足や改竄がある事を差し引いても、これだけきっちり自分の考えを導き出せるのは、純粋に素晴らしいと思います。

 

 

「にしても。」

 

「? どうしたんです?」

 

 

急にまた口を開いた遊矢君が少し表情を緩めていたので、気になって声をかけてしまいました。

 

 

「いや、何かこう見てると、霊夢って何か、俺達と同い年とは思えないなって思って。どちらかって言うと、お姉さんって感じがするって言うか。」

 

「…そうですね。」

 

 

私は遊矢君の意見に同意しながら、静かにまだ柚子さんをあやしている霊夢さんの背中をずっと微笑みながら見つめていました。

 

 

 

 

 

 

 

◇≡

 

 

舞網市内にある、とある路地裏――

 

そこで、一人の男が、不審な格好をした男とデュエルをしていた。男性の格好は、この世界では有名なLDSの服を着ており、襟の辺りにLDSのバッチもつけていた。外見的な年齢から見ても、おそらくLDSの講師で間違いないだろう。

 

しかし、そんな彼の場には肝心のモンスターがいなくなっており、さらに伏せカードもない、正にがら空きの状態になっていた。その上、今の彼の手札や墓地には、相手の攻撃を止められるカードは1枚も無かった。

 

 

そして、対戦している不審者は、男性に向けて最後の一撃を下そうとしていた。

 

 

「バトルだ!! 行け、『RR ライズ・ファルコン』!! すべての敵を、引き裂け!!『ブレイブクロー・レボリューション』!!」

 

 

彼の場にいる、機械と鳥が融合したようなモンスターが、炎を纏いながら、その爪で男性を引き裂こうとした、その時――

 

 

――カキンッ――

 

 

「ッ、何だ?!」

 

 

突然、攻撃をしようとしていたライズ・ファルコンと男性の間に何かが割り込み、その攻撃を弾き返した。その後、強烈な突風を巻き起こり、不審者は顔を覆い隠した。

 

 

 

そして、突風が止んだ時には、先ほどまで彼とデュエルをしていた男性の姿も、最後に攻撃を妨害したものの姿も綺麗さっぱりなくなっていた。

 

 

 

不審者はすぐに辺りを見渡したが、人の姿はどこにも見当たらなくなっていた。それが分かったからか、不審者は拳を強く握り締め、壁にたたき付けて「クソッ!!」、と悪態をついた。

 

 

 

 

一方、いなくなった男性はと言うと、そこから少し離れたビルの屋上にいた。そしてその傍らには、フードのついたマントで全身を覆っている人物がいた。

 

男性は急に何が起こったか理解はできなかったが、先程のデュエルで息が上がっていたので、呼吸を整え始めた。その間に、近くにいた人物が話しかけてきた。

 

 

「大丈夫ですか? お怪我などは、されていませんか?」

 

 

最初はその背丈からして男かとも思ったが、その声音を聞いて、男性はその人物を女性であると認識した。

 

 

「あ、あぁ。大丈夫だ。」

 

「そうですか。それは何よりです。立てますか?」

 

 

そう言って、女性は包帯を巻いた右手を差し出してきた。血等が付いていないところを見ると、怪我をしているというわけでもないようだ。男性は礼を言って、その手を借りて立ち上がった。

 

男性が立ち上がると、女性は再び口を開いた。

 

 

「あなたは、これからの未来を担う子供達を導くために、必要な方です。どうか無理はなさらず、自分に出来る事を続けてください。」

 

 

そう言い残すと、女性はビルから飛び降りてしまった。男性はあわてて下を見たが、すでにそこに、女性の姿はなくなっていた。まるで、初めからそこに誰も存在していなかったかのように。道行く人々も、特に何も気にせず、普段どおりに道を歩いており、着地したというわけでもないようだ。

 

 

「何だったのだ、先程の女性は。」

 

 

男性は、不思議そうにそう呟いた。ただ、ここでずっとこうしているわけにも行かないと思ったのか、男性はデュエルディスクを取り出して、とりあえず彼の勤めるLDSに、今の自分の状況を報告することにした。

 

 




どうも、お疲れ様でした!! いかがだったでしょうか。

いやぁ、(現実時間で)実に1カ月ぶりの通路の陰から登場となりました、社長さんこと赤馬零児!! 小説内だと数時間の事なんですけどね。いやぁ、本当にお待たせしちゃいました、この人には。

この小説内だと、やっぱり霊夢が乙女になっちゃいますね。遊矢にいきなり後ろから飛び付いてみたり、遊矢と姉弟みたいと言われただけで顔を真っ赤にしたり。これからも、こんな霊夢の一面を書いていきたいと思います。

でもまぁ、そうは言っても、言う所はしっかりちゃんと言うようにしますけどね。そうじゃないとただの乙女な巫女になっちゃうので。というか、こっちの方が原作の霊夢らしいですしね。あくまで乙女要素はついで、という事でお願いします。

社長さんが優しい、だと…。確か原作だったら、北斗と刃に切れてた気が。まぁあれは尊敬していた遊勝さんを貶されたというのが一番の理由でしょうけど。

そして、謝るところはきちんと謝る社長さん。まぁ実際にこんなことはしてなかったと思いますし、これから原作でもやることないと思いますけど、普段上から目線の言動がるとはいえ、根はこういう誠実な人だと思うので。立場に関係なく、頭を下げられるようになったら、凄いよね?

それを受けてアタフタする遊矢と、素直に受け取っとけという霊夢。この辺りは、二人の価値観とか今まで過ごしてきた経験とかの違いが如実に出ますね。ていうか、こういう時の霊夢の喋り方が、本当に遊矢達のお姉ちゃんかお母さんみたいになってしまうの何故だ? 霊夢に確か、オカン属性は無かったはずだが…。


で、そんな状況を見てとばした社長さんジョークに、急に妄想が膨らんでツボる早苗。彼女がどんな事を想像したのか。それは聞かない方がいいと思います。霊夢が激しくキャラ崩壊してると思いますし、何より彼女が黙ってないと思う。間違いなく9話最後の早苗の二の舞になると思われます。


意外と遊矢以上にメンタルの弱い柚子。原作だとどっこいどっこいですが、この小説内だと真澄戦の後に霊夢に派手に怒鳴られたことが、若干トラウマになってます。皆さんは、こういう経験とかってないですか? 一度怒られて滅茶苦茶トラウマになった事とか。ある方は分かるかと思うんですけど、こういうのって意外と残るんですよ。時間で解決できる場合もありますが、大概こういう場合、植えつけた側が何かしらプラスの行動をすると、その人の心の傷の治りは早くなるような気がします。実際、僕はそうでしたので。


おっとすみません、急に身の上話になっちゃいましたね。ごめんなさい。


さて、最後にいかにも『コイツ』って人と、何かよく分かんない人が出てきましたね。前者は皆さんの思ってる通りの人ですが、後者はいったい誰でしょうねぇ?


今回出てきたキーワードとしては、『女性』、『右手に包帯』といった感じですね。これだけで導き出せる人がもしいたら、その人は次々回特別ゲストを出そうと思っているので、その特別ゲストをリクエストしてもらってもかまいません!! ついでに、その人に使ってほしいカードとかがあったら、それを希望してもらってもいいですよ!! 合ってた人の中で、一番おもしろそうなものを採用します!!勿論、合ってたらですけどね。

後、前回の後書きでも言っていた、この作品中の禁止制限の改定についてはもう少し待って下さい。まだちょっと迷っているので、ご意見等々ある方は是非よろしくお願いします!


さぁ次回、いよいよ霊夢のシンクロ召喚についての講義、はっじまるよー!! 契約結んでから初めての講義するまでに何話かかってるんだよって話ですね。すみません。ようやく霊夢に授業をしてもらう事になります!! 期待してて――、おっと、誰か来たようです。


それでは、次回もお楽しみに!!


P.S.)『ZEXAL』の方も近い内に更新するつもりです!! 楽しみに待っていて下さい!!




遊矢&霊夢「「お楽しみは、これからだ(これからよ)!!」」






◇プチオマケ

『今話終了後の早苗と遊矢』


※ここから先は茶番しかない、ほんまのプチおまけです。どーでもいい方は流してもらっても構いません。

※形式は第6話の後書きのオマケ『帰った後のパチェさんとこあ』同様、地の文のない台本形式となっています。場所は本編同様、遊勝塾の観戦ブースです。キャラ崩壊の要素は程々にしてますけど、苦手な方はご注意ください。


それでは、どうぞ



プチオマケ:今話終了後の早苗と遊矢


早苗「ところで遊矢君。」

遊矢「ん、何だよ?」

早苗「さっきの発言、あれは霊夢さんと姉弟関係というのも、まんざらじゃないという事ですか?」

遊矢「えっ? いや、そういう訳じゃ――」

早苗「またまたぁ。自分に素直じゃないのは霊夢さんだけでじゅう、ぶ、ん、で――」


――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――


霊夢(鬼巫女)「だぁれが素直じゃないってぇ? ダ・レ・ガ?」

早苗「あ、あああの霊夢さん、ご、ごごごご誤解です!! 私は決して、そんなつもりで言ったわけでは――」

霊夢「遊矢ぁ、ちょっとこの緑借りていくわよ。」

遊矢「あ、あぁ。いいけど。」

霊夢「フフッ、ありがと。」

早苗「えっ、ちょっ?! 遊矢君!! 助けて下さい!! 私まだ死にたくないですぅ!! ア、アアアアアアアァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」






――その後、生きた早苗を見たものはいなかった(嘘)。



――完――
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